№1775 JR北海道 線区データ公開

 JR北海道は、昨年11月のローカル線維持問題に関するリリースから1年以上経った今月8日、「単独では維持する事が困難な線区」の利用状況等の情報を公表した「線区ページ」を開設しました。
 このデータから、対象となる各線区の利用状況を私なりに分析してみたいと思うが、一部の路線・区間を除くと、JR北海道単独、というより鉄道としてやっていくのは困難なのではないか?と思わせる数字が並んでいました。路線によっては、もはや絶望的、とも。

画像


 対象となるのは、去年のリリースで、廃止したいと表明している3線区と、維持はしたいが単独では困難としている8線区、合計11線区+石勝線(夕張支線)と、日高本線(苫小牧~鵡川間)。
 公表されるのは、

① 輸送密度の推移
 全路線、2016(H28)年度は台風被害のため、9~12月は除いている。単位は人/キロ/日。国鉄時代末期に制定された再建法によるバス転換の基準は4,000だった。
② 定期列車本数の推移
③ 駅別乗車人員
 直近5年間の平均で、特定日の調査に基づくもの。
④ 列車別乗車人員 特定日の調査に基づくもの。
⑤ 駅間別乗車人員 特定日の調査に基づくもの。
⑥ 駅間通過人員 切符の発売状況に基づくもの。
⑦ 定期券月平均発売枚数
⑧ 線区別収支状況
⑨ 土木構造物 大規模修繕費用
 廃止表明3線区は記されていない。

の9項目。

1.札沼線 北海道医療大学~新十津川 廃止表明
 ① 2001(H13)年度までは石狩当別~新十津川間を対象。1975(S50)年度でも582。昨年度の64という数字は、バスでも空気輸送になりそうな数字。
 ② 2011(H23)年度までは民営化時点の本数が維持されていました。
 ③ 石狩月形・浦臼・新十津川を除くと皆1日10人以下で、浦臼~新十津川間の4駅は1人にもなりません。
 ④ 北海道医療大学~石狩月形間は、朝夕には通学と思われるまとまった利用が見られるが、それでも30人前後。列車・区間によっては0人もある。
 ⑤ 北海道医療大学~石狩月形間は200人弱の利用が見られるが、その先は100人を大きく割り込んでいる。札比内、浦臼以外の乗降はほぼない。
 ⑥ 浦臼~新十津川間は定期客がほぼ存在しない。
 ⑦ 全体的にも定期券の発売が皆無に近い。浦臼がらみの通学定期が多少見られる程度。
 ⑧ 収支係数がないが(他の線区も同じ)、昨年度は収入1,500万円・支出3億8,200万円で、支出が収入の25倍強にも上る。施設の維持・修繕費用が1億8,000万円かかって、支出全体の47%を占める。


2.根室本線 富良野~新得 廃止表明
 ① 昨年度は4~8月の実績(豪雨災害のため)。1975(S50)年は5,878だったが、1981(S56)年10月1日の石勝線開業で特急・急行の通過がほとんどなくなったため、1986(S61)年度の時点で、一気に600台にまで激減。普通列車の利用は、当初からほとんどなかった事が解る。昨年度は154。
 ② 既に2001(H13)年度に減便が行なわれていた。輸送密度には反映されていない。
 ③ 中間駅では山部・幾寅である程度利用はあるが、他は10人以下。東鹿越の利用は代行バス乗換と思われる。
 ④ 通学の利用はあるようだが、それでも50人には満たない。下りは4本中3本は20人台の利用がある。
 ⑤ 200人に満たない。山部で段差がある。東鹿越~新得間はバス代行のため数字がない。
 ⑥ 富良野~幾寅間でまとまった定期客の利用がある。それ以降はない。特に落合~新得の十勝峠越えは元々生活圏が異なるから、元々利用は少なかったでしょう。
 ⑦ 山部絡みの通学定期の発売は多いようだ。
 ⑧ 昨年度は収入3,500万円・支出9億2,300万円で、支出が収入の26倍強。施設の維持・修繕費用が3億9,600万円。前年度(4億9,500万円)より大幅に減少しているが、一部区間バス代行が続いているためだろう。支出全体の約43%。


