「私鉄名車列伝」、前回の伊豆箱根鉄道7000系からは、また1年近く経ってしまいました。
今回は、北大阪急行電鉄の8000系です。本当は前回書きたかったのだけれど、1年遅れになりました。デビューは昭和の終わりだからもう30年以上経つけれど、当時としては画期的なVVVF制御の長編成通勤車両でした。
1970(S45)年、大阪万博の会場へのアクセスとして開業した北大阪急行電鉄は、万博後は千里ニュータウンの通勤・通学の足として、大阪市営地下鉄(当時)御堂筋線との相互直通で、大阪市中心部へ乗り入れを行っている。開業当初は大阪市70・80系と同型の2000系を使用していたが、御堂筋線がなかもず延伸に備えて増結を行う事になり、北大阪急行も長編成化を行うため、この機に新型車両8000形を導入する事になった。「北」から、「POLESTAR」(ポールスター:「北極星」)の愛称が与えられている。
設計に際しては、4つのポイントが挙げられている。①旅客の快適性向上と情報量の充実 ②乗務員の操作性改善と異常時対応の迅速化 ③保守性の向上と省エネルギー化 ④企業イメージ向上 車体は2000系から一転してオリジナル色が前面に押し出され、アルミ車体であるが、アイボリーホワイトをベースに、マルーンとレッドの帯を巻いている。制御装置は、当時はまだ例が少なかったVVVF制御で、GTO素子・2500V・2000A×2の東芝製制御装置を、電動車両各車に並列で搭載、1ユニットで4台のモーターを制御する。補助電源装置はSIVとなった。乗務員室には、マイコン式のモニター装置を搭載しており、乗務員に伝えられる情報の量が、格段に増大した。台車はボルスタレス式のS形ミンデン式を履く。編成は検修の都合上、前後で分割が可能な車種構成となっている。
車内は通勤車両としては格段にグレードアップされ、化粧板は阪急系らしく木目調、座席は、当初はオレンジ色で、一人一人の着席区分を示す柄がプリントされていた。冷房装置は建築限界から薄型のものが設計されて、車両の両端の天井部に設けられている。冷風ダクトも両側に寄せられ、可能な限り圧迫感が出ないように設計された。
第1編成は1985(S60)年に竣工、試運転を重ねた上で、翌年2月に営業デビューを果たした。同年暮れには第2編成もデビューしている。共に8連での営業開始だったが、翌1987(S62)年より、8100形が組み込まれて9連化された。1993(H5)年4月までに7編成が出そろい、2000系を全て置き換え、北大阪急行は8000形に統一された。その後1995(H7)年には御堂筋線10連化に対応して(新)8600系を組み込んで(在来の8600形は8500形に形式変更)、全70両(全車アルナ工機製)が出そろっている。1992(H4)年からは、編成中1か所に車いすスペースの設置が順次行われている(その後全車両に拡大)。21世紀に入り、全編成に転落防止柵の設置を行った。座席はオリーブグリーンとなり、より阪急車両に近づいた。
2012(H24)年からは、VVVF制御装置の更新を行っている。素子がIGBTとなった。一方、2014(H26)年には新型車9000系がデビュー、更新の対象とならなかった4編成は、代替で廃車となった。残存する3編成は順次リニューアル工事が施行されている。北大阪急行では2023(R5)年度を目標に箕面市(箕面絹町)延伸を目指しているが、リニューアルを行った3編成は、延伸後も当面は活躍が見られると思われる。
【編成】
←千里中央 江坂(なかもず)→
Tc1 8000 - M0 8100 - Te 8200 - M1 8300 - M2' 8400 + Te' 8500 - T 8600 - M1 8700 - M2 8800 - Tc2 8900
※ 8100形は9連化時に組み込み (新)8600形は10連化時に組み込み((旧)8600形は8500形に形式変更)
同車は、同じく大阪市営地下鉄直通用に開発された近鉄7000系と共に、1987(S62)年の鉄道友の会ローレル賞を受賞しました。第3軌条方式のVVVF車という点で共通点があります。このシリーズでも何回か書いているように、昭和50年代後半になると、特に私鉄各社でVVVF制御の開発が急ピッチで進み、昭和の終わりになると、通勤電車の制御方式としてはほぼ決定版となり(国鉄~JRではやや遅くなり、平成になってから花開く)、この後は特急車への展開が図られていく事になります。さらに同期のVVVF車ながら惜しくもローレル賞受賞を逃した新京成8800形と合わせ、情報伝達の部分も含めて、平成時代の通勤電車の基礎を形作った形式、と評価できるでしょう。
まだ実物を見てさえいないのがお恥ずかしい9000系は、もちろん8000系以上に先進的になっているが、写真を見た限り、外観に関しては、無塗装のステンレス車体にマルーンの帯を巻いて、2000形に先祖返りした?部分も見受けられます。その意味で、8000系は、北大阪急行史上随一の、オリジナル色を強くアピールした車両とも言えるのかとも、感じます。
今回の記事は、
「鉄道ピクトリアル1987年5月臨時増刊号 新車年鑑1987年版」(鉄道図書刊行会)
