№389 乗り物中心のフランス旅行記 10

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 いよいよフランスは最終日となりました。

11月4日(木)
 ミラノ行TGVはパリ・リヨン駅を夕方発車するので、午前中はまるまる時間がある。もう一箇所、パリからすぐいける場所に列車で行きたい。パリから1時間強のルーアンがいいだろう。LRTもあるそうだし。
 合計で2度・3泊したクリシーYHをチェックアウト、最寄の地下鉄の駅からサン・ラザール駅へ向かう。さすがに平日の朝、地下鉄の駅も車内も混雑が激しい。
 サン・ラザール駅は残念ながら大規模な改良工事の真っ只中で、一部の駅機能が駅前広場に仮設で移されている。おかげで駅舎の全景を見る事はできない。構内のホームは向かって左のエリアが近郊線、右が長距離で、近郊線では前回取り上げたものとは違った、もう少しデザインが近代的なステンレスの電車が運用されている。もっともこちらも釣掛け式のようだが。

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SNCF 13103列車
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SNCF 13103列車1等室
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SNCF 13103列車2等室

 ルーエン行は新型ダブルデッカー電車で、これまで何回か乗ってきた中では新しいほうだろう。座席が、27日(№377)に乗った、TGV東ヨーロッパ線と同タイプだ。英語の表示もある。
 残念ながら今日も曇り空。パリ近郊はほとんど晴れなかったなあ。右側を
セーヌ川が流れる。プッシュプルのPCに混じって、TGVとも2本すれ違う。どちらもル・アーブルからの列車で、1本はストラスブール、もう一本はマルセイユ行だ。柔軟な運行系統を設定できるのはTGVの強みだろう。

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セーヌ川

 ルーアンが近づき、セーヌ川を渡る頃には大聖堂が見えてくる。しかし終点が近いというのに、この付近からノロノロ。どうもフランスでは、せっかく定時で走ってきても終点近くで速度がガクッと落ちて、遅れを作って終点到着というケースが少なくないように感じる。この列車も7分の遅れになった。

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ルーアン・リブ・ドロワット駅
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ルーアン・リブ・ドロワット駅駅舎内
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ルーアン・リブ・ドロワット駅駅舎内壁画

 ルーアン・リブ・ドロワット駅のホームは半地下タイプ。ここも体育館みたいなドーム状の駅舎に趣きがあり、時計塔が目立つ外観もさることながら、壁画がある内部もまた見ものだ。フランスはほとんどの駅の駅舎が、大きい所も小さい所も昔ながらのもので、駅舎に興味がある人ならたまらない国だろう。
(それだけにストラスブールやアミアンが少々残念なのだが)
 LRTの前に、軽く市内観光。

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ノートルダム大聖堂
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時計塔
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ジャンヌ・ダルク教会
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左から2番目がジャンヌ・ダルク博物館

 小ぢんまりした中心街は、木組みの建物が多い。ひょっとしたらフランスでは珍しいかも。ここはジャンヌ・ダルクが火焙りの刑に処せられた所で、記念した教会や博物館があったりする。教会はステンドグラスが見ものではあるが、ジャンヌ・ダルクとは関係ないものが描かれている。大聖堂は改修工事中。別に世界遺産に指定されたりしている訳ではないのだが、思ったより日本人が多いようだ。ツアー?
 なお、リブ・ドロワット駅付近には両替ができる場所がないので注意。
 大聖堂そばの観光案内所の内部に両替商が入っている。

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ルーアンLRT
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ルーアンLRT 車内

 いよいよ「おまちかね」のLRT。車両はグルノーブルの初期タイプ、あるいはパリのT1と同タイプの中央部低床タイプだ。

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ルーアンLRT ギャル・リュ・ヴェルト駅
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ルーアンLRT パレ・ドゥ・ジュスティス駅入口

 このLRTは「メトロ」と呼ばれ、ブ・ドロワット駅前のギャル・リュ・ヴェルト駅からパレ・ドゥ・ジュスティス駅に掛けては地下線になっている。本格的な山岳トンネル工法が採用されていたりして結構深い。

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ルーアンLRT 芝生軌道
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ルーアンLRT ポール・セザンヌ付近
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ルーアンLRT ジョルジュ・ブラック終点
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ルーアンLRT 電停

