№87 JTB時刻表大研究 2005年

「JTB時刻表大研究」、今回は2005年です。
 この年、JTB時刻表は創刊80年。
 国際博覧会の開催に合わせ、陸海空で、中京圏の交通が賑わいを見せました。
 首都圏では最後といえる大型通勤新線が開通。
 一方、寝台特急の衰退が止まらない上、3月末には大手私鉄4路線を含め、一気に140㎞の廃線が発生しました。
 なお、下のトピックスでは敢えて触れませんでしたけれど、遺憾ながら鉄道界では大事故が相次ぎ、ダイヤにも相当影響を与えています。

《2005年の十大トピックス》
◆ 「愛・地球博」開催
 3月25日~9月25日の間の半年間、愛知県の名古屋市の郊外に当たる、長久手と瀬戸の2会場に分かれて開催されました。
 アクセスとして、後述の「リニモ」の他、名古屋~(愛知環状鉄道)万博八草に〈エキスポシャトル〉を運転。
 また、周辺各地からの高速バスも設定されました。
 4月号ではカラーグラフで、合わせて9月号までは黄色のページでアクセスが紹介されています。

◆ 中部国際空港「セントレア」開港
 「愛・地球博」開幕に先立つ2月17日、常滑沖に開港。
 関西空港に次ぐ、海上埋め立ての24時間空港です。
 小牧の名古屋空港からは、ほとんどの国内線、全ての国際線が移転する事になりました。
 多少脱線しますが、英語では「Central Japan International Airport」と称し、後述の名鉄の表示でも使用されています。
 JR東海の「Central Japan Railway」もそうですが、どうも名古屋圏という所は、「日本の中央」にこだわりたいようです。
 名古屋空港は「県営名古屋空港」となり、J-AIR(後にJAL便として運航)のローカル便のみが残留する事になりました。

◆ 名鉄空港線開業 特急「ミュースカイ」運転開始
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 その「セントレア」へのアクセスとなる路線で、開港に先駆けて1月29日に開業。
 合わせて名鉄全体で大幅な改正を行い、新たに「快速特急」「快速急行」が新設されました。
 空港アクセスでは、神宮前~中部国際空港ノンストップの快速特急「ミュースカイ」、一部特別車の特急、それに急行がそれぞれ30分間隔というダイヤが設定されました。
 写真の「ミュースカイ」は運行開始当初の3連ユニットですが、後に4連化される事になります。
 また、新名古屋→名鉄名古屋、新一宮→名鉄一宮、新岐阜→名鉄岐阜への改称も行なわれました。
 一方で東笠松・学校前の2駅が廃止。
「セントレア」へはこの他東海各地からの高速バスや、三重県側からは海上アクセスも設定されています。

◆ 愛知高速鉄道「リニモ」開業
 「愛・地球博」開幕に先立ち、3月6日に開業しました。
 定期営業路線としては、初のHSST(磁気浮上式)の鉄道です。
 博覧会終了後は、主に沿線の大学へのアクセスとしての利用が目立つようです。

◆ 小田急ロマンスカー「VSE」デビュー
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 3月22日デビュー。
 〈スーパーはこね〉〈はこね〉で、平日5往復、土休日6往復。
 箱根を初めとする観光の不振や、一方で通勤や買い物等の利用の増大により、ロマンスカーも汎用的な方向に性格が振れてきていました。
 しかしVSEは久し振りに観光に特化した仕様となり、ロマンスカーになくてはならぬ展望席、個室風のサルーン席もさる事ながら、「走る喫茶室」の復活、ロマンスカーアテンダントの乗務など、ソフト面でも久し振りに大きな話題を集める事になります。
 思えばJR九州〈つばめ〉(787系)もこの点が評価されたのですが、そろそろ他の特急(JRも、私鉄も)でも、人的な面を中心にした、ソフト面でのサービスの復活が期待されるのではないでしょうか。
 全列車とはいかないでしょうが…。
 VSEは3月号の「新のりもの風土記シリーズ58」で、歴代のロマンスカーと共に取り上げられています。
 
