№1087 バスラマインターナショナル141(ぽると出版)

「バスラマインターナショナル140」が、今月末発売になりました。
 今回は、特に2つの記事に注目して記してみます。
 
★バス事業者訪問 169 丹後海陸交通
 京都府の一番北部をエリアにしている事業者で、正直馴染みがない(撮影もしていないので画像がありません)のだが、かなり画期的な運賃制度を導入しているとの事でした。
 行政(特に京丹後市)と協調して7年前から始まっている「上限200円運賃」は、10月から丹後地域一円に広がり、路線によっては大幅に利用者を増やしているという事。
 確かに1250円→200円の値下げとは、それも(補助が残っているとはいえ)純民営バス事業者で実現したとは、正直かなりビックリさせられました。
 通学費の問題は確かに地方では大変そうで、かつて国鉄特定地方交通線が転換される際(丹海バスが接続する北近畿タンゴ鉄道も、国鉄宮津線だった)も、最大の課題は通学にかかる費用の高騰でした。第3セクター鉄道移管だろうがバス転換だろうが、数年は補助が出たものの、いずれ上がる事になっていたので。この辺、大都市で暮らしているとなかなか解らない地方の人々の苦しさだと思います。
 グラフを見ると、1990(H2)年は112万4000人だった輸送人員が、ご多分に漏れず右肩下がりになっていたのが(特に2000(H12)~2001(H13)年の落ち込みが際立つが、何があったのだろうか。路線の廃止だろうか)、2005(H17)年の55万7000人を底として、「上限200円運賃」を始めて以降、2009(H21)年からは70万人台強を、安定してキープできています。
「上限200円運賃」の前にも一度運賃を値下げしてやや回復したが、この時はまた落ち込んだという事で、単純な運賃値下げ程度では効果は限定的、そこで、行政との綿密な連携による営業政策が必要、となるのでしょう。
 こうなると他の地域でもできないの?となるだろうし、丹海バスや京丹後市自身、もっと全国的に政策をアピールできないのか、とも感じました。
 ただ、ほとんど記されていなかったが、一方で運行コスト負担は大丈夫なのだろうか?とも思いました。運賃が大幅に安くてもその分乗客が増えてくれて、収支がトントンならOKだろうが、特に昨今の円安で燃料代が高騰しているのは懸念ではないかと。それと、来年の消費税率引き上げは、運賃に影響を与えないだろうか?単純な転嫁だと210円程度になるが、そうするのか、転嫁しないならどうやってアップ分を吸収するのか、この辺はもう少し突っ込んで知りたかった所です。
(今日現在では、公式Webサイトには、その辺については記されていない)
 この施策により「第17回バスラマ賞」を受賞した事は、公式Webサイトにも記されていました。
 それでもなお、病院の通院はマイカーが多いらしく、簡単ではないなとも改めて思います。
 別に京丹後市の担当者の話もあったが、「『乗って守ろう』は通用しない」の意見は全く同感。少なくとも、「公共性」とか「環境」とかの単語を並べて情に訴えるだけでは、もはや公共交通機関は守れないのは、とっくの昔に明らかな事。「200円運賃」は多少極端とはしても、利用者を惹き付けるための現実的な努力を、行政も事業者も(公営だろうが民営だろうが)、労も使も、たゆまず積み重ねていく必要があるでしょう。
 この丹海⇔京丹後市のように、官民共同で運賃制度も含めた改善策が練られるのが理想で、最近目立つ、エキセントリックな首長の発言・行動に左右されたりするのは、間違いなく良くない。

