№1605 JR北海道 ローカル線問題
JR北海道は昨日、全路線の内の半分以上に当たる13線区1,237㎞が、自力で維持する事は困難であると発表しました。既にメディアでチラホラ話が聞こえては来ていたが、昨日正式にリリースが出たものです。
全国規模のニュースになったから詳細は今更語る事はないが、これが(少なくともJR北海道としては)全部廃止になるとしたら、残存の営業キロが1,151㎞となって、JR九州・JR東海を下回り、JR四国に次いで2番目に小さい路線網となります。残存キロには北海道新幹線148.8㎞を含むため、在来線のみだと1,000㎞をわずかに上回るのみです。
「ローカル線」とは記したものの、「輸送密度200人以上2,000人未満の線区」には特急が走る路線も2路線あり、深刻さが伺えるようです。
JR北海道の場合、まず根本的に、恒常的な利用者となり得る沿線の乗客自体が、あまりにも少ないと思います。
参考までに多少乱暴だが、JR北海道の沿線の都市の人口上位10市、比較としてこのところ、株式上場などもあって何かと比較の対象になるJR九州の沿線の都市の人口上位10市を記してみました。
北海道最大の都市札幌市は、九州最大の都市福岡市よりも多い。しかし2位の旭川市からして、九州で7位の宮崎市よりも小さく、20万人を越える都市が函館市も含めて3市しかない。10位の室蘭市が10万人を切ってしまっています。
また、北海道の全自治体で一番少ない音威子府村は、人口が995人しかいない。全部は確認していないが、恐らくJRの特急が停車する自治体では、日本全体でも最小でしょう。
宗谷本線ではその他中川町1,907人、幌延町2,677人、豊富町4,378人、美深町5,178人、稚内市が39,595人と、名寄以北の沿線の人口が、特急が走る路線にしては極めて少ない。
石北本線では上川町4,532人、大空町(女満別)7,933人、美幌町21,575人、遠軽町22,265人(旧白滝町・丸瀬布村・生田原町を含む)、網走市40,998人で、見た目の数字だけなら宗谷本線よりも多い。しかし市町村合併で広域化した自治体が大半で(北見市も旧留辺蘂町を含む)ある事に注意しなければなりません。
今後の伸び代にしても、石北本線そのものが、特に上川~北見間で線形が良くなく、遠軽を経由するため大回りになる上、高規格道路の開通で高速バスの札幌~北見間は約5時間、〔オホーツク〕と30分程度しか違わない。〔オホーツク〕は現状では今後の所要時分短縮は望めず、さらに所要時分を短縮させようとするなら、一から新線を建設する位の莫大な投資が必要。
特急が走る路線でさえこうだから、他の路線は推して知るべしかと思います。
※ 人口の数値は全て、「日本☆地域番付」を参考にした。
また、函館本線(函館~小樽間)は、北海道新幹線開業(2030(H42)年度を見込んでいる)まではJR北海道で維持し、新幹線開業後に経営を分離するとしています。しかし、特に長万部~倶知安間は、恐らくは他のローカル線区と同等以下の輸送量しかないはずで、すんなり新鉄道会社に移管されるとは、とうてい思えません。
いろいろ読んでいくと、他の部分もあるが、設備面の維持に相当金が掛かるのが最大の問題であるように感じられます。大正時代に開業した当時のままの設備(鉄橋・トンネルなど)が多いし、福知山線事故以降必要とされる新型ATSも整備が必要になり、これにも莫大な投資が必要としているようです。
JR北海道では、「このままでは重大な経営危機に陥る」とする2019(H31)年をメドに、3年かけて沿線の自治体と話し合いとしているが、自治体の反発は大きくなるだろうとも見られています。JR北海道への不信も多少はあるのでしょう。今回の経営危機の発覚も、5年前の〔スーパーおおぞら〕発火に始まる一連の不祥事の露見の課程にあるので。ただ自治体の側も、だからといって大規模な反対運動を起こす体力があるのかどうか。30年前の旧国鉄特定地方交通線問題の時以上に、JRも、自治体も、急速にやせ細っているので。
北海道の高橋知事も、「徹底した管理コストの削減などの自助努力や、丁寧な説明責任が必要」とコメントしています。無論自治体の長の立場としては当然の発言だろうとは思います。ただ、「管理コスト」の削減と言っても、北海道に関してはやり尽くしているのではないか?やり過ぎると、それこそ残存路線の安全輸送に悪影響を与えるし、今後必要になると思われる投資も出来なくなる(例えば札幌都市圏の駅のホームドア設置、新千歳空港アクセスのインバウンド対策、など)。それは道にとってもプラスにはならないでしょう。
北海道に限らない話だが、結局「地方ローカル線の維持は誰が、どのような枠組みでやるべきか」という、何年も何十年もなされている議論に、再び陥っている気がします。今朝の朝日新聞でも特集されていたが、2000年度以降全国で750㎞以上の路線が廃止となり(この中には名鉄の支線区や、西鉄の旧宮地岳線が含まれていないので、実際は850~900㎞位だろう)、残存路線も維持には四苦八苦していると報じられています。
冷たい言い方になるかも知れないが、JR北海道に関しては、今回発表された路線の全部がJR北海道から離れるとは思っていないが、逆に全部の路線がJR北海道の路線として一転維持される事になるとも思えません。誰が費用を出すにしろ、極小の輸送量に対して維持コストがあまりにも莫大なので。沿線のロケーションにもよるが、
「鉄道という交通システムは、最低でも1時間に上下1本ずつ以上の列車が走る位の輸送量がないと、やっていけないのではないか」
と私は考えています。鉄道の特性は大量輸送にあるはずなので。バスと同程度の輸送力しかないディーゼルカーが一日数往復したら終わり、という路線は、鉄道としてはもう無理だろうと思います。残念ながら、今回JR北海道が示した路線のほとんどは、その程度のレベルにしかなりません。1日1往復で終わりの札沼線(浦臼~新十津川間)なんて、とっくに「終わっている」路線だと思います。
ともあれ、全国的に報道される程だから、JR北海道の路線網は相当深刻な状態にあると思われます。「(不祥事続きの)JR北海道だから」大々的に報道された面もあるかと思われるが、当然他のJR各社も、ひいては中小はもちろん、大手や準大手の私鉄にとっても人事ではありません。私が9月に乗ったJR西日本の芸備線や木次線も、区間によってはJR北海道ローカル線区と同等以下しか輸送量がないと思われる区間がありました。神戸市の中心部にに直結する神戸電鉄粟生線でさえ、存続の危機が叫ばれている位です。今後3年間のJR北海道の路線の動向は、全国の鉄道事業者や自治体関係者、私たち利用者なども、重大な関心を持って見ていくべき事項だろうと思います。
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小湊鐵道の22施設が昨日、国の有形文化財に登録されました。五井の機関庫、海士有木駅や上総鶴舞駅の本屋(駅舎)、月崎駅の旧ホーム、旧鶴舞発電所などです。当然これらの施設も老朽化が見られるはずで、どうやって維持していくかが課題となるでしょう。
《今日のニュースから》、
18日 フィリピン 故マルコス元大統領 英雄墓地に埋葬
19日 鳥取県三朝温泉 JR姫路駅で観光PR