それにしても、京都市と高槻市という組み合わせは意外でした。隣同士の公営バスと言えるが、X116の神戸市と伊丹市、X117の横浜市と川崎市と違い、府が違いますので。今後のラインナップを見ても、都道府県にはこだわらず、小規模の公営事業者を取り上げていく事になるようで、この点では楽しみが広がったと言えます。
京都市は、2008(H20)年刊行のR63で、単独で取り上げられていました。当時は定期観光バスもあり、「洛バス」シリーズや「のぞみちゃん号」もあって、まだバラエティに富んだ時期だったと言えます。高槻市はもちろん初めてです。
表紙は、高槻市営バスカラーに、京都市のエルガ。一般のニュースにもなった「観光特急バス」のいでたちです。
京都市営は、西賀茂・烏丸・九条・梅津・洛西・横大路の6営業体制で、烏丸〔営〕の配下に錦林出張所があるという体制自体は、16年前と変わりがありません。ただ、民営委託が進んでいて、洛西・横大路両〔営〕は全て民営委託です。本局は、壬生から地下鉄太秦天神川駅近くに移転している。
高槻市営は小規模ではあるが、南部の芝生・北部の緑ヶ丘の2営業所体制。
◆ 現有車両のアルバム・一覧表・車種別解説
京都市
「810台」と記されているが、820台(烏丸83台・錦林50台・九条176台・梅津171台・横大路125台)が正当ではないかと思われます。ここではこの数字をもとに分析します。
1. 定期観光バスがなくなり、全車両が一般的な乗合車となりました。880台は、16年前より55台・7.28%も増加している。最近の公営バスでは珍しい。このうち279台が民営委託車両。全体の31.7%。
営業所別では、九条〔営〕が176台で全体の21.46%、梅津〔営〕が171台で20.85%、それぞれ全体の1/5以上で、この両営業所だけで、京都市営全体の半分近くを占める事になります。やはり中心部を走る営業所が高くなる傾向です。一方で烏丸〔営〕が83台、錦林〔出〕50台を合わせても113台。北東部が少なめか。著名な寺社等が多い地域ではあるが。
2. 平均車齢は、昨年2025(R7)年を0年として計算しました。
京都市営の全体の平均車齢は、8.92年。この数字自体は、バス業界の中では平均的なものと考えられる。
しかし、年別の導入数は、2007(H19)年式が99台・全体の12.07%を占めている。もう19年になるのだが。翌2008(H20)年式も75台・9.15%になる。一方で、2010(H20)・2011(H21)年は2台ずつ、2012(H24)年も7台しか導入がない。この3年間の合計11台は全て、梅津〔営〕のブルーリボンシティ・ハイブリッド。
その後2013(H25)年から再び2桁、毎年40~50台前後の導入があります。昨2025(R7)年は一気に66台の導入がありました。全体の8.05%です。この導入が、全体の平均車齢を押し下げていると考えられます。
つまり、2007~2009年はほとんど導入がなく、その前後、2006~2009年と、2013年以降で導入が二分された形です。なぜだろう?2008(H16)年1月16日に地下鉄東西線の二条~太秦天神川間が延伸し、バス路線再編成も行われているようだが、この導入傾向は、それと関連があるのだろうか?なおコロナ禍は、京都市営の新車両導入には影響していないようです。
営業所別では、横大路〔営〕が6.96年と最も若い。2020~2022年にかけて、合計37台の導入があった事が、平均車齢を押し下げた要因と考えられる。最高齢は九条〔営〕の9.86年で、2007~2008年式が合計で63台残存、同営業所の35.79%になります。
最高齢車両は2006(H18)年式で、西賀茂・九条両営業所に3台ずつ在籍。前回のR63時点の車両が、77台残存していると思われます。10.19%、1割以上です。
3. 京都市営は今の所4メーカー全てが在籍、いすゞが53.06%と全体の半数以上、三菱ふそう19.88%、日野19.15%、日産ディーゼル7.32%の割合になっています。2021(R3)年以降は大半がいすゞで、去年はポンチョ1台を除いて全ていすゞでした。
