№1257 バスジャパン・ハンドブックシリーズS85 九州産交バス

「バスジャパン・ハンドブックシリーズS85 九州産交バス」、当シリーズでは初登場です。九州では西鉄と並ぶ大手事業者であり、以前から期待していました。
 発売からやや時間が経ってしまったが、データ分析を中心に記してみます。

◆九州産交バスの車両たち

1. グループ3社を合計して、各用途の割合は乗合76.55%、高速12.00%、貸切11.45%。
 昨今では高速バスに積極的、のイメージもあるが、全体的にはまだ 乗合車が3/4を占めています。
 ただし、乗合には空港リムジンバスや、<快速あまくさ>などの長距離路線用のトップドア車(高速・貸切からの転用?)も少なくありません。

2. 全用途トータルのメーカー別割合は、いすゞが25.10%、日産ディーゼルが2005年10.90%、日野が46.21%、三菱ふそうは15.86%、トヨタと現代が共に0.97%となりました。
 日野の割合が多いのは、近年リエッセやポンチョの積極的な導入があるかと思います。リエッセが4形式で107台、ポンチョが2形式で24台、合計すると乗合車の中での割合が23.60%と1/4近く、日野車の中では39.10%と4割近くになりました。  

3. 平均年齢を、用途別に出してみました。
 乗合車は14.57年とやはり高め。特に大型車は2005(H17)年以降新車の導入が少なくなり、本州からを中心に中古の導入で経年車を置き換える傾向にあります。
 最高齢は1990(H2)年式の7台で全て産交バス配置。ただ、本体の九州産交バスの熊本〔営〕に1991(H3)年式が4台あります。
 営業所別の年式では、九州産交・木山16.65年、産交・熊本16.63年、産交・山鹿16.65年、産交・玉名16.46年、産交・木山16.20年が経年化しています。
 その一方、産交の牛深10.00年、水俣10.26年、八代10.43年、人吉10.80年と、地方都市の方が若い「逆転現象」が見られます。全体の台数が少ない所に、リエッセやポンチョ、ハイエース、ローザの新車を近年大量に導入している事がこの数字になっています。牛深は中古車両がなく、水俣・人吉も乗合は京王からのKC-RN2台ずつしかいません。
 高速車は9.60年、貸切車は11.92年でした。高速の最高齢は1995(H7)年、貸切は1990(H2)年式が阿蘇にいるが、乗合車からの転用車。

4. 営業所別の配置は、乗合車は当然産交・熊本が最も多くて乗合車全体の15.3%、熊本・松橋・大津・山鹿・木山への配置が(産交籍を含めて)288台あり、51.89%。当然熊本市を中心にしたエリアに集中して配置される傾向にあります。
 郊外は天草・玉名の配置が比較的多いが、天草は<快速あまくさ>などの運行もあり、玉名は荒尾市営バスの路線網を引き継いだ事があるでしょう。
 高速はほとんどが九州産交・熊本。産交・人吉は<ひとよし号>が7月一杯で廃止になってしまったため、現在は配置がなくなっていると思われます。
 貸切は観光・熊本が36台と当然最も多く、大牟田は5台のみ。九州産交・産交にも貸切車は分散して配置されているが、八代が9台と比較的多いのは新幹線対策?

5. 中古車は、全体では173台あって全体の23.86%、乗合車に限ると169台で、30.45%を占めています。
 登録番号から推測して、前述のように2005(H17)年より、中古車の大量導入に行われるようになりました。H.I.Sが産業再生機構から株式を譲受した年でもあり、コスト削減が強く求められたのだろうと考えられます。
 乗合車の譲渡元は33者、一番多いのは京浜急行バス26台で譲渡車両の割合の15.38%を占め、一大勢力になっています。
 他に目立つのは京王電鉄バスが16台で9.47%、神奈川中央交通が15台で8.88%、でしょうか。九州の事業者ながら、関東からの移籍が大半、113台が関東の16者から集まっています。関東は排ガス規制もあり、早めに取り替える傾向にあるからでしょうか。
 関東以外では、水間鉄道の7台が目を引きました。水間鉄道も2005(H17)年に経営破綻を経験、以降バス事業を急速に縮小している事で、適当な車両をまとまって入手できたのではないでしょうか。

6. ノンステップ車は62台あり、ノンステップ率は11.17%。
 一番高いのは九州産交・松橋(8台)で34.78%だが、次は意外にも産交・水俣で31.58%。乗合全19台中ポンチョが6台で、この数字になりました。同じく新車のポンチョの割合が多い八代(20.00%)、人吉(16.00%)も、地方としては高めです。
 九州産交本体では大津23.08%、山鹿22.86%、熊本15.29%だが、木山には今の所1台もありません。
 牛深・玉名・阿蘇も、現状ではノンステップ車はなし。
 ネオプランのノンステップ車は、在籍がなくなりました。産交レベルではまだそれほど経年化もしていなかったと思うが、外国車なのでメンテナンスなどで不利だったのでしょうか。一方で中古導入では7台ありました。
 今回は一部、画像がない形態の車両がありました。全県レベルの広範囲な事業者だし、「1タイプ1台」の車両が少なくなさそうなので、仕方がないか。

