№2337 もう一度 JR東日本は 旅客への案内の優先順位を誤っていないか

 今回は、昨年7月の№2184の内容の繰り返しになってしまう部分が多々ある事を、お断りしておきます。
 まず、先月の30日の戸塚駅下りホームの、発車案内表示です。
 この朝、公衆の線路内立ち入りという一件があり、東海道線・横須賀線は徐々にダイヤが乱れ始めていました。
 さて、この状況下での東海道線、特に平塚より先、小田原・熱海方面へ行きたいという場合、どの列車が先に出る事になり、どの列車に乗れば良いのか、判断できるでしょうか?

 参考までに、通常ダイヤの発車順はこうなります。

 7時20分 2821Y(湘南新宿ライン) 平塚行 4番線発
  (平塚で始発の熱海行733Mに接続)
 7時25分 1523E(上野東京ライン) 平塚行 3番線発
  ※ ただしこの列車は定刻に出発済み
 7時30分 1823E(上野東京ライン) 小田原行 3番線発
  (小田原で熱海行733Mに接続)
 7時38分 1825E(上野東京ライン) 熱海行 3番線発


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⑩ 横須賀線発車後
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 他の駅…JRに限らないが、特にJR東日本の駅でありがちだと思う、これらの表示から、私が考える問題点は、次の通りです。

1 そもそも、東海道線に向かう列車が3・4番線双方から出発するのに、いちいち両方を見比べてなければならない。
2 遅れの表示が思い出したようにしか現れないし、発車時刻との交互表示なので、具体的に列車がいつ現れるのか、判断しづらい。
3 7時38分より前の列車に、平塚始発熱海行への接続があるのに、普段から表示が全くない(ホームの時刻表にも記されていない)。小田原より先、熱海方面に行きたい乗客は、38分発1825Eまで待たなければならない、と考えるだろう(この日の場合は、遅延が大きくなって、接続を取らなくなる可能性もあるが)。
4 両ホームとも2番目の出発は、JR東日本からのお知らせ(この日は、GW中の首都圏各線区の運休の発生がたびたび流されていた)に遮られる事が多い。しかもそのお知らせは、今この地点・この時間とは、ほぼ関係ない。⑤では、「遅れ5分」の表示もあって、次の小田原行は何時出発の列車を指すのかが、解らなくなってしまった。4番線の2821Yの表示もなくなり、この表示では、東海道線の運行状況が全く解らない。

 それでも、表示があるだけまだいいのかも知れない。ところが。

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 地下の改札口から、ホームに上がった所です。大船寄りだと、ホームの発着案内が全くない。

 次は今朝の改札口の表示です。

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 東海道線で大幅な遅延が生じているが、これだけだと、順番が「狂って」いるだけ(湘南新宿ラインは定刻)で、初めて見ると、なんだ?と思うでしょう。

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 遅れの表示は、やや遅れて出てきます。しかし、今度は正規の発車時刻は解らなくなりました。「〇〇時〇〇分発の△△行は、どの程度の遅れなのか」という事が、ひと目では解らないわけです。
 さらに問題なのは、この表示は横須賀線と共用になっている事で、東海道線の遅延のとばっちりで、横須賀線の時刻は、一切表示されません。鎌倉や逗子の方へ行きたい乗客は、困ってしまうでしょう。

 結論は№2184で書いた事の繰り返しになるが、特にダイヤが乱れている時に、今のJR東日本の表示内容は、相当問題だと思う。これでは、乗客が、自分が行きたい目的地に行くのはどの列車か、それはいつ頃、どこから出発するのかという事が系統だっては表示されず、くるくる変わる表示内容、しかも全く無関係の内容が混在する中から、自分で判断しなければならない。場合によっては、(今朝の横須賀線の如く)全く表示が見えない事もある。これは、通常時・異常時問わず、旅客を適切に誘導しなければならないJR東日本としても、困る事になるのではなないでしょうか?

