№794 バスジャパン・ハンドブックシリーズR78 ジェイ・アール北海道バス(星雲社)

画像

「バスジャパン・ハンドブックシリーズR」の28冊目は、初めて本州を離れてジェイ・アール北海道バス(JHB)。
 1987(S62)年、国鉄の分割・民営化によって生まれた北海道旅客鉄道(JR北海道)のバス部門が、2000(H12)年4月1日に分社・独立したものです。
 JR北海道時代の1996(H8)年に「バスジャパン・ハンドブックシリーズ8」で取り上げられていますから、16年ぶりになります(以降「16年前」とします)。 

◆ ジェイ・アール北海道バスでめぐる 北のミュージアム
 16年前の巻頭の紀行はレイルウェイ・ライター種村直樹氏による、小樽→名寄の乗り継ぎでした。
 石狩沼田~深川以外は全区間、JRバスの一般路線がつながっていました。
 今回の乗り継ぎも同じ小樽駅からの出発ですが、今回は札幌から高速バスで一気に広尾へ、日勝線で様似まで、各地の小博物館を巡りながらという旅になっています。
 小樽駅の佇まいは16年前も今もまるで変わっていません。
 北海道新幹線・新函館~札幌が先頃着工しましたが、小樽は新しく「新小樽」駅に発着する計画なので、改修工事も行われた様だし、いつまでも優雅な姿を見せてくれるでしょう。
(まあ開業は20数年後だし)
 それにしても最後の日勝線はまだしも、小樽→宮の沢の札樽線ローカル便も、高速バスと共用のガーラとは少々驚きでした。
 16年前は札幌直通の快速ながら一般路線車だったのに。 

◆ 終点の構図 開拓の村
 少々意外な選択でした。もう少しローカル色が濃い場所になるかと思いましたが。
 前述の紀行でもここを加えても良かったかなと思いましたが、ルートから外れるし、全部見て回るには少々時間を必要とする場所でありますから。
「鉄」的な要素では馬車軌道があります。
 
◆ ジェイ・アール北海道バスの路線エリア
 もうエリアとは呼べなくなって、札幌周辺以外では深名線と日勝線だけになってしまいました。
 だからか、札幌周辺だけ切り出して拡大しています。
 恵庭市は今はコミュニティバス受託のみで路線の記載がありませんが、かつては一般路線の乗り入れもありました。

◆ ジェイ・アール北海道バスのあゆみ
 北海道の国鉄バスの始まりは1934(S9)年の札樽線ですが、もう民営化から四半世紀も経っていますから、国鉄バス時代はそれ程詳細には記されていません。
 16年前以降では、もちろんバス分社→JHB発足が最大の出来事ですが、他の出来事としては、
1.十勝線・釧根線・石狩本線などの廃止により、帯広・厚岸・岩見沢・滝川の各営業所が廃止
2.一方で札幌市営バス移譲により琴似〔営〕の新設
3.貸切部門は縮小し、函館〔営〕も廃止
4.札幌市内路線は低公害車の導入や、女性専用車の運行
5.コンサドーレ・ファイタースの輸送の契約(観客輸送も実施)
などが挙げられるでしょうか。
 初代ファイタース号の「Fighters」のロゴは、札幌移転前(東京ドーム時代)のものですね。
 コンサドーレ号、ファイタース号は通常の貸切営業にも運用されているようで、先日一般の貸切運用のコンサドーレ号を見かけました。
(後日書きます)
 一般路線、特に札幌市内路線は、もはや「○○線」「△△線」という言い方は実態に合わないかと思います。
「日本一周バス」は今復活させるとしたら、やはりハイグレード車両(西武バスの「レグルス」みたいな)の導入が必要になるかと思われます。

