「JTB時刻表大研究」、今日は1990年です。
高速バスの新路線開通が相次ぎ、JRもこの影響を無視できなくなりつつありました。
1983年に始まった特定地方交通線の転換が、この年決着を見ました。
3月10日に統一ダイヤ改正を実施。
その後7月に北海道、9月に東日本(東北)・北海道、11月に四国で単独改正が行われています。
時刻表には表れませんが、JR・私鉄とも、特急車両で新技術の導入が進められつつありました。
《1990年の十大トピックス》
◆ 「国際花と緑の博覧会」開催
4月1日~9月30日の間、大阪市の鶴見緑地公園で開催。
JR西日本のパビリオン「ドリーム・エキスプレス」。
ファミリー向けを狙ったのだろうけれど、演出が子供っぽく思えたのが少々残念だった記憶があります。
「山の駅」は博覧会終了後、福知山線の柏原駅駅舎に転用されています。
後はJALのパビリオンに行って、機内食を食べてきたのが印象に残っています。
まだ国際線なんて乗った事もなかったのに。
◆ 大阪市営鶴見緑地線・大阪モノレール・六甲ライナー開業
「花博」景気か、関西で新スタイルの鉄道の開通が相次ぎました。
3月20日に開業し、花博のアクセスとなった市営地下鉄鶴見緑地線(現長堀鶴見緑地線)は、日本初のリニアモーター地下鉄です。
京橋~鶴見緑地間の開業で、他の地下鉄路線網とは接続がありませんでした。
これより先、2月21日に六甲ライナー(神戸新交通六甲アイランド線)が開業。
六甲ライナーは4月号の「乗り物風土記シリーズ34」で、鶴見緑地線は「同・35」取り上げられています。
大阪モノレールは6月1日に南茨木~千里中央間が開通しました。
途中の茨木駅は、同名のJRの駅とはまったく異なる場所で、後に宇野辺と改称する事になります。
◆ 京葉線延長 東京駅地下ホームに乗り入れ
3月改正と同時に新木場~東京間が開通、1986年の西船橋~千葉港(現千葉みなと)間の開業から4年で全線が開業しました。
同時に快速が設定されました。
平日と休日で東京都内の停車駅が異なり、休日は〈マリンドリーム〉の名がありました。
停車駅:平日…八丁堀・新木場・舞浜・新浦安・検見川浜・稲毛海岸
休日…葛西臨海公園・舞浜・新浦安・検見川浜・稲毛海岸
今では若干信じがたいのですが、当時は海浜幕張は通過でした。
巻頭グラビアで京葉線が取り上げられていて、海浜幕張駅の空中撮影写真もあるのですが、これを見たらまだまだ開発途上で、駅付近はほとんど原っぱに近いので仕方ないですね。
〈マリンドリーム〉は新木場も通過。
武蔵野線からの直通も市川塩浜の停車以外はこれに準じています。
なお、東京駅の京葉線ホームは他の路線のホームからは相当遠く、徒歩で10分程度は掛かるのでご注意。
(動く歩道があります。)
特急〈さざなみ〉〈わかしお〉のルート変更はまだ先の話です。
休日運転の各臨時快速は、10月号の「乗り物風土記シリーズ39」で取り上げられています。
「マリン」なんてイメージキャラクター(高橋留美子デザイン)があったのですね。
◆ 上越新幹線275㎞/h運転開始 くりこま高原駅・ガーラ湯沢駅開業
3月改正で、長岡のみ停車の下り〈あさひ1・3号〉のみ、大清水トンネル内で275㎞/hを実施。
上野→新潟間は1時間36分と、3分短縮しています。
なお、現在は再び最高速度240㎞/hになり、ノンストップの〈MAXとき313号〉が、同じ1時間36分で運行されています。
同日、東北新幹線・古川~一ノ関間にくりこま高原駅が開業。
ガーラ湯沢駅は、越後湯沢駅から延びる保線用車両の線路を利用し、JRが開発したスキー場の近くまで新幹線を運行するという形態が話題になりました。
越後湯沢発着の〈あさひ〉〈とき〉の他、当初は区間運転の〈シャトル・ガーラ〉が設定されていました。
◆ 〈スーパービュー踊り子〉〈スーパーホワイトアロー〉「スペーシア」等デビュー 四国特急に振子式DC本格導入