 もう一つ、横須賀線北鎌倉駅の、下りホームの時刻表です。

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 日中の横須賀線は、逗子~久里浜間の3本中2本は4連の折り返し運転になり、北鎌倉からだと直通は毎時1本のみ、他は逗子で乗り換え、という事になります。
 ところが、この時刻表には、その辺の情報が一切ありません。事情を知らない乗客だと、久里浜へ行きたいのに、例えば12時ちょうどの久里浜直通を逃したら、次は13時01分(土休日だと13時00分)まで待たなければならないのか?と、考えてしまうかもしれません。
 接続に関する情報は、どこまで提供すべきかというのも考えなければならないのではあるが、少なくとも自線内で折り返し運転への乗り換えがある、という路線だったら(他だと青梅線など)、終点から先の接続の情報は、提供されて然るべきではないでしょうか?これは、先のホームの表示も同じです。
(乗り換えの存在そのものが問題、という考え方もあるが、とりあえずここでは置く)

 どうもJR東日本の、駅(だけでなく列車もそうだが)の行先や時刻の案内表示は、明らかに間違った方向に行っているように思えてなりません。放送も(駅も車内もだが)含めて、極端に言ってしまうと、

必要な情報を犠牲にして、どうでもいい情報を過多に流している

傾向が、明らかに見えます。E235系の後部の行先種別表示は、山手線でも横須賀線でも、出発する際には花とかを描いたアニメーションを出すけれど、無用で無駄な機能、ですよね?車内も、さらには駅も、何か広告ばかりに埋め尽くされて、列車の利用に必要な情報が置き去りにされている、という印象が、最近は否めません。エキナカでコンコースが埋め尽くされる一方で、ホームの時刻表の掲示がなくなるというのは、駅にあるべき方向性としては間違っている。時刻表もないのに、さらにホームの表示の内容がが混乱していては、乗客は何を目印にして、行きたい行先に行く列車を探せばよいのか。
 これは何度も繰り返し主張している事だが、

駅の基本は、列車への乗り降りのためにある

のが、大前提です。JR以外の私鉄でも「ちょっと違うだろ?」な傾向がないわけではないが、特に近年のJR東日本は運転形態が相当複雑化しているので、提供する情報の内容をよく吟味しないと、場合によっては相当な大混乱を与える事になりかねません。一度、良く考えて欲しいと思います。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


《今日のニュースから》 カッコ内は新型コロナウィルス関連
 5日 米トランプ前大統領のフェイスブックアカウント停止 
(NYブロードウェイ 9月再開 州知事発表)
 6日 国民投票法改正案 衆議院憲法審査会で可決
(インドの変異ウィルス 東京都内で感染者5人から検出)

 結局、明日のJR東日本の通勤電車は各線とも、通常ダイヤに復帰する事になるようです。東急池上線・世田谷線は、今日から通常ダイヤです。西武新宿線もそうだが、混雑度を増すだけで、感染防止対策にはつながらなかった、という事でしょう。
(どの道長期の旅行はできないし、と言ってリモートワークもできない環境だから電車で通勤、という利用者も、少なくなかったのだろう)
 緊急事態宣言は31日まで延長の上、愛知県と福岡県も加える方向になるようです。そうなった場合のJR東海やJR九州、あるいは名鉄・西鉄などの対応は、今日の時点では発表になっていないが、どうしたものかというのが、正直なところです。延長は予想通りだったけれど、また大幅な減便を強いられるとしたら、交通はやはり、無力と言わざるを得ない。「乗り物の力で元気を」と書き続けているけれど、それも、移動のニーズ、ひいては欲求があればこそ、なので。

№2307 東日本大震災から10年 見せてくれ 乗り物の力を

 今日は、東日本大震災から、ちょうど10年となりました。亡くなられた、あまりにも大勢の皆様には、改めてご冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 今日一日、様々な角度で検証も行われているし、震災や原発事故そのものについて、私自身があれこれ語る事はないでしょう。語りようもないし。何度も書いているように、私自身はあの震災では、親兄弟・親戚や友達など、大事な人々を亡くしたという事はなく、家を失ったり、放射能汚染で故郷を追われるとかの被害に遭った事もありませんでした。それに、今のコロナ禍もだけれど、なにより私自身の認識が大甘でした。原発事故だって、正直、日本で起こる事はないと思っていましたから(チェルノブイリだって、恐怖心はあったが、しょせんは体制が異なる遠いよその国のできごとでしかなかった)。だから他人の事を良いの悪いのだとは言えないし、言ってはいけないだろうと思っているのです。

