№861 バスジャパン・ハンドブックシリーズR79 函館バス(星雲社)
「バスジャパン・ハンドブックシリーズR」29冊目は、引き続き北海道の函館バス。
前身の「バスジャパン」を含めても、初めて取り上げられる事になります。
◆ 追分ソーランバス紀行
函館の観光名所は「函館山」と「朝市」だと思うのですが、それどころか空港から函館駅さえスルーして江差へ向かっています。
北海道の観光地はどこも本州とは一味もフタ味も違う、本州から見ればどこか異国情緒さえ感じる場所が多いと思いますが、函館は早くから本州との結びつきが強かったからか、純日本的な名所が目立つと思います。
函館~江差線は遠い昔に乗った事がある事は本体でも記しているのですが、「追分ソーランライン」という名前は、あったかなあ。
高速バスなし、一般路線ばかりで長距離を乗り継いでいくというスタイルは初めてかも知れない。
こういうバス旅もいつかはしてみたいものです…(っていつも書いているよな)。
◆ 終点の構図 船見町
もっと遠くが選ばれるかと思いましたが、函館市内・旧函館市営バスの終点です。
昭和営業所からの1系統の終点ですが、バスの行先は一つ手前の「高龍寺前」としているようです。
極めて乱暴で不謹慎な比較ながら、「従軍慰安婦」の5文字を思い出してしまった。
◆ 函館バスの路線エリア
ほぼ渡島半島全域に路線を広げているが、路線図から見るだけでは、長距離の幹線が主要な集落をダイレクトに結んでいるだけで、地域のコミュニティな路線は少なさそう。
なので函館市だけを別に切り取って記しています。
最北は長万部ターミナルと、せたな町の上三本杉と思われます。
鹿部と沼尻の間のルートが切れていて、あれ?函館~長万部間の路線がなかったっけと思いましたが、七飯~大沼~森間で国道5号線をダイレクトに結んでいて、大沼~森間が抜け落ちているようです。
◆ 函館バスのあゆみ
函館バスそのものだけでなく、函館市営バスについても前身の事業者を中心に関連付けをしながら記しています。
戦前はご多分に漏れず事業者が乱立して理解が難しい部分もあるのだけれど、全体的には戦前も、戦後も、最近も、鉄道が直接的にも間接的にも歴史に絡んできます。
函館バス自体は終始バス専業ですが、前身には小規模な私鉄が2社あり、大沼電鉄の鹿部駅は瀟洒な駅舎が置かれていたようですが、どんな車両が走っていたのかは、もはや知るすべはないようです。
1950~60年代は、全国的に労働争議が経営を危うくするケースが少なくなく、函館バスも例外ではなかったのですね。
これを機に東急が資本参加…というのも、例えば国際興業が入った岩手県交通に似ています。
一時は奥尻島も走っていたのですか。
最近では松前線・瀬棚線のバス転換も影響を与えていますが、もう20年以上も経ってしまいました。
◆ 車両の現況
1. 高速バスがない(函館には高速道路自体がない)ので一般乗合(路線)と貸切(エイチ・ビーを含む)のみですが、一般路線には長距離仕様及び長距離カラー(東急マーキュリーカラー)が相当数存在し、17.11%の路線車が長距離中心で運用されているようです。
函館・昭和・日吉の函館市内3営業所だけで76.43%。
全体の3/4以上が配置され、函館市一極集中になっている事が伺えます。
2. 路線車は、平均車齢が11.63年と出ました。
1959(S34)年製のボンネットバスを含めての数字で、前号のJHBが12.31年、首都圏の茨城交通でさえ17.72年だったから、地方バス会社としてはかなり若いといえます。
最古参はボンネットを除くと1988(S63)年式。
一番多いのが1995(H7)年式で、53台あって全体の20.15%あります。
ただしその内自社発注は7台のみ。
元東急バスが31台で1995年式の58%以上を占め、元京急バスも9台・16.98%になるのが目を惹きます。
3. 路線車全体では38.78%が他社からの譲渡車両。
元函館市営バスはもう4台しかなく、最古参は1995(H7)年。
2003(H15)年の完全譲渡まで8年ありましたが、その間に市営バスには車両の投入はなかったのでしょうか。
譲渡元は函館市営も含めて16社局ですが、全体でも東急バス(トランセ含む)28.14%と、1/4以上を占めています。