◆ 車両の現況
 16年前のJR北海道時代と比較しながら分析してみますが、JHBは、他のJRバスとははっきり異なった傾向が現れています。

1. 一般路線バスの割合が16年前で既に79.28%とかなり高かったのですが、今号刊行時点では86.55%とさらに高くなりました。
 特に札幌市内4営業所(札幌・厚別・琴似・手稲)合計は、全乗合車の90%近くに達し、70%弱だった16年前と比較してさらに札幌近郊に集中する傾向です。
 一方貸切は13.81%→7.59%と減少、高速バスも4.99%→5.86%と微増に留まっています。
 車両の割合からは、営業の大部分を札幌市内路線に頼る傾向が伺え、一般路線の整理を進めて高速バスに依存しつつある他のJRバスとは大きく異なっています。
(JHBも他の地方路線はほとんど廃止しているが)
 一番在籍数が多い営業所が札幌市営から引き継いでまだ間がない琴似〔営〕というのが面白い所だし、その傾向を裏付けていると言えます。

2. 平均車齢は12.31年。
 近年本州からの中古を中心にして代替を進めているからなのか、20世紀の車両が64.64%を占めています。
 最古参は1992(H4)年式ですが、まだ25台残っています。
 一番多いのが1995(H7)年式で、57台あって全体の12.36%。
 2006(H18)年式の導入はありませんでした。
 一方で2010(H22)年にはある程度まとまって新製配置があり、6.51%(30台)ありました。
 16年前の車両が今号刊行時点で58台残っていて、表紙を飾っていた521-6905も健在です。

3. その他者からの譲渡では、札幌市営バスは移譲から10年近くになりますが、まだ33台残っていて、全体の7.16%を占めています。
 譲渡元は札幌市営を含めて23者。
 譲渡車両全体では乗合が27.85%、貸切・高速も一定の割合で譲渡車両があり、JHB全体でもやはり26.94%と4分の1以上存在します。
 本来エース級の3列シートSHD長距離高速車も譲渡車両(やはり相鉄からだった)でした。
 一番多い譲渡元は京浜急行バスで23台、次いで神奈中で22台。
 また神奈川県の事業者(横浜市営・川崎市営・神奈中・相鉄・臨港)からの割合が7.77%(合計49台)あるのが注目されます。
 一番遠い譲渡元は淡路交通でした。

4. ノンステップ車は札幌市内4営業所のみに40台配置され、ノンステップ率は札幌市内で約11%。
 ノンステップ車も中古市場に出回るようになってきており、今現在では存在しないノンステップ中古車両も見られるようになるかも知れません。
 ファイタース号の内、監督の背番号を登録番号にした744-7952は、やはり番号が変わりましたか。
(梨田監督時代の「札幌230き88」→栗山監督になって「札幌230い80」)

 なお今号刊行後、新たな譲渡元からの新規登録車両を確認できています。
 あくまで推測ですが、名古屋市営バス及び近鉄バスと思われます。
(これも後日書きます)

 今後のJHBですが、他のJRバス等のように高速バスを収益の柱に据えるのは、とりあえずは難しいと思います。
 理由として、
1.北海道は典型的な札幌一極集中である。
2.高速道路網があまり整備されていないし、本州へつながっていない。
3.既に中央バスや道南バスなどの高速バス路線網が整備されている。
 従って営業の大半を札幌市内路線に依存するという構造は、変わらないかと思います。
 近い動きとしては札幌市営地下鉄のICカード「SAPICA」のバスへの導入があり、来年早々には市電・中央バス・じょうてつバス共々スタートする事になりそうです。
 これらも含め、市営交通や他のバス事業者と協調して発展する事が期待されます。
 後は深名線・日勝線の末永い存続を祈りたいと思います。
 日勝線は民営化以降、乗った事がないんだよなあ…。これではいかん。
 
 次回は函館バスで、「バス・ジャパン」時代を含めても初めて取り上げられる事になります。
 こうなると、同じ北海道で中央バスや道南バスもやってくれたら、と思います。
  
 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
香港立法会選挙 民主派が3分の1以上の議席を確保

この記事へのトラックバック