 なので震災そのものについて軽々に口にはできないのだが、交通の目線で思い出すのは、関東地方は直接の被害は少なかったが、震災直後に図々しくも山陽地方に旅行に行っていたが、帰りの旅客で羽田着陸直前に見た、君津の工業地帯の火災と、「計画停電」で鉄道が運休になっていた事、ガソリンスタンドがどこもマイカーで長蛇の列になった事(バスの運行にも影響が出た)、その後夏場には電力の需給がひっ迫、鉄道は減量ダイヤで間引き運転になり、車内照明の蛍光灯が何本か抜かれた状態で走っていた、という事でしょうか。あまり思い出したくない悪夢(被災地の方々に比べればどうという事はないはずだが)として、脳裏に刻み込まれています。

 一方で、「乗り物の力」が、人々に感動を与えてもくれました。磐越西線を走ったDD51型重連のタンク列車は典型だったし、多くの高速バスが、被災地を救うべく活動する多数のボランティアの輸送で活躍を見せました。退役直前だったJALのA300ー600が急遽青森線にカムバック、というのも、加えていいかと思います。

 震災直後、私はそのJALのエアバスで青森に入り、全線再開したばかりの東北新幹線や、津波の被害に遭った八戸の街を見てきました。それ以降、東北の震災被災地は何度か見てきて、乗り物にも乗ってきました。気仙沼線・大船渡線のBRTや三陸鉄道、一昨年は仙石東北ラインに、野蒜駅が移転した仙石線、去年は全線再開直後の常磐線にも乗り、その都度当ブログでも書いています。
 ヨソ者がちょこっと見ただけで、町の復興とかを語る事は出来ないが、鉄道に関しては…気仙沼線・大船渡線の、鉄道としての再生がならなかったのが残念だが…、常磐線を最後に、全路線がとにもかくにも復旧を見ました。何よりだと思います。しかし、街づくり自体がまだまだこれから(常磐線沿線なぞはそれ以前の話)という所に加えて、今度は新型コロナウィルス禍という、ひょっとしたら震災以上に残酷な面(自ら日常を止めなければならないから)もあるのではないかと思わせる災禍が、被災地を襲っています。交通も無縁ではなく、二重三重の苦難が待ち受けているようです。先月にはまた大きな地震もあって、東北新幹線が被災しているし。
 それでも、一昨年のラグビーW杯が鵜住居で行われたりしているように、被災地も少しずつではあっても、復興しつつあると感じます。交通も、三陸鉄道が、一昨年の豪雨災害から再び立ち直ったように、どんな苦難にもくじけず、何度でも立ち上がってくれるものと信じます。無理はしないで欲しいけれど、今後も、被災地に住まう人々の希望の星として、鉄道も、バスも、飛行機も船も、「乗り物の力」で引っ張っていて欲しいと、強く願います。もちろん私も、これから先も何度でも足を運んで、その都度当ブログで旅行記を書ければ、と思っています。

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東北新幹線 「がんばろう日本!がんばろう東北!」ステッカー

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JAL A300-600 コクピットフード

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岩手開発鉄道 ヘッドマーク付き貨物列車

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三陸鉄道 吉浜駅

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旧仙石線野蒜駅舎利用 東松島市震災復興伝承館

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新野蒜駅と 仙石線205系

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三陸鉄道 リアス線

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大船渡線BRT 陸前矢作駅

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常磐線 大野駅とE531系

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 本当はもう少し軽く済ませるつもりだったけれど、やはりあの震災を目の当たりにした者として無視する事は出来ないだろうと、今回更新1回分を使って、書かせて頂きました。
「平成の鉄道回顧・群馬県」データ編は、日曜日に書きます。

《今日のニュースから》
10日 日本・イラン 外相オンライン会談 「核合意復帰」で議論
(大阪府内 変異ウィルス感染者50人確認)
11日 中国全人代 香港選挙制度 変更決定
(変異ウィルス 沖縄で初の感染確認)

