前回は「バスマップの底力」のレビュー(+オピニオン?)でした。
バスマップは、マップ自体もさる事ながら、配布場所も問題になります。
「…底力」では書店などでの販売というケースも多くあったようですが、私は基本的には、無料にしろ有料にしろ、バスの事業者の案内所で手に入れたい時に、すぐに最新のものが手に入るようにすべきと考えています。
またバスマップに限らず、定期券やICカード等の販売、その他各種営業案内(バスに限らず、地下鉄や路面電車も)に至るまで、バスの案内所の役割は重大なはずです。
ところが、これはむしろ大都市で顕著なようにも見えますが、バスの案内所が適切な場所に設けられていないケースが相当数散見されます。
ここでは実在の例を元に、バスの案内所はどうあるべきか、ちょっと考えてみます。
一例として、横浜市港南区の上大岡を挙げてみました。
上大岡は港南区最大のターミナルで、京急線の上大岡駅は1日の乗降客が約14万人強と、京急の駅では第3位(泉岳寺は除外)、横浜市営地下鉄ブルーラインも1日約3万2千人の乗降があります。
バスは横浜市交通局を始め神奈川中央交通、江ノ電バス横浜、京浜急行バス(横浜京急バス含む)の発着があり、2月現在の平日ダイヤでは、神奈中604便、市営340便、江ノ電281便、京急240便、合計で1465便の出発があります。
(深夜バスを含み、高速バスを除く)
ところが、4者とも上大岡駅やその近辺に「案内所」を置いていますが、皆てんでバラバラな位置に設けられているのです。
京浜急行バス 上大岡案内所 10:00~20:00 年中無休
京急観光が運営する旅行代理店「ルトラン上大岡」に同居。
京急の駅の構内、出札口のならびにあるだけに至便。
ただし、旅行のパンフレットがズラッと並んでいて、定期券発売所であることは解かりづらい。
ここでは江ノ電バスの定期券も発売している(委託)。
ただし、路線等の詳細はここでは解からない。
横浜市交通局 上大岡駅お客様サービスセンター 平日10:00~20:00、土休日10:00~17:30
連絡通路の中央にある。
バスの他に地下鉄も取り扱う。
地下鉄の鉄道模型が走り、グッズの販売も行う。
神奈川中央交通 港南中央サービスセンター 10:00~12:00・13:00~18:00
このサービスセンターは、ファミレスや本屋、「オートバックス」等が入っている「グッディ・プレイス」の中にある。
「グッディ・プレイス」は、以前の神奈中バスの横浜営業所・笹下車庫の跡地に建てられた複合施設で、その名残でサービスセンターが設けられ、定期券を発売している。
ただし、上大岡駅からは遠く、徒歩では10分程度かかってしまう。(バス停2つ分)
江ノ電バス横浜 横浜営業所 9:00~20:00
上大岡駅付近の路線を中心に運行する拠点。
事務所の一角に窓口が設けられている。
夜行高速バスの乗車券の発券なども行っているが、上大岡駅から利用しようとしたらバス停3つ分、徒歩だと15分はかかるだろう。
また、窓口が吹きさらしなのもマイナス。
上大岡駅付近のバス案内所の略図です。
こうしてみた通り、同じ上大岡駅を発着するバス事業者でも、かなりロケーションが違う事が解かります。
特に神奈中バスは市営バスから多数の譲渡を受け、北部方面への便も相当多くなったのに、サービスセンターの位置が今の場所では、定期券の購入などは相当不便なのではないでしょうか。
しかもこれが鉄道だったら最寄の定期券発売所まで無料で行ける扱いがあるのが普通ですが(最も最近は定期券を購入できる自動券売機が普及し、あまりこういう例はないようだ)、バスだとそういう事もないし。
それ以前に、バスの利用について聞きたくても、誰に聞いたらいいか、初めて上大岡駅(特に京急線)に降り立った人は困ってしまうでしょう。
もっと困ったケースもあり、例えば東戸塚駅は東西両方に神奈中バスが乗り入れる上、東口には1路線だけですが市営バスが残り、西口には相鉄バスが入ります。
しかし、バスの案内所は3者とも存在しません。
バスに関して情報を得ようにも、定期券を購入しようにも、これでは途方に暮れてしまうのではないでしょうか。
戸塚は東西に神奈中バスのサービスセンターがあり、東口には別に江ノ電バスの案内所がありますが、神奈中の東口のサービスセンターは再開発の影響か、バス乗場から離れた場所に移動してしまいました。
神奈中も江ノ電も同じ小田急グループなんだから、案内所の統合なんて出来ないのかと思うのですが。
最大のターミナル・横浜駅からして問題がかなりあります。
西口については、市営バスの案内所はなくなってしまい(跡地はヨドバシカメラのDPE受付)、地下鉄駅の構内にサービスセンターはオープンしたものの、西口のバスターミナルからは遠くなってしまいました。
相鉄バスの案内所も、委託で営業していた相鉄観光の閉店もあるのか、鶴屋町(旧高速バスセンター)に移転してしまいました。
バスの案内所なのに、なんだかどちらもバス乗場からはどんどん遠ざかっていくようです。
神奈中バスに至っては最初から西口には案内所がありません。
東口の新都市センタービルに案内所がありますが、西口からはかなり離れています。