★バスの導入がメッスの町を変えた
 もう一つ、フランス北東部・メッスのBRT(Bus Rapid Traisit)(METTIS)の記事も目を惹きました。
 メッスは3年前に訪れた事があり … TGVとローカル列車の乗り継ぎの間の僅かな時間だけだが … №375で書いています。「公共交通の主力はバスで、LRTはないようだ」と記しました。あの時点では、METTISは整備が手について間もない頃だった事になります。
 この記事の結論は、末尾の「公共交通は都市のインフラ、妥当な予算から適切な手段を選ぶ。そのコンセプトが日本にはない」という所に落ち着くのだと思う。
 ここではその観点から別の目線、LRT(Light Rail Transit)との比較で考えてみたいが、当ブログをスタートさせて以降、過去2回フランスを訪れていて、パリ・ミュールーズ・リヨン・グルノーブル・ルーアン・ボルドーとLRTに乗り歩いた事は記しました。LRT推進派が記す他誌の記事にもフランス各地のLRTがふんだんに紹介されていて、LRTこそ都市交通の主役として認められるべきだ、という論調に落ち着いていたように思います。ストラスブールはあまりにも有名だし。
 しかしメッスの場合、整備費用がBRTの4100万ユーロ(約59億4500万円)に対し、LRT(この記事、というよりバスラマ誌では「トラム」と呼んでいる)は15億3500万ユーロ(約2225億7500万円)と、37倍もすると計算されたそう。
 いかに地下鉄よりは大幅に安くても、対バスでは大幅に高くなるとしたら、この数字を聞いただけでは、LRT整備に尻込みしてしまう都市もあるのではないでしょうか。
 それこそ町の規模やロケーションによって良し悪しが出てくるのだが(それを理解する意味でも、簡単でもメッスの路線図の記載が欲しかった)、この点、LRT推進論者は単にLRTの良さだけを宣伝するのではなく、「同じ専用走行路を、同程度の輸送力を持つ車両が走るのに、なぜ軌道系のLRTなのか。BRTではダメなのか」という事を、そろそろはっきり説明する事が必要だと思います。金だけではなく、軌道系だとさらに都市の交通や生活に多大な影響を与える事になるのだから。
 バンホール製の3連接車両は、METTIS専用に開発されたのだろうか。日本のバス車両の改善についても、どこか有力な事業者(日本だと東京都あたり?)がハッパをかけてメーカーに新規開発を促し、そこで導入された車両が全国的なスタンダードになる、という方向性もありうるかと思います。
「信用乗車制度」は、日本では無理だと思う。全くの私見だが、市民の意識の根底に「悪さをしても、イエス・キリストが御覧になっていますよ」的な宗教的思想がある(…最近はそうでもないか?)欧米流の考え方を、ストレートに日本に導入しようとしても良い結果は出ないだろう。ローカル線の駅で、駅員がいるのに、ホームの柵を飛び越えて運賃をちょろまかす学生の姿を見た事がある私としては、特にそう感じざるを得ない。加えて突発的な車内改札は、日本でやって、仮に有効な乗車券類の所持が認められなくても、問答無用で即罰金!と言えるだろうか?対応を誤ると重大なトラブルを招き、システム全体のイメージダウンにつながる危険がある。むしろICカードの普及の促進や、ある程度乗降や発着が多い停留所では、地上側に改札装置や人員を配置する方が現実的だろうと思います。根本的には、それこそ走行環境そのものの改善でしょう。

★各地の復刻塗装車から
 レギュラーコーナーになるのか?
 JRバス関東は、国鉄高速色については運行路線が追加になり、東京~河口湖線、新宿~会津若松線でも運行されているそう。
 会津若松線は先日撮る機会を作れたが、日野セレガ(2007(H19)年式PKG-RU1ESAA)で、フロントは動輪ではなく、JNRマークになっていました。動輪でもJNRマークでも、プリントではなく、ブロンズで復刻して欲しかった。「あれ、ブルーはあんなに明るかったっけ?」というのが第一印象。
「赤いつばめ」はまたマニアックな選択だなあ。
 国際興業の9501号車は、江ノ電バス。前は川口の方で走っていました。

 先日ロンドンで乗った「Wright NBfL(ポリスマスター)」が、香港を走ったのですか。
 香港もロンドンも最近行って、バスにも乗ってきたけれど、クラシックな建築が多いロンドンに対して、香港はギンギラの高層ビルが林立したり、一方で純中国的な建築がほとんどだから、ボディの形態が街並みにはマッチしないかも知れない。
 
 次号の事業者訪問は日立電鉄交通サービスで、ここも最近鉄道廃線跡を活用した「BRT」がスタートしているから、どのような利用があるかは注目されます。
 
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《今日のニュースから》
山形新幹線 高畠町で車と衝突 ドライバー死亡

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