№2298 シーサイドライン・京急線 事故調査報告書公表

 2019(R元)年6月1日に発生した、シーサイドラインの新杉田駅逆走事故、同年9月5日発生の京急線・神奈川新町駅構内踏切事故について、先週18日、運輸安全委員会より揃って、事故調査報告書が公表されました。
 通常、報告書はだいたい1年をメドに出されるが、どちらも結構大きな事故だったし、運行システムにも関わる事なので、少々長くなりました。本当に簡単ではあるが、報告書及び、共に同時に公表された説明資料を読んだ印象を、簡単に記したいと思います。

京急線神奈川新町1号踏切.jpg
 先に京急線の踏切事故から行きます。この件については、事故発生直後に№2046で、印象などを簡単に書きました。
 報告書に関しては、公表翌日の19日付の朝日新聞(横浜版)がかなりかみ砕いて書いてくれているので、それも参考にします。まず、発端となったトラックの踏切進入だが、この直前に京急の社員2名が関わっていたのは、少なくとも私は、この報告書を読むまでは知りませんでした。なんでこんな狭い側道(浦島152号)に進入してきたのか?と№2046では書きました。ドライバーが道路事情を知らなかったのではないかと思ったのだが、背景として、本来利用するであろう首都高速のランプが、工事のため長期間閉鎖されていた事があったのではないか(それをドライバーも、運送会社も知らなかった)と、報告書には記されています。
 踏切部分でトラックと京急社員が四苦八苦する様子も記されているが、早い時点で右折左折は諦めて、少し時間がかかっても、他の手段を考えるべきではなかったかと思いました。報告書では、そもそも大型のトラックが狭い側道に進入するのを防止する対策を、道路管理者などが行うべきだと指摘しています。運送会社は、困難になったら警察に連絡するよう指導した、としています。

浦島152号入口付近.jpg
 今の浦島152号の入り口付近です。京急東神奈川(事故当時は仲木戸)駅とJRの東神奈川駅を結ぶペデストリアンデッキから撮りました。1000形が通過する築堤の脇の道路が浦島152号で、入り口には大型車両の通行が困難な事、国道15号へのルートを記した標識が建てられています。手前左側にも設けられています。
(報告書にも写真がある)

 肝心の快特電車の運行だが、衝突の48秒前には踏切の鳴動が始まり、その4秒後には障害物検知装置がトラックを検知、特殊信号発光機(特発)が点滅を始めた。この踏切に対する特発は3か所あり、最も遠い特発は、踏切から572mの位置にありました。しかし、この特発は、架線柱やワイヤーなどで、一時的に見えづらい位置にあったという事。特発の点滅を認めてから1.8秒以内にブレーキをかけなければならなかったのに、実際には4秒後になったとされています。
 さらに、ブレーキのかけ方も、その4秒後の時点で掛けたのは通常のブレーキで、徐々にきつくなってはいくものの、最終的に非常ブレーキが動作されたのは、最初にブレーキをかけ始めた6秒後でした。この時点でも時速は101㎞/hで、この11秒後には、時速62㎞/hでトラックと衝突しています。
 どのみち、最初から非常ブレーキを操作しても、踏切までには止まれなかった(=衝突は回避できなかった)と思われるが、最初の特発を視認した時点で非常ブレーキを掛けなかったのは、背景として特発の設置位置・条件に加え、京急の運転取扱実施基準及び電車運転士作業基準で、使用する、すべきブレーキが明文化されていなかった事があると、報告書は指摘しています。

