№1410 日本の旅客機2015-2016(イカロス出版)

画像

 毎年恒例の「日本の旅客機」、2015-2016版が先月末発売になりました。このシリーズ、旅客機そのものが中心ではあるものの、日本の各キャリアの動静も記されるので、日本の民間航空そのものの年鑑としても読めるものになっていると思います。
 表紙は、今年はJALになったが、2年連続でB787-9になりました。

 今年は例年と構成が若干変わり、特集は前半のみ。

日本の旅客機 最新動向 世界にはばたけ!MRJ
 そろそろライン就航が見えてきたMRJ。一般の経済ニュースでもたびたび取り上げられるようになってきたが、ここで改めて開発の経緯、テクノロジーをおさらい。
 技術的な部分は門外漢なので軽く流すとして、注目したのがキャビンの断面比較。ボンバルディアCRjよりは広く、エンブラエルEジェットよりは若干狭いが、キャビンの幅はこの三者では最も広い。Eジェットは貨物室を床下に置いたダブルバブルに対して、MRJはキャビンの後方に置いた新円。
 つまりMRJは、この三者の中では、最も旅客輸送に重きを置いた仕様を目指しているのだと思います。一方速度がマッハ0.78で、他2者と比べて心持遅い。また必要な滑走路長は、STDタイプだと離陸・着陸とも1,500m以下。
 従って、MRJは「それほど長距離ではない地方路線を頻繁に飛ぶ」事に、ある程度特化した設計であるように伺えます。特にMRJ90はLRでも2,000㎞飛べないし。5年前、E170でヘルシンキ→パリを飛んだ事があるが、約1,892㎞(1,176マイル=東京~上海にほぼ等しい)ありました。このようなフライトは最初から想定していないのでしょう。
 すでに地上走行のシーンは何度か公開されました。しかし飛行機とは「飛んでナンボ」、電車ではないのだから、地上を走る姿をいくら見せても仕方がない。この号の刊行と同じ日に出されたリリースでは、初飛行は10月後半に小牧周辺で行うとありました(具体的な週は今月後半、日にちは前日発表との事)。既に6年遅れているので、この初飛行は、何とかリリース通りに行われる事が望まれます。と言って、失敗は絶対許されないので慎重な対応も必要だが。
 ところで、MRJはWi-Fi対応が可能なのでしょうか? 

日本の旅客機 最新動向 天草エアラインがATRを受領
 天草エアラインのDHC-8は6年前に乗った事があるし、また現行のカラーは2年前熊本で見たけれど、その後継機ATR42が受領になり、先日日本に来ました。カラーは「みぞか号」を引き継いでいるが、尾翼の「AMX」ロゴは「尾びれ」の中に納まりました。ここでは記されていないが、後部の下方に「くまモン」が描かれているそうです。
 パリショーでJACの発注も発表になり、想像図も掲載されているが、現行のネットワークからして関東地方で見られる可能性はほとんどなく、Saabと同じで意識してプランニングしないと、乗る機会は作れなさそう。
「40~50席程度のターボプロップ」がATR42しかなくなってしまった、というのはちょっと考えさせられました。この手の旅客機だと離着陸性能も厳しくなるから、リージョナルジェットへの置き換えが現実的でないケースが多い。日本に限った話ではなく、本当に需要はないのでしょうかね(特に小さな離島が多い国。インドネシアやギリシャなど)?今は良くても、数年後には困った事になる国・キャリアが多く出てくるような気がする。

日本の旅客機 最新動向 日本の空から消えた旅客機たち
 2015-2016版で姿を消したのは、SKYの330-300、SNAのB737-400、第一航空のアイランダーでした。カラー写真で取り上げられています。
 SKYのA330-300はこの年始に乗りました。№1301で書いたけれど、あの頃は確かにスッタモンダがあった頃ではあったが、ここまでの事態になるとは、正直思わなかった。座席にゆとりを持たせたキャビンは、個人的には悪い施策ではなかったと思っています。昨今はLCCの台頭の影響かキャビンが窮屈になる傾向があり、特にアメリカではこれが一因でトラブルが頻発しているとも聞いているので。
 SKYでラインに就航したA330-300は5機に終わり、特にJA330Fは登録2014(H26)年11月28日→抹消2015(H27)年3月24日だから4ヶ月にも満たず、日本のジェット旅客機としては最短記録になってしまいました。
(これまではJALのJA8109(B747-200B)で7ヶ月ちょっとだったが、ハイジャック後爆破されたもの)