◆ 寝台特急〈さくら〉〈あさかぜ〉〈彗星〉廃止 〈はやぶさ〉〈富士〉併結運転開始
 3月改正で伝統の<さくら><あさかぜ>が消えました。
 東京~長崎の<さくら>は昭和の初期に<富士>と共に日本初の愛称付特急として東京~下関で運行を開始し、戦後は<さちかぜ>の20系化により寝台特急として復活しました。
 東京~下関の<あさかぜ>は1956年にデビューした夜行特急ですが、1958年に名車20系に置き換えられたことで、デラックス・ブルートレイン「動くホテル」として人気を博す事になります。
 ただし、今回廃止の<あさかぜ>は、1970年に急行<安芸>から格上げされた列車がルーツでした。
 寝台特急の衰退は容赦なく、10月1日には京都~南宮崎の<彗星>も廃止。
 併結相手を失った<はやぶさ>は<富士>と、<あかつき>は<なは>と併結。
 東海道・山陽本線の「ブルートレイン」はついに2往復にまで削減され、いよいよ終幕がはっきりと目に見えるようになって来ました。
 
◆ つくばエクスプレス(TX)開業
 長く常磐新線と呼称されてきた路線が、8月24日開業。
 常磐線と同様に直流と交流が混在し、JR以外では初の交直両用の車両も投入されました。
 最高速度130㎞は通勤鉄道としては最速。
 当ブログでも何度か書きましたが、主に田園地帯の高架線や切通しを高速で突っ走るので、特に快速だと、なんだか新幹線を通勤電車で走っているような錯覚を覚えます。
 8月号の「新乗り物風土記シリーズ63」で筑波山のケーブルカーと共に取り上げられている他、黄色のページでは、全駅全列車の時刻運賃が掲載されています。

◆ 福岡市営七隈線開業 OTSは大阪市営が引き継ぎ運営
 2月3日開業の七隈線は、大阪市営長堀鶴見緑地線・東京都営大江戸線・神戸市営海岸線に次ぐリニア地下鉄。
 無人運転も考慮された構造ですが、運転士が乗務したワンマン運転を行なっています。
 OTSは経営不振のため、大阪市営が引き継ぐ事になり、中央線(コスモスクエア~大阪港)、ニュートラム(コスモスクエア~中ふ頭)と一体で運営される事になりました。

◆ 日立電鉄・名鉄・のと鉄道で路線廃止
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 日立電鉄は1971年に初めてワンマン運転を採用、後のローカル鉄道の運営に影響を与えました。
 この後、営団地下鉄銀座線の中古車を導入して車両の体質改善も図られましたが、保線上の安全を確保するための投資ができないという理由で廃止という事になりました。

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 名鉄ではいわゆる「600V線区」(架線に供給される電流の電圧からそう呼ばれた。)の岐阜市内、美濃町、田神、揖斐線が一気に全線廃止に追い込まれました。
 岐阜市内線の岐阜駅前~新岐阜駅前は2003年12月から休止していましたが、運行が再開されぬまま廃止に至りました。
 
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 のと鉄道では、最初に転換されて開業した能登線の穴水~蛸島間89㎞が、一挙に全線廃止になりました。
 全て3月31日を持っての廃止。
 合計3社・6路線の廃止の合計は実に140㎞にも上ります。

◆ 高千穂鉄道 水害で不通
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 9月の台風被害により、写真の第一五ヶ瀬川橋梁、及び第二五ヶ瀬川橋梁が流出し、他にも被害が甚大だったため、全線で運休に追い込まれる事になりました。
 後に全線の復旧は諦め、高千穂側のみトロッコ列車を走らせる事も考えられたようですが、結局高千穂鉄道としては立ち直れず、3年後には廃止に追い込まれる事になります。

◆ その他
○常磐線に特別快速設定
○「SLあそBOY」運転終了
○四国の特急料金 通し料金適用区間拡大

《表紙の写真》
 5月号あたりから、掲載記事のヘッドラインが、随分目立つ体裁で書かれるようになっています。
 80周年企画や新連載の巻頭グラビアと合わせ、読み物的な要素がさらに濃くなってきているようです。