 私は、この事故に関しては、この後半の点が一番重要だと思います。バックアップシステムもないまま、運転士の判断にほぼ全てを委ねていた事になり、高速運転を行う事業者としては、これでいいのだろうか(新聞紙上にコメントした識者も、なぜ事故前はこのような運用になっていたのかも分析すべきだった、と記しています)。№2046でも記した通り、京急は運行システムのほとんど全てを、列車側も地上側も、今でもほとんどを手動に拠っています。CTCのような集中制御システムはなく、信号制御は各駅に配置した信号係が捌いています。異常時の運転整理も、コンピューターに頼らず、人間の手によって行われ、早期に収束させています。人間中心のシステムとなっている事が、長年続く京急のポリシー(であり、加えてなぜか、京急ファンの誇り)ともなっています。
 しかし運転に関しては、高速運転に加えてホームドアの整備が進みつつあり、それは運転士を始めとする乗務員には、新たな負担となってのしかかっているはずです。踏切も、東京都内の本線はほぼなくなっているが(北品川駅の前後3か所のみとなり、急カーブ上にあるのでスピードの出しようがない)、神奈川県内では今でも相当数残っています。極端に交通量が多い踏切は少ないが(逆にそれ故立体化が進まない事も予想できる)、それでも八丁畷駅付近は車の通行も少なくありません。従って、ATOとか言うのでもないが、報告書でも指摘されているように、何らかの、運転士をバックアップするシステムの導入は、今後緊急に検討されるべき、ではないでしょうか。
 なお、現在神奈川新町を通過する快特は、60㎞/hに減速して踏切を通過しているが、3月末までには120㎞/h運転に復帰するとしているようです。

 一方、シーサイドラインの逆走事故について。
 新杉田→並木中央間の下り列車が逆走して起きた事故だったが、直接的な原因としては、ひとつ前の下り列車(新杉田→金沢八景)の運行中、編成に2本ある、進行方向を伝える指令線の内の片方が断線した。この時点で、指令線は2本とも加圧されていない状態となるが、事故を起こした2000形には、直前の進行方向を記憶する「メモリー装置」が搭載されていて、そのまま終点の金沢八景まで運行された。上りは、もう一本の指令線が加圧されて進行方向が上り(金沢八景→新杉田)に設定となり、そのまま運行された。そして新杉田で折り返そうとした時、指令線が断線していた事で後退検知機能は働かず、メモリー機能が上りの方向を記憶していたため、運行の指令を受信した時点で、上りの方向に進行=つまり逆走、という事になりました。

 背景として、設計段階での会社、車両メーカー(報告書に社名は記されていないが、2000形は旧東急車輛製で、同社が新交通システム車両を製造したのは初)、装置メーカーとの間に、認識の相違があったと指摘されています。車両メーカーは新交通システムは初めてだったのに、シーサイドライン側は、設計のかなりの部分をメーカーにお任せ、という感じに読めました。メモリー機能と後退検知機能に関しては、車両メーカーと装置メーカーの間の認識の違いがあり、特に後退検知機能は、車両メーカーは「重要な保安システム」とする一方、装置メーカーは「ATCの付帯装置であって、保安装置ではない」と考えていた。結局、この3者の意志の疎通がなっていなかった、つまり設計のプロセスに問題があった、という結論になります。
 これを踏まえて、「メモリー機能はなくても問題なく列車が走行できるもので、むしろその存在が、危険を生み出す要因になっていた。また後退検知機能は普通鉄道を基にした仕様で、安全確保機能は不足」と指摘、「システムインテグレーションをどこが行うかが不明確だった」ともして、国土交通大臣に対して4項目の勧告を出したうえ、これらを制度化するよう、意見を出しました。運輸安全委員会が鉄道事故で国土交通大臣に勧告を行うのは、初めてだそうです。
 近年は新交通システムだけでなく、要員不足も反映して、いよいよ普通の鉄道でも、無人運転が現実味を帯びてきました。去年暮れからはJR九州・香椎線でも自動運転の実証実験がスタート、当面は運転士が添乗するが、いずれは運転士以外の係員が添乗する形態への移行を目指すとしているようです。列車内に全く鉄道職員がいない、という事にはならないようだが、いずれにしろ、運転士が直接列車の運行にはタッチしない自動運転が、実現を見る事になりそうです(私は、もっと先の事と思っていましたけれど)。しかし当然、今回のシーサイドラインの一件は、新交通システムのみならず、全ての鉄道事業者に、影響を与える事になるはずです。特に、設計の段階から(車両のみならず、普通鉄道の自動運転化は地上設備も)、キチンと関係者全員が、コミュニケーションを密にして、皆が同じ方向を向いた設計がなされる事が、求められます。