3.留萌線 深川~留萌 廃止表明
 ① 1975(S50)年度は2,245。1980(S55)年度はそれでも1,500強になっているが、5年間で半分以下になった。基本的に微減が続く中、1999(H11)年度は一時403にまで持ち直したが、NHK「すずらん」放映のために違いない。昨年度は188。留萌~増毛間廃止の影響は、あまりないと思われる。
 ② 民営化以降、この区間の本数は全く変わっていない。
 ③ 中間駅では秩父別・石狩沼田である程度利用はあるが、他は10人以下で、恵比島~大和田間の3駅は1人にもなりません。
 ④ 下り4925Dと上り4932Dで、全区間通してまとまった利用が見られる。一方真っ昼間で最高5人の列車があるのは辛い。
 ⑤ やはり秩父別と石狩沼田で段落ちが見られる。
 ⑥ 石狩沼田~留萌間は、定期券の利用がほとんど見られない。
 ⑦ やはり秩父別・石狩沼田絡みの通学定期の発売が多い。
 ⑧ 昨年度は収入7,600万円・支出7億4,700万円で、支出は収入の10倍弱。ここは「輸送に直接必要な費用」が2億2,900万円と最も多いが、どのような支出なのだろうか。人件費?留萌線の中間駅は全部無人駅、列車もワンマン運転なのだが。施設の維持・修繕費用は2億2300万円で、支出全体の30%。


4.宗谷線 名寄~稚内
 ① 急行→特急が走っている割には、国鉄時代末期には既に1,000を割る状況だった。1975(S50)年でさえ1,878だったから、元々地元旅客の利用があまり見込めない区間だったか。昨年度は364と、400を割ってしまった。
 ② 急行(宗谷・天北・礼文・利尻)→特急(スーパー宗谷・サロベツ)を含むが、〔天北〕以外の旧天北線直通は含んでいない。21世紀に入ったあたりから減少傾向にある。
 ③ 特急停車駅以外は皆10人以下。音威子府~幌延間がかなり悪く、筬島・歌内・糠南・雄信内は乗降が全くありません。
 ④ 普通列車は、音威子府~幌延間で10人を上回った列車が1本も無い。特急は調査日は全て札幌発着だったが、上下とも午後の〔スーパー宗谷〕が低迷している。
 ⑤ 利用のほとんどが特急。
 ⑥ 音威子府~問寒別間は定期客がいない。
 ⑦ それらは、定期券の発売状況にも如実に表れている。名寄~美深・幌延~南稚内の通学定期の発売が比較的多い。
 ⑧ 昨年度は収入4億4,900万円・支出31億2,100万円で、支出が収入の7倍。施設の維持・修繕費用が11億2,900万円で、支出全体の36%。
 ⑨ 土木構造物の概況は、橋梁222ヶ所の内、100年以上が22ヶ所、全体の1割ある。トンネルは1ヶ所しかないんだ。大規模修繕・更新には今後20年間で23億円、車両の更新には全21両(特急の261系も含むのか?)で、58億円を見込んでいます(特急8両×4億円=32億円、普通13両×2億円=26億円?)。
 (普通列車用は、開発が発表になったEV。SLや観光列車は含まない。他の線区も同じ)


