№749 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 4.小田急江ノ島線藤沢駅(前)
神奈川県藤沢市の今年(2012(H24)年)4月1日時点の人口が41万5,211人となり、横須賀市を抜いて神奈川県内4位となったと、先日報道がありました。
横浜・川崎・相模原の政令指定都市以外では、最も人口の多い市となった事になります。
要因は色々あるのですが、鉄道網の整備もその一つで、湘南台への相鉄いずみ野線・横浜市営地下鉄の乗り入れ、JR湘南新宿ラインの運行開始等が挙げられます。
これらの路線を結び、市域を南北に貫くのが、小田急江ノ島線です。
小田原線の一支線という枠を越え、新都心と湘南を結ぶ幹線的な役割も担っています。
今回は、藤沢市内における小田急の一大拠点である藤沢駅の時刻表から、この20年強の江ノ島線のダイヤを振り返ってみようと思います。
藤沢駅自体、2010(H22)年度には約15万人の利用があり、小田急全体でも4位です。
1990(H2)年3月27日改正
当時の土曜日は休日ダイヤで運行。
この改正より、急行が中央林間に停車。
(1984(S59)年に東急田園都市線が接続済み)
急行は10連運転ができず、大半が新宿~相模大野間で小田原・箱根湯本間の編成に併結、小田急のダイヤの代名詞となっていました。
平日ラッシュ時には新宿~片瀬江ノ島間単独運転の列車もありましたが、相模大野で4連の増結・切り離しを行って、各駅停車に変更して運転させていました。
各駅停車は相模大野で小田原線の急行に連結する列車が多く、朝晩には後続の江ノ島発急行に連結させるパターンも数多くありました。
(例:7時14分発の各駅停車相模大野行は、相模大野で後続の7時25分発急行と連結)
従って全体の本数も多くはないのですが、その編成も4・6連のみという事になり、輸送力は今と比べて相当低かったといえます。
また、小田原線の複々線化が進んでおらず、急行でも新宿までの所要時間が相当かかっていました。
日中はだいたい1時間5~7分位でしたが、朝ラッシュ時・7時03分発の新宿着は8時33分で、なんと1時間30分もかかっていました。
特急ロマンスカー〈えのしま〉は、全列車が新宿から片瀬江ノ島単純折返し運用で、観光偏重だった事が伺えます。
なお当時は今以上に海水浴が盛んで、7~8月には臨時急行が多数運転されていました。
定期列車が少ない分を補う意味もあったのですが、平日ダイヤで下り1本・上り5本、休日ダイヤで下り10本、上り16本の設定がありました。
(休日の一部を除いて、相模大野増結・切り離しの空車の延長か、相模大野始発・終着列車の延長)
平日は〈えのしま7・8号〉の運転もありました。
(〈あしがら61・62号〉の立て替え)
基本的に1990年代は増発や増結を繰り返しつつも、このパターンが続く事になります。
小田原線・東北沢~向ヶ丘遊園間の複々線化工事ももちろんですが、江ノ島線内でも急行の10連運転に対応した工事(特に大和の大幅改良)が、ダイヤに影響を与えていきます。
1991(H3)年3月16日改正では土曜ダイヤの休日統合が行われ、新宿~沼津間直通のJR相互直通特急〈あさぎり〉の運行が開始になっています。
江ノ島線では朝方の上り〈えのしま64号〉の増発がありました。
時間帯からして通勤用ではないと思いますが、下りとのセットではないのは注目されます。
各駅停車の増発も行われ、平日日中も1時間6本運転が確保されるようになりました。
1992(H4)年3月28日改正は小田原線新宿口がメインとなり、最終電車の繰り下げや増発などが行われました。
江ノ島線に関しては変化は少なかったのですが、土休日の〈えのしま15・16号〉はGW中と7・8月のみの運行となりました。
1993(H5)年3月20日改正
急行の運転パターンが大きく変わりました。
小田急のダイヤを象徴していた「箱根湯本(小田原)・片瀬江ノ島」行併結急行が原則取り止めになり、小田原線と、江ノ島線直通急行が分離されました。
(土休日の朝夕のみ一部存続)
江ノ島線急行は大半は6連(平日は全列車)となりました。
相模大野で江ノ島線内を各駅停車で運行する4連の分割・併合を行うパターンが中心になっています。
なお平日・土休日共朝方の〈えのしま〉1往復が取り止め。
また海水浴シーズンの臨時急行も、平日は取り止めになりました。
(土休日は存続)
1994(H6)年3月27日改正では、経堂に変わって喜多見検車区が使用開始になりましたが、江ノ島線に関しては各駅停車の増発があった程度で、比較的静かだったと言えます。
1995(H7)年3月4日改正では、小田原線ではホーム延伸により、秦野まで急行の10連運転が実施されるようになりました。
また高架複々線化工事の関連で成城学園前駅の1番線が使用中止、退避が一時的に取り止めになった事で、新宿発の発車パターンの修正が行われています。
(急行が向ヶ丘遊園で特急の通過待ちを実施など)
江ノ島線では再び平日の8時台に〈えのしま2号〉が設定されました。
また江ノ島線内でも大和駅が高架化・待避線新設工事を行っており、平日は下り4回・上り2回、土休日は上下6回ずつが設定されています。
ただし、主に〈えのしま〉の通過待ちで、本格的に効果を発揮するのは、もう少し先。
1996(H8)年3月23日改正
新型ロマンスカー「EXE」のデビューにより、特急のダイヤや営業が大きく変わっていく事になります。
〈えのしま〉は3往復増発されましたが、平日下り6本中3本・上り8本中4本、土休日10往復中夜間の1往復がEXEでの運行での運行になっています。
平日上り〈えのしま70号〉(8時49分発)は単独運転(6連)、他は全て4連。
