№543 Forever JAL's A300-600R 4

 前回お知らせした通り、本来ならこの記事は昨日の夕方アップする予定でした。
 しかしご存知の通り、台風15号が夕方に関東地方を直撃するという予報が出ていて、それに備えるため早めに出勤したため、昨日の更新は予告なくお休みさせて頂きました。
 どうかご了承下さい。

 3月11日に発生した東日本大震災は、今更語るまでもない未曾有の大惨事を、特に東北地方太平洋沿岸にもたらす事になってしまいました。
 交通にも甚大な影響を与え、仙台空港が大津波の直撃を受けて使用不能になり、周辺の空港への臨時便が多数設定されます。
 また、東北新幹線も長期に渡って不通となって、航空が臨時便の就航や機材の大型化で対応する事になります。
 そこで抜擢されたのが、本来3月26日を持って退役となるはずだったA300-600Rでした。
 特に青森線では震災以降3月一杯は全便がA300となり、4月以降も2~4便はA300が就航して輸送力の増強に貢献します。
 そこで「震災復興支援」の意味も兼ねて、4月30日の東京-青森線のA300-600R就航便に、今度こそ「お別れフライト」として乗ってきましたので、最終回はこのフライトについて書きたいと思います。
 №466と重複する部分が多くなりますが、今一度お付き合い下さい。

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 本来青森行は北ウイングからの出発だが、スポットに空きがなかったのか、この日の1201便は南ウイング8番からの出発になった。
 MD-90-30の出発の後トーイングされる。


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 パイロットが乗り込む前のコクピット。
 右に左に、窓の清掃に余念がない。


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 いつの時代も、ジェット機は子供の憧れの的。

 この日は弘前の「さくらまつり」が始まっており、加えて東北新幹線は前日に全線で運行を再開はしていたものの、発表は急で運行体制にもまだ不安定さを残しており、この便の乗客は予約数が提供座席数を上回る程の盛況だった。
 次便への振り替えの協力を募るアナウンスも流れる程だったが、結局は全員がこの便に乗れる事になる。


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 第1ターミナルにならぶ「Arc of the Sun」。
 JALグループがこのカラーに統一されたのは、そんな遠い昔の事ではなかったはずだ。


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 R/W16Rを離陸する、新たな鶴丸を描いたB737-800。
 胴体には「がんばろう日本」のメッセージ。


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 離陸直前に流される、エマージェンシービデオ。
 画面に現れるCGの機体も、新しい鶴丸に変わっていた。
 ただ、内容自体は以前と変わっていない。


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 R/W16Lを離陸、左に旋回すると背後には羽田空港の全景が広がる。
 D滑走路も前の年には完成、供用を開始している。
 羽田の拡張は、とどまる事を知らない。


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 TDRから江戸川上空を経由し、北上するルートを取る。
 東日本大震災は首都圏でも影響が大きく、特に浦安市は液状化現象で甚大な被害を受けた。
 TDRも長期休業に追い込まれ、ようやく数日前に営業を再開したばかり。
 ただ、上空から見ただけでは、正直被害の深刻さをうかがう事はできなかった。
 いつもの浦安市に見えた。


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 座席前のポケットに入っている、おなじみのセーフティ・インストラクション、つまり「安全のしおり」。
 他機種ではもちろん新鶴丸デザインになっていて、MD-90-30も新しいものに変わっていたけれど、5月一杯で退役になるエアバスでは、もちろん変わっているはずもなかった。


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 機内のサービスは、何だか色々変わっていた。
 JALではドリンクサービスは引き続き無料で、しかも2日前から有名な「コーヒー・ハンター」(?)と組んで新しいコーヒーを提供しているそう。
 正直どこがどう変わったかは分からなかったけれど。
 また、モニターのプログラムも、それまでのNHKニュースの録画に変え、テキストと静止画像による新スタイルのニュース(最近山手線のドア上とかで見かけるようなもの)になっていた。
 どちらも退役が予定通り3月26日だったら、エアバスの機内では体験できなかったわけ。
 ところで、今回搭乗したJA016DはJALにおけるA300-600Rの最終号機で、モニターがMD-90-30のような液晶式の薄型に変わっている。


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 青森が近付いてきた。
 降下が始まり、ベルトサインが点灯する頃、主翼の上には岩木山が見えてくる。
 機体はこの後青森市の中心部を掠めるように右旋回、空港へのファイナル・アプローチに入る。


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 八甲田の山々を左に見て、フラップが全開になる。
 着地、スポイラー全展開。