5.根室線 釧路~根室
 ① 1975(S50)年度は1,879。民営化の時点で1,000程度、21世紀に入る直前あたりから400台で推移している。昨年度は457。
 ② 釧路~厚岸間は、20世紀末まではむしろ微増でした。
 ③ だから釧路~厚岸間はまだ良い方なのかと思うが、そこから先は主要駅でも10人強程度で、霧多布へ行くバス路線がある(現在は平日だけだが)浜中でさえ10人を切っている。東根室がやや多いが、「日本最東端の駅」なので、旅行者の乗り降りが多いのかも知れません。
 ④ 上り5622Dはかなり利用があるが、5633Dの厚岸→根室が1人とは、まだ夕方という時間としては辛い…。
 ⑤ やはり厚岸でガクンと利用が落ちる。
 ⑥ 特急は走っていないが、根室へ通じているからか、定期外客が比較的多い。厚岸より先の途中駅の増減がほとんどないし。定期客は、浜中~厚床間はほとんどいない。
 ⑦ 釧路~厚岸間と、落石~根室間の通学定期が目立つ。東根室は定期客がいない。
 ⑧ 昨年度は収入2億3,500万円・支出12億7,300万円で、支出が収入の5.4倍。施設の維持・修繕費用4億5,500万円は、支出全体の約35%。
 ⑨ 土木構造物の概況は、橋梁107ヶ所の内、80年以上が92ヶ所、全体の1割ある。トンネル3ヶ所は全て100年以上。大規模修繕・更新には今後20年間で30億円、車両の更新には6両で12億円を見込んでいます。


6.根室線 滝川~富良野
 ① 1975(S50)年度は8,808もあった。富良野~新得間と同じく、石勝線開業で特急・急行の通過がなくなり、1986(S61)年度の時点で、800台にまで落ちている。昨年度は432。
 ② 昨年の改正で減便が行なわれるまで、民営化以降本数の変化はありませんでした。
 ③ 他線区に比べるとまだ良い。赤平と芦別は100人を上回り、10人以下は東滝川・野花南しかない。
 ④ ただ、芦別~富良野間は各列車とも利用が少なくなり、20人を越える列車が上り2422Dしかない。富良野からは、富良野線からの入り込みがあって、東鹿越方向はやや増える。
 ⑤ 芦別~富良野間は、滝川~芦別間の半分以下。
 ⑥ ここも富良野に通じているからか、定期外客が比較的多くなっている。芦別から先の定期客は、芦別までの1/3以下。
 ⑦ 滝川~赤平・芦別間の通学定期の発売は多い。野花南絡みの定期券の発売はない。
 ⑧ 昨年度は収入1億1500万円・支出13億9,000万円で、支出が収入の12倍。施設の維持・修繕費用5億7,100万円は支出全体の41%。
 ⑨ 土木構造物の概況は、橋梁70ヶ所の内、39ヶ所が100年以上。一方で25ヶ所は60年未満。トンネル2ヶ所はどちらも60年未満。野花南~島ノ下間は滝里ダム建設に伴って1991(H3)年10月にルートを変更していて、トンネル2ヶ所はこの区間にあります。この事もあるのか、大規模修繕・更新は今後20年間で11億円と、比較的少ないかも。車両の更新には7両で14億円。


7.室蘭線 沼ノ端~岩見沢
 ① 1975(S50)年の時点では2,508。これでも少ないが、当時は石炭輸送が残っていたから、貨物でやって行けたのだろう。平成に入った頃はまだ1500程度をキープしていたが、21世紀に入る頃には大幅な減少になり、昨年度は477と、500を割りました。
 ② 追分より南で平成初期に若干減便があったが、全体的には昨年の改正の減便まで、本数はキープされていました。
 ③ 全部の駅で10人を越えている(一番少ない東山で10.2人)。追分(大半は石勝線のはず)の他、栗山と早来の利用が100人を上回っています。
 ④ 沼ノ端(苫小牧)・岩見沢口の利用はかなりある。1463Dは最大で200人に近い。一方で深夜の列車は1~5人とほぼ無人。
 ⑤ 中間の早来~栗山間は、両端と比べてガクンと落ちる。
 ⑥ 駅間通過人員も同じ傾向。定期外客は、区間による差は小さい。
 ⑦ 通学定期の発売も、苫小牧~早来、栗山・栗沢~岩見沢の発売に集中しています。
 ⑧ 昨年度は収入1億2200万円・支出13億9000万円で、支出が収入の11倍強。施設の維持・修繕費用5億4200万円は、支出全体の39%。
 ⑨ 開業は非常に古いが、土木構造物の概況は、橋梁48ヶ所中40ヶ所が60年未満。トンネルは60年未満の1ヶ所だけ。理由は解らない。60年位前はまだ石炭輸送があったので、そのために改修を行なったのだろうか。大規模修繕・更新は今後20年間で7億円と、比較的少なく見込んでいます。車両は10両で20億円。


