「私鉄の名車列伝」、今回は新京成電鉄8800形です。
デビューした1986(S61)年はVVVF制御の黎明期で、各鉄道でVVVF導入か否か模索が続いていました。一部では営業運転に就く車両もあったが、ほとんど全てが試作的な存在でした。そんな中で、都市近郊ながら一中小私鉄の新京成が、いきなり量産形式として導入し、注目されたのが8800形でした。
8800形は旧型電車の置き換えを目的として1986(S61)年より導入が進み、1991(H3)年までの6年間で96両が新造され、現在に至るまで新京成電鉄最大勢力として君臨している。
当時の新京成は輸送力増強の必要性が高まっていたが、8連はモハ200形・500形を中心とした吊り掛け駆動車で組成されており、体質改善が求められている状況だった。新車導入にあたり、8000形の8連を導入する案もあったが、当時の経営陣の決断により、1500V電車専用の長編成車両では初の、本格的なVVVF制御を採用する事になった。VVVF制御車は当時、1500V電化線区でも既に近鉄1250系(現1420系)などがデビューしていたが、いずれも試作的な短編成で、量産形式として長編成を製造したのは新京成が初めてだった。
4500V・2000A・GTOサイリスタのインバータ制御装置を各M車に1台装備し、1C4Mで135㎾の交流モーターの制御を行なう。補助電源装置などのシステム全体も、一気に交流化した。M車2両を1ユニットとして、4M4Tの8連組成とした。
当時はインバータ制御装置がまだ高価であり、全体のコスト抑制のため、車体は普通鋼製とした。8000形同様のブロック工法を採用し、腐食に強い構造になっている。前面は4面構成の大型ガラスをベースにした半流線型となり、側窓は新京成初の1段下降窓とした。塗色は8000形2次車で採用された、アイボリー+マルーン帯となり、前面には交流化のシンボルの赤帯が加えられている。台車も新京成初の空気バネを採用している。
車内は一般的なロングシートを配置。ベージュ+ワインの暖色系インテリアになっている。冷房装置は各車3台ずつの分散式で、連続キセで一体になるように見せている。天井はラインフロー併用の平天井構造。
車番は車種に関係なく、連番とした。第1編成が8801~8808、第2編成が8809~8816、となる。
1991(H3)までの間に8連×12編成が、日本車輌で製造された。当時は北総開発鉄道(現北総鉄道)と相互直通を行なっており、8800形は後に7編成が直通対応とされ、直通用の誘導無線アンテナを装備している(直通運転は1992(H4)年7月まで実施)。その後、T台車のユニットブレーキ化や、先頭車車内への車いすスペース設置などが行なわれている。先頭部には2002(H14)年より、スカートが設置された。
2006(H18)年12月10日改正で京成千葉線への直通運転が始まり、6連運用確保のため、3編成が6連×4編成に組み替えられた。在来の8連からM1及びT車各1両を抜きとって6連とし(「A編成」と呼称)、抜き取られた中間車合計6両は機器新設やT車の先頭車化改造を行なって6両編成を組成した(「B編成」と呼称)。「B編成で新設したパンタグラフは、シングルアーム式となった。その他機器類や先頭車車内の車いすスペースは、「A編成」とほぼ同様になっている。京成直通対応編成では、新規の誘導無線アンテナを設置、急行表示灯を前面に設置した。また帯色は白色帯を加えた、マルーンのグラデーションとしている。
6連化した編成は、車番を編成番号+号車表示の混合に変更した。第1編成が8801-1~8801-6、第2編成が8802-1~8802-6、となった。
後に輸送力調整の意味もあり、2014(H26)年までに全編成が6連(×16編成)に組み替えられた。うち8編成が京成直通対応になっている。
また同年より導入された新CIに対応し、「ジェントルピンク」+白のツートンカラー(ドア部は白1色)の新塗に順次塗り替えられる事になり、8月29日に8816Fが新京成全体の新塗装第1号編成として出場した。
2016(H28)年より機器更新工事が始まり、制御装置をフルSiC適用VVVFインバータ装置に変更、更新前との比較で約半分の省エネルギー化が図られた。2017(H29)年からは、車内のリニューアルも始まっている。今後、毎年度1編成ずつの更新が予定されており、長い活躍が期待される。
【編成】
←松戸方 京成津田沼方→
Tc1 8800 - M1 8800 - *M2 8800* - T2 8800 - T1 8800 - M1 8800 - *M2 8800* - Tc2 8800
(新造時)
Tc1 8800 - *M 8800* - T 8800 - M1 8800 - *M2 8800* - Tc2 8800
(6連化後)
* パンタグラフ
中小私鉄としては意欲的な8800形だったが、なら鉄道友の会の、少なくともローレル賞の受賞はありえなかったのか?対象は1987(S62)年となるが、この年のローレル賞は、北大阪急行8000系(「ポールスター」)及び近鉄7000系と、大阪市営地下鉄に直通するVVVF制御車が受賞していました。もう1形式が国鉄→JR四国のキハ185系で、3形式全てをVVVF制御の通勤車とするのも?と考えられた部分があったのだろうか。この年のVVVF制御車では一番早いデビューだった(1986(S61)年1月21日)が、技術的には優れていても、車内が通勤車としても受賞2形式と比べてやや簡素に映り、この点でソンをしたのかも知れません。デビューがあと1ヶ月早く、1985(S60)年内だったら対象が1986年となり、この年のローレル賞は東海道・山陽新幹線100系と南海10000系「サザン」の2形式だけだったので、プラスワンで受賞の可能性は大きかっただろうと思われます。
8816Fは今月1日より、船橋市のゆるキャラ「ふなっしー」をラッピングした、「ふなっしー号」として運行されています。運用は新京成電鉄公式Webで公表(京成千葉線にも入る)。
今回の記事は
「鉄道ピクトリアル 1996年6月号 【特集】新京成電鉄50年」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ピクトリアル 2007年7月臨時増刊号 鉄道車両名鑑2007年版」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ダイヤ情報 2011年6月号」(交通新聞社)
「とれいん 2014年2月号」(エリエィ プレス・アイゼンバーン))
などを参考にさせて頂きました。
次回は函館市電39号「箱館ハイカラ號」の予定です。先日もわずかな区間ながら乗りました。来年、渡道100周年を迎えます。
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JR北海道は昨日、新型電気式ディーゼルカーH100形(愛称「DECMO」(デクモ Diesel Electric Car with Motors)量産先行車の導入を発表しました。基本的には先日発表になったJR東日本のGV-E400系と同じで、これに北海道の気候に合わせた耐寒構造を加えます。来年2月には落成予定、その後走行試験で各種検証を行なう、としているので、本格的な量産車の製造はまだ当分先になりそう。ともあれ経営難で285系のように開発中止、なんて事も心配されたので、とりあえずはほっと一息、でしょうか?その量産車が製造できる状況になっているかはまた問題になるが、とにかくH100形がJR北海道の次代のスターになる事が大いに期待されます。
《今日のニュースから》
12日 電通違法残業事件 東京簡易裁判所 正式裁判決定
13日 性犯罪厳罰化 改正刑法施行 110年振り大幅見直し
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