〈スーパービュー踊り子〉(251系)はGW直前の4月28日より、185系を置き換える形でデビューしました。
(ダイヤは織り込み済み)
当初は新宿・池袋・東京~伊豆急下田間各1往復でした。
(池袋発着の53・52号は水曜運休)
7月号の「乗り物風土記シリーズ36」で取り上げられています。
〈スーパーホワイトアロー〉(785系)は9月のJR北海道ダイヤ改正でデビュー。
札幌~旭川間全列車が1時間20分運転。
(途中岩見沢・滝川・深川に停車)
札幌・旭川共8時台~20時台の00分発という、極めて解かりやすいダイヤでした。
北海道ではこの他、〈おおぞら〉の帯広系統が〈とかち〉として分離され、1→5往復に増発されています。
東武の「スペーシア」(100系)は6月1日のデビュー。
1720系「DRC」を置き換える形で、〈けごん〉〈きぬ〉合計7往復で運行を開始しました。
当時のJTB時刻表は、まだ私鉄の特急には暖かくなかったのか、黄色のページのニュースにお知らせがありませんでした。
(8月号の「乗り物風土記シリーズ37」で取り上げられています。)
時刻表とは直接関係ありませんが、JR北海道785系・東武100系は共にVVVF制御。
いよいよVVVF制御が特急車両にも導入されるようになってきました。
JR四国の振子特急DC2000系は、前年1989年に試作車両がデビューしましたが、〈南風〉〈しまんと〉各1往復が臨時列車扱いで運行されてきました。
11月改正より定期列車にも投入され、土佐くろしお鉄道中村線にも乗り入れています。
また、土佐くろしお鉄道も共通設計で導入されました。
◆ 〈あかつき〉〈なは〉にレガートシート車連結
急速に路線が増えつつあった夜行高速バスへの対抗のため、ブルートレインに連結された座席車。
3月改正より連結されました。
上は「なは」。(新大阪~熊本間・サロ481改造)
下は「あかつき」。(京都~長崎間・オハ14改造)
どちらも1-1-1配置の3列シートで、夜行高速バスと同タイプの大型リクライニングシートになっていました。
この他、〈あさかぜ3・2号〉〈瀬戸〉にA寝台個室「シングルデラックス」とラウンジカーを連結。
◆ 特定地方交通線転換完了 北近畿タンゴ鉄道に特急〈タンゴエクスプローラー〉デビュー
3月31日限りで宮津線・鍛冶屋線・大社線が廃止。
宮津線は翌4月1日より第三セクター鉄道「北近畿タンゴ鉄道」に転換され、宮福線と一体で運営される事になりました。
同時に〈タンゴエクスプローラー〉が京都~西舞鶴~久美浜間で運行を開始。
〈タンゴエクスプローラー〉は、第3セクター鉄道初のオリジナル特急車です。
なお、この時点では〈あさしお3・12号〉は北近畿タンゴ鉄道経由で残っています。
鍛冶屋線・大社線はバスに転換。
これにより、1983年10月の白糠線から始まった特定地方交通線全路線の転換が終了。
1・2・3次合計で83路線・3,150㎞の鉄路が国鉄・JRから離れていきました。
◆ 山形新幹線工事でスイッチバック廃止 〈あけぼの〉〈津軽〉迂回運転開始
9月1日に実施され、有名な4連続スイッチバック(赤岩・板谷・峠・大沢)が一気に廃止になりました。
寝台特急〈あけぼの〉は、1往復は上越・羽越経由に変更して〈鳥海〉に改称、もう1往復は陸羽東線経由に変更。
急行〈津軽〉は583系に置き換えた上で、仙山線経由に変更。
なお、この年の暮れの臨時急行〈あきた〉〈おが〉〈津軽80~83号〉〈ざおう〉は、米沢経由で運行されていました。
◆ 豊肥本線 水害で一部区間長期不通
7月の集中豪雨のため、宮地~緒方間が翌年10月まで不通に。
急行〈火の山〉は熊本~宮地間と緒方~別府間に分断され、別府方は列車番号は変わらず、列車名のみ+10で走りました。
◆ 日本最長距離の高速バス〈はかた〉号運行開始
(西鉄の初代車両の内の1台、4505号車(三菱ふそうP-MS729S))
1990年10月12日の運行開始。