 LRT「メトロ」は2系統ある(系統番号の設定はない)が、その内ジョルジュ・ブラックへ行く路線に乗ってみる。
 起点は地上にあるブーリングリン(と読むのか?)で、バスターミナルが併設されている。リブ・ドロワット駅から2区間しかない位近い場所なのだが、バスがリブ・ドロワット駅に入らず、ここでLRTに接続となっているのが興味深い。(実は、リブ・ドロワット駅を発着する市内バスは、路線図を見る限り3路線しかない)
 時刻表を見ると、もう一方の系統のテクノポウル行共々、平日は8~10分毎、土曜日8~12分毎、しかし休日は20分間隔とガクンと減る。また平日も8月は減便になる。
 地下線を抜けてセーヌ川を片側軌道で渡る。SNCF駅に隣接するギャル・リュ・ヴェルトは案外乗降が少ないが、停留所毎に乗客が増えていく。街の中心は駅にはないという事だ。車両は昨日のパリT1と同じだが、客層が大分違い、黒人はほとんど見られない。学生が多いかも知れない。
 ロータリーの交差点は地下線でクリア。5月8日広場付近からは団地が並ぶ。終点のジョルジュ・ブラック付近は閑静な住宅街。ちょうど30分。
 もう一方のテクノポウルへ行く時間は残念ながらなくなってしまった(ジョルジュ・ブラックからバスがあるが時間が合わなかった)。それどころか、理由はわからないがダイヤが乱れがちで、電停の表示では、次の電車が20分後になってしまうらしい。下手するとパリへの列車に間に合わないかも知れない。おとなしく引返す。それと、ルーエンには「TEOR」という専用レーンを使用したバスシステムがあり、光学式ガイドウェイバスが試験的に使われているとも聞いたが、こちらも見る機会がなかったのが惜しまれる。観光をしなければ良かったのかもしれないが。

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SNCF 3116列車 2等車
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SNCF 3116列車 2等車車内
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サン・ラザール 近郊電車

 帰りのパリ・サン・ラザール行はル・アーヴルを始発とするプッシュプルの客車編成で、ルーアン~パリはノンストップ。客車は最後部の2等1両を除いて改装が行われているのだが、この改装されていない車両は窓ガラスが汚い。また、他の車両も含め、トイレは水洗ではあるものの洗面台の水が出ないなど、どうもあちらこちら不備が目立つようだ。
 行きと同じ道なので特筆するような事はない。パリが近づくと近郊電車の他、RATPのマークをつけたRERも見かけるようになる。それにしてもパリは世界でも有数の大都市のはずなのに、少し中心部から離れると、もうどこか田舎風情だ。東京とは決定的に違うと思う。

 サン・ラザール駅から、ミラノ行TGVが出発するリヨン駅までは地下鉄14号線で移動する。この路線は完全無人運転で、先頭部に運転室がなく、展望席風になっている。また、駅が少なく、特にシャトレ~リヨン駅は、在来の地下鉄では2つ3つ位駅がありそうな程の距離で駅がない。ホームはガラス張りのホームドアが設置されている。

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地下鉄入口 新タイプ

 駅への出入口も、それまでのクラシカルなものと違ってモダンだ。

 いよいよフランス最後の列車になった。ミラノ行TGVは昔ながら?のシングルデッカーで、1ユニットのみ。アルストーム社製で1994年製だそうだからTGVとしてはもう古参か。

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TGV9299列車 2等車車内

 2等だと車内も少々窮屈かもしれない。そろそろ更新が必要では…。
 定刻にリヨン駅5番ホームを出発。何度も出入したパリともしばらくはお別れだ。

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高速道路
 10分足らずで高速新線に入り、併走する高速道路の乗用車やトラックを楽勝で置き去りにしていく。リヨンまでは今回2回走っているけれど、どちらも外は暗くなっていたから、改めてじっくり景色を眺める。途中2箇所、将来の駅の設置を想定していると思われる待避線が分岐。でも付近に人気は感じられない。
 それにしても沿線は相変わらずひたすら田園地帯。人家が全くといっていい程見られない。柵のすぐ向こうで羊が草を食むなんて車窓は、やはり日本の新幹線(特に東海道)とは全く異なる。空は広いはずなのに、ひたすら曇り空なのが残念だ。それと、アップダウンが多い。
 さらに17時前後に、今度は営業のTGV専用駅、ルクルゾーとマコンを通過するが、どちらもホームの佇まいは在来線の小駅のそれと大して変わらないように思えた。やがて左へ右へ、路線が分岐していく。直接ジュネーブへ行く路線と、リヨンの中心部に行く路線だろう。

