№1070 鉄道ピクトリアル2013・12月臨時増刊号 【特集】西武鉄道(鉄道図書刊行会)

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 鉄道ピクトリアル誌の臨時増刊、西武鉄道特集号が先月発売になりました。
 少々遅くなってしまったが、ここで取り上げたいと思います。

 ピクトリアル誌の1社特集の臨時増刊は、年に1~2回は刊行されていたが、2011年4月の西鉄以来、2年半も間が空いてしまいました。
(大震災の影響もあったのかも知れない)
 しかも、本来は今年8月には刊行と予告はされていたが、かなり遅れての刊行になりました。
 間違いなく、春先のTOB騒動が影響していたはずです。
 だから、本当はもう少しその辺の話も突っ込んで聞きたかったのだが、全くといって良いほどありませんでした。
 経営に直接関わる事で、明かせない部分も多いだろうが。

 構成はこれまでの1社特集とだいたい同じで、前半に対談と関係者による鉄道事業を中心とした現況の報告。
 中盤には過去の研究と、マニア的な目線の研究記事、後半に現役を中心とした車両開設が据えられています。
 前回の西武特集は2002年4月臨時増刊号だったから11年8ヶ月振りだが、この間はトップの不祥事による引退という一大事もあり、何度か書いたけれど、世界的な大企業グループ→地域密着に軌道修正、という転換期をむかえています。
(大企業グループである事自体は今も変わらないが)

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 その意味では、「グループビジョン」制定と同時に作られたシンボルマークやロゴについて、冒頭の総説で一言も触れられていなかったのは気になりました。
 
 対談や、いくつかの記事を眺めて感じたのは、新宿線の今後の方向性をどう位置づけるのか、若干対応に苦慮しているのではないかという事。
 無論新宿線も池袋線と並ぶ西武の2大幹線ではあるが、池袋線とJR中央本線にはさまれて輸送量は(以前からそうだが)少ない。
 以前は高速輸送志向で快速急行や拝島快速が設定されていたが、去年6月の改正で廃止になり、(特急を除けば)急行:各停が1:1というダイヤになっています。
 解りやすいといえば解りやすいが、新宿口では減便になっています。
(山手線に接続する大手私鉄の本線クラスでは、日中は京成本線に次いで少なくなった)
「拝島線に特急を」の話は、拝島自体が所沢や飯能・川越と比べても吸引力がなく、恒常的な運転は苦しいのではないか。
 何かやるなら東武「TJライナー」的な列車、あるいは名鉄・南海のような一般席併結とするか、どちらかでしょう。
(それより先に、玉川上水~拝島で全体的な輸送量を引き上げる事が先になるだろう。完全10分間隔運転を実現させたい)
 当面はバスとの連携が、確かに現実的ではあるだろう。ただ、新井薬師・沼袋付近は地下線化されるそうだが、全体的に踏切が多いので、もっと立体化を進めないと、定時性を確保できなくて利用を定着できないかも知れない。

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 池袋線の方は、先日石神井公園~大泉学園が下り線に切り替わって、工事も大詰めを迎えているよう。
 複々線化は、本当は所沢まで、少なくとも保谷まで計画できれば良かったと思う。
 駅別乗降人員の表があるが、これを読めば、複々線が終わる石神井公園より先の各駅のほうが、乗降人員が多いので。次の大泉学園は82,786人で、池袋線では池袋・所沢・練馬に次いで4番目に多いし。
 しかし立体化に関しては高架化にしろ地下化にしろ、一長一短あるのは事実で、新宿線の地下化は、工事の負担は高架化に比べて大きいが、地価が高いので用地買収費まで含めれば大差ないと聞いて、なるほどな、とも思いました。
 東村山は高架化で行くそうだが、2面4線にまとめてしまうと、新宿線の本数が多いからダイヤ編成がタイトにならないか?
 たぶん国分寺線は、西武園線とほぼ一体での運行になるのだと思う。

 柔らかい所ではアニメとのタイアップがあり(都内の沿線にアニメ製作スタジオが集中している事がある)、3011F「銀河鉄道999」やマナーキャンペーンの「ケロロ軍曹」、ラッピング車が走り、「聖地巡礼ブーム」もあって話題になった「あの花」等がありました。

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 ただ、上井草駅下り駅舎前にブロンズ像が建ち、発車のメロディが「ファースト」主題歌になっている「ガンダム」(アニメを製作した「サンライズ」が近い)とか、沿線のハイキングのCMとタイアップ(30000系や6000系の車内液晶画面にも現れる)している「ヤマノススメ」がなかったのは、どうしてだろう?