新宿高速バスターミナル~西鉄天神バスセンター間約1,160㎞を、当時は中央道・中国道経由で結んでいました。。
運行開始当初は西日本鉄道と京王帝都電鉄の共同運行で、それぞれ1往復づつ、計2往復でした。
超長距離のため、後部にサロン風のスペースが設けられた専用車両を使用していました。
下り 新宿17:00→ 8:10福岡(京王)・新宿19:45→10:55福岡(西鉄)
上り 福岡16:45→ 8:00新宿(西鉄)・福岡19:45→11:00新宿(京王)
運賃 片道15,000円
この他にも全国各地で夜行バス路線の新設が相次ぎました。
◆その他
○ 東北新幹線に2階建て車両連結
○ 東北本線(上野~宇都宮間) 「宇都宮線」と呼称
○ 山陰本線・予讃線・会津鉄道 一部区間電化
○ 小田急多摩線・京王相模原線・相鉄いずみ野線延伸
○ 「JTBパノラマ特急」運転
《表紙の写真・グラビア連載記事》
表紙は比較的ローカル線が多くなっています。
まだ国鉄時代の車両が大半ですが、そろそろ各地域のオリジナルカラーが目立ってきています。
1月号 高山本線(飛騨小坂駅)
キハ58系で、急行「のりくら」でしょうか。
●ステーションウォッチングシリーズ11 京都駅
●乗り物風土記シリーズ31 レトロバス リンガーベル
●駅弁細見33 越前かにめし(福井駅)
2月号 三江線(信木~所木)
雪景色の中を走るキハ40の単行で、魚を書いた「三江線」色(?)。
●ステーションウォッチングシリーズ12 岡山駅
●乗り物風土記シリーズ32 クリスタルエクスプレス トマムサホロ
●駅弁細見34 雪だるま弁当(新津駅)
3月号 ウォーターフロントと都心を直結する京葉線(新木場上空から)
上の十大トピックスでも取り上げた、京葉線の新木場駅。
京葉線は右にカーブを切って、曙運河を高架線で横切っていきます。
手前は夢の島の公園ですが、昔は悪名高きゴミ捨て場だった事を知る人も少なくなってきているでしょう。
丸囲みで、京葉線用の205系(正面がマイナーチェンジ)がインサートされています。
●ステーションウォッチングシリーズ13 上野駅
●乗り物風土記シリーズ33 大型観光潜水船 もぐりん
●駅弁細見35 手筒花火(豊橋駅)
4月号 伊東線 伊豆多賀駅
185系特急「踊り子」。
桜並木が見事です。
●ステーションウォッチングシリーズ14 高松駅
●乗り物風土記シリーズ34 六甲ライナー
●駅弁細見36 鞆の鯛寿司(福山駅)
5月号 花輪線(湯瀬~八幡平)
キハ28+58の2連ですが、白地+赤帯の「盛岡色」。
●ステーションウォッチングシリーズ15 大宮駅
●乗り物風土記シリーズ35 リニアモーターカー 地下鉄鶴見緑地線
●駅弁細見37 醤油めし(松山駅)
6月号 釧網本線(清里町~札弦)
キハ56+54のローカル列車。
上空は青空が広がっていますが、背後の斜里岳は雲に隠れてしまっています。
●ステーションウォッチングシリーズ16 三ノ宮駅
●駅弁細見38 茶めし(静岡駅)
「JTB時刻表フォトコンテスト」のため、「乗り物風土記シリーズ」はお休み。
7月号 羽越本線(小砂浜~上浜)
再び485系(国鉄色)の特急「白鳥」が登場、先頭のクハ485も1500番台。
●ステーションウォッチングシリーズ17 旭川駅
●乗り物風土記シリーズ36 最新のリゾート列車 スーパービュー踊り子 251系
●駅弁細見39 お鉢弁当(草津駅)
8月号 飯田線(田切~伊那福岡)
165系(東日本の新急行色)。
手前の川で子供たちが水泳をしています。
●ステーションウォッチングシリーズ18 松本駅
●乗り物風土記シリーズ37 東武のニューフェイス スペーシア
●駅弁細見40 あさり釜めし(熊本駅)
9月号 常磐線(天王台~取手)
415系が利根川を渡ります。
手前はコスモス畑。
●ステーションウォッチングシリーズ19 金沢駅
●乗り物風土記シリーズ38 眺望列車 ノスタルジックビュートレイン
●駅弁細見41 弥次・喜多道中記(郡山駅)
