№762 フランス超弾丸旅行2012 8.ようやくトラン・ジューヌ
「トラン・ジューヌ」=フランス語で「黄色い列車」。
ピレネー山脈を走るローカル線ですが、トロッコ列車が走る事で、夏場は観光客が大勢訪れます。
一昨年はオフシーズンだった事もあるのか、工事運休に出くわしてしまい、指をくわえて立ち去るしかありませんでした。
さて、今回は?
当初想定していた7時29分発は不可能になったものの、次の8時29分発ヴィルフランシュ・ヴェルネレバン行TERはかろうじて間に合った。まあ5分~10分程度は待ってくれるだろう、というのは日本では通用すルる考え方だろうが、よその国ではどうなるか解ったものではないから、とりあえずほっとしたと言う所。
ペルピニャン駅は一昨年と比較して特にバックヤードが様変わりしているように見えた。ショッピングセンターが建っている。ホームも一部は様相が変わっていた。
ヴィルフランシュ・ヴェルネレバン行TERは、一昨年と同型の旧タイプの近郊型2連。
唯一の交換駅、イル・シュルテ駅は前回も御覧頂いたが、今回は駅舎のホーム側を御覧頂く。この付近はスペイン・カタルーニャの影響が強いためか、駅名票はフランス語とカタルーニャ語が併記されている。
車掌が検札に回ってきたので、トラン・ジューヌは走るのかと聞いたら大丈夫との答え。車内も観光客が多そうだし、心配はなさそうだ。
終点のホームはそれどころではない。トラン・ジューヌのホームは、大勢の乗客が今か今かと乗車を待っている。ホームで改札を行うらしい。やがて改札の時刻になり、ホームの職員にフランス・レイルパスを見せたら「窓口へ行け」と言われた。えっ、どういう事?
窓口も行列が出来ていて、9時45分の発車時刻が迫って少々イライラしていると、突然窓口の職員が叫んだ。
「コンプリート!」
ま、満席って事…?
これって、予約までは必要ないんじゃないの?これに乗れなかったら、次にラトゥール・ド・キャロルへ行くのは夕方になり、ボルドーまでたどり着けなくなってしまう。ちょっと声が大きくなってしまったかもしれなかったが、ともかく自分はラトゥール・ド・キャロル経由でトゥールーズに行きたいだけなんだ、と交渉したら、どうにか乗せてもらえる事になったようで、窓口の女性職員共々大慌てでホームに急ぐ。このために列車の出発が遅れてしまったようで、自分のせいだとしたら非常に申し訳ない。
「予約」って、何だったのだろうか?トロッコ?トロッコに乗るつもりなど、最初からなかったのだが。いずれにしろ土壇場で冷や汗をかかなければならないような旅行は、余りしたくないものだ。海外でも、日本でも。
ちょっとドタバタして(させて)しまったが、ともあれ、10分遅れで電車は動き出した。両端が電車、中間が普通の客車とトロッコという4連だ。
しばらくは山間部を、釣り掛け音をうならせ、ダダ、トト、ダダ、トト、と同じリズムを繰り返しながらよじ登っていく。当然、大それたスピードは出ない。先頭車のデッキは簡単なドアがあるだけの吹きさらしで、立ってドア越しに風を受けながら風景を眺めている。後方のトロッコからは歓声が聞こえてくる。
一応各駅停車ながら停留所的な駅はリクエストがない限りは通過になるようで、最初の停車駅はオレットになっ
た。周辺は割と大きな集落と見たのだが、乗降は全くない。標高は607mらしい。始発は423m強だったから、180m登ってきた事になる。
ニエ駅も通過。駅付近はまだしも、中間部は人里は全くまれ。
ところが川の対岸に位置する高い山のてっぺんには、こぢんまりした集落が見られたりする。カナヴェイユだと思うのだが、人々はどうやって暮らしているのだろう。やがて行く手に大アーチ橋が見えてきた。
国道N116号線との交差になるが、こちらの目から見れば、向こうは大ハイウェイだ。
フォンベドルーズで最初の行き違い。向こうもこちらと同じ内容の4連だ。客層も似たようなものだ。花が美しい。
この先、大鉄橋を渡る。近代的な鉄筋の鉄橋だが、最近のもの、と言う訳ではない。一昨年のガラビ橋もそうだが、さすがはフランス、建築に見所が多い。
モン・ルイでもう一本、反対列車と交換する。向こうもこちらと同じ内容の編成だ。
この駅は標高1,511.46m。JR小海線の最高地点(1,375m)より130m以上も高い。付近は山岳リゾートの装いであり、ここでゴッソリ下車があった。大半が中高年の方々。みな薄着だ。
ところでトラン・ジューヌの最大の特徴は、第3軌条方式による集電にある。しかも日本の地下鉄と大違いで、防護カバーもないし、堂々と踏切もある。当然横断部分は途切れているが、そこには必ずこのような警告が掲げられている。もちろん、駅間の道路や歩道との交差部分の踏切にも掲げられている。上野検車区のような、電車通過時以外は線路側を閉鎖する親切な柵など、あるはずはない。要注意。
フランスとスペインにまたがるピレネー山脈。背後の山はピュイマール、と言うのだろうか。
この先しばらくはお花畑が続く。アルプス的な眺めであり、思っていたより洗練された車窓だ。もっと泥臭いイメージを抱いていたのだが。この区間の途中のボルケール・エーヌ駅が標高1,592m、トラン・ジューヌ最高地点だ。
フォン・ロム・オデイヨーでも観光客がゾロゾロ降りていく。車内はかなり空いた。
今度はオメガカーブで下っていく。眼下にはこれから走る直線が野原を突っ切っているのも見える。
サイヤグース駅では1,310mまで下ってきた。この先もアップダウンを繰り返しつつ、少しづつだが下がっていく。
カーブを切りながら田園地帯を行く。グラスロールも見られたりして、スイス的?
