№247 JTB時刻表大研究(グラビア編) 駅旅本線

 多少間が空いてしまいましたが、「JTB時刻表大研究」のカラーグラビアについて取り上げる第2段。
 今回は、杉﨑行恭氏の「駅旅本線」。
 連載開始が2005年5月号で、途中休みを挟みながら2010年6月号で55回目を迎えています。
(ただし6月号は映画「RAILWAYS」関連のスペシャルで、レギュラーは5月号の高野山駅で54回目。)

 杉﨑行恭氏は主に駅舎関係の著作をされているようで、過去にはJTBキャンブックス「日本の駅舎」「駅舎再発見」を刊行されています。
 JTB以外だと、新潮「旅」ムックの「日本鉄道旅行地図帳」シリーズにもコラムを寄せられています。
 そして、「駅旅本線」連載50回を記念して、今年の春、「駅旅入門 行ってみたい駅50」として単行本になりました。
 なので、ここではこの単行本のレビューという形式も合わせてみたいと思います。

 まず、この連載が開始されてから、今年5月号までに取り上げられた駅を並べてみます。

1 2005年 5月 上野 (JR東日本)
2 2005年 6月 南島原 (島原鉄道)
3 2005年 7月 湯田中 (長野電鉄)
4 2005年 8月 川湯温泉 (JR北海道)
5 2005年 9月 津軽五所川原 (津軽鉄道)
6 2005年10月 鞍馬 (叡山電鉄)
7 2005年11月 琴平 (JR四国)
8 2005年12月 長瀞 (秩父鉄道)
9 2006年 1月 嘉例川 (JR九州)
10 2006年 2月 比羅夫 (JR北海道)
11 2006年 3月 出雲大社前 (一畑電車)
12 2006年 4月 養老 (近鉄 ※現在は養老鉄道)
13 2006年 5月 片瀬江ノ島 (小田急)
14 2006年 6月 弥彦 (JR東日本)
15 2006年 7月 遠野 (JR東日本)
16 2006年 8月 別所温泉 (上田交通 ※現在は上田電車)
17 2006年 9月 河口湖 (富士急行)
18 2006年10月 遠軽 (JR北海道)
19 2006年11月 嵯峨嵐山 (JR西日本)
20 2006年12月 永平寺口 (えちぜん鉄道)
21 2007年 1月 門司港 (JR九州)
22 2007年 2月 銭函 (JR北海道)
23 2007年 3月 八幡浜 (JR四国)
24 2007年 4月 極楽寺 (江ノ電)
25 2007年 5月 吉ヶ原 (片上鉄道保存会 ※同和鉱業・1991年廃止)
26 2007年 6月 天竜二俣 (天竜浜名湖鉄道)
27 2007年 7月 美瑛 (JR北海道)
28 2007年 8月 松代 (長野電鉄)
29 2007年 9月 渋民 (IGRいわて銀河鉄道)
30 2007年10月 三峰口 (秩父鉄道)
31 2007年12月 柏崎 (JR東日本)
32 2008年 1月 日光 (JR東日本)
33 2008年 2月 稚内 (JR北海道)
34 2008年 3月 山梨市 (JR東日本)
35 2008年 4月 隼人 (JR九州)
36 2008年 5月 芦ノ牧温泉 (会津鉄道)
37 2008年 6月 竜王 (JR東日本 「駅旅入門」不掲載
38 2008年 8月 宇治山田 (近鉄)
39 2008年 9月 陸別 (ふるさと銀河線りくべつ鉄道 ※ちほく高原鉄道・2007年廃止)
40 2008年10月 鳴子温泉 (JR東日本)
41 2008年11月 大歩危 (JR九州)
42 2008年12月 大磯 (JR東日本)
43 2009年 1月 浜寺公園 (浜寺公園)
44 2009年 2月 萩 (JR西日本)
45 2009年 4月 伊予西条 (JR九州)
46 2009年 6月 若桜 (若桜鉄道)
47 2009年 7月 芦野公園 (津軽鉄道 ※旧駅舎)
48 2009年 8月 知床斜里 (JR北海道)
49 2009年 9月 加賀一の宮 (北陸鉄道 ※2009年廃止)
50 2009年10月 直方 (JR九州)
51 2009年11月 寺田 (富山地鉄)
- 以上が「駅旅入門」掲載 -
52 2009年12月 能代 (JR東日本)
53 2010年 4月 下小代 (東武 ※旧駅舎)
54 2010年 5月 高野山 (南海)

