今回はいつになく、データの集計が早く終わりました。両局とも台数はそんなに多くはないし、共に乗合オンリーになっていた事もあります。

それにしても、2つの市の公営バスを1冊でやるというのは、意外性がありました。民営バス2社を1冊でやったというのは過去にも何度かあるが、皆、何らかの形で資本的なつながりがありました。一番最近ではV108の「那覇バス・琉球バス交通」があったが、共に第一産業交通の傘下に入っていたし、その前のV106「西日本JRバス・中国JRバス」(中国JRバスは現在はJRバス中国)はJR西日本のバス部門の分社でした。今回の2局は当然資本のつながりなどない、完全に独立した公営交通です。伊丹市営バスは当然初めて。神戸市営バスは、過去には2011(H23)年のR73で取り上げられていた(さらに昔の雑誌スタイルの№7(1988(S63)年)でもあった)が(№463で書きました)、それらの頃より台数がかなり少なくなっていて、1冊まるまる神戸市営のみ、というのは、難しくなっていたのかも知れない。ので、同じ兵庫県の伊丹市営を加えたのではないだろうか。兵庫県は、尼崎・明石・姫路にも市営バスがあり、明石市営バスは神戸市営バスと共同運行も行っていたが、平成の間に3市皆廃止になり、県内の公営はこの2市だけになってしまいました。
表紙は伊丹市営カラー+神戸市営バスの折衷デザイン。
神戸市営は、昭和末期の№7時代は魚崎・石屋川・落合・布引・須磨・松原・垂水の7営業所体制で、魚崎には定期観光バス・貸切バスも配置されていた(№7では省略)。R73では乗合オンリーとなり、須磨・布引両営業所がなくなり、中央・西神・有野各営業所を開設。また当時は関連会社の神戸交通振興があり、ポートアイランドに営業所があった。今X115では神戸交通振興がなくなり、市営バスでは有野〔営〕廃止の一方で中央南・清水ヶ丘両営業所が開設。垂水は落合〔営〕の支所に格下げになっている。民営バスへの委託が深度化しているからか、郊外部の変化が大きい。
伊丹市営は、本局と同居の広畑の1営業所体制。
◆ 現有車両のアルバム・一覧表・車種別解説
神戸市
1. 現有車両485台は、14年前(既に乗合オンリー)の532台より47台、8.83%の減少(他に神戸交通振興13台があった)。№7では定観・貸切含め649台だったそうだから、昭和末期の3/4以下の規模になっている。
営業所別では、松原〔営〕が105台で全体の21.65%、1/5以上を占めている。本局や地下鉄の和田岬駅、ノエビアスタジアムに近いところで、神戸市で最も賑わっている三宮や神戸あたりからはやや離れているが、それでも中心部の路線が中心になって、便数が多くなる事で台数も多いのだろうか。あとは地下鉄の名谷に近い落合が19.59%、魚崎が16.08%。民営バスとの競合が少ないエリアが、台数が多い。この傾向は14年前とほぼ変わりがない。中央〔営〕は88→50台とかなり減少したが、中央南〔営〕に移った分が多いと思われる。ニュータウンを控えた西神〔営〕が35台(7.22%)と意外に少ないが、民営との競合が多く、面的な展開があまりないためと考えられる。
2. 平均車齢は13.05年と、14年前の6.16年(他に神戸交通振興6.62年)から、急激に経年化している。車齢延長の施策の影響が出ていて、車齢構成はかなりいびつ。2014~2017年の4年間の導入は、2016(H28)年のエルガ・ハイブリッド4台のみ。2013(H25)年もブルーリボンシティ・ハイブリッドとポンチョの合計5台、2018(H30)年もエルガ1台のみ。この期間は、新車導入の空白域になっている。
年式別で最多は2011(H23)年式の69台で、全体の14.23%、次が2007(H19)年の68台(14.02%)。一方で令和になってから(2019年以降)の新車導入は91台のみ。2021(R3)も導入がなかったから、コロナ禍も影響していたのだろう。松原〔営〕は105台中23台、21.9%と1/5以上が2007(H19)年式。これらの数字だけ見てしまうと、地方の中小バス事業者並み、と言えてしまう。
営業所別では、清水ヶ丘〔営〕が15.48%と最も経年化している。一番若いのは神戸北町〔操〕だが、それでも10.20年。
最経年車は、落合〔営〕のエアロスター1台。2001(H13)年式だから、もう四半世紀近く走っている。R73時の車両のうち、299台が現存している(と思われる)。残存率56.20%で、半数以上。ところでこの中で、550号車(2008(H20)年式PDG-RA273MAN)は登録番号がかなり大きく(若く)、一昨年あたりに再登録されたものと考えられる。11年前は508号車だった車両と思われるが、この辺のいきさつについては、記載がなかった(他者様のサイトをいくつか眺めても、この辺の事情を記したものは見つけられなかった)。
3. ノンステップ率は86.19%。11年前は68.23%(他に神戸交通振興15.38%)だったからだいぶ上がったが、90%には届いておらず、他の公営交通と比べたら低い方なのかもしれない。神戸市は山間部の路線が多いためか、2010(H22)年まではワンステップ車も並行して導入していた。垂水〔支〕100%・石屋川〔営〕97.87%の一方、魚崎〔営〕は79.49%と8割に届いていない。六甲の麓を登る路線があるからか。
4. 現在の神戸市営バスは阪急バス・山陽バス・神姫バスへの委託があるが、阪急バスへの委託が183台、全体の37.73%で、1/3を上回る。神姫バスは160台で32.99%とこちらも1/3に近い。山陽バスは21台で4.33%。結局自局の管理は121台、24.99%で、1/4のみ。