 過去の研究記事では、吾野砕石と貨物輸送が興味深く読めました。
 よくよく考えれば、飯能からわざわざスイッチバックまでして、吾野という(当時としては)中途半端な駅までが池袋線と称するのは何故だろう?と疑問ではあるのだが、「吾野で産出されるセメントの輸送を当てにした、地元素封家(金持ち)の杜撰な起業計画」の結果だと、輸送列車に使用された貨車の紹介やその背景にまで踏み込んで、解り易く … 経済が絡むから難しい単語もあるが … 読めると思います。
 他にも貨物輸送に関する記事があり、西武(及び前身の各鉄道)は、東武と並んで貨物輸送が極めて盛んだったと実感させられます。

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 車両面では、西武101・301系の足跡が、地元の方の執筆になるものだろうが、さすがに詳しい。
 私も№661で書いてみたけれど、比べものにならないです。
 多少マニアックな所では車両の居場所の記事があり、夜間、どの位の車両がどこに留置されているかが、表も交えて細かく記されていました。
 3月16日以降、6000系は夜間、他社線内では元住吉(東急)・新木場・和光市(メトロ)に1本ずつ。
 逆に他社の車両は、武蔵丘にメトロと東急(共に10連)が1本ずつ、清瀬に東急(8連でみなとみらい車になる事も)が1本いるそうです。
 池袋で日中に留置があるのは、大手私鉄のターミナル駅としては異例で、通勤車では知る限りここだけ。
(あとは上本町・阿部野橋の近鉄特急車位か?)
 西武車両 -音と色ーの記事もあるが、特に6000系の電子笛の音色を東横線で聞くと、5050系などとは明らかに違って独特だと強く感じます。
「色」といえば、4000系・8500系の「ライオンズカラー」は、今後もこのまま、なのだろうか?
 肝心のライオンズが「レジェンドブルー」に移行して久しく、「L-Train」もあるし、高速バスにも広がりつつあるので。

 今後の西武の方向性。
 車両では、30000系の新製投入が終了した後、次は6000系、特に池袋線の編成をどうするか、が喫緊の課題となろうか。
 2次車の製造から今年でちょうど20年、地下鉄・東急直通対応改造は行われていても、基本的な部分は変わっていない。2000系のような更新工事で対応するのか、または新系列の投入がありうるのか。
 3011F「L-Train」は今月引退と発表があったが、6000系で2代目をやったらいいと思う。ベイスターズ・ラッピングのみなとみらい線Y500系が入っているので、特に交流戦では盛り上がるでしょう。
 4000系は当分使うとの事だが、4両固定編成では使いづらくなっているかもしれない。とはいえこちらも更新を行った上で、今一度秩父鉄道直通の増発等、秩父の観光の活性化に貢献できれば、と思います。
 他の通勤車は運転形態にも関わるが、当面は更新工事を進めつつ、現状維持が続くのではないかと思われます。
 ダイヤ面では、ラッシュ時の「千鳥ダイヤ」はともかく、日中に関しては、もう少し都市間高速輸送に力を入れても良いと思う。
 特に池袋線では、対所沢では急行の本数が少ないし、間隔が不統一。副都心線からの快速急行があるとしても、急行だけで均一の10~15分間隔運転が実現されてしかるべきではないかと考えます。
 中間駅の利用者も非常に多いからバランスを取るのは難しいかもしれないが。
 あとは繰り返しになるが、秩父輸送の活性化。せっかくCMもやっている(初めてとは知らなかった)事でもあるし、4000系の他、土休日くらいは新宿線からの直通レッドアロー<おくちちぶ>の復活も期待したい所です。

 ともあれ色々な面で他の鉄道とは特異な歴史を歩んできた西武鉄道だが、今後は東横線・みなとみらい線直通開始を機に、鉄道業界の内でも外でも、他者との連携を密にして、互いに発展していく事が期待されます。

 臨時増刊号は、今後はまた、ある程度定期的に刊行されるのでしょうか。
 だとしたら、どちらも前回から15年以上経ち、しかもこの間に輸送形態で大きな変化があった、京急や阪神あたりの刊行を、今度こそ期待したいと思っています。

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《今日見た・聞いた・思った事》
「やらないのか」と思っていた、東急東横線⇔メトロ副都心線⇔西武池袋線・東武東上線の元旦の臨時列車の運転が、今日発表になりました。
 横浜と、飯能市の天覧山からの初日の出見物をメインに据えたダイヤで、森林公園及び小手指発元町・中華街行、元町・中華街発飯能行各1本の設定があります。

<みなと横浜初日の出号>
森林公園3:52 → 5:54元町・中華街 東上線内普通・メトロ~東横~みなとみらい線内急行
(武蔵小杉からは定期051051列車) 東急5050系10連

<みなと横浜初日の出号>
小手指3:58 → 5:27元町・中華街 西武線内準急・メトロ線内急行・東横~みなとみらい線内特急
メトロ10000系
練馬で接続する保谷4時14分発池袋行各駅停車も運転

<サンライズ ヒカリエ号>
元町・中華街3:59 → 5:43飯能 みなとみらい~東横線内特急・メトロ線内急行・西武線内準急
東急5050系 「Shibuya Hikarie」を予定
練馬で接続する池袋4時45分発石神井公園行各駅停車も運転

 マニアックな目線では、森林公園始発列車に東急5050系が入るのが注目されるが、真夜中だから被写体にはなりづらいか。
 西武側が多少力を入れているようにも見えるが、上にも書いたばかりだが、相直ネットワークも活かして鉄道業の活性化が図られる事が望まれます。
 この設定が今後も定着できるように…。

《今日のニュースから》
リニア新幹線「磁界」測定 JR東海が初公開

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