1月号 東海道新幹線 名古屋駅
 ツインタワーをバックにした700系〈のぞみ〉。
 「愛・地球博」開催に合わせ、先頭車両には「AMBITIOUS JAPAN!」の文字が書かれています。
●旬の駅から小さな旅へ57 平泉駅
●新のりもの風土記シリーズ56 神話の国・出雲の正月 冬の一畑電鉄に乗る
●駅弁細見211 一念ホッキめし(仙台駅)

2月号 博多開業30周年を迎える山陽新幹線
 再び700系。
 こちらはJR西日本持ちの編成です。
 撮影場所は不明。
●旬の駅から小さな旅へ58 常滑駅
●新のりもの風土記シリーズ57 エンターテイメントクルーズ ロイヤルウイング
●駅弁細見212 脂金目の塩焼き弁当(伊豆急下田駅)

3月号 小田急電鉄新型ロマンスカー VSE
 撮影場所は書かれていませんが、酒匂川(新松田~開成)を渡るところです。
 バックに真っ白な富士山。
 私鉄の特急が表紙を飾るのは初めて。
●旬の駅から小さな旅へ59 人吉駅
●新のりもの風土記シリーズ58 都会から早春の箱根へ 小田急ロマンスカーVSE
●駅弁細見213 親子にしん(直江津駅)

4月号 「SLばんえつ物語号」
 満開の桜との取り合わせが美しく感じます。 
●旬の駅から小さな旅へ60 万博八草駅
●新のりもの風土記シリーズ59 最新のフェリークルーズ ニュー「きそ」
●駅弁細見214 出雲美人(松江駅)

5月号 中央本線 特急「(ワイドビュー)しなの」
 撮影場所は不明ですが、中央本線の中津川~塩尻の間のどこかではないでしょうか。
 グラビアで新連載が2つスタートしました。
●小椋佳の世界遺産の旅1 屋久島
●駅旅本線 第1駅 上野駅
●新のりもの風土記シリーズ60 新大阪~博多 全線開業から30年 山陽新幹線
●駅弁細見215 阿波地鶏弁当(徳島駅)
 
6月号 吉備線
 キハ47+47+40のローカル列車。
 手前は菖蒲ですね。
●小椋佳の世界遺産の旅2 紀伊山地の霊場と参詣道
●駅旅本線 第2駅 南島原駅
●新のりもの風土記シリーズ61 81歳の老機関車がいる カラフル!上信電鉄
●駅弁細見216 あなごめし(宮島口駅)
 
7月号 リニモ(愛知高速交通)
 万博仕様のラッピングが施された09編成と、会場内のゴンドラ。
●小椋佳の世界遺産の旅3 白神山地
●駅旅本線 第3駅 湯田中駅
●新のりもの風土記シリーズ62 緑豊かな常陸の国へ 常磐線ダイヤ改正
●駅弁細見217 三浜たこめし(大洗駅)
 
8月号 つくばエクスプレス
 撮影場所は不明ですが、守谷から先の交流区間だと思います。
●小椋佳の世界遺産の旅4 原爆ドーム
●駅旅本線 第4駅 川湯温泉駅
●新のりもの風土記シリーズ63 筑波山を仰ぐ平野と都心を一直線 つくばエクスプレス
●駅弁細見218 海人(うみんちゅ)がつくる 壺川駅前弁当(壺川駅)
沖縄の「ゆいレール」の駅の近くで発売されている弁当ですが、モノレールの「駅弁」とは。

9月号 宗太郎~市棚間を行く寝台特急列車「彗星」
 ED76+24系。
 2両目は「ソロ」。
 創刊80周年記念企画として「秋の夜長を走るブルートレイン 徹底紹介!!」が8ページに渡って特集。
 ブルートレインを中心に夜行特急(+急行〈銀河〉〈きたぐに〉)が取り上げられています。
(黄色のページに列車ごとの解説も掲載)
 しかし一方、この号で<彗星>の廃止が発表されており、<さくら><あさかぜ>の廃止もあって、どこか皮肉な企画のようにも思えるのですが…。
●小椋佳の世界遺産の旅5 姫路城
●駅旅本線 第5駅 津軽五所川原駅
●駅弁細見219 飛騨高山 牛しぐれ弁当(高山駅)
「新乗り物風土記シリーズ」はお休み。