5. 2016(H28)年以降の導入は、ポンチョ4台とSORA以外は、全ていすゞ。いすゞ車は全体の44.94%と、半数に近くなった。
低公害車(純粋なディーゼルエンジンではないバス)は、ハイブリッド車は8台のみと、現代の大都市の公営バスにしては少ない。西神〔営〕5台・松原〔営〕3台。この他中央にSORAが1台導入されたが、CNG車は全廃になり、低公害率は1.85%。
他社局からの譲渡はない。かつては神戸市営自身が中古車両の供給元になっていたのだが(特にしずてつジャストライン向けが多かった)。
伊丹市 BJハンドブックシリーズでは初だから直接の比較はできないが、伊丹市営バスを取材したバスラマインターナショナル145(2014(H26)年9月)の時点では、乗合90台+貸切(スクールバス中心)5台(3台は市保有)だったそうだから、貸切はなくなったが、乗合車の台数は10年前と変わりがない。
伊丹市はある程度コンスタントに導入があるが、それでも2008(H20)・2011(H23)・2022(R4)・2024(R6)各年は導入がなかった。一方で2015(H27)年には18台とまとまった導入があり、全体のちょうど20%、1/5を占める。平均車齢は9.00年。最経年車は2005(H17)年のエルガ2台。ノンステップ率100%。
低公害車は、アルファのEV導入まではなかった。一時は淡路交通からの移籍車両があったそうだが、現在は他社局からの譲渡はない。
今号では、神戸市営バスに関するコラムのページがある。BJハンドブックシリーズでは初の試み。ボンネットバスと、整備工場。ボンネットバスU-FTR32FBは営業登録されているが、今号のリストには加えられていない。雪対策というのは、よそ者からすると近畿では?と思ってしまうのだが、六甲はそれほど雪が多いのか。
◆ 神戸市バスのあゆみ
扉写真はJRの神戸駅前で、都市新バスのキュービックが見られる。
発生から30年を迎えた阪神・淡路大震災の影響も大、だったが、R73以降の14年間では、神戸交通振興が廃業し、「シティループ」も神姫バスに移行して、完全に一般乗合に特化した、という事が大きいだろうか。あとはケーブルカーにアクセスする急行路線の新設、が挙げられるだろう。
◆ 伊丹市バスのあゆみ

伊丹市営バスは戦後の開業、という、比較的新しい公営バスで、鉄道は国鉄(→JR西日本)と阪急電車、それに後の阪急バスが市の外縁部を走る以外、市域全体を網羅する公共交通がなかった、という所から始まっているようだ。EVからスタートしたのが興味深い。とはいえ当初のEVは、後のディーゼルエンジン車とは比較にならないほどの性能しかなかったから、すぐさま普及とはいかなかったのだろう(この点でアルファバスのEVの評価は注目されるし、いすゞエルガEVの導入も期待されるのではないか)。
◆ 神戸市バス・伊丹市バスの路線エリア
神戸市営は、北部の神鉄岡場駅を中心とした有野〔営〕のエリアが全てなくなり、西神地域や谷上付近を除くと、六甲山系より南側のほぼ全域を網羅している。中央南〔営〕は神姫バス委託だが、ポートアイランドの中にあって、路線がない。「あゆみ」では「明石市内から路線がなくなった」と記されているが、朝霧駅は明石市。ここから明舞北センターまでは、神戸市と明石市の市の境を走る事になる(だから以前は明石市営との共同運行だったのだろう)。なお、神鉄沿線を北上する路線(65系統など)が、「のど」の部分にかかって判別不能。この点は何とかして欲しかった。
伊丹市営は、市域が小さいためか、越境する路線が多い。特に大阪空港へ行く路線は、大阪府豊中市内を経由していく。また塚口駅は尼崎市、中山寺駅は宝塚駅。「あゆみ」でも記されていたが、市営バス以外に市域全体を網羅する公共交通は、存在しない。「独占」とも言い難いが、伊丹市の交通の主力と言える(そしてそのために、市の外へ越境する路線が少なくないのだろう)。
神戸・伊丹両市の路線はつながっていない。
◆ 神戸&伊丹のタイムトラベル
R73の紀行は富田 康裕氏による、新神戸駅を起終点とした一泊二日の神戸市内一周。
今回の谷口 礼子さんの紀行は、当然神戸・伊丹両市にまたがるもので、午前中が神戸市、午後が伊丹市。阪急六甲→塚口間は阪急電車でつないでいる(この他、神戸市内のケーブルカーの駅同士を、神戸六甲鉄道のバスで結んでいる)。両市のバスは連絡していないが、この両市は「西国街道」で結ばれていて、伊丹市の昆陽は、その宿場町だったそう。地名だけは聞いた事があった気がするが、県の文化財がある寺や、古びた民家があるようだ。
清酒発祥の地は伊丹でだったが、内陸だったので、海沿いの灘に後に抜かれる事になったとか。。
この紀行は10月11日だったそうだが、摩耶ケーブル山上駅が17℃、塚口駅前は26℃か。さすがに山の上は涼しいが、10月半ばで26℃という数字が出るとは、やはり去年の夏は、暑かった…。
◆ 終点の構図
R73は、山の中の衝原。谷上駅からの路線の終点で、有野〔営〕の路線がなくなった現在では、たぶん神戸市営最北。
今号は一転して海沿いになり、須磨一の谷は、JRの電車からも見える場所で、操車場然としているかもしれない。加藤氏の故郷は埼玉県らしいが、確かに熊谷市のコミュニティバスには「直実号」という路線がある。意外な結びつきかも知れない。
(ここが旧須磨〔営〕だったのか?)