当時は〈はこね〉との併結運転で、町田で分割・併合を行っています。
また大和が停車駅となったほか、本格的に追い抜き・退避が実施されるようになっています。
(代わりに南林間の追い抜き・退避は廃止、この後ホーム延伸のため待避線も撤去)
小田原線では小田原駅のみ10連の入線が可能となり「EXE」が乗り入れるようになりましたが、新松田の工事がまだだったので急行の10連運転は引き続き秦野まで。
1997(H9)6月23日、喜多見~和泉多摩川間の複々線化が完成。
都心から遠い位置で、まだ「3つの駅にまたがった待避線の新設」という感が否めなかったのですが、朝ラッシュ時の急行の所要時分が平均7分程度の短縮、藤沢→新宿では最速1時間17分となりました。
また〈えのしま〉は平日に2往復増発。
(どちらも「EXE」で、〈はこね〉と併結)
1998(H10)年8月22日改正
江ノ島線でも急行の10連運転が始まりました。
当面は平日朝ラッシュ時の2往復(7時30分と53分の新宿行)のみ。
藤沢駅では1番線のみ10連対応となり、上下が共用します。
この他の急行停車駅もホームの延伸が行われましたが、本鵠沼・鵠沼海岸両駅は対象外となり、10連の急行は通過。
代替で藤沢~片瀬江ノ島間の区間運転が設定されますが、この頃から片瀬江ノ島側の支線化が始まったような感があります。
〈えのしま〉は停車駅を町田→相模大野に変更。
EXE運用で、〈はこね〉(この改正から一部は〈あしがら〉に変更)と併結される列車も、分割・併合駅を相模大野に変更しています。
この改正より、土休日に設定されていた、海水浴シーズン対応の臨時急行の設定が完全に廃止になりました。
海水客自体の減少やマイカーへの転移もあったのだろうし、小田原線の急行が海老名や秦野まで10連で走るようになったので、設定自体が難しくなった事もあるでしょう。
六会駅は「六会日大前」と改称。
1999(H11)年7月17日改正
特急ロマンスカーの営業政策の見直しが大きなポイントになりました。
小田原線の〈あしがら〉〈さがみ〉は、停車駅の見直し・整理とともに〈サポート〉に統合。
また新宿18時00分以降出発の下りは全て〈ホームウェイ〉に統一し、大半をEXE10連で運行する事になりました。
江ノ島線では下り〈ホームウェイ〉1本を除いて〈えのしま〉の愛称が維持されており、増発の上、等間隔運行が実現しています。
また特急料金の一部値下げも行われ、江ノ島線内のみの利用は410円→300円となりました。
3年前のEXEデビューから始まる一連の出来事は、特急ロマンスカーがもはや観光(特に箱根)一辺倒では立ち行かなくなってきている事を意味していると思います。
(最も〈サポート〉の名は短命に終わりますがそれは次回)
一般列車では、土休日に残っていた「小田原・片瀬江ノ島」行併結急行の設定がついになくなり、江ノ島線内の急行は全て6連以上となりました。
各駅停車でも6連が増加しています。
この改正と前後する形で3月10日に相鉄いずみ野線、8月29日に横浜市営地下鉄(現ブルーライン)が相次いで湘南台に乗り入れ、江ノ島線と接続しました。
2000(H12)年12月2日改正では、これに対応して湘南台が急行停車駅となりました。
小田原線では千代田線直通のパターンの見直しを中心にある程度変化がありましたが、江ノ島線は比較的平穏だったと思います。
前半は1990年代の主なダイヤ改正を見ました。
21世紀に入ると、複々線化工事の進捗もあるのですが、それ以上にJR東海道線のダイヤが小田急、特に江ノ島線に多大な影響を与える事になります。
それについては次回。
申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
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《今日見た・聞いた・思った事》
いよいよジェットスター・ジャパンが就航しました。
同社のA320は先日、成田からパリへ向けて出発する時に駐機場にいるのが見えました(写真はナシです)。
新LCC2番手でもあるし、今回は前日の政治の問題あり、大飯原発にオスプレイの問題ありと、他に色々あったので先日のピーチ程ではなかったようですが、それでも新聞やTVは大きく扱ったようです。
でも一方的にはしゃぐだけの報道は、どうしても疑問です。
一方でスカイマークは相変わらず大小様々な問題を抱えたままだし、ピーチも今の所大事にはなっていないのですが、いくつかトラブルが発生しているとも聞きます。
またどこも急速に路線網を展開するため、パイロットが不足するのでは?という懸念もあるようです。
もう少し冷静に、と言うか冷めた報道も必要かと思います。
もう一つ、昨日書きましたが、そのジェットスター・ジャパンの関空行(9日から)の成田出発が6時ちょうどという事で、アクセスとして京成バスの東京駅前1時30分発の便が設定される事になっています。
運賃が当面キャンペーンで片道800円で、これはリムジンバス(2,900円)の1/3以下。
成田からは8月にエアアジア・ジャパンが就航する他、海外のLCCも多数乗り入れる予定ですが、この事はLCCそのものだけではなく、多分空港アクセスにも影響を与えるでしょう。
LCC利用者は、アクセスもローコスト嗜好になると思うので。
そうなると、バスもそうだけれど、特に鉄道(JR・京成)はこのままだと、色々な面でLCC利用者に空港アクセスとして認められなくなる危険性があります。
ではどうしたらいいか、それについてはフランス旅行記を書き終えた後考えてみる事にします。
《今日のニュースから》
ロシア メドベージェフ首相 北方領土・国後島を訪問