 正直言うと、指定された27A席は翼の付け根の少し後で、本音はもう少し後の方が良かった。
 でも状況を考えれば上々の位置ともいえたし、着陸時の翼の各パーツの動きをじっくり観察できて良かった。


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 機内から降り立った旅人たちが、機体にカメラを向ける。
 その視線はコクピットに向けられた。


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「頑張ろう日本」。
 パイロットたちからの、熱いメッセージだ。
 頑張る日本のために、エアバスもまた、もう少し頑張る。


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 エアバスを見送るグランドスタッフ。
 2月一杯までお馴染みだった光景が、少しの間だけ復活する事になった。
 グランドスタッフもまた、頑張っている。


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 青森空港には来月まで乗り入れるが、この目で青森のエアバスを見るのは、これが最後。
 連絡バスを1本見送ってでも、離陸の瞬間を見届けたかった。
 八甲田をバックに加速し、青空に向けてグングン上昇して行く。
 その機体がただの点になり、青空に溶け込んで消えて行くまで、ひたすら目を凝らして見送っていた…。

 営業の最終便は5月31日の青森発羽田行1208便。
 最初に就航したのが青森線なら、最後もまた青森線。
 本来の退役予定なら青森線は最後にはならなかった。
 A300-600Rとは、よほど青森に縁がある旅客機だった。


エピローグ

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 5月一杯でついにJALでの役目を終えたA300-600R。
 胴体のマークを消され、1機また1機と海外に売却されている。
 そのマークもまた、経営破綻を象徴するかのイメージを植えつけられ、新たな鶴丸に取って代わられて短い生涯を閉じようとしている。
 でも私は絶対忘れない。
 JAS時代も、JALのマークを背負ってからも日本各地を駆け巡った優雅な姿を。
 そのマークと共に…。


 最後に個人的なデータをまたいくつか。
 JAS~JALのA300-600Rには、1994年6月30日~2011年4月30日の間で、合計26回搭乗。
 うちJAS時代のスーパーシートに1回、JAL時代のクラスJは2回搭乗しました。
 全搭乗マイル(TPMベース)を合計すると、12165マイル。
 平均で1回あたり467.9マイルで、国内線しか乗らなかったから、B747-400と比べたらやはり距離はかなり短くなりました。
 最も多く搭乗した路線はやはり東京(羽田)~青森線で7回(東京発1回、青森発6回)、次いで東京(羽田)~熊本線で往復合計4回、長崎線で3回と、地域的には九州路線が多くなりました。
(ちなみに全て羽田発着)
 そして合計22機のうち、JA8375・JA8377・JA8564には3回ずつの搭乗がありました。
(一方でJA8559・JA8566・JA8573・JA8659・JA012D・JA014Dには搭乗機会なし)

 退役後を追跡すると、まだ「整備保存」という機体もありますが(9月15日現在では少なくとも2機を確認)、大半は貨物機に改修されて売却となっているようです。
 世界的にもA300-600Rは旅客用としては退役が進んでいるようで、JALからの退役後、日本で見られるA300-600R旅客型は、大韓航空の東京(成田)~済州島線、大阪(関西)~ソウル(金浦)線の2路線3便のみとなっています。
 不幸な形ではありましたが、JAS~JALにおいては、旅客機としての使命はまっとうできたのだと、評価してよいのではないでしょうか。

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I don't forget you forever!
Thank you for 20 years!!


 今回の連載は
「日本の旅客機」(各年/イカロス出版)
を参考にさせて頂きました。


 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

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《今日見た・聞いた・思った事》
 いうまでもなく、昨日の首都圏の鉄道網は、台風の直撃を食らって散々でした。
「帰宅難民」が多数発生した事で、3月11日を思い出した方も多かったでしょう。
 駅をいくつか見て、思った事を簡単に2点。

1.運行情報が基本的に自社中心で、他社の事がまるで解からない事も少なくないようだった。
 駅員は他社の公式HPを頼りにして案内を行なっているようだ。
 JR・私鉄関係なく、加えて可能な限りバスも含めた包括的な運行情報提供システムを、旅客向けにも、業務用としても構築すべきではないか。

2.遮蔽物がない、吹きさらしの高架駅は強風に合うと危険。
 そうでなくてもサービス上好ましくなく、何とか改良して欲しい。
 構内全体を覆うドーム化も検討されても良い。

 ANAのB787-8が10月30日、仙台への「復興支援フライト」を行なうそうです。
 
《今日のニュースから》
「富士山」「鎌倉」 2013年登録めざし世界遺産に推薦

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