№432 バスジャパン・ハンドブックシリーズR72 富士急行(星雲社)

 本題に入る前に。
 この記事の更新の直前ですが、浜松で遠州鉄道のバスに刃物を持った男が乗り込んで運転士を脅し、20分後に警察に取り押さえられたそうです。
「バスと刃物」というと、関東鉄道の取手の事件が記憶に新しい所ですし、刃物じゃないけれど南国交通の「さつま」の事件もありました。
 更新時点では詳細は不明ですが、こういうの、嫌だなあ。 

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「バスジャパン・ハンドブックシリーズR」22巻目は富士急行バスです。
 富士急行は大月~河口湖の鉄道と、山梨・静岡両県を中心に広範囲なバス路線を営業する事業者ですが、鉄道では「富士登山電車」に下吉田駅、バスでは「KABA BUS」など、なかなかアクティブな展開を見せてくれています。
 
◆ 富士山ぐるっと周遊紀行
 やっぱり富士急だと、富士山一周というのはお約束でしょうか?
 しかし当然見所も多いし、食べ物や飲み物もおいしそうでうらやましい限り。
 ただ、富士宮はやっぱりヤキソバが夕食に上がったようですが、ヤキソバは「B級グルメ」ですから、もうちょっと庶民的な店のほうが良かったような気もします。
 初日は金曜日だったから良かったですが、土日の道路の渋滞はやはり富士急バスにとっては辛いものがありそうです。

◆ 終点の構図 寄(やどりき)
 富士急湘南バスの終点で、神奈川県松田町にあります。
 ここには小田急線の新松田からの〔松51〕系統で行きます。

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 寄は丹沢の登山、特に夏場の沢登りのベースとしても親しまれている所。
 という事もあるのか、この系統は曜日を問わず、1時間に一本程度の運行が確保されていて、この手のローカル線としては利便性は上々といえます。

◆ 富士急バスの路線エリア
 社名からして当たり前ではあるでしょうが、富士山を囲むようにして広範囲にエリアが広がっています。
 静岡側の路線の密度がやはり高いようです。
 最も西のエリアは東海道線沿いの「寺尾橋」らしいですが、ここは市町村合併の結果、静岡市に位置する事になりました。
 つまり、PASMOのエリアが静岡市にまで広がっている事になります。
 本数は少ないですが…。
 なお、この地図は2010年12月1日現在となっていますが、実はこの日、富士吉田~大石プチペンションの路線がトンネル開通によって延伸し、上芦川まで運行される事になりました。
 上芦川では富士急平和観光(以下平和)の石和温泉駅~鶯宿の路線と接続しているのですが、地図には反映されていないようです。
 河口湖駅には季節にも寄りますが、富士急グループで路線バスを運行する7社が全て集まります。
 平和の八王子〔営〕というのは八王子みなみ野駅の近く、JR横浜線と国道16号線の間に位置するようです。

◆ 富士急バスのあゆみ
 富士急バス、というか富士急行といったら、言うまでもなく、富士急ハイランドを筆頭としたレジャー産業で知られていますし、なんといっても橋本聖子、岡崎朋美といった世界的な女子スケート選手を輩出した企業として、一般にも御馴染みでしょう。
 母体は富士山麓電鉄ですが、バス事業が先立ったわけです。
 最近のグループ会社としては、大富士開発や平和観光は、カラーリングからしても富士急グループの一員とは見えないと思いました。
 大富士は多少利用の傾向が特殊だったようだったし。
 1990年代に入って分社化が進みますが、カラーは同じながら、京成グループ同様、はっきりした地域分社になっているようです。
 つまり、「車体は富士急行としか書かれていないが、運転しているのは富士急山梨バスとか、富士急湘南バスの運転士だ」という事はない訳です。
 ただ、車両は大元の富士急行から割り振られているようでもありますが…。
 車両の写真では、特に「グリーンベルト」をまとった日野車体のモノコックが、「いかにも富士急バスだよなあ」と、今でも感じる所です。
「ワールドバス」の写真がなかったのが残念。入手できなかったのかも知れませんが…。

◆ 車両の現況
1. 今回は乗合・貸切・高速それぞれに傾向を探って見ます。

《乗合》(コミュニティを含む) 一応平均的な車齢は8.35年。
 ただし、フジエクスプレス(以下EXP)の乗合参入は2004年の「ちぃばす」と最近の話で、EXPの48台を除外すると、9.38年となります。
 EXPを除くと、2000年までに導入された車両が48.3%と、未だに20世紀に導入された車両が全体の半分近くを占めています。
 やはりローカル線が多い事業者だからでしょうか。
 それは事業者別にもはっきり現れていて、平均の車齢が富士急の御殿場〔営〕9.10年、富士急シティ(以下シティ)8.81年、富士急静岡(以下静岡)9.37年に対して、富士急山梨(以下山梨)11.38年、富士急湘南(以下湘南)11.85年と、ローカル線主体の山梨、湘南がかなり高齢化している事が読み取れます。
 といっても山梨も湘南も首都圏に近いのですが、特に山梨の大月〔営〕は、路線車の7割以上が20世紀の導入で、平均車齢が12.22年と最も高くなっています。
 一般路線車3台だけの平和は3台とも1990年代の車両。
 最高齢は湘南に在籍する、1991年式のU-HT3KPAA。
 ひょっとしたら神奈川県でも最高齢の路線車かも。