 完全自動運転のシーサイドラインと、運転士の判断にほとんどが委ねられる京急。金沢八景で接続する両社だが、真逆に位置していると言えます。無人運転は鉄道のみならずバスも各地で実証運行が行われているものの、システムに何かあった時に大丈夫なのかよ?と、一般の人々が不安を覚えるのは、無理からぬ事でしょう。だいぶ前には大阪のニュートラムでも暴走事故があったし。しかし一方、カーブが多く、線形は必ずしも良くない路線を高速運転するのに、大部分が運転士の注意力のみに任される状況は、果たして安全と言い切れるのか。無人運転はともかく、人手不足を背景に人員削減は残念ながら進み、それは運転の部門にも及んでいくのでしょう。一方で他交通機関との競争なども考えれば、高速運転による速達輸送も、たぶん後戻りはできない。となれば、どこまでコンピューターを中心にした機械に任せて、どこまで人の手が介すべきか、それは今後延々と議論される課題、となるのだろう。両極端とも言えなくもない両社の事故だったが、鉄道の将来を展望する時、2つの事故から導き出される方向性は、案外同じなのではないか、と感じました。それは恐らく、交通部門だけでは、ないのだろう。

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《今日のニュースから》
22日 福岡県小川知事 辞職届提出 治療長期化など理由
(栃木県 無症状者のPCR検査開始)
23日 足利市山火事 避難勧告発出
(北海道 感染者数66人2日ぶり60人超)

「緊急事態宣言」は、他地域では今月中の解除も見えてきたようだが、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県に関しては、どうやら3月7日まで完遂してしまう事になりそうです。

№2245 大韓航空 アシアナ航空買収発表

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 大韓航空(KE)は昨日、アシアナ航空(OZ)の買収を決議したと発表しました。コロナ禍で世界中のどの国の航空キャリアも四苦八苦の中、やはり起きたか、という印象の合併劇になろうかと思います。一般の経済ニュースでも、大きく取り上げられていました。

「オピニオン」と大げさなテーマだが、ビジネスは完全にオンチだし、韓国国内の事情も解りません。だからメディアや趣味サイトをナナメ読みした上での思い付き的な事しか書けない事は、最初にお断りしておきます。
 OZは元々コロナ禍の前から経営状態が悪化して、クムホグループが売却先を探していました。一時は建設大手への買収が決まっていたが、このコロナ禍で破談になり、後がなくなっていたようです。朝日新聞の報道によれば、韓国系の産業銀行がKEに8千億ウォン(≒750億円)を出資、KEはこれらを元手に、OZの第三者割当増資を引き受けて子会社化する、という流れになるようです。実現すると、KEは世界で第7位の航空会社になるとしています。
 OZには、9年前の6月、初めての韓国旅行の時、ANAのマイルを使って、羽田→金浦仁川→成田便に搭乗した事がありました。どちらもA330-300、だったっけ。ブログにも搭乗記を記しているのだが、その1回ポッキリで終わる事になりそうです。

 おカネの部分は解らないけれど、趣味的な部分では、まず、路線網の再構築はどうなるだろうか。両社とも日本路線が多く、仁川のハブ機能を活かして、地方路線の就航も少なくなかった。当然成田や関空にも数多く乗り入れているが、このコロナ禍でもあるし、地方路線はかなり整理されそうで(再開されないまま廃止という路線も多くなるだろう)、大都市の路線も、ある程度は便の統合が行われるだろう。
 何より第1位と第2位の統合なので、独占禁止法に抵触しそう、というのは、すぐに思いつく。最近の韓国は、両社の息がかからないLCC(済州航空やイースター、T-Way)の就航もあるが、恐らくはどこも、上位2社とはかなり差があると思われるので、LCC勢の反発は容易に予想される。KEにはジンエアー、OZにはエアプサン・エアソウルというLCCがあるが、それらは全部手放せ、となるのかも知れない。また、統合により人員の削減が予想され、既に両社の労働組合は反発を示しているそうなので、韓国の事だから、今後大規模な労働争議が勃発する可能性も、十分あります(もっともそれなら、特にOZをどう再生させるかの案が示されなければなるまい)。まだまだ一波乱二波乱あるのかも。
 アライアンスという点では、KEはスカイチーム、OZはスター・アライアンスに入っているが、統合後はスカイチームになるでしょう。これは、同アライアンスにとっては、ニンマリかもしれない。日本にスター・アライアンスのANA、ワン・ワールドのJALがあり、KEも強力とはいえ、極東アジア地域でのプレゼンは、やや弱かったかもしれない(だからスカイチームの中心となるデルタは、ちょうど10年前に経営破綻したJALを取り込もうとしていたのだから)。このままなら韓国はスカイチーム一本で、仁川空港も武器に、日本を拠点にする他アライアンスにくさびを打てる事になるのではないだろうか。
 機材はどうなるだろうか。両社ともA380を保有していて、KEにはB747-8もあるが、この状況ではやはり、相当数手放す事になるのだろう。OZにはA350-900があるが、KEカラーになったりするのか。OZカラーは撮れぬまま終わりそうだ。
 もっとも、どれもこれも全て、コロナ禍がある程度収まって、国際航空需要が戻ってくる事が大前提になるのだが。

