№529 バスジャパン・ハンドブックシリーズR74 アルピコ交通
「バスジャパン・ハンドブックシリーズR」第24弾はアルピコ交通。
今年の4月、松本電気鉄道と諏訪バス・川中島バスの合併により発足したバス事業者です。
1997年に「ニューハンドブックシリーズ22」で、合併前の3社(+それぞれの子会社6社)を並行して取り上げていて、14年ぶりになります。
◆ 初夏のさわやか信州紀行
14年前は定期観光バスを加えて、アルピコグループの主要エリアをほぼ一周する形態になっていました。
ライターが2人に分かれていて、松本からの後半が富田康裕氏でした。
今回は旧諏訪バスのエリアはなし。
本当はここも加えればバランスが良くなるはずですが、もう旧諏訪バスエリアと、旧他2社を直接結ぶ路線がなくなってしまっているのです。
諏訪からは美ヶ原高原には行かなくなったし、高速バスもないし、定期観光バスも、諏訪・霧が峰に関わるコースは廃止になってしまいました。
このエリアだとやっぱり上高地は外せないでしょうが、上高地~長野間の高速バス<せせらぎ号>は、JTB時刻表には掲載がありません。
(「黄色のページ」の会社線の時刻表にもなかった)
最後の長野→新宿間の高速バスは京王バスでしたが、アルピコ担当便は長野発午前・新宿発午後に集中しているからでしょう。
◆ 終点の構図 渋の湯
上の紀行とのバランスを取ったのか、終点は14年前(後山)と同様、旧諏訪バスエリアからになりました。
折返しの15分弱で入浴というのは相当厳しく、カラスの行水程度でしかなくなると思いますが、何しろ本数が平日2往復、土休日3往復と少ない…。
◆ アルピコ交通の路線エリア
14年前と比較してもさらに路線の縮小が進み、エリアが千切れ千切れ。
何回も書いていますが、塩尻〔営〕は一般路線が全滅し、地図だけ見ると営業所だけ孤立してしまっています。
塩尻はJRの幹線の分岐駅で、特急も大半が停車するのに、どうした事だろう?
大町〔営〕もアルペンルート以外はコミュニティだけ。
この他、JR大糸線沿線も全滅してしまって悲しい限りです。
(穂高駅~中房温泉間の路線や安曇野の観光周遊バスは地元のタクシー会社が運行しているが、JTB時刻表には掲載なし)
確か若い頃は、いすゞDBRで運行されていた安曇野の路線バスに乗った事があったのですが。
少しでも観光の利用があればまだいいのでしょうが、それもない純粋な生活路線は、長野・松本市内を除いたらもはや通常の形態では維持不能なのでしょう。
◆ アルピコ交通のあゆみ
14年前は松本電気鉄道・諏訪バス・川中島バスを並行させる形で別々に記していましたが、今回は3社を一体にして記しています。
旧諏訪バスに関しては、旧国鉄バスとの軋轢はかなり昔からあったみたいで、それが高速バス諏訪・岡谷線の免許争奪にまで尾を引いたのでしょうか。
もっとも今はそんな事も言っていられず、コミュニティバスはJRバスと共同で運行しているようです。
川中島バスについては、昔は長野から戸倉・上田・大屋まで運行されていて、それも1時間間隔で運行されていたのがウソのよう。経営破綻も経験していますしね…。
上の「路線エリア」でも現れていますが、旧3社はいずれも、一般路線は比較的大都市を除いて縮小に歯止めがかけられていないようです。
やっぱり北村ボディの旧カラーはいいなあ。
◆ 車両の現況
1. まず、14年前と比較してみます。
(長野五輪のための格納車両31台は、ここでは除外)
14年前は、アルピコグループ全体の車両数は735両で、そこから比較すると29.3%の減少になっています。
特に貸切が70%近く、旧諏訪バスのエリアでは90%弱の大幅な減少になっています。
逆に高速バスは73.8%の増、旧松電と旧川中島はほぼ倍増で、経営の重点が高速バスに移りつつある事が伺えます。
旧3社毎のトータルでは、やはり旧諏訪バスの減少がきつく、41%強のマイナス。
それにしても14年前はグループ会社が相当多く、バス事業者だけで9社もありました。
これも後々、グループの経営の足を引っ張る要因となったのでしょうか。
2. 平均車齢は12.04年。
高速9.42年、貸切9.53年に比べて、乗合が13.66年と、やはり地方らしく、一般乗合車が高齢化しています。
全体的には1998年式が最も多く、乗合車では1992年式が一般乗合の10%以上を占めています。
旧3社別では、旧松電は2003・2004年に新島々〔営〕にHM-RU2PPERを集中して投入している事もあるのか11.03年と比較的若いのに対し、他2社は15年以上。
車種別ではハイブリッドなどの低公害車を積極的に導入している日野が半分以上。
日産ディーゼルは14年前も今も存在していないが、歴史編の写真を見ると、川中島バスは一時期でも使っていた事があったのかも知れない。
3. 乗合車は中古車の割合が48.4%と、もはや全体の約半分。
特に旧諏訪バスは大型車は1両を除いて全て中古車両になっています。
(残る1両も旧松電から移籍したU-LV318N(32168。松電時代は10324))
逆に上高地や乗鞍を控えて低公害車が集中して配置されている新島々〔営〕は0。
譲渡元は35社局とかなり多様化しています。
(東武鉄道と東武バスは1社としてカウント)
信州地方なのだから関東からの移籍が多いと思いきや、関西からの移籍がかなり多く、8社局から55台が移籍、中古車全体の3分の1以上を占めています。
特に元山陽電気鉄道が28台あって中古車全体の約2割、乗合車全体でも約9%と一大勢力になっています。
「高出力」+「前後ドア」というのが買われたのかと思いますが(自社発注車も経年車では前後ドア)、関西も前中ドアへの移行が進んでいますから、今後は横浜市営バス(中古車の1割に到達している)など、関東地方の事業者からのシフトが進むかも知れません。
今後のアルピコ交通ですが、やはり一般の旅客をいかにつなぎとめ、加えて観光の旅客を増やすかでしょう。
特に旧諏訪バスエリアは松本・長野のような有力な大都市がなく、他地域以上に乗客の減少が進んでいるためか、車両の面でも格差が目立つようです。
諏訪エリアも自然豊かな観光地が多いだけに、特に低公害車の積極的な導入が期待される所です。
松本や長野の市内路線では、ノンステップ車の導入の推進が待たれる所で、これからは中古車でもノンステップ車がかなり出回ってくるだろうから、それらで置き換えが進められる事になるでしょうか。
次回はジェイアールバス関東と予告されています。
JR関東は比較的ローカル路線が維持されてきたのですが、さすがに持ちこたえられなくなってきたのか、特に21世紀になってからは一般路線の削減が進んでいます。
一方でSuicaの導入や高速専門の佐野〔営〕の新設といった動きも見られます。
高速中心になりつつも、会員制ツアーバスの台頭などに苦慮するJRバス関東の現状は、車両面ではどのように反映されているのでしょうか。
申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
正直何の関心も沸きませんでした。
明日30日は、政権交代を決めた総選挙から2年になります。
震災等があったとはいえ、どうしてこんな事態になってしまったのでしょうか。
政治ゲームはたくさんだと思います。
《今日のニュースから》
民主党代表選 野田財務大臣を新代表に選出