 ノンステップ車はコミュニティを除くと富士急本体の他、EXPの横浜〔営〕、静岡・シティ・山梨各社の各営業所に在籍があります。
 ただし、ここも地域によって差があり、静岡の富士宮〔営〕44.4%、シティの43.8%に比べ、山梨の上野原〔営〕はBLCハイブリッドが1台入っただけ(富士山ナンバーのままなので転属と思われる)で5.6%、富士急本体の御殿場〔営〕19.4%、山梨の大月〔営〕が22.2%。

 合わせて考えると、静岡県の三島・沼津~吉原・富士といったエリアは観光地は少ないけれど、坂道が少ないし、工業地帯を控えて利用がそれなりに多いと思われるので、新しいノンステップ車の割合が高くなるのでしょうか。
 最も、BLCハイブリッドが導入されるまでのノンステップ車は、全て中・小型なのですが。

《貸切》
 貸切は一応、富士急グループの全ての事業所に配置されています。
 ただし山梨の上野原〔営〕の3台は全て相模原市(多分藤野町)の幼稚園バス、静岡の富士宮〔営〕もトヨタ・コースター1台だけです。
 またEXPの本社〔営〕は企業送迎用の、見た目は路線車そのものという車両をかなり含んでいます。
 一応それらも含めた全貸切車両の平均車齢は7.92年と、路線車と比べるとさすがに若い。
 この中で平和は、元々の事業地盤の本社〔営〕(甲府)が、平均車齢12.65年と相当高いのに対し、前述の八王子〔営〕は6.13年と両極端。
 営業の軸足を、首都圏に近い方に移そうとしているのでしょうか。

《高速》
 高速車は7社の11事業者に配置され、平均車齢が6.21年。
 シティと静岡には合計で4台、ジェイアールバス関東から購入した車両があります。
 なお静岡の鷹岡〔営〕にはヒュンダイのユニバースが入りましたが、バスジャパン・ハンドブックシリーズでは、前身のバスジャパンから数えても、韓国製のバスは初登場です。

2. 冒頭の紀行でもナンバープレートの話が少し出ました。
 富士山ナンバーは、富士急グループのバスの事業所では本体の御殿場〔営〕・河口湖〔営〕、山梨の河口湖〔営〕、静岡の鷹岡〔営〕・富士宮〔営〕が対象になります。
 施行は2008年11月4日ですが、富士急では富士山ナンバーエリアの事業所では全車一斉に、その他のナンバー(山梨・沼津・品川・足立・八王子・横浜・湘南・大宮)はそれ以降の登録・他エリアからの転属時に希望ナンバーにしているようです。
(横浜〔営〕は全車交換済み)

 湘南の山北町コミュニティは2台とも「1122」で、意味が解かりませんでした。
 ただ、この2台は山北町所有で、役場の電話番号が「0465-75-1122」なので、ここから来ているのでしょうか。
 また、湘南には相模ナンバーが6台残っています。
「富士」急行で湘南ナンバーとは、未だにピンと来ない部分もあるのですが…。
(平和は一時期相模湖〔営〕 … プレジャーフォレスト(ピクニックランド)の中だったらしい … があったので、所属車両が相模ナンバーになっていたはずだが、八王子移転であっさり消えた)

 それから、「横浜230あ2742」(EXP横浜〔営〕のH2742)って、実在するのでしょうか?
 下二桁「42」「49」はナンバープレートでは使えないはず、と思っていたのですが?
(「バスラマ・インターナショナル119」のリストにもあります…)

 富士急行そのものへの感想として言うと、ロケーションとして観光業に力を入れざるを得ないのも当然でしょうが、もう少し一般の路線バスも、近代化が進んで欲しいかな。
 静岡エリアはいいですが、首都圏に近い上野原とか、松田あたりは大型のノンステップ車が欲しいし、ダイヤやインフォメーションの充実も図って欲しい。
 「バスラマ」の時にも書いたけれど、道志村への路線なんて、村を貫く幹線が休日運休とはさすがにどんなものだろう?
 まあ松田〔営〕なんて、ローカル線が多い中、ある程度固定の利用が見込めた第一生命が、再編成で大井の事業所を縮小するなんて言っているので苦しいかも知れませんが…。
 東京・横浜でEXPの路線車を見る機会が増えましたが、横浜に関しては、先日の「カーフリーデー」のイベントの際に関係者に伺った所、独自で路線網を拡大する予定は今の所ないそうです。
 それから、ある程度のシェアがあった日産ディーゼル→UDトラックスが事実上バス生産中止となった事は、今後の車両計画にどれほど影響を与えるでしょうか?
 JBUS系中心になりそうだが、高速でユニバースが増えるのかも…。

 さて、次回は冒頭の紀行でフライング気味?に話が出たようですが、神戸市交通局だそうです。
 神戸市営バスはバスジャパン№7の「BUS BODY WATCHING」で取り上げられて以来ですが、あの時は車庫内の取材が認められなかったとかで、やむを得ない事ですが若干物足りない仕上がりでした。
 23年後のハンドブックシリーズではどうでしょうか。
 
 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
国連総会 リビアの人権理事会のメンバー資格を停止

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