神戸市・伊丹市、共に日常的な利用者ではないからどうのこうのは言えないが、神戸市に関しては地下鉄海岸線の開業から既に四半世紀以上経っているし、路線の整理も一段落しているので、当分は現状維持、だろうか。観光路線バスもなくなったし、地味ではあるが、市民の日常生活を支える存在、として今後も位置付けられるのだろう。民営委託が相当進められたが、現在は民営側も公営をこれ以上引き受ける体力がないはずで、運行を支える体制としても、当分はこのままか。神戸市中心部だと新規参入組もある(北港観光バスなど)ので、折り合いをどうつけるか、というのはあるかも知れない。六甲山の北側だと、北神急行が逆に市営地下鉄になったので、谷上での鉄道⇔バス連絡ネットワークの拡充も考えられるだろう。
車両面では延命の結果相当経年化しているが、いずれEVなどの低公害車の大量導入は避けられなくなるはず。どう動くのか。
伊丹市も、民営バス(阪急バス)のネットワークの拡大は現状では考えられず(むしろ阪急バス全体で縮小傾向)、引き続き市内全域を網羅する公共交通の主力として、活躍が続くのだろう。こちらもEVバスがさらに増備が進むことになるのだろうか。
ともあれ、運営形態がどうであろうと、神戸市・伊丹市とも、市民の足として活躍が続く事を、期待します。
さて、次号X116はまた2市合同で、地元横浜市と、川崎市の市営バスになります。どういうものになるんだろうねえ。
また、BJエディターズの公式WEBでは、X117は三重交通、そしてX118はまた公営合同で、京都市営と、大阪府の高槻市営になります。公営バスが合同になるのは、規模の縮小の他、単一の型式の台数が多くなり、型式自体の数が少なくなっているからかも知れない(横浜市営も、その典型かも)。しかし、この形態が定着すると、公営だけでなく、規模が小さく、しかも資本のつながりも皆無、あるいはほとんどない民営2社(以前の東武バス・東野交通のような)という形態も考えられ、小さな事業者のデータや走るエリアの姿を、目にする機会が多くなるかも知れない。そうなるのなら、その点では歓迎だろう。BJハンドブックシリーズ自体の今後の展開も、期待されます。
当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
《What's New》
22日 ベルリン国際映画祭 水尻 白子監督アニメ「普通の生活」 銀熊賞受賞
23日 乗馬体験のポニー 大通りを逃走 松山市
24日 大阪マラソン 近藤 亮太 初マラソン日本最高記録更新
ロシアによるウクライナ侵攻から3年経ち、停戦に向けた「交渉事」が行われています。いろいろ言いたい事はあるが、一言でいえば、「不快」。もしこのまま大虐殺も核の脅しも領土占領も、ロシアが何一つなく責任を負うことなく済まされ、将来の展望もあやふやなまま「停戦」するなら、これまで何年・何十年と地道に行われてきたはずの「平和な世界の構築」の模索が、全く無意味なものになってしまいかねない(「カネが全て」になるから)。加えて、これ誰もあまり口にしていないようだけれど、もしアメリカの後ろ盾でロシアに都合の良い形の停戦となったら、これまで「米vsソ→ロ」の構図を前提にしてきた冷戦構造が、まるっきり変わってしまう事になる。この事、日本の政治家(与党も野党もだ)や平和運動の活動家の方々などは、どう受け止めるのだろうか?
(まあ、トランプとプーチンはデキているからね)
今日はこの後、昨日ポニーが大逃走劇を繰り広げた松山に向けて出発します。〔サンライズ〕は雪の影響が心配だったのだが(昨日の出発は上下とも運休になった)、今日は運行されそう、なので予定通りに行きます。初めて「ソロ」に乗ります(「のびのびシート」が早々に満席になったので)。