画像

◆ 九州産交バスのあゆみ
 戦前の前身には個人事業者もかなりいて、産交の母体となった事業者は、結局いくつに上るのだろう?
 熊本県は福岡県と違って「陸上交通事業調整法」の「調整を必要とする地域」には含まれず、あくまでその精神に則って事業者の統合が進められたが、鉄道会社の統合がなされなかったのは、既に鉄道会社だった福岡の九州電気軌道や九州鉄道と違って、鉄道を持っていなかったからか。
 産交グループで特徴的だったのは、トラック輸送の部門も大きかった事で、以前は関東地方でも、産交のマークを掲げたトラックを割と見かけたものでした。サイパン・グアムへの進出もあって、結構ワールドワイドな企業グループを目指していたのかなとも感じました。

◆ 九州産交バスの路線エリア
 熊本バス・熊本電気鉄道もあるから多少ムラもあるが、基本的には熊本県の全域をカバーしていると思われます。但し、一般路線で熊本県の外へ出て行く路線は、現状ではないようです。
 人吉エリアは、他と路線がつながっていない(多分、九州道開通の時点で切れたと思う)。「黒白」へのが廃止になってしまったと何度か記しているが、この図を見る限り、6月1日現在なのに、まだ残っている事になっています。
(4月1日で廃止、球磨村町営バスに移行している)
 高速バス<ひとよし号><さいかい号>もこの後廃止になりました。

◆ 終点の構図 南関上町
 元々はバス路線全体では終点ではなく、国鉄→JR九州バスの山鹿線が、山鹿温泉からここを経由し、福岡県に入って鹿児島本線の瀬高まで入っていました。私も27年前、国鉄時代最末期に乗った事があるが、残念ながら印象はあまり強くはなかったです。
 2006(H18)年春のJR撤退後に産交が引き継ぎ、一時は福岡県に入っていたが、わずか3年半後に県境を越える区間は廃止、完全にここが終点になっています。
(JTB時刻表では「南関ターミナル」が終点だが、その一つ先)
 廃止の理由について、福岡県みやま市のWebサイトが回答しています。利用者が少なすぎて補助金交付の要件を満たさなかった上、その利用者の大半は高齢者で、福祉バスによる代替が有効、という事のようです。県境を行き来する利用は少なかった、という事でしょう。

◆ 「あまくさ乗り放題きっぷ」の旅
 熊本県は広いし、どういうルートを取るのかなあと思っていたのだが、福岡を基点として、天草地方に特化した旅になりました。確かに天草だけでも相当広く、ていねいにたどろうと思えば2日は必要でしょう。
 崎津天主堂は、降りた事は無かったが、車窓から見た事はありました。27年前、国鉄バス山鹿線と同じ時期。天主堂もさることながら、路線バスなのにとんでもない山道を走っていたという印象があります。本渡~牛深には快速<うしお>も走っていました。懐かしいなあ。
「コレジヨ」とは宣教活動の一環なのだから、キリスト教がなかった所に造られる訳で、元々キリスト教が普及した所にはなかったのでしょうか?海外ではどうなのかな?今でも、性格は違っても「コレジヨ(オ)」を名乗る施設は各地に見られるようだが。
 ラストでAMXのDHC-8が出てきました。紀行で旅客機が出てくるのは、前身の「バス・ジャパン」から含めても初めてです。

 九州産交は遠い九州の地の事業者なので方向性は読みづらいが、熊本市内、近距離高速、観光に力を入れて行く事になるのか。
 熊本市内に関しては、熊本市が政令指定都市になった事でもあり、今一度新車(特にノンステップ車)の積極的導入にも力を入れて欲しいかなあ。インフラの問題もあるが、低公害車の導入も期待したい所。路線網は来年の熊本市営バス事業終了後、熊本都市バスとどのようにすみ分ける事になるか。都市バスは、しばらくは市営バスのネットワークをそのまま引き継いでいくだろうが、在来の民営事業者も絡めた再編成もありうるでしょうか。あとはICカードを入れるのかどうか。熊本市電が「nimoca」を入れたし、<ひのくに>も西鉄便では使用できるので、少なくとも九州産交本体は「nimoca」導入の可能性があるでしょう。
 高速バスは経営の柱、とはいってもここへきて一部の路線の廃止があるし、特に本州(名古屋・関西)へ行く夜行便はLCCとの競争が発生したので(一昨日から熊本にジェットスター・ジャパンが就航)、今後どこまで対応ができるでしょうか。<ひのくに>を中心とした、九州内高需要路線に力を入れて行く事になろうと思います。
 観光は、H.I.Sの傘下になった事、そのH.I.Sが旅行セールスの分野でANAとの提携を始めているので、ANAとの関係をさらに強化して観光客を呼び込む方向に行くのでしょうか。当然インバウンドの取り込み策も考えられるのでしょう。熊本空港乗り入れの国際線は現在、ソウル線(アシアナ)週3便のみ、なのだが。

 かつての主力、貸切格下げ改造車が見られなくなったのは残念も、代わって中古車の大量導入で、ファンの目には引き続き楽しい九州産交バス。それは、サービスレベルの点では微妙、という事でもあるのだが。魅力的な地方路線はまだ少なくないし、今後もレベルアップを図りつつ、引き続き私たちを楽しませてくれるでしょう。今後の九州産交に期待します。また、早いうちに熊本、行きたいな。

 次回は京王バス・西東京バスとなるが、その次の予告が今の所ありません。どこになるか。  

 当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
海上自衛隊・ロシア海軍 ウラジオストック沖で共同訓練

この記事へのトラックバック