『旅客機最新データ』
 JAL・ANAに関してはB787の導入が進んだ事があって、B777-200・B767-300のいずれもERの国内線転用が急速に進みました。特にB777-200ERは、国際線就航路線が急速に縮小し、両社合わせても北米メインランドはANAの羽田~LA路線のみ、欧州は完全になくなりました。
 JALのB777-200ERはパリ路線で2回乗った事があるけれどなあ。キャビン改修が中期経営計画でも示されているが、国際線は現在はホノルル路線が中心になっていて、「SKY SUIT」とは違う仕様になると思われます。
 ANAは国内線のB777-200が延命になるのか。という事は、B787-9国内線仕様は当分の間、大幅に増える事は無さそうです。
 J-AIRのE170・E190はWi-Fiは導入されないのか。でないと大阪の利用者は不満だと思う。技術的には不可能ではなく、エアカナダ等では始まっています。B777・B767・B737の「SKY NEXT」化完了時には導入が始まる事が期待されます。一方でANAの国内線Wi-Fi開始はいつになる?
 JACのDHC-8はまだ新鶴丸はないのか。鹿児島空港の訓練・展示用モックアップは新鶴丸なのだけれど。
 春秋航空のB737-800は数が増えません。ネットワークの拡大もなく、それどころかウインタースケジュールでは高松線が休止になります。会社自体、どういう方向に向かうのだろう。

〔2015-2016版で初登場の機種〕
 JAL B787-9
 第一航空 DHC-6-400
 ここへきてまたツインオターが見られるとは思わなかったが(と言っても沖縄へ行かないと)、就航直後早々に粟国で事故を起こしてしまいました。復帰はできるか。

『日本の旅客機 全航空会社全機種シートマップ』
 ANAのB777-300ERは、エコノミークラスが9アブレストと10アブレストが併用されていて、北米の一部路線では併用になっているようだが、どのようなオペレーションになっているのでしょうか。全部を10アブレストに変更する訳ではなさそうで、いずれは路線によって使い分けられるのか。
 なお、JALのB787は、B787-9の「E71」と、すぐ下B787-8の「E11」の座席数が逆になっていました。E71が195席、E11が161席。

『全登録記号リスト』
 ANAのB787は、-8・-9・-10関係なく、通しで付与される事になります。JA931Aまで予約登録されています。JA873A(-9)「R2-D2」は塗装が完了したと今日プレスリリースがあり、画像も公開されました。ヘッドレストカバー・紙コップも「R2-D2」仕様になるとの事。

 来年は、ADOのB737-500が全てなくなり、JTAもB737-800が日本に到着する事で、新旧交代が始まろうとしています。ANAのB737-500はもう少し飛ぶようだけれど(MRJ次第)、B737の第2世代はいよいよ全滅へのカウントダウンが始まろうとしています。
 気になるのは、SKY及びANAの機材の動向。先月、ANAHDが加わったSKY再建案が承認されたが、その過程でエアバスがらみのキナ臭い話も聞こえてきます。何か大きな動きが起きるのか?

 当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。

 鬼怒川・渋井川の堤防決壊による水害で亡くなられた方々、被害に遭われた方々には、改めてお悔みと、お見舞いを申し上げます。
 交通で一番酷いのが関東鉄道常総線で、今日から下妻~下館間で折返し運転は始まったものの、取手~下妻間は再開の見通しが立たず。肝心の水海道駅付近の被害が凄まじいようで、車両の被災も心配だし、再開は相当時間がかかりそう。東武も宇都宮線で鉄橋がやられてしまっては、少なくともシルバーウィークには間に合わない。日光線・鬼怒川線も、発表通りになるとしてもギリギリでしょう。この付近は観光に影響が出るのが一番問題なので、安全面を最優先しつつも、早期の再開が期待されます。
 北関東・東北の水害に気を取られている内に、阿蘇山でまた大規模な噴火があり、航空便に影響が出ました。箱根・大涌谷は一部規制が緩和されたそうだが、日本列島はこの所、川も山も、どこか怖いです。

《今日のニュースから》
12日 英労働党 新党首に左派ジェレミー・コービン氏選出
13日 西武 秋山翔吾選手 史上6人目の年間200本安打達成
14日 東芝を「特設注意市場銘柄」に指定 東京証券取引所発表

この記事へのトラックバック