10月号 山田線
 キハ58×2連(盛岡色)のローカル列車。
 80周年記念の巻頭グラビアとして巻頭グラビアでは「日本縦断 鉄道の日 イベント攻略ガイド」として、8ページに渡って日本全国の「鉄道の日イベント」が紹介されています。
●小椋佳の世界遺産の旅6 知床
●駅旅本線 第6駅 鞍馬駅
●新のりもの風土記シリーズ64 秋のパノラマ!九大本線 ゆふDX・ゆふいんの森
●駅弁細見220 鯛のいなり手箱(加賀温泉駅)

11月号 山形新幹線「つばさ」
 400系と柿の木。
 80周年記念の巻頭グラビアとして巻頭グラビアで「観光トロッコ&SL列車全集」が8ページに渡って取り上げられています。
●小椋佳の世界遺産の旅7 法隆寺地域の仏教建造物
●駅旅本線 第7駅 琴平駅
●駅弁細見221 じゃこめし(箱根湯本駅)
「新乗り物風土記シリーズ」はお休み。

12月号 大井川鐵道(福用~大和田間)
 C11とスハフ43(ナショナルトレイン)。
 手前の茶畑では、地元の人たちが「ありがとう JTB時刻表創刊80年!」の大きな横断幕を掲げています。
 80周年記念の巻頭グラビアとして「日本の大動脈を走る新幹線」と題し、8ページに渡って現役全系列が紹介されています。
●小椋佳の世界遺産の旅8 厳島神社
●駅旅本線 第8駅 長瀞駅
●駅弁細見220 鯛のいなり手箱(加賀温泉駅)
「新乗り物風土記シリーズ」はお休み。

《裏表紙の広告》
 6月号から、偶数月は月代わりに戻ります。

1月号 トヨタレンタカー
 ひきつづき、キャッチコピーが、「レールの先へ」。

2月号 トヨタレンタカー
3月号 トヨタレンタカー
4月号 トヨタレンタカー
5月号 トヨタレンタカー
 キャッチコピーが「レールの先へ トヨタレンタカー」。
 合成だとは思いますが、草彅剛が、秩父鉄道・三峰口駅のホームに立っています。

6月号 東武鉄道 「ドラマティックリゾート。日光に逢いに行こう。」
7月号 トヨタレンタカー 
8月号 東武鉄道 「ドラマティックリゾート。日光に逢いに行こう。」
9月号 トヨタレンタカー
10月号 東武鉄道 東武特急スペーシア
11月号 トヨタレンタカー
12月号 JR東海ツアーズ ぷらっとこだま

《その他》
 80周年記念という事で、特別企画がてんこ盛り。
 4~6月号では、「時刻表80年のあゆみ」を連載。
 7月号では「日本の今を走る特急列車」「JR全線全駅のりつぶし地図」の特別付録。
 8月号では「時刻表早引きシート」。
 
「ノリノリのりもの情報局」が7月号より掲載開始。
 7月号ははとバスの「ハローキティバス」、都電荒川線「トラムdeビア号」、大韓航空の「ペ・ヨンジュン肖像クリスタル」発売、など。

 福知山線は4月25日に発生した脱線事故の影響で、尼崎~宝塚が6月19日まで2ヶ月に渡って不通になりました。
 時刻表では「JR西日本のサイトで確認して下さい。」とあるだけで、特に臨時のダイヤは掲載されていませんでした。
 実際は運行区間も普通列車だけの運転になり、特急〈北近畿〉〈文殊〉〈タンゴエクスプローラー〉は運休になったようです。
 これより先の3月2日には、土佐くろしお鉄道の宿毛駅で特急列車の事故があり、宿毛線は翌日より不通、4月になって東宿毛まで復旧したものの、全線の復旧は11月1日になりました。
 
《定価》
1~12月号  1050円(本体1000円)

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日本ダービー優勝馬 ディープインパクト 鞍上:武豊
同馬は皐月賞・菊花賞と合わせ3冠を達成


 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。(名前は公表しません。)

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