型式数は28あります。少ない?このうち、いすゞのQDG-LV290N1が77台で、全体の9.39%、一割近くを占めています。一方で経年車である日野PJ-KV234N1が67台、8.17%あります。中小型車は94台で、全体の11.46%。大半は郊外部の洛西・横大路両営業所に配置されています。中心部は道路状態自体は良いし、需要が旺盛だから、中型車が入る余地はあまりないでしょう。過去にはポンチョを使用した循環バスが試みられたりもしていたようだが。
4. ノンステップ率は98.05%で、若干のワンステップ車がある烏丸〔営〕(90.72%)以外は100%です。
2010~2015年に導入されたブルーリボンシティ・ハイブリッドが67台在籍するが、それ以降のハイブリッド車、および水素バスやEVは、今の所在籍しない。CNG車も全滅している。なお、公式リリースはまだないが、近くエルガEVが走り出すらしい。
他事業者からの移籍はない。
5. 近年の京都市営バスは民営への委託が多いが、5社に合計324台・39.51%と、4割近くが委託になっている。現状で最も多いのは近鉄バスで106台、洛西〔営〕の全車両で、京都市営の12.93%。でも洛西は方角的には、近鉄バスのエリアからはだいぶ離れているのだが(阪急京都線・JR京都線(東海道本線)の沿線が主力)。阪急が横大路〔営〕の93台(11.34%)、JR(西日本ジェイアールバス)が梅津〔営〕の58台(7.07%)、京都バスが錦林(出)全車両の45台(5.48%)、MKが横大路〔営〕の22台(2.68%)。車両の解説のテキストには、どの車両がどの民営会社への委託か、という事は記されていない。
高槻市
貸切車が7台在籍する(全体の0.42%)が、純粋な「観光バス」は存在しない。ここではひとまとめで分析します。
1. 営業所別では、芝生〔営〕80台、緑ヶ丘〔営〕85台と、差はほとんどない。
2. 平均車齢は、やはり昨2025(R7)年を0年として計算すると、11.06年となり、これも、地方を地盤とする公営としては、まあ平均的と思われるが、全体的には経年化。年によって導入が平均にはなっていなくて、2012(H24)年式は23台で全体の13.94%、2010(H22)年式は20台で12.12%。2013(H25)年以前に導入された車両が大半。一方で2016(H28)年・2019(H31~R元)・2021(R2)年は、新規導入がありませんでした。
営業所別では、芝生〔営〕11.10年、緑ヶ丘〔営〕11.02年と、こちらも差はないと言って良い。芝生〔営〕は2010(H22)年式が17台あり、営業所全体の21.25%と、1/5以上です。
最高齢車両は、芝生〔営〕に配置されている、2005(H17)年式のエルガ。
3. ノンステップ率は82.91%。芝生〔営〕82.43%、緑ヶ丘〔営〕83.33%と、ここでも差はほぼ無い。この程度の規模では当たり前になろうが、芝生〔営〕と緑ヶ丘〔営〕で、サービスレベルの違いは無い。
低公害車は、今の所存在しない。過去にもなかったと思われる。他事業者からの移籍はない。
◆ 京都市バスのあゆみ
R63以降で見ると、とにかく観光輸送をどうする、という点がまず第一の課題であり続けたと思う。むろん京都は昔から、「インバウンド」という単語を聞くようになる遥か以前から国際観光都市だったのだが、特にコロナ禍後は、「乗客は急増」、なのに「ドライバーは減少」、という、明らかな需要と供給の、かなり極端なアンバランスが顕著になっている、という事だろうか。一般の市民等の利用に悪影響を与えるのはやはりまずく、一昨年の京都市長選挙を始めとして、観光のみならず、外国人とどう向き合うかというポイント全体で、市政の課題となり続けている。「市バス一日乗車券」の廃止が、一般のニュースにもなるくらいなので。これが東京・大阪のように、市中くまなく地下鉄ネットワークが張り巡らされているのなら、もう少し違った方向にも行っただろうが、バスが中心とならざるを得ない京都の、ある程度は宿命と割り切らざるを得ないのか。あと、地下鉄主体であるが、「地下鉄に乗るっ!」キャンペーンについて触れられても良かった。