全体的に見ると、同じバス事業者でも横浜市営バスのように同組織に地下鉄があったり、京急バスや東急バスなど鉄道から分社した事業者だと、駅の構内に案内所があるケースもあり、まだいいほうかも知れません。
しかし神奈中バスのような、最初からバス専業だと、この点でかなり見劣りがしてしまっているように思えます。
(もちろん厚木サービスセンターのような例外はありますが)
横浜市以外にも似たようなケースは多く、これではとても気軽にバスの情報を得たり、サービスを受けたりする事は出来ません。
案内所が事業者別なので、「他社の事はわからないので…」と言われたらその社の案内所まで延々移動しなければならず、利用者からしたらたらい回しされているように感じるかもしれません。
また、大半の案内所では、利用者は窓口の外で吹きさらしになります。
鉄道でさえ、駅務室はガラス張りのカウンター方式が一般的になりつつあるのですから、バスのサービスの改善は、残念ながら遅れているといわざるを得ません。
前回の「…底力」でも触れられていましたが、欧州の公共交通の案内所の充実振りは素晴らしく、必要な情報が簡単に手に入る上に、何よりも屋内のカウンター式が普通、ガラス張りになっていて明るくなっているのにも好感が持てます。
日本でも全く例がないわけではなく、例えば京都駅烏丸口は高速バスの乗車券窓口と一体の建物の中に京都市営バス等の案内所が同居していたり、青森駅前は新幹線延伸開業もあったのか、JRバスと青森市営バスの案内所が統合され、同じ建物の中で業務を行うという例もあります。
関東地方でも、同じような事、もっと上を行く事は出来ないのでしょうか。
横浜市内を想定して、いくつか提案をしてみます。
1.利用者の大半は鉄道の駅を経由してバスを利用する事が多い。従って、バスの案内所は駅構内にあるのが望ましい。
横浜駅の場合は、中央通路に観光案内所が存在する。ここを大幅に拡幅して、横浜駅の東西に発着する一般路線バス全事業者の営業が行えるようにする。
この他のバスの系統が多数集中するような駅も、改札口に隣接(出来れば真正面が望ましい)して統一バス案内所を設置する。
特にJRの駅の場合、(横浜市では旧国鉄のバスが初めからなかったこともあってか)バス乗り継ぎの利用に対する案内を想定した構造になっていない。
これから駅舎を今後大きく改築する必要が出てきた場合は、バス案内所の入居を初めから考慮しておく。
これにより、特に駅の両側に分かれているような案内所を、屋内の1か所に統合する。
ともかく、案内所が肝心のバスターミナルから遠く離れた場所にある、という事だけは解消されなければならない。
2.定期券発売やバスマップ配布だけでは利用者が来そうもない、と思われるのなら、本業に差し障りがない程度に副業を行ってもいい。
最近はバス関連のグッズの販売も目立つし、事業者がオリジナルのグッズを作ったっていい。
バス(交通)関連の書籍・雑誌、バス事業者などが発行するフリーペーパーなどを置くのもいい。
上大岡の市営サービスセンターのように、鉄道模型とかおいて人目を引くのもいい。上大岡では、市電博物館で上映していた、市電廃止直前のカラー映像(№238をどうぞ)を放映し、親子の目を惹いていた。こんな試みも必要。
観光案内所がある所なら、そこと同居させてもいい。
ただし、いずれのケースでも必ずバスの案内業務を行っている事をはっきり表示する事。
そうでないと、観光でない地元の人などに、「ここではバスの事なんて解からないよ」という誤解を与える事になる。
3.事業者の垣根を越える以上、運営主体は基本的にはバス協という事になるのか?
あるいは各事業者が合同でシフトを引くのか。
しかし今は横浜のバスの殆どがPASMOを導入していますから、PASMOの案内・普及活動を兼ねて、PASMOに運営を委託してもいいかも知れません。
4.なお、昨日の「…底力」にも関連するが、バスマップ上には、案内所の位置を必ずマークで記載しておく。
(前回ご覧頂いたフランス・ルーアンのバスマップには、3ヶ所の案内所が i マークで記されていました。)
今のバス案内所は「バスマップ」とかいう以前の問題として、肝心のバスの利用に関してあまり役にたっていないのではないか?単なる事務的な手続きを済ませる場で終わってしまっているのではないか?という気がしています。
それではつまらないではないですか。
鉄道の駅が単に切符を買って、電車に乗って終わり、ではなくなりつつあるように、是非バスの世界も、利用して便利、訪れて楽しい、そんな場に育って欲しいと思います。
ここでは横浜を中心にした都市部に絞りましたが、地方でバスを中心にした交通体系がある場合には、その拠点となる場所でも応用できる事だと思います。
あるいは、それこそ新しいタイプの「バス駅」に発展するのかも知れません。
申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
《今日のニュースから》
GDP(国内総生産の伸び率) 中国に抜かれ3位に後退
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