№738 夜行列車の未来像 1

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 先日は上野から羽後本荘まで、寝台特急〈あけぼの〉のB寝台「ソロ」に乗車した体験を書きました。
 日本で寝台特急の寝台を利用したのは実に22年ぶりだったのですが、思い返すに、夜行列車自体の利用もこの数年、めっきり減りました。
 当ブログをスタートさせた2009(H21)年8月16日以降では、〈あけぼの〉以外の夜行列車利用は、臨時に格下げされた〈ムーンライトながら〉3回だけ。
 寝台特急も、そうでないのも、夜行列車がどんどん減っていくので、選択肢がないという事もあります。
 今年になってからも、3回は夜行高速バスの利用でした。
 3月改正で〈日本海〉〈きたぐに〉が事実上廃止になるなど夜行の退潮に歯止めがかからず、このままだと新幹線新函館延伸の時点で、日本から定期夜行列車が全滅になってしまう可能性も否定できません。
 と言って嘆いてばかりでも良くはならないから、私なりに夜行列車復活の可能性はあるか、あるならどうすれば良いかを、2回に分けてちょっとばかし考えてみたいと思います。

 といっても残念ながらどこでも夜行復活、という訳にも行きそうにはないのも事実。
 まず、昔は夜行の「花形」だった、東京~九州で考えてみます。
 夜行に限らないですが、交通機関、特に鉄道においては「車両」「ダイヤ」がキモ。
 この2点を中心に見ます。

 2009(H21)年3月改正で〈はやぶさ・富士〉が廃止になり、東京~九州の夜行列車・九州ブルトレはついに全滅してしまいました。
 未だに復活を望む声はあるようで、〈カシオペア〉のような豪華列車を導入すれば利用も多いのではないか?という声も聞きます。
 でも実際の所はどうなの?
 残念ですが、在来線にこだわる限りは、復活の可能性は皆無に近いと思います。

1:夜行といえども時間がかかりすぎ、ダイヤ面で他交通機関との競争力がない
 ある程度九州ブルトレが残っていた頃、例えば1990(H2)年の時点では、〈あさかぜ1号〉が東京~博多を15時間52分で結んでいた。
 しかし博多終着が10時57分では、今の感覚では遅すぎる。
 九州に限らないが、夜行列車のダイヤでよく言われていたのは、
「新幹線または航空便の最終より遅く出発し、一番より先に到着する」
のが理想という事。
 しかし走行距離が1,000㎞を越えると、新幹線の高速化や航空の運行時間帯の拡大もあり、隙間をつくダイヤの編成はほぼ不可能。
 現状では特に上りが厳しい。羽田空港C滑走路供用開始に伴い24時間運用が可能になった事で羽田に23時頃に到着する便の設定が可能になり、今月のダイヤではANA274便が福岡空港21時30分発(23時00分羽田着)になっている。一方福岡発の一番機は8時30分には羽田に到着する(福岡7時00分発のJAL300便)。
 つまりこの隙間をつくには、博多駅を21時~22時の間位には出発し、なおかつ東京駅には遅くても8時台には着く必要があるが、所要時間が10~11時間という事は表定速度を全区間でコンスタントに100~110㎞/h程度としなけれならず、重装備になる(グレードアップさせるならなおさら)夜行列車としては非現実的だし、性能的には出せたとしても、肝心の居住性にかなり悪影響を与えるだろう。
 現在の電車寝台<サンライズ瀬戸・出雲>の東京~岡山で表定速度は約85㎞/hだが、この速度でも東京~博多は14時間を切るのがやっと。
 また、本来夜行の到着時刻として最適な7~8時台は、東京は通勤ラッシュの真っ只中にあり、設定が不可能。
(九州ブルトレ全盛期でさえ、7時30分~9時30分の東京到着は避けていた)
 従ってビジネスユースが主力と思われる東京~九州(博多)は、在来のスタイルの夜行の復活はほぼないと言わざるを得ない。

2:では<カシオペア>的な、特定の客層(特に富裕層)相手に特化した豪華列車は?
 まずやはり時間がかかりすぎる。東京から博多は、札幌より遠い。また九州の場合、著名な観光地は大半が博多より先にあり、目的地までより移動の時間を費やす事になる。
(<カシオペア>や<北斗星>の場合、途中に函館や駒ケ岳、洞爺湖などがある)
 先日JR九州より発表があった「ななつ星」的に、完全に列車そのものの移動を売りにするとして、車内でのエンターテイメントをさらに充実させるという手もあるだろう。
 しかし、食堂車のディナーが、下手するとLCCでの往復運賃より高くつく列車に、一生の内に何度も乗れるものだろうか?
 確かに「あこがれ」には成り得るだろうが、それが鉄道全体(昼間の特急も、ローカル線も)の復権につながるだろうか、というとはっきり疑問。
「この列車の旅は楽しかった。でも高いから一回ぽっきり」というのでは、意味がない。やはり何度も利用する、リピーターになってもらって、さらには他の鉄道も利用してもらえなければ、意味がないと思うのだ。

 運行・営業するJR各社から見た場合でも、仮に新規に豪華列車を開発するとすれば当然莫大なコストがかかるし、間違いなく投資を回収できて、しかもお釣りが来る(増収になる)状況にならなければならない。
「ななつ星」は九州内周遊だけだし、団体(特に海外)が中心になるだろうからある程度は成算もあるだろうが(なければ開発しまい)、東京~九州を移動する目的の列車ではリスクが大きいのではないか。

 従ってダイヤの面で見た場合、現状で一般的な夜行列車に適しているのは、東京・大阪を起点に、寝台主体だとだいたい700~800㎞位で所要9~10時間、座席の場合は500~600㎞位で所要7~8時間程度、という事になるのではないだろうか。
 1,000㎞を越えたら、〈カシオペア〉のような割り切りが出来ない限り、基本的に設定は不可能。
(逆に短くても非効率)
 これを考慮すると、寝台の場合は東京起点だと岡山・高松にせいぜい広島、青森・函館、秋田、大阪起点では熊本・長崎、秋田あたりか。
 座席だと東京からでは大阪・盛岡・金沢、大阪からの場合は博多・新潟、長野あたりが、まずは適当な所ではないだろうか。
 なので本当は<日本海>はともかく<きたぐに>は何とか残して欲しかったし、<日本海>も、秋田まではとも思うのだが。

 という事で、次回はこの線である程度積極的な夜行列車改善・向上の案を、<あけぼの>を例にして考えてみます。

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 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

 今日の夕方、足立の東武バスに包丁を持った男が乗り込んで騒ぎまくり、警察に捕まったとか。
 昨日の通り魔事件もあるし、なんだかこんなニュースが多くて滅入ってしまいます。

《今日のニュースから》
牛の生レバー 厚生労働省 飲食店での提供禁止を決定

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