京都市には、現在も保管が続く、三菱ふそう「ブル」をベースとした電気バスがあったのだが、この辺の記述が全くなかったし(1973(S48)年の試験導入とは違う)、写真もない(R63にもなかった)。
◆ 高槻市バスのあゆみ
地方公営バスが、最初は民営から始まったというのは他にもあるが、高槻市の場合は、いったん阪急バスを経由している。後述する杉生は、なるほど高槻駅よりも亀岡の方が近そうで、今はサッカーのスタジアム直結の橋上駅舎となった亀岡駅の駅舎の写真は貴重。電化前のローカル線然、としていた時代、だったからねえ。「ナイスミディパス」(国鉄が発売していた、中高年の女性グループを対象としたグリーン車乗り放題のパス)の看板も懐かしい。むろん高槻市は大阪の衛星都市としては最も有力な都市の一つだが、特に平成になってから阪急京都線の特急、JR京都線(東海道本線)の新快速が停車するようになって(一部の〔はるか〕〔サンダーバード〕も停車)、よりその傾向が強くなったのではないか。阪急の高架化で道路事情も良くなっただろうし、それが、市バスの飛躍にも一役買っているだろう。
◆ 京都市バスの路線エリア
市の境が記されていないからはっきりとは分からないが、中心部はほぼもれなく網羅していると思われる。市営バスから京阪バスになった山科区や、「平成の大合併」で京都市になった旧京北町などの北部は、市営バスは見られない。きれい…とも言い切れないが、碁盤の目状になった路線が、京都らしい。市の外への越境はなさそう。
◆ 高槻市営バスの路線エリア(なぜかこちらは「市営」になっている)
こちらも、市域は(デマンドを含めて)市のほぼ全域をカバーしていると思われる。原大橋より先の路線の一部が京都市に食い込んではいるが、はっきりと他市に越境している路線はないようだ。上牧駅・淀の原は島本町に隣接し、玉川橋団地もかなり吹田市に近いが。
◆ “涼”を求めて川辺を散歩
R63の紀行は、クラッセブックス編集長・富田 康裕氏による、今はなき「京都観光二日乗車券」(2,000円で、2018(H30)年3月16日まで発売)を利用した、晩秋の京都巡りでした。1泊2日の行程で、途中京都バスも入っていた。
今回の谷口 礼子さんの紀行は、高槻駅から始まり、途中は阪急京都線でつないで、京都駅が終点という、日着の旅。京都はともかく、正直高槻市には何か観光の目玉になるようなもの、あったっけ?と思ったが、芥川の渓谷(摂津峡)と、日帰り入浴施設をたどっている。上の口は、杉生の方まで走っていた路線の途中にあるが、原大橋行と合わせると、日中でも10分毎くらいには便があり、利用は多そうだ。バスからの電車乗り換え時刻案内は、関東でも神奈中バスのツインライナーで見られたりする。
京都は嵐山へ行くのかと思ったが、上賀茂神社と下鴨神社をたどり、鴨川へ。鴨川は夕方になった事もあって涼しかったようだが、取材日が8月1日では、日中の京都市はさぞ暑かったろうと思うのだが、どうだったのだろう。「ひと頃のようなキャリーケースごと乗り込む観光客はほとんどいなかった」とも記されていて、乗車した3371号車は荷物台はなかったようだが、バス以外でも市の対策はある程度効果が出ているよう。だが、今後も市政の課題であり、選挙(特に京都をめぐる地方選挙)の争点になり続けるのだろう。
◆ 終点の構図
京都市営バスのR63は原谷でした。23年前に私も訪れた事があります。〔M1〕系統は1時間に1本以上は便があるが、5本ある北大路ターミナル行以外は、鉄道の駅に関わらない立命館大学発着なので、中途半端な感もありました。他バス系統が多いわら天神の乗降が多いようだが。
今回は、高槻市営バスから選ばれました。杉生は、高槻市の北の果てに近い。ここでは全く記されていなかったが、去年の11月より一般の市営バスの乗り入れがなくなり、原大橋を起点として一般の市営バスから連絡する、「かしらく号」と称するデマンド運行に切り替わっている。北部の3か所の終点だった場所を巡回する形態で、左右両周りを合計すると、バス時代より回数は多くなった。ただ、左右両周りとも他の終点だった場所を経由していくから、高槻駅からだと1時間程度はかかるようになっている。大阪からJR新快速で20分もしない場所からのバス路線でこんな終点があるとは、と思うが、それだけに公営と言えども、維持は大変だ、という事か。