トラン・ジューヌはほぼ全線が国道と併走する。さすがに規格的には決定的に適わない。
ピレネーは、それ程険しいと言う感じはしないものの、東から西へ高い山々が延々と連なっている。あえて言えば東北地方に近いかもしれないが、それにしても余り日本では見られない風景だと思う。
ヴィルフランシュ・ヴェルネレバンから3時間、終点のラトゥール・ド・キャロル到着。1時間前に到着していた列車と並んだ。
ラトゥール・ド・キャロル駅。スペインとの国境に近い駅だが、駅付近は閑散としている。町外れなのだろう。たまに地域の路線バス(ペルピニャンへ行く便もある)が立ち寄る程度で静か。
それにしても、ここも標高が1,231mあるのだが、思いの他気温が高くて暑い。
スペインとの国境に近い、という事でこの駅にはSNCFの他、バルセロナへ行くRENFEの電車もやってくる(左端のオレンジの電車)。この駅にはSNCFのトゥールーズへ行く路線も接続し、3路線が集まってくる事になるが、軌間・電化方式・集電方式がてんでバラバラなのが面白い。
但し、駅舎内でRENFEの乗り入れを伺わせるのは、壁に掲げられた時刻表1枚のみ。日本の共同使用駅のような、2社のマークが並んで掲げられている、なんて事はない。
そういえば、結局朝から何も食べていなかったなあ。駅舎内で営業していた売店でサンドイッチとコーラを買って、一気に飲み食いする。同時に、トラン・ジューヌの写真集や絵葉書も販売していたので購入。
トラン・ジューヌ、というより地域の絵葉書なのだが、トラン・ジューヌの存在は、地域にとっても誇りなのだろう。
こうして、念願のトラン・ジューヌの旅は終わった。
繰り返しになるが、序盤のドタバタは非常に申し訳ない事だった。トラン・ジューヌに限らず、事前の情報収集は大事だと、改めて思い知らされた事でもあった。
トラン・ジューヌは、本来は普通の地域ローカル線ではないかと思うのだが、見た限り地元の住人の利用は皆無だった。
先に記したように乗客の大半は中高年の観光客グループ、それと子供達の団体で、貸切扱いの座席も多かった。
並行する道路が高規格で、バスの運行もある(ちなみに一昨年トラン・ジューヌが工事運休で代替バスが運行されていた時、電車の所要3時間に対して、バスは2時間だったらしい)となると、地域の足としての運行はさすがに難しく、観光客の誘致で生きながらえていく事になるのだろうか。
念願は果たしたが、もし機会があるなら、次はもっと観光客が少ないシーズンを選んで乗りたいと思う。といっても本数が極端に少ないし、冬は冬でスキーヤーの利用が多いかも知れないし、オフシーズンだとまた工事で運休になってしまうかも知れない…。
申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
この後はTERを乗り継いでボルドーに向かう事になりますが、明日・明後日の更新はお休みします。
また月曜日は、今日発売になったJTB時刻表2012年8月号について書く予定。
いよいよ今日から、夏の「青春18きっぷ」のシーズンがスタート。
とりあえずどこか行きたいけれど…。
********************
《今日見た・聞いた・思った事》
ロンドン五輪の開会式が、急に30分短縮される事になるのだそうです。
観客が、電車の最終に間に合わなくなる恐れがあるから、とか。
自転車のアトラクションがカットになり、参加者が「信じられない。ガッカリ」と嘆いていました。
ちょうど10年前、日本ではサッカーのW杯が各地で開催されましたが、あの時は試合後に最終電車の繰り下げや臨時運転があり、新幹線でも午前0時を過ぎて運行される臨時列車が多数ありました。
(それについては、今日発売のJTB時刻表のスカパー!コラボページでも取り上げられています)
お国柄もあるのだろうが、五輪だって「国家的行事」でもある訳で、1日だけ(…閉会式はどうなる?)の話だし、最終電車の繰り下げなどの対策は考えられなかったのでしょうか?
ロンドン五輪では警備上の不備(警備員が必要数集まらない)も政治問題にまで発展してきており、華やかさとは裏腹のゴタゴタがこのドタンバに来て噴出してきているようです。
以前、「今年は何とかダイヤの間引きは避けられている」と書いてしまいましたが、JR九州が特急〈きらめき〉3往復、及び博多近郊の一部の区間運転の間引きを行っておりました。
失礼いたしました。
この辺の事も、次回は。
(でも今のJR九州はそれどころではなく、先日の豪雨で豊肥本線や久大本線などが寸断されている模様)
《今日のニュースから》
日本プロ野球選手会 第3回WBC不参加を表明