「週刊 歴史で巡る 鉄道全路線 公営鉄道・私鉄 05」(朝日新聞出版)
「鉄道ファン1991年5月号」 等
を参考にさせて頂きました。
しかし前々回の名古屋市営5000形の時にも書いたけれど、北大阪急行のような比較的小規模な通勤鉄道は、車両に関する記事・データが意外に少なくて、まとめるのに苦労した部分があります。もう少し突っ込んで書きたかった部分も、正直ありました。
次回は、鹿児島市電2100形を予定しています。
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JR東日本は昨日、今年度の設備投資計画を発表しました。今年度と言ってももう9月半ばだから半分近く消化しているのでだいぶ遅いが(去年は4月25日だった)、これもコロナ禍の影響でしょう。影響は投資額の方により強く出ていて、連結では前年度比300億円減の7,110億円、単体では670億円減の5,510億円。それでも大手私鉄より、ヒト桁多い。
車両面では、横須賀・総武快速線E235系導入の他、秋田地域のG-EV400系や男鹿線のEV-E801系もあるが、既にリリース済みで実物も姿を見せており、特に目新しい新形式とかはない(房総ローカルのE131系は、今年度にも、前年度にも記載がなかった)。去年の千曲川氾濫で被災したE7系は、2022(R4)年度末までに、復旧に向けた車両の新造を行うとしています。まだ2年以上かかるのか(という事は、上越新幹線のE4系は、そこまでは延命するのか)。
他に、「ワンマン運転の拡大」の一言がちょっと気になります。今春ダイヤ改正からE531系5連のワンマン運転が始まっていて、これはJRグループ全体でも、4連を越える列車では初のワンマン化になるのだが、京浜東北線にE235系を導入、E233系を他線区へ転属させてワンマン化、という(あくまで)ウワサも聞こえていて、どういう方向になるのか、中央線快速のグリーン車連結と合わせて、E233系の行方には注目が集まる事になりそうです。そんなに古い系列でもないのだけれど。
今後もコロナ禍の状況もにらみながら、来年のオリ・パラも見据えて設備投資は進むのだろうが、最終決算は、民営化後では初に赤字に転落するそうで、駅なども含めた合理化が、さらに進む事になりそうです。終電の繰り上げも、その一環でしょう。観光もインバウンド来訪がしばらく期待できないし、国内の需要も低迷が続くだろうから、華やかな部分への投資はほとんど行われず、「地味」な部門への投資が続くという事になりそうです。
終電の繰り上げと言えば、JR西日本は今日、来春からの「アーバンネットワーク」の最終電車の繰り上げを正式に発表しています。こちらは元々予告されていたもので、既に去年の内に、0時台の利用者は7年前より15%の減少だったとしています。主要路線では、おおさか東線以外の全線が対象になり、全体では48本の削減になります。主要ターミナル駅からの時刻の比較も記されているが、最大では30分(JR京都線(東海道本線)の京都→高槻間)の繰り上げになり、20分台の繰り上げも少なくありません。最終電車が23時台となる路線も多くあります。全区間の時刻は解らないから今後もう一度チェックする必要があるが、1時を過ぎて運行される列車は、どうやらJR神戸線(山陽本線)快速姫路行と、普通西明石行の計2本のみとなりそうです。なお一部区間では、東京発最終新幹線からの接続がなくなります。終電繰り上げは、来月にはJR東日本も具体的な発表となるだろうが、私鉄(関西は検討していないとしているが、元々JRより終電が若干早め。梅田発千里中央行最終は、現在でも23時56分)や地下鉄、バス(既に関東では深夜バスがかなり廃止になっている)にも波及すると思われ、これまでとは一転、大都会の夜は急速に早くなりそうです。
ボーイング737MAX機の連続墜落事故に関して調査を続けてきた米議会下院の運輸インフラ委員会が、最終報告書を発表しました。ボーイング社の「隠ぺい体質が事故を招いた」と指摘しています。果たして、運航再開がなるのはいつの日か、というかコロナ禍で世界の航空業界全体が危機的状況に陥っている最中、再び飛ぶ事は、あるのだろうか?ANAの発注はどうなる?
《今日のニュースから》 カッコ書きは新型コロナウィルス感染関連
16日 東北道岩手県内区間 最高速度引き上げ 全国初120km/h
(東京島しょ地域自治体 感染拡大防止対策 都知事に要請)
17日 高さ390m 日本一の超高層ビル 三菱地所発表
(ネット通販トラブル相談 前年比1.3倍 コロナ禍影響)
菅新内閣が発足しました。1か月前にはこんな事になるとは想像もしなかったけれどねえ。まずはコロナ禍への対策が強力に求められる事になるが、個人的には、苦境に立つ交通機関の救済を、強く望みたい。それもまた、コロナ禍の状況次第になるが。ところでちょうど10年前の民主党政権下の首相は、苗字は同じ漢字の菅 直人氏だったが、「かん 」と読みます。新首相の菅 義偉氏は「すが」です。外国人は混乱したりしないのだろうか。日本人の名前の難しさが出ています。
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