№130 西鉄〈ムーンライト〉 京都線と統合

 先月20日、西鉄は3月~秋口にかけて、バス事業の大幅な縮小を行うと発表しました。
 このうち高速バスについては、3月1日に3路線を廃止・9路線で減便を行うとしていましたが、具体的な路線名は公表されていませんでした。
 しかし、一昨日2日付けのプレスリリースで、具体的に縮小の対象となる路線が発表されました。
(一昨日・昨日と西鉄のサイトをチェックしていたはずだったんだけれど、見落としてしまったかな?)
 具体的な内容は西鉄の公式サイトをチェックしていただきたいのですが、とりあえずこんな内容です。
(ほとんどは4月1日実施になったようです。)

①路線撤退(4路線) 福岡~松山線〈道後エクスプレス松山号〉・北九州~長崎線〈出島号〉・北九州~熊本線〈ぎんなん〉・折尾~北九州空港線 … 4月1日実施
「共同運行会社により運行が継続される可能性がある」とされていますが、今日の時点では他社からの発表はないようです。
②一部区間廃止(1路線) 若松・小倉~北九州空港線のうちの若松~小倉 … 4月1日実施・小倉~北九州空港は存続
③減便(6路線) 福岡空港~小倉線・福岡空港~佐賀線・福岡空港~荒尾線・福岡~直方線・福岡~香月線 … 3月1日実施  福岡~大分線(スーパーノンストップ便) … 4月1日実施
④路線統合(2路線→1路線) 福岡~大阪線〈ムーンライト〉と福岡~京都線〈きょうと〉を統合 … 4月1日実施

 空港関係が目立ちますが、北九州はともかく福岡空港路線も減便が行われるとは、やはり航空需要そのものが減少しているのでしょうか。
 福岡~直方線の場合は、JR篠栗線の電化も影響しているかも知れません。相当経ちますが…。
 この中で一番厳しさを体現しているのは、④の夜行路線、特に〈ムーンライト〉の路線統合でしょう。
 ただ、まだ具体的な時刻は公表されていませんし、相手会社(阪急観光バス・京阪バス)からの発表もありません。

〈ムーンライト〉は1983年3月に阪急バスと共同で運行を開始。
 国鉄の夜行急行が廃止になっていた事もあって、運賃の安さを武器に人気を呼び、さらに画期的な3列シートのスーパーハイデッカーを導入した事で、不動の地位を獲得しました。
 この事が、1980年代後半からの爆発的な夜行バスブームを呼ぶ事になります。

〈ムーンライト〉自体も増便や系統の新設が行われる事になり、当初北九州市内経由1往復だったものが、ノンストップ便や、筑豊地域発着便の新設も行われる事になりました。

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1992年 飯塚バスセンター停車中の4429号車・三菱ふそうP-MS729S

 この頃が大阪~福岡(佐賀)の夜行の全盛期だったのでしょう。
 姉妹路線の大阪~筑後地域(久留米・大牟田・荒尾)〈ちくご〉と、大阪~佐賀・唐津線〈サガンウェイ〉を合わせると、阪急バスと共同で、西鉄バスのエリアと大阪を結ぶ夜行高速バスは5往復設定されていました。
(〈サガンウェイ〉は昭和自動車も担当。)

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 1992年4月現在の福岡~大阪線のチラシです。
 A3番の二つ折りで、中面は大阪周辺の行事のカレンダーになっています。
 裏面の時刻表でお解かりの通り、西鉄バスの有力なエリアで、大阪への夜行が通じていないのは、(天神まで自社の特急電車で10分少々で行ける)二日市位。
 西鉄のターミナルに行けば、必ず大阪へのバスが通っていたと言っても良い程でした。

 最も、この後〈ムーンライト〉を初めとする夜行路線は縮小に向かいます。
 〈サガンウェイ〉は早々に廃止になりましたし、〈ちくご〉も、〈ムーンライト〉筑豊ルートと統合した後やはり廃止。
 〈ムーンライト〉本体もノンストップ便は取り止めになり、元の北九州経由福岡便1往復のみになります。
 また、共同運行会社の阪急バスも、2003年にはグループの阪急観光バスに譲渡してしまいます。
 もはや〈ムーンライト〉といえども、本体の運行では利益が上がらなくなっていたのでしょうか。

 そして、今回の統合が行われると、大阪に限らず、西鉄の関西地方への便は、ついに1往復だけになってしまうのです。

 もちろん、西鉄以外でも関西~九州の夜行バスは全体的に縮小傾向にあるのですが、それにしても、九州最大の都市・福岡を拠点とし、デラックス夜行高速バスのパイオニアでもある西鉄の夜行路線の凋落ぶりは、改めて振り返ってみて驚かされました。
 ライバル…といっても、JRの夜行は一昨年には大阪発着の寝台特急(高速バス対抗で座席車も連結されていたが…。)が全滅しており、臨時快速〈ムーンライト九州〉も去年からは設定がなくなっています。
 となれば、低コストの足としては夜行高速バスの独壇場…というのが、これまでの常識的な考え方だったのですが。
 今回の西鉄バスの事業縮小は、景気の低迷や原油価格の高止まり、さらにはETC割引というのが理由になっていますが、加えて夜行に関しては、やはり昨今流行の「会員制ツアーバス」が相当影響しているのでしょう。

 しかし、似たような状況でも、東京~名古屋・大阪等では、JRバス関東等が必死にダイヤの見直しや仕様の多様化等を行って、苦境に立ち向かっています。
 西鉄自身、博多~東京線〈はかた〉でデラックス2階建て車輛を導入して話題を呼んだだけに、ぜひとも関西ルートでも、3列シートで業界を驚かせた、運行開始当初のような斬新なアイデアで、業界全体を引っ張れるリーダーシップが発揮される事を、今一度期待したいと思います。


 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。(名前は公表しません。)




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