 こちらはリヨンはサン・テグジュペリ駅に到着する。何が原因か解からないが、6分の遅れが発生している。意外に降車する乗客が多い。 高速新線はこの駅で終わり、在来線に合流する。残念ながら外は見る見る内に暗くなってきた。
 シャンベリも遅れを取り戻せないまま到着。5分停車時間があるのだが、何しろ降りる乗客は客層を問わず皆大荷物だし、加えて高いステップがあるため乗降に非常に時間がかかる。遅れを取り戻せぬまま出発。

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モダーヌ駅

 いよいよフランス最後の駅、モダーヌ。駅構内は広いようでELが多い。ここまで見かけなかった新型も見られるし、別の場所にはイタリア鉄道(FS)のELも並んでいる。夜空を見上げると星が美しい。ここは快晴のようだ。

 これでフランスともまた、しばらくのお別れ。次に来れるのはいつの日だろう。

 モダーヌを出発すると右側通行に変わり、国境のトンネルをノロノロ運転で通過する。FSの車掌が検札に回ってきた(そういえばSNCFの車掌は検札には来なかったなあ)。

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バルドネッキア駅

 イタリアに入って最初の停車駅バルドネッキアには、FSの近郊客車列車が停車していたが、ELはない。フランスの列車も見られず、鉄道の運営上の境界はやはりフランス側のモダーヌという事になる。駅名がはっきりイタリアだなあ。
 どうした事か、なかなか出発しない。なにやら放送は流れているようだが、フランス語orイタリア語では解からない。この間乗客は思い思いに外に出てタバコで一服。イタリアもホームは禁煙ではないようだからやはりタバコで煙くなる。結局原因不明(あるはずだが)のまま18分まで遅れを増幅させて出発した。ただでさえミラノ着が22時25分予定なのだから、せめて定時に走って欲しいよ、とは思うが…。

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TGV 9299列車 BAR

 そろそろBARで軽くても夕食を…と思ったのだが、食事になるようなものは皆無に近かった。ベーグルサンドとコーラ、ミネラルウォーターと、とても夕食とは思えぬ内容のものしかなかった。最初からないのか、フランス国内で既に売り切れていたのかは解からない。何しろメニュー自体置いていなかった。カップの「Seaf Express」のマークからして、イタリアの業者らしいのだが。BARを訪れる乗客自体も少ない。そもそもこの列車の乗客自体がかなり少なくなったようだ。

 もう一つウルクスに停車して、トリノはポルタ・スーサの地下駅に到着。ここで遅れは13分に短縮。FSは最近、駅構内の各種表示のフォントを変えているようだ。トリノを過ぎるとFSの新型電車をいくつか見かける。
 車内は大分静かになったが、ミラノが近づくと身支度で急に慌しくなってきた。ミラノ到着直前には路面電車、そしてFSの高速列車ETRも見かけるようになった。

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ミラノ中央駅到着

 22時30分、ミラノ中央駅3番線到着。遅れは5分にまで縮まっていた。FS、やるじゃん。
 ミラノ中央駅は10年前に来た事があるけれど、記憶違いかもしれないが、その時にはこんなのあったっけ?というような高層ビルが駅前にそびえていた。駅自体も改良工事中だ。

 さて、駅のすぐそばのホテルにチェックイン、TVのBBC Worldに合わせると(CNNは入らない)、何とビックリ。カンタス航空のA380がシンガポールを離陸直後第2エンジンを破損させ、緊急着陸したというので大騒ぎになっていた。幸い死傷者が出るような惨事にはならなかったが、場所が場所だけに今後の波紋は大きいだろう。
 明日は帰国。早めにマルペンサ空港に行かなければならないはずなのだが、このニュースを見るためもあって、就寝が24時を回ってしまった。マルペンサ空港は電車で行こう。
 
 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

 今日は寒かったです…。TVニュースで見た富山の市内電車も凍えているようでした。
《今日のニュースから》
日本海側中心に寒波 静岡・大阪・徳島・熊本で初雪を観測

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