№697 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 3.西武飯能駅(後)
西武鉄道飯能駅の時刻表からダイヤを振り返るシリーズの後編です。
21世紀になってようやく池袋線の一部区間の複々線化が完成、以降池袋線のダイヤは大きな変化を繰り返し、それは当然ながら飯能駅にも及ぶ事になります。
練馬~石神井公園間では高架複々線化工事が長らく続けられているのですが、2001(H13)年12月15日にまず中村橋~練馬高野台間が完成して共用を開始、練馬高野台折返し列車の設定による増発と所要時分の短縮が図られました。
(時刻表第17号)
朝ラッシュ時の快速急行は飯能~池袋間で58分→54分と、4分の短縮になっています。
この他、
● 平日6時台に特急を増発 これにより6時18分~38分の間に特急が10分間隔で出発する事になります。
● 初めて飯能始発の快速が、1本だけですが設定されています。
池袋線の快速はこれまで下りの設定がほとんどで、上りは土休日に西武球場前・所沢→池袋間で運転があるだけでした。
この改正時より、快速も練馬停車になっています。
● 秩父鉄道直通を見直し、平日の急行の直通は取り止め、土休日の快速急行も1往復削減になっています。
快速急行全体でも秩父方面行は2往復が廃止。
さらに2003(H5)年3月12日、練馬~中村橋間も複々線化が完成し、再度大きなパターンの変更が行われています(第18号)。
一見して目に付くのは、増発と高度なパターン化です。
● 有楽町線直通の準急を快速に格上げした上で30分間隔に増発。
小手指~飯能間全体で急行・準急も含めてきれいな10分間隔の運転になっています。
快速は初めて、曜日に関係なく日中にも恒常的な運転が行われる事になります。
朝ラッシュ時も通勤準急を立て替えて設定されている上に夜間にも運転され、これまでの限定的な運転から一躍、池袋線の主力として出世した感があります。
● 特急<ちちぶ>が増発され、西武秩父行がほぼ1時間間隔で運転される事になります。
この事は特急レッドアローが観光だけでなく、秩父地方のビジネス輸送の役割も大きくなってきている事を意味していると思われます。
● 池袋側も特急増発により、朝方5時40分~6時40分の間に5本も運転されるようになった他、日中以降は発車時刻が毎時05分にほぼ統一される事になります。
(夕方は+35分)
なお土休日も全列車が入間市に停車、ついに<おくちちぶ>の愛称は消えました。
● 秩父方面は各駅停車も増発の上、日中は30分間隔に統一。
この時より池袋~西武秩父間で、4000系改造編成によるワンマン運転が始まっています。
2005(H17)年3月17日改正(第19号)では、飯能においては大きな変化はなかったのですが、夜間に特急<ちちぶ>が増発された一方、秩父鉄道直通は平日ダイヤのみ長瀞側の運転区間が長瀞止まりに短縮されています。
2007(H19)年3月6日改正(第20号)では、一番電車の急行・土休日夕方の準急をいずれも快速に変更。
また秩父鉄道直通の長瀞側が、全列車長瀞までの運行に短縮されました。
2008(H20)年6月14日、東京メトロ副都心線が開業し、有楽町線と共に池袋線と相互直通運転を開始しました。
(時刻表第21号)
飯能では有楽町線新木場行だった快速を副都心線渋谷行に変更、朝ラッシュ時にも設定しました。
副都心線では一部急行運転が行われ、飯能発着の快速は全て副都心線内は急行で運行されます。
(副都心線内は池袋・新宿三丁目に停車)
ダイヤと直接関係はありませんが、この機会に通勤車の種別及び行先方向幕の交換が行われ、フォントが変わったほか、「普通」は正式に「各停」(各駅停車)と呼称される事になりました。
2010(H22)年3月6日改正(第22号)では、飯能に関しては大きなパターンの変更はなかったものの、土休日下りの秩父鉄道直通快速急行の時刻が変更になり、長瀞行は横瀬で、三峰口行は西武秩父で、後続の特急<ちちぶ>からの接続を取る形になります。
副都心線内急行となる列車は、土休日は終日明治神宮前に停車。
これが現在使用されている、昨年(2011(H23)年)3月5日改正(第23号)の時刻です。
土休日夕方の一部列車の種別や行先が変わりましたが、全体的なパターンの変化はありません。
それにしても、一番最初に掲げた1987(S62)年3月と比較すると、四半世紀で本数が飛躍的に増加しました。
特に平日の池袋方面行を比較すると…
特急 18 → 29
快速急行 0 → 8
急行 56 → 44
通勤急行 0 → 5
快速 0 → 37
準急 1 → 19
各駅停車 7 → 0
合計 82 → 142
となり、なんと73%も増えています。
特に日中は倍です。
土休日も83(不定期含む)→129で55%増、秩父方面も平日41→57で39%、土休日47(不定期含む)→52で10%の増発になっています。
またかなり高度なパターンダイヤが組まれていて、全体的には利便性がかなり高いと評価できるのではないでしょうか。
今後ですが、練馬高野台~石神井公園間の複々線化の完成が池袋線全体に影響を与えるでしょう。
石神井公園駅は上下線とも高架ホームに移行したものの、肝心の複々線化工事がまだ進行中。
やはり急行停車駅まで来ないと中途半端なので、早い完成が待たれます。
それといよいよ目前に迫ってきた、メトロ副都心線と東急東横線の相互直通運転も、飯能駅のダイヤに影響を与えそうです。
現状のダイヤをそのまま踏襲するとしたら、渋谷行の快速がそのまま東横線に入り、一気に横浜のみなとみらいまで行く事になる訳です。
一昔前から思えば、これは凄い話だなあ。
後は線内輸送の一層の充実、特に急行の増発。
(快速急行も合わせて)池袋~所沢間は15分毎位で急行が走っても良いはずです。
土休日日中の快速急行設定も期待します。
秩父方面ですが、現在観光輸送に関しては多少縮小傾向にありますが、ここ数年の西武グループは地域密着に軌道修正が図られている事もあって、(西武グループ外になっても)秩父地方への観光客誘致に力を入れているようです。
加えて最近は秩父を舞台にしたアニメも人気もあるようです(4000系も出てきているらしい)。
なので今一度都心からの誘致のためにも快速急行、特に秩父鉄道直通列車の再度の増発も行って欲しいし、新宿からの「レッドアロー」の復活もあっていいでしょう。
シンボルマークも大きく変わって心機一転、飯能駅が新生西武を象徴する営業政策の拠点となる事が期待されます。
次回はちょうど四半世紀前、1987(S62)年3月9日改正の時刻表第8号について書きたいと思います。
今回の記事は西武鉄道発行の各時刻表の他、
「歴史で巡る鉄道全路線 大手私鉄 西武鉄道①」(朝日新聞出版)
を参考にさせて頂きました。
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