日本初の低運賃航空会社(LCC=ロー・コスト・キャリア)、スカイマークのB767-300ERが、明日30日退役します。
1998年の運行開始以来、11年の間同社を支えてきた功労機なのですが、同社のサイトでは一言も触れられていないのが残念です。
スカイマーク(当時はスカイマーク・エアラインズ 以下SKY)は、航空業界の規制緩和の波に乗り、1998年に旅行会社H.I.Sが母体となって設立された初の新規航空会社で、9月よりB767-300ER1機で、東京~福岡間に就航(一日3往復)しました。
本来、LCCはB737など小型の機材を使用し、運用効率を上げるなどして収益を確保する所、ワイドボディのB767を選択した理由としては、羽田空港の新C滑走路の運用開始などがあったといっても、まだ充分な発着枠を確保できる状況にはなかった事、既にANA、JAL、旧JASが大型機材で多数運行する幹線への参入だったため、対抗上、当面は大型の機材が必要だったという事が挙げられると思います。
(これは3ヶ月後に就航したエア・ドゥ(北海道国際航空)も同じと思います。)
長距離使用のERとしたのは、国際線への展開も見込んでの事とされ、後述しますが、事実羽田~ソウル間の深夜運航のチャーター便を運航していた事もありました。
SKYのB767の外見上の特徴として、スポンサーを募った上で、胴体に大きく広告を掲げた事があります。当時としては大きな話題でした。
(ただし日本の胴体広告機は、旧JASのA300-600Rに大塚製薬がスポンサーになって「ポカリスエット」の広告を描いたのが初めて。)
このような例は海外にもあり、例えばアイルランドのLCC・ライアン航空がB737にハーツ・レンタカーやジャガー、ボーダフォンなどの広告を描いています。過去にはアメリカの今はなきウェスタン・パシフィック航空も行なっていました。探せば他のLCCでやっている所は多いでしょう。
1号機、JA767Aは、衛星放送サービス「DIREC TV」(現在、日本ではスカイパーフェクTVに統合)の広告機でした。
ちなみに、この写真は札幌の新千歳空港で撮影しています。現在SKYは東京~札幌線を運航していますが、当時は2号機導入の時点で、大阪~福岡線と大阪~札幌線を運航していました。その時の撮影です。
2号機、JA767Bは、誰もが知っている世界最大のソフトウェア企業、「Microsoft」。
撮影場所は福岡。
この2機、JA767AとJA767Bは、この後一定期間毎に広告を変えて行きます。
1号機はこれも皆さん後存知、検索エンジン「YAHOO!」を運営する「YAHOO!JAPAN」に変わりました。
2号機は、携帯電話サービスの「J-PHONE」に。
(J-PHONEは後にVodafoneに買収されるが、Vodafone自体がソフトバンクに売却された。)
1号機の広告の3代目は「カーコンビニ倶楽部」が提供する車検サービス「ヤマト車検」に。
SKYの胴体広告では唯一、通信・IT関連以外の企業がスポンサーになりました。
ちなみに、「ヤマト」という事からか、松本零士による宇宙戦艦やキャラクターが描かれていますが、「宇宙戦艦ヤマト」とは関係がありません。
2号機の広告の3代目は有線ラジオ放送の最大手「USEN」。
このUSENが、SKYにおける胴体広告の最後のスポンサーになりました。
収入以上にコストがかかったという事らしいです。
胴体の広告 -SKYに限らず、例えばJALの「コブクロジェット」や、ANAの東京オリンピック招致などもそう- はバスや鉄道と同じラッピングによる物らしいですが、何しろ面積が比べ物にならないくらい広いし、安全性もさらに気を使わなければならないのでしょう。
もし万が一、飛行中にペロンとはがれてどこかへ飛んでいってしまったら、えらい事態になってしまいますからね。
機体の広告のスポンサー延べ6社の内、5社が通信・IT関連というのが、当時の日本の経済や世相を反映していたのかなと思います。
(5社の内2社が日本からは姿を消している事も。)
この2機はキャビンは前方に「シグナスクラス」(かつての大手3社が導入していた「スーパーシート」と同じ)、後方に、2-4-2配置の普通席が並んでいました。
普通席はANA・JALの2-3-2よりも若干座席幅を詰めた近距離仕様です。
この機体には1度だけ、それも「シグナスクラス」に搭乗した事があります。
2004年10月26日の福岡発東京(羽田)行・BC014便。
JA767Aで、この頃には胴体の広告は「ヤマト車検」でした。
シグナスクラスの機内食。
大手に負けない本格的な機内食がサービスされました。
食後のコーヒーも本格的なカップでのサービス。
シグナスクラスは残念ながら昨年廃止されました。
普通席。
ANA・JALの同型より横1列で1席多く、多少きついのではないかと思われますが、普通席には搭乗した事がなかったので比較のしようがありません。
このあと、SKYは路線の拡張に合わせて、B767を増やしていきます。
しかし、胴体の広告は採用されず、結果、ようやくオリジナルのSKYのカラーが見られるようになりました。
3号機・JA767C。
これは鹿児島空港で撮影しました。
SKYは2002年に東京~鹿児島線に就航。
市中の天文館に小ぶりなチケットカウンターが設けられていたのですが。
結局わずか4年で休止になってしまいました。
この機材は、羽田~ソウル間で深夜運航のチャーター便で使用された事もあります。
この後、B767-300ERは、沖縄で運航が予定されていながら挫折したレキオス航空の機材など、合計3機を追加し、6機体制となります。4号機以降はシグナスクラスを廃止した代わりに普通席を2-3-2の通常配置に変更、シート自体が革張り・個人テレビ装備の豪華版になりました。
また、2003年には羽田~青森・徳島線用として、ANAよりB767-200(JA8255)をリースし、ほぼ専用機として運航していました。
但し、青森線は約半年、徳島線も1年で撤退してしまい、ANAに返却(ANAには復帰せずそのままアメリカに売却)しています。
このあたり、さすがにSKYも戦略に迷いがあったように感じられます。
2006年、SKYは社名を「スカイマーク」と改め、同時に新カラーを導入しました。
星の黄色がより大きく、目立つ存在になっています。
これは青系のANA、赤系のJALに対抗する第3勢力となる、というSKYの意気込みでしょうか。
そして、その前年の2005年にはB767-300ERに変わる新機材、B737-800を導入、開港したばかりの神戸空港への乗り入れ、同空港を起点にした路線の開設など、新たな展開が見られるようになります。
(同社は「第2の創業」と呼んでいます。)
B737導入による高頻度運航は、SKYが、LCC本来の形になりつつある事を表しています。
その一方、B767-300ERは2007年9月よりリタイアが始まり、2008年8月にはSKYの1号機であるJA767Aも退役しました。そして最後の1機、JA767Dが、明日SKYから姿を消すのです。
SKYではB737-800が既に10機体制となっていて、これは既にB767-300ERをしのぐ数です。
さらに、来年の羽田空港D滑走路運用開始に合わせてさらに増機が進められる予定で、神戸からの路線の新設も予定されており、羽田と神戸・2地点をベースに格安航空サービスが充実していくのでしょう。
その影で、日本の航空史に新たな1ページを開く活躍を見せながら、JALのB747クラシックのように騒がれることなく、静かに日本の空から消えていくSKYのB767に拍手を送りたいと思います。
この記事は、「日本の旅客機」各年版(イカロス出版)を参考に記述いたしました。
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