 以上は海の向こうの国の話だが、ひるがえって日本では?という論調も目立つ。ANAは「突然」、過去最大の赤字に転落して冬のボーナスはナシ、長距離大型機も多数売却、JALもボーナスは大幅カットで、B777の退役が加速しそう(国際線用B777-200ERの一部を国内線に転用するという話も聞く)。ついこの間まで、ジャンボジェットなき後の主役だったはずのB777が、こんな形で追われる事になろうとはとも思うが、この日本の大手2社の統合も、ひょっとしてありなのか?という論調もあるようです。私は過去の、特にJALの破綻以降の10年の経緯と、コロナ禍の現状を兼ね合わせると、そこまではならないと思っています。むしろ、この2社とLCC勢に挟まれた中堅どころに、再編成の可能性があるのではないかと見ています。
 しかし…正直もう解りません。今後韓国や日本、アジアだけでなく、世界全体で、コロナ禍前だったら驚きを持って迎えられただろう再編成劇が、今後も当たり前のように繰り広げられるのかも知れない。何しろ春の第1波の時には、あのヴァージンのリチャード・ブランソンが「もっと支援を」と政府に泣きついていたくらいだから(8月にはアメリカで連邦破産法15条適用を申請した)。羽田就航が大いに期待されたヴァージン・オーストラリアも破綻(運行は継続されている)。日本国内でも、先ほどエアアジア・ジャパンが破産手続き開始を申し立てました。もはや大手だろうが中小だろうが、LCCだろうが、コロナ禍によって虫の息の航空業界は、場合によっては国境を超えた、再編の渦に飲み込まれていくようです。その変化を、私は冷静に受け止める事が出来るだろうか…。心元ないのだが、今回の韓国の合併劇を機に、真正面から見据えていこうと、覚悟しておきたいと思います。

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 今日はJR東日本と東急から、終夜運転のリリースが出ました。東急は、今シーズンはなし。全線、大晦日・元日共に通常の土休日ダイヤで運行。JR東日本は、京葉線が今年度は取りやめ。また横須賀線は大船~逗子間のみとなり、大船以北は湘南新宿ラインが60分間隔のみの運行に縮小。その他は前年度並みの区間で行われるようです(若干本数が減るよう)。185系の臨時快速〔伊豆初日の出号〕(全車指定席)が注目か。

《今日のニュースから》 カッコ書きは新型コロナウィルス感染関連
16日 巨人育成指名  唐津商業高校坂本 勇人選手と仮契約
(「Go Toイート」は原則4人以下 農林水産省 都道府県に呼びかけ)
17日 スーパーコンピューター「富岳」 4部門世界1位
(韓国政府 規制レベルを1.5に引き上げ)

「坂本 隼人」は、今シーズン2000本安打達成のキャプテンと同姓同名だが、日本プロ野球には過去にも例があって、日本ハムでは昭和の終わりに「田中 幸雄」選手が2人いた事があります。
 とにかく感染者数の増加に歯止めがかかりません。本格的に人々の大規模な移動が起きるのは年末年始になるが、その前に土曜日からの3連休があります。この状況でどの程度の人出になるかは解りかねるが、出かけるならとにかく、感染を広げぬよう、我々一人一人が注意しましょう。それしかありません。