8.釧網線 東釧路~網走
 ① 1975(S50)年の時点では1,817。民営化の時点からしばらくは800台をなんとかキープしていたが、20世紀後半から減少傾向は強まり、以降400台が続く。2015(H27)年度は一時513と増えたが、理由が思い浮かばない。昨年度は463。
 ② 山越え区間の川湯温泉~緑間は、むしろ本数はわずかながら増加傾向にあります。他の区間は減ってきているから、区間による本数の差は小さくなっています。
 ③ 桂台がかなり多いのが目を惹く。網走駅より網走市の中心が近いし、高校もあるためだろう。標茶・知床斜里が100を越えている。意外に釧路~標茶間がかなり少なく、細岡はほぼ皆無。湿原に近い区間だからか。
 ④ それでも東釧路(釧路)~摩周、知床斜里~網走の通学時間帯の利用は少なくない。中間も意外に多いとは思ったが、摩周→川湯温泉方向の利用が、逆方向より多い。なぜだろう。
 ⑤ 釧路口・網走口の利用が多く、中間が非常に少ないのは予想通り。網走口は桂台でかなり大きな段差があり、1/3近くまで減る。
 ⑥ 定期外客は、塘路で大きな段差がある。全体の1日の乗降が10人に満たない駅で、乗降のほぼ全てが湿原観光と考えられる。川湯温泉~札弦間は、定期客がいない。
 ⑦ 通学定期は、釧路~標茶、清里町及び知床斜里~桂台間の発売が多い。
 ⑧ 昨年度は収入3億0600万円・支出18億0200万円で、支出が収入の6倍弱。ここは「輸送に直接必要な費用」が5億1400万円と一番多い。観光の定期外輸送が多いからか。
 ⑨ 土木構造物の概況は、橋梁136ヶ所の内90ヶ所が80年以上、トンネル3ヶ所はいずれも80年以上。大規模修繕・更新は今後20年間で33億円、車両の更新には8両で16億円。


9.日高線 苫小牧~鵡川
 ① 2015(H27)年度は線路被害のため算出していない。1975(S50)年の時点では3,777だが、以降民営化の時点まで急落(鵡川で分岐していた富内線の廃線(1986(S61)年)も影響しているだろう)。民営化以降20世紀の間は1,000台で上下を繰り返すが、以降は右肩下がり。昨年度は462で、2年前の589から大幅に減少しました。鵡川以遠が不通になった事もあるだろう。
 ② 基本的には、昨年の改正の減便までは、運行本数がキープされていました。
 ③ 浜田浦が1.2人と少ない。鵡川が多く、全区間通しの利用者が大半か。
 ④ 朝方の2224Dで200人近い利用がある。夕方の2237Dも100人以上。一方で日中でも終始一桁の列車もあり、差が大きい。
 ⑤ 駅による段差が小さい。
 ⑥ 圧倒的に定期利用が多い。定期・定期外とも勇払の利用が多いようだ。
 ⑦ 浜田浦絡みの定期券の発売がない。
 ⑧ 昨年度は収入2,500万円・支出4億4, 600万円で、支出が収入の18倍弱、廃止表明以外の8線区では一番大きい。施設の維持・修繕費用は1億6000万円、支出全体の34%。「輸送に直接必要な費用」も1億2900万円と、比較的多い。
 ⑨ 土木構造物の概況は、橋梁が9ヶ所あって、5ヶ所が80年以上。トンネルはない。大規模修繕・更新は今後20年間で3億円、車両の更新には5両で10億円。