日中関係の悪化など、市の外の国レベルの軋轢の影響はあっても(でも先日、京都駅の「みどりの券売機」前にいた初老のグループは中国人だったし、実際の所の国民感情って、どうなんだろう)、特に昨今の相当な円安傾向も考えると(1€≒183円、だって…)、京都市を訪れるインバウンドの数は、コロナ禍みたいな事態にならない限りは、いきなりガクンと減少するとは思えない。従って、京都市営バスに関しては、当分は観光客、特にインバウンド対策が課題の中心になる続けるだろう。観光特急バスは、何度も書いているが、一般路線バスの倍近い料金を取るのなら、少なくとも座席定員制にはしたい。連節バスは難しいかも知れないが…(それこそ、シティバスとしてのダブルデッカー導入はできないのか、と思う)。ソフト面では、インバウンド対策はドライバーだけでは紀行にもあった通りで難しく、それがまた要員逸走の原因となりうるので、乗車前の地上側で何とかしたいし(運転免許がなくてもできる仕事は少なくないはず)、これこそAIを活用できないものか。あとは市の対策で、京都駅に集中しがちな府外からの観光客を山科駅に分散させる方策がとられるようなので(JR特急〔はるか〕の山科延伸もその一つ)、関連して市営バスも、山科区そのものへの展開はともかく、山科駅への乗り入れの復活はあるのかも(清水寺などへの直行便の設定など)。
一時民営バス新規参入で軋轢もあったが、今でも4割近くを民営に委託していて、京都バスや西日本JRバスとの共通乗車制度の導入に見られるように、現在は民営との関係は良好といえる。民営側にしても体力がなく、市営バス・民営バスのバランスは、少なくとも当分は現状維持と思われる。可能な所は、もっと深度化して欲しい。
市営バスとしてはしばらく安泰といえるが、関西の土地柄、公営への視線は厳しい。市営バスのバス停を見ると、系統ごとの収支係数が記されていて(公式WEBの、PDFの時刻表にも記されている)、経営状態の透明化は、今後も求められていくのだろう。これ以外は、恒常的な利用者ではないので、なんとも言いづらい。
それは高槻市も同じで、こちらは1回も乗った事が無いし、京都市以上になんとも言えない。こちらも市営・民営のバランスは当分現状維持と考えていいと思うので、良好な関係を構築し続けて欲しい。京都も高槻も、岡山市のような、民営バス同士でもいさかいが絶えない、などという事の無いように。
次号X120はもう書店に並んでいるみたいだが(まだ未見。明日探します)、仙台市・青森市・八戸市。秋田市がなくなり、東北の公営バスはこの3市のみになって久しい。青森・八戸はともかく、仙台市は政令指定都市なので一度くらいは過去にやっても良かったようにも思うが、全て初めて。特に仙台と青森は、かつては市域を大きく離れた大規模な路線展開が行われていて(青森市営など、竜飛岬の手前まで走っていたほどだ)、歴史面も興味がもたれます。
さらに次のX121(4月予定)は、公式WEBによると、箱根登山バスと江ノ電バス。箱根登山バスは、過去には東海バスとのカップリングで2回取り上げられているが、今度は同じ神奈川県の江ノ電バスとの組み合わせになりそう。江ノ電バスは初めて。
当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
なお、「日本の路線バス・フォトライブラリー」は、3月いっぱいを持って、閉鎖させていただきます。長い間、ありがとうございました。残りの期間もどうぞよろしく。
《What's New》
10日 北朝鮮国営メディア 韓国の無人機 領空侵犯と発表
11日 バスケットボール女子全日本選手権 ENEOS 3大会ぶり28回目優勝
12日 バスケットボール男子全日本選手権 アルバルク東京 14大会ぶり3回目優勝
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