「私鉄名車列伝」、今回は江ノ島電鉄(江ノ電)の2000形です。1000形の後継車として、平成初の新造車両として製作されました。旧通産省グッドデザイン賞、藤沢市都市景観賞を受賞。
基本的な性能は江ノ電初のカルダン駆動車として製造された1000形4次車(1500形)に順じ、主電動機や制御器も共通。大きく変わったのは車体で、観光と通学の利用を考慮し、大幅にモデルチェンジしている。。海岸線走行を考慮して骨組や屋根板などにステンレスを多用した車体は、江ノ電における限界一杯の3,500㎜に拡大され、側窓高さも100㎜高くして、車内からの眺望を良くした。前面は上部を傾斜させて大型の1枚ガラスとなり、行先表示装置は窓下に配置した。ローマ字も併記し、藤沢行・鎌倉行では季節感のある絵入りとして、時期毎に異なる絵柄を表示させている。車内の天井高さも高校生の利用を考慮して限界一杯の2,200㎜となり、側扉も200㎜拡幅した。台車は1500形のものを基礎に、左右動ダンパーを取り付けて乗り心地の向上を図っている。屋根上のクーラーの本体もステンレス製で、江ノ電では唯一、下枠交差型のパンタグラフを搭載している。
車内は乗務員室寄りには前向きのシートを設置、運転士感覚を楽しめる展望席とした。連接部寄りには2-1配置のボックスシート、ドア間にはロングシートを配置している。袖仕切りに難燃木材の肘掛けを設け、側扉内側にも化粧板を貼って、柔らかいイメージを演出した。ドア上にはマップ式で沿線のイラストを描いた路駅表示器を設置している。
第1編成は1990(H2)年4月に営業運転を開始、以降第2編成が1991(H3)年、第3編成が1992(H4)年に導入され、非冷房の600形、300形を置き換えていった。第3編成では連接部クロスシートが1-1配置となって貫通路幅を確保した他、当初より密着連結器を装着、スカートを省略した。密着連結器はその後他編成にも及び、一時はスカートが省略されたが、後に復活している。全車輌東急車輌製。全面ラッピング広告で運用、特に大手飲食品メーカーの菓子の広告をまとう事が多かった。
(一番上の画像の後部編成がそうで、チョコレートのラッピング広告車でした)
製造から四半世紀が経過した2017(H29)年、第1編成の更新工事が実施された。車内では連接部のクロスシートがロングシート化された。また鎌倉方の展望席1席が車イススペースとなり、非常用ハシゴが設置された他、ドア横にはフリースペースが設けられている。座席の地は江ノ電のマスコットキャラ「えのんくん」をあしらった青地の柄ものとなり、スタンションポールも設けられている。ドア上には17.5インチのLCDを2面設置した。車内照明のLED化も行なわれている。
外観ではカラーが1000形更新車同様の緑+窓廻りクリームのツートンカラーとなり、正面の行先表示装置はフルカラーLEDタイプを上部に設置した。1000形更新車同様、イラストを表示できる。パンタグラフはシングルアーム化された。今後更新工事が他編成にいつ及ぶ事になるかが注目される。まもなく製造から30年が経とうとするが、しばらくは1000形などと共に主力車輌としての活躍が期待される。
他には見られない2000形の特徴の一つに、イラスト入り行先表示があります。藤沢行・鎌倉行では、季節によって異なるイラストを描いていました。
ここで全種類ご覧頂きます(雨の日の撮影で、イラストがはっきり見えない画像もあります。ゴメンナサイ)。同じ時期でも藤沢行と鎌倉行で異なる季節もあります。行先のフォントにも、イラストに合わせた変化がみられます。表示時期はあくまで推測。
「あけまして」(年末~新年)
「雪」(1月)
「すいせん」(2月)
「ひなまつり」(3月)
「さくら」(3~4月)
「ふじ」(4~5月 藤沢行)
「あやめ」(4~5月 鎌倉行)
「あじさい」(6月)
「ヨット」(7~8月)
「コスモス」(9月 藤沢行) 今日はこれでした。
「りんどう」(9月 鎌倉行)
「いちょう」(10~11月)
「クリスマス」(12月)
更新車輌(2001F)は、行先表示がフルカラーLEDになり、イラストも表示されるようになりました。8月に撮影した藤沢行で、ひまわり。
もう一種類、あさがお。ひまわりと交互に現れます。
今日撮ってきた鎌倉行。反射で見づらくなっているのはご勘弁。お月見で、ウサギも描かれています。
もう一種類、りんどう。お月見と交互に現れます。藤沢行はコスモス?
今日乗ってみたところ、2003Fは「カール」の広告ラッピングのまま運用されていました。2002Fは運用されておらず、極楽寺の車庫にも見えませんでした。ひょっとしたら更新に入ったのか?
最近の江ノ電の車輌デザインのテーマとして、「『古都鎌倉の奥ゆかしさ』を取るのか、『湘南海岸の明るさ』を取るのか」という事があったのではないか?と考えています。両極に位置すると言えるため難しい部分もあるが、1979(S54)年デビューの1000形はグリーン系のツートンになり、2000形も塗り分け方は異なるものの1000形をほぼ踏襲しています。これは、両者の折衷だったかも知れません。1500形はオレンジと赤の帯を巻いて、はっきり湘南海岸を意識したデザインだったのではなかったか。「サンライン」の愛称まで付いたのだし。しかし20形から始まり、500形、1000形更新車、そして2000形更新車がまとう、(旧)500形までのツートンカラーを彷彿させる現行のカラーは、明らかに鎌倉のイメージと感じます。バスがオレンジ系なので、バランスを取ったのかも知れません。「鎌倉か、湘南か」の選択は、今後も江ノ電のイメージ作りにおいて、重要なテーマとなるのでしょう。
今回の記事は、
「鉄道ピクトリアル1991年10月臨時増刊号 新車年鑑1991年版」「同1996年4月臨時増刊号 関東地方のローカル私鉄」(鉄道図書刊行会)
「日本の路面電車Ⅰ 現役路線編」「ローカル私鉄車両20年」(共にJTBキャンブックス)
「江ノ電沿線ブック101 江ノ電 車輌ガイド」(江ノ電沿線新聞社) などを参考にさせて頂きました。
次回はいすみ鉄道いすみ200形を予定しています。まもなくJR木原線から転換されて30年、その転換時に導入されたレールバス(当時はいすみ100形)で、現在は1両が予備車として残っています。
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《今日のニュースから》
22日 電通違法残業裁判 社長に罰金50万円求刑
23日 北方領土墓参 訪問団チャーター機出発
北方領土の墓参はこれまで船便が利用されていたが、高齢化する訪問団の負担軽減のため、今回初めて、根室中標津空港発着の航空チャーター便になったという事です。本来は6月の予定でした。オーロラ航空のDHC-8-Q400が使われたようで、6時過ぎに出発したが、今日のうちに帰ってくるそうだから、結構強行軍だと思う。
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