 まず最初にあれっ?と思った事。
 時刻表の連載では51回目だった寺田駅が入って、それで単行本では50駅。
 実は上でも注釈を入れましたが、第37回の竜王駅が単行本では掲載されていないのです。
 この駅はパーク&ライドを実施しており、特急<かいじ>2往復が始発・終着としているのですが(他の特急は全て通過)、2008年の3月に、安藤忠雄氏設計の橋上駅舎に改築されたばかりだったのです。
 駅自体は斬新・モダンな造りなのですが、どうも単行本に載せるには、コンセプトからして合わなかったようです。
 杉﨑氏自身、後書きで「昭和30年代以前に建てられた独特の雰囲気を持つ駅から選んでいる。」と書いています。
 また、すぐ近くで同じ中央本線の山梨市(34回)が取り上げられている事もあったかも知れません。
 なので竜王はあえてはずし、51回目の寺田を加えて50駅としたのではないでしょうか。
 もっとも、鳴子温泉や陸別のように、平成になってから改築された駅もなくはないのですが。

 それと、JR東海の駅が一つもありません。
 杉﨑氏選定の「新『日本の駅舎』100選」には8駅がノミネートされているので、いずれは取り上げられるのかも知れません。

 取り上げられる駅の傾向としては、もちろん杉﨑氏が語っているように、駅舎に雰囲気がある駅が多いという事はあるでしょう。
 加えて時刻表のグラビアを飾る訳ですから、やはり駅そのものが旅情をかき立てるものでなければならない、という事はあるかと思います。
 なので上野は例外としても、一日に百万人前後の利用がある東京や新宿・大阪といった大ターミナル、あるいはニュータウンに新しく造られた新線の駅といった所は対象にはなり得ない。
 逆に駅舎もなく、「こんな所、乗り降りする人なんているのか?」と思うような「秘境駅」も、独立しては入れられない。
 純粋な無人駅がほとんどない(現役では加賀一ノ宮のみ。廃止間近という事もあっただろう)事でも解る通り、ある程度人的なコミュニケーションが発生している事も、選定の基準になっているように思えます。

 杉﨑氏は駅舎の保存についても意見を入れています。
 しかし、私は建築の素人だからはっきりとは言えませんが、門司港駅の「シロアリの問題がある。」との駅長の発言にもある通り、特に木造駅舎だと保守・修繕に相当な労力や費用がかかってしまうだろう事は十分創造できます。
 門司港は国の文化財指定だから国レベルで支援してくれるかもしれないが、地方の小駅だと難しい部分も多くなるだろうと思われます。
 また私鉄で顕著ですが、輸送力増強や都市整備計画により高架化あるいは地下化が行われるとか、逆に利用者の大幅な減少で鉄道そのものが廃線になり、現スタイルの駅舎を維持できなくなる場合もあります。
 吉ヶ原や「入門」番外編の熱塩のように地元が保存に熱心ならいいのでしょうが。
 ただ、私個人の意見としては、やはり駅舎なのだからモニュメント的なものではなく、「駅」の機能の一部として残って欲しいとは思います。
 単に「残せ」と叫ぶだけでなく、ではどうやって残していくのか?
 維持の費用はどうするのか、需要が増大して駅舎等の施設が対応できなくなった時は?
(例外もあるだろうが、乗降が1万人位になると、平屋建てでは苦しいかも)
 そんな事も、あらかじめ考えておくべきだろうと思います。
 あるいは№79で書きましたが、旧駅舎のイメージそのままに新駅舎に建て替えられた、関東鉄道常総線の騰波ノ江駅も、一つの解答なのかも知れません。

 多少脱線してしまいますが、ここでその高架化によって姿を消した、個性的?な駅舎の写真をご覧頂こうと思います。
 
画像

 西武池袋線の中村橋駅。
 1995年の撮影。
 東京23区内にこんな駅舎があったとは奇跡的ではありました。

画像

 こちらは1991年撮影の名鉄名古屋本線・本宿駅。
 背後には既に工事中の高架線が見えます。

 建築的な視点で言うと、駅だけでなく、周辺の建物も注意して眺めてみたいですね。
 「駅旅本線」では、津軽五所川原駅前の津軽鉄道本社もそう。
 それから写真がなくて申し訳ないのですが、JR御殿場線の松田駅前にあるタクシー会社のビルとかも機会があったら見て下さい。

 ところで、宮崎県の口蹄疫流行の問題が、連日TVや新聞を賑わせているのはご存知の通りです。
 処分されてしまった家畜の事を思うと胸が痛いのですが…。
「駅旅本線」では今の所宮崎県の駅は取り上げられていませんが、杉﨑氏選定の「新・100選」には、最初に口蹄疫が発見された川南町の隣にある都濃駅がノミネートされています。
 今は駅旅どころではないでしょうが、いつか口蹄疫の流行が収束した時、都濃駅も取り上げられればいいと思います。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。(名前は公表しません。)



北陸線写真帖?機関車 駅舎 鉄道マン
北國新聞社




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