10.石北線 新旭川~網走
 ① 1975(S50)年の時点では4,367だったが、1985(S60)年には2,528と10年で激減、この数字だけなら特定地方交通線並みになってしまっていた。昨年度は980で、台風で不通になっていた事もあるが、ついに1,000を割り込んでしまいました。
 ② 新旭川(旭川)~上川間と北見近辺は比較的本数が多い。
 ③ 駅の廃止が繰り返された結果、極端に乗降が少ない駅は少なくなった。唯一、生野が1人を切っている。
 ④ 普通列車では、やはり新旭川(旭川)~上川間と北見近辺で、通学時間帯を中心にまとまった利用が見られる。列車によっては、終始一桁もあるが。特別快速〔きたみ〕は、上下とも終始20人以下と、ちょっとまずい数字だと思う。特急は北見で大幅に利用が減る。
 ⑤ この数字も、ここまでのデータを裏付けている。普通列車では、北見近辺では高校が近くにある愛し野で大きな段差がある。上川~白滝間の利用はほとんど全てが〔きたみ〕だろう。特急は北見で半分以下に減ってしまう。
 ⑥ 定期客はやはり愛し野で大きな差が生まれる。上川~白滝間の定期客は存在しない(当たり前か)。
 ⑦ 旭川~当麻間は通学だけでなく、通勤定期の発売も比較的多くなっている。
 ⑧ 昨年度は収入13億5,100円・支出52億5,100万円で、支出が収入の4倍弱。施設の維持・修繕費用は15億3,600円で、支出全体の約3割。「輸送に直接必要な費用」も13億3,400万円かかっているが、長距離で、特急が走っているからか。
 ⑨ 土木構造物の概況は、橋梁249ヶ所中、80年以上が169ヶ所あって、全体の67%。トンネルは6ヶ所(意外に少ない)中5ヶ所が80年を越えている(60年未満の1ヶ所は、北見市内の地下線か)。大規模修繕・更新は今後20年で57億円、車両の更新には47両(特急含む)で114億円。


11.富良野線 富良野~旭川
 ① 1975(S50)年の時点では3,587、民営化の前後では2,000で推移していた。1994(H6)年度に2,000を割り、しばらくは減少傾向だったが、この路線の場合は2004(H16)年の1,282を底として、上昇傾向に転じているのが目を惹く。昨年度は1,545と、1500台を回復した。
 ② 富良野~美瑛間は、むしろ微増傾向。
 ③ 極端に少ない駅は少ない。10人を切っているのは、富良野の手前の鹿討・学田のみ。中間で100人を越える駅が6つある。
 ④ 朝夕の利用は非常に多い。旭川側はもちろん、富良野側でもまとまった利用が見られる。
 ⑤ 美瑛を境にして、富良野側は旭川側の半分程度。
 ⑥ 富良野、ラベンダー畑があるので、定期外客も比較的多い。
 ⑦ 全線に渡って、通勤定期の発売も多い。通学定期は、大学が近い西御料、高校がある上富良野がらみの発売が多い。
 ⑧ 昨年度は収入3億6,200万円、支出13億8,000万円、支出が収入の4倍弱で、今回発表の11線区では一番小さくなった。ここでは施設の維持・修繕費用は2億8,500万円、支出全体の20%と高くはない。「輸送に直接必要な費用」が4億5,400万円、33%と高い。
 ⑨ 土木構造物の概況は、橋梁46ヶ所中18ヶ所が80年以上、一方で60年以上が27ヶ所あるが、何だろう。全線が開業100年以上経ち、ルート変更もないが(旭川付近で連続立体交差工事が行なわれたが、富良野線に関しては大規模なものではない)。トンネルはない。従って、大規模修繕・更新は今後20年で4億円と少ない。車両は12両で24億円。