登録番号から読むと、東急グループから離れた2004(H16)年以降の方、特に2007(H19)~2008(H20)にかけてが、元東急バスからの譲渡が多いのが目に付きます。
東急バスの使用12年で移籍、という流れか。
グループの絆は切れても、中古車両導入のルートがしっかり確立している、という事でしょうか。
一方で自社導入も並行して行われ、中古も含めてバランス良く車両の購入・更新を行っているようです。
新車導入は当然函館市内が中心ながら、2009(H21)年の北桧山〔出〕への8台もの集中投入が注目されます。
4. ノンステップ化は42.59%、地方の事業者としては驚異的な数字といっても良いと思います。
特に2001(H13)年以降の自社購入車両は、長距離路線用を除いて全車両。
エアロスター・エコハイブリッドは、当ハンドブックシリーズでは初登場です。
今後の函館バスを大きく変える要素は間違いなく、2015(H27)年予定の北海道新幹線新函館開業。
といって高速バスの設定はなさそうだから、新函館・木古内を拠点として、日本海側各都市への長距離路線の強化が図られる事になるでしょう。
関連して江差線・木古内~江差間は廃線が確定的となったが、代替バスはどのような姿となるか。
比較的大規模ながら地味な印象もある函館バスですが、車両面の質は高いし、函館市内も郊外も観光資源も豊富だから、JR(新幹線も在来線)や第3セクター鉄道(五稜郭~木古内間)、航空・市電などと連携を図りつつ、地域密着の事業者として発展する事が期待されます。
相当数が代替時期を迎えそうな長距離路線用車両は、どういう方向に向かうのか。
次回刊は首都圏に戻って、関東バスと予告されています。
そういえば、東京都内の大手事業者では、「バスジャパン」時代を含めてもここだけ取り上げられた事がありません。
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《今日見た・聞いた・思った事》
今朝フランスのニュースをBSで見ていたら、中国・北京~広州間の高速鉄道が今日開業するというニュースがありました。
全長約2,300㎞で世界最長、新青森~鹿児島中央間よりも長く、所要8時間。
これで中国の高速鉄道は総延長9,300㎞になり、フランスやドイツ・日本などをあっという間に抜いて世界ナンバーワンの高速鉄道網を保有する事になります。
中国の高速鉄道というと、昨年の追突事故や、その後始末が問題になりましたが、ここでは触れられていませんでした。
しかし安全面はとりあえず置くとしても、高速列車でも8時間とは、車内はとても快適な造りとは言っていますが、やはりきついかもなあ。
アテンダントは乗務するらしいですが、食堂車はなさそうです。
2等車の片道は105ユーロ(約12,000円程度?)だそうで、日本の感覚では激安ですが、これでも中国国民の大半(農民や工場労働者の平均月収が360ユーロ)にとっては法外な運賃とか。
航空との競争という点でも少々見劣りしそうで、さすがに全区間利用という乗客は多くないだろうとも思います。
数年後にはさらに香港・西九龍駅にも乗り入れる事になるのでしょう。
フランスからはもう一本、外科医のストレス管理の研修として、「医師2名が旅客機のコクピットのシミュレーターを操作する」というプログラムがあるそうです。
(もちろんプロのパイロットもいる)
緊張する場面で「対話を続ける」(コミュニケーション)重要性を自覚させる訓練だとか。
「ストレスが多くてもコミュニケーションがあれば、事故は減らせるものだと知った」とは麻酔医の話。
この航空機の方法論は、既に外科手術でも取り入れられているそう。
パイロットが「チーム」として行っている方法を取り入れてもいいだろう、という専門家の談話もありました。
《今日のニュースから》
第2次安倍内閣発足 国土交通省に太田昭宏元公明党代表
今更何も言いません。とにかく全ての面において、穏やかに事を進めて欲しいです。
「第○次」という言い方は、途中別の政権をはさんでも通算するものですね。
何しろ戦後すぐの吉田茂内閣以来のケースだそうで、初めて見るものだから。