№507 中国高速鉄道の大事故と日本の論調

 3日間お休みを致しました。
 この間は勤務に加え、関西の方に出かけていまして、昨日帰ってきたのですが遅くなったので更新はお休みとさせて頂きました。
 今回の旅行についても来月取り上げる予定です。
 それにしても関西もいよいよ節電モードに入っていて、まだ首都圏ほどではないにしろ、ホテルの廊下なんて暑かった…。

 さて、この3日の間で一番大変な出来事は、なんといっても中国で発生した高速鉄道の大事故でした。
 事故そのものは今更個人レベルで語ってもしょうがないのですが、追突した側の列車が4両も高架下に落下してしまうとは相当凄まじい追突だったはずで、それで本当に死者が39人で済んでいるのでしょうか?
 また、事故を起こした車両をさっさと土に埋めようとしていたという事で、この点はやはり私たちの感覚ではついていけない部分も多々あるようです。
 事故そのものも大問題ですが、その原因をきちんと調べて次に生かすという事をしないとまた同じ過ちを繰り返す、というのはもはや日本では当たり前の考え方なのですが、今の中国は中央集権体制の下で、とにかく行け行け押せ押せなので、そこまで考えが回らないのでしょうか。
 事故からわずか38時間で運行再開というのも驚かされるのですが(福知山線の事故の時は、ATSの整備が求められた事もあって再開まで2ヶ月かかった)、去年スイスで発生した氷河急行の事故の時も、2日程度で再開していますから、この辺は中国のみならず、海外は日本と考え方が異なる部分があるのかも知れません。
 いずれにしても、ちょっと今のままでは、中国に行っても高速鉄道を利用すると言うのは、多少自己の安全面でリスクを覚悟しなければならないかも知れません。

 それで、その事故を伝える日本のメディアですが、皆こぞって
「日本では考えられない、起こり得ない」
の一辺倒。
 でもちょっと待って。
 福島第一原子力発電所の大事故はどうでしたっけ?
 あれも、実際に事故が起きる前は、その危険性が指摘された事は皆無に近く、日本ではあり得ないと思われていたのではないですか?
 もちろん原子力発電そのものの危険性は常々叫ばれていたものの、具体的に福島第一原発の構造そのものの問題点にまで踏み込んだ報道が、事故よりも前にメディアから発せられていたとは、少なくとも私には思えません。
 事故後になって「実はああだった、こうだった事が解かった」とか根ほり葉ほり叫ばれて悪者探しに躍起になっていますけれど、私に言わせれば「何を今更」です。
 これは上で少し触れた福知山線の事故でもそうで、よくよく読めば、何も事故を起こした列車だけが突然暴走したわけではなく、ああいう事が起こりうるという前兆が、実はかなり前からはっきり目の前に現れていた事になります。
 だったら各メディアはいったい何を見ていたのか?
 事前に目の前に見える具体的な危険は一切調べず、大事がおきてからああだこうだと叫ぶのは、日本のメディア、ジャーナリズム全体の悪い癖だと思います。

 来年、ANAなどが設立したLCC「PEACH」が就航しますけれど、このLCCに対する今のメディアの態度にも疑問があります。
 とにかく「航空旅行の革命だ」「経済の活性化に貢献だ」とか、そんな事ばかり。
 低コストで飛ぶ以上、安全性はどうなの?という疑問が沸いて当然なのに、それについての調査報道は、今の日本にははっきり皆無です。
 現に昨年春にはスカイマークが度々問題を起こして国土交通省から厳重注意を受けていて(№161)、航空業界の運航の現場からはLCCの運行体制に対する疑問も呈されているのですが(№380)、その点メディアはどう考えているのか?
(ついでに言えば、そのスカイマークの連続して発覚した不祥事に対する報道も、私には少々甘く思えた。これらが例えばJALで起きていたら、同じ態度で挑んでいたのか)
 いざ大惨事になってから「交通にとって大事なのは安全だ」と主張したって、手遅れなんです。
(これは1997年に発生したアメリカのヴァリュー・ジェット機事故に関わる日本での報道でも強く感じました)

 まあ確かに私自身、日本の新幹線が中国のような大惨事を起こすとは思っていませんし、だから一昨日・昨日と関西への往復に、何の疑問もなしに東海道新幹線を利用したりしている訳ですが、日本のメディアもここらで一度、
「中国ではこうだった、では日本の新幹線はどうなのか。本当に日本では考えられない、起こり得ない事なのか」
位の視点を持って、報道に当たってみる事も必要ではないでしょうか?
「事が起こってから遅い」というのは、日本のメディア・ジャーナリズムにこそ言えると思っています。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

 その福知山線事故の背景とされた出来事に関する判決が出ました。
 判決内容はともかく、こういう事があると職場全体のモラルの低下も招くし、なにより人間関係がギスギスしてしまって、安全確保には明らかにマイナスです。
(といって馴れ合いでもダメだが)
 原告側のコメントを聞いた感じでは控訴になりそうで、裁判はまだ長引きそうです。
《今日のニュースから》
JR西日本「日勤教育」 大阪地方裁判所が賠償命令

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