 以上、本当に簡単ながら、各線区のデータを、私なりに分析してみました。
 当然、線区によってロケーションが違うから単純な比較はできないが、それでもある程度の共通項を強引にでも探すのならば、

1.20~21世紀の変わり目付近で減少傾向が強まる路線が多い
2.定期客の大半は通学
3.施設の維持・修繕費用がだいたい支出の40%以上

というのが上げられると思います。
 JR北海道は見直しの理由の一つに「施設の今後の修繕・更新費用が多大」を上げているが、廃止表明以外の8線区以外の合計は168億円になります。これがJR北海道にとってどの程度の負担になるのかは想像が難しいが、橋梁・トンネルで80~100年以上経つものが相当数あり、かなりかかるのは間違いない。乗客が多かろうと少なかろうと、安全を守ろうとするなら費用はケチれない。施設の問題は何もJR北海道に限らない事で、東急も現在、旧新玉川線区間の地下線のトラブルが関わる大規模な輸送障害が連続して発生し、問題になってきています(東急は今月中に調査結果を発表するとしている)。問題は、支出に対する収入があまりにも少ない事で、特に札沼線は支出が収入の25倍に上るのは、異常とさえ言えると思います。
 また、路線の大半は通学定期が収入の大半を支えていると思われるが、今後も少子化が進むのであれば、当然通学利用も減少するわけで、この点も懸念材料になるでしょう。

 30年前の特定地方交通線の論議の時、「線名によって画一的に判断されている」という批判がありました。
(例えば、砂川から分岐していた路線で、歌志内線は特定地方交通線に指定されたが、上砂川へ行く路線は函館本線の支線だったため、対象から除外された。1992(H4)年には廃止になるが)。
 しかし、今回データを眺めてみると、もし線名にこだわらず区間毎に厳密に精査したら、実はもっと早い時期に路線網が維持できなくなっていた事もはっきりしました。JRだから何とか持っていたとも言えます。普通の私鉄だったら、10~20年前には廃止になっていた路線がほとんどでしょう。
 ヨソ者があまりああだこうだとも言いがたいが、今回のデータを見ると、通勤・通学に観光の利用も多く、支出に対する収入の割合がまあある富良野線は維持、他の路線も、旭川・釧路・北見近辺の短区間なら何とかなるかも知れない。しかし、廃止表明3線、特に札沼線は、もはや鉄道として維持するのは無理だと言わざるを得ません。
 今後、このデータをたたき台にして、JRと沿線自治体、北海道の話し合いが続く事になります。沿線自治体の反発は強く、未だ全部の路線で結論が出ていないが、時間があまりないと思います。このまま引き延ばすと、JRも、自治体も、道も、共倒れに終わる危険があります。なんとかできるだけ早い内に、皆が納得できるような(…そうはならないのだろうけれど)結論が出される事が望まれます。まだまだ書き足りない事は多いけれど、私も今後も北海道の鉄道の行方には、注目していきます。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


 次回は岡山・高知・松山旅行に戻る予定。とさでん交通です。

 昨日、新幹線N700系で走行中に異音・異臭が発生して名古屋で運行を打ち切り、後に台車枠に亀裂が見つかったとの事で、事故調査委員会がインシデントとして調査を開始しました。新幹線では初だとのこと。台車枠の亀裂とは、正直かなりショックです。全新幹線に関わる事です。徹底的な調査を望みます。

《今日のニュースから》
10日 旧女川交番 「震災遺構」として保存 現地で説明会
11日 NYマンハッタンで爆弾テロ 4人負傷
12日 増税対象は年収850万円超 与党税制協議会で合意

この記事へのトラックバック