10月号 米坂線(羽前松岡~伊佐領)
キハ58系のローカル列車。
●ステーションウォッチングシリーズ20 米子駅
●乗り物風土記シリーズ39 休日のベイサイドライン 京葉線の快速列車
●駅弁細見40 黒豆こわい(多治見駅)
11月号 瀬戸大橋線(児島~坂出)
瀬戸大橋を渡る、EF65-1000牽引の「瀬戸」。
●ステーションウォッチングシリーズ21 長崎駅
●乗り物風土記シリーズ40 アプト式鉄道 大井川鉄道井川線
●駅弁細見43 笹まき鱒寿し(新白河駅)
12月号 飯山線(西大滝~信濃白鳥)
キハ58の2連ですが、飯山線色になっています。
●ステーションウォッチングシリーズ22 倉吉駅
●駅弁細見44 湖北のおはなし(米原駅)
「JTB時刻表フォトコンテスト」のため、「乗り物風土記シリーズ」はお休み。
《裏表紙の広告》
1月号 山一證券 「情報を科学」
2月号 キリンビール キリンラガービール
「ラ党の人々」というキャッチコピーがあり、富士山をバックに「若林」ファミリーが勢ぞろいするスタイルになっていました。
(もちろん皆大人。)
恐らくはホームドラマ的な展開を繰り広げる事で、ラガービールの販売促進につなげる意図があったのでしょう。
ところが、2月号発売(1月20日)直前の1月16日、「父・若林大作」役の勝新太郎が、ホノルルの空港でコカインを所持していた疑いで逮捕されてしまい、このキャンペーンはすぐに終わってしまいました。
3月号 山一證券 「情報を科学」
4月号 キリンビール キリンドラフト
従って、4月からは再びドラフトビールの宣伝に戻る事になります。
高嶋政宏を起用し、キャッチコピーは「ビール工場の生ビールを飲んだことがありますか。」
5月号 山一證券 「情報を科学」
6月号 キリンビール キリンドラフト
7月号 山一證券 スーパーゴールドけいぞく
山一證券では、この頃から田中美佐子をイメージキャラクターに起用します。
8月号 キリンビール キリンドラフト
9月号 山一證券 スーパーゴールドけいぞく
10月号 キリンビール キリン一番搾り<生>ビール
緒方拳を起用。「ああうれしい。」
11月号 山一證券 「迷える我ら…山一に聞く。」
12月号 キリンビール キリン一番搾り<生>ビール
《その他》
「私鉄時刻表」は、
1月号(15)…東武その1
2月号(16)…東武その2
3月号(17)…南海
4月号(18)…西武
5月号(19)…近鉄その1
6月号(20)…近鉄その2
7月号(21)…小田急
8月号(22)…関東周辺の私鉄
9月号(23)…南海
10月号(24)…阪急
11月号(25)…阪急・山陽
12月号(26)…東武
8月号の「関東周辺の私鉄」というのは、相鉄の他、横浜市営地下鉄や新京成・北総・江ノ電・東京モノレール等。
相鉄は大手といったって、所詮は神奈川県内しか走らない小規模な鉄道なので、他の会社も入れないとページ数が持たないのでしょう(?)。
個人的には11月号の山陽電鉄が歓迎でした。
距離が(相鉄よりも)長くて、阪急・阪神との直通もあり、特急の本数も多いのに、全駅・全列車の時刻を掲載した時刻表はこれまでどこにもなかったからです。
紀勢本線・阪和線は3月号から天王寺→新宮が先、新宮→天王寺が後と入れ替えられ、実態に合うようになりました。
《定価》
1~4月号 800円(本体 777円)
5~12月号 850円(本体 825円)
※時刻表以外のトピックス
◆ バブル経済崩壊
◆ 東西ドイツ再統一
◆ イラクがクウェートに侵攻
プロ野球日本シリーズ 西武(4-0)巨人 MVP:オレステス・デストラーデ
日本ダービー優勝馬 アイネスフウジン 鞍上:中野栄治
申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。(名前は公表しません。)
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