№2912 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 24.小田急小田原線 海老名駅(後)

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 小田急小田原線・海老名駅を巡るダイヤの変遷、後半は2012(H24)年3月改正からです。東日本大震災がもたらした危機を乗り越えた小田急は、2018(H30)年、ついに複々線化事業の完成を見ました。その後はコロナ禍の危機はあったが、海老名は町そのものの発展もあり、待望のロマンスカーミュージアム、そして小田急自体の本社の一部移転と大きく飛躍、小田急電鉄全体における重要な地位を得る事になります。

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2012(H24)年3月17日改正
 3年ぶりの改正となりました。
 快速急行が、土休日の日中にも設定になりました。平日同様在来の急行を建て替える形で、60分間隔の運行です。
 ロマンスカーでは、〔メトロはこね〕が平日にも設定になった一方、〔あさぎり〕は御殿場~沼津間が廃止となり、再び新宿~御殿場間の運行となって、60000形MSEによる3往復(土休日4往復)運行になりました。

 2013(H25)年3月23日、下北沢付近が地下線化され、複々線化事業区間では、踏切がほぼすべてなくなりました(向ヶ丘遊園の手前1か所のみ)。

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2014(H26)年3月15日改正
 さらにまた2年、間が空きました。
 平日で、小田原を7時台に出発する快速急行が初めて設定になりました(海老名発8時01分)。急行からの立て替えで、新宿までは4分の短縮になりました。
(新百合ヶ丘で、我孫子行急行が接続)

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2015(H27)年3月14日改正
 平日夕刻の新宿発車時刻をパターン化し、準急を急行に変更しました。このため、海老名でも特に夕刻にかなり時刻が変わってきています。
 土休日は朝方上り、夜間下りで快速急行の設定が増えました。
 ららぽーと海老名がこの年の10月29日にオープンしました。この先小田急自身も、海老名付近(小田急線とJR相模線に挟まれたエリア)の再開発事業に、積極的になっていきます。

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2016(H28)年3月26日改正
 北海道新幹線が開業した日だが、小田急にとっても、複々線化事業完成前では、一番重要な改正になったと思われます。
 ついに、海老名に特急ロマンスカーが停車するようになりました。基本的には本厚木への停車を変更したもので、当時はまだ日中が中心、朝方の停車はないけれど、この後改正の度に、停車が増えていきます。また、伊勢原にも2往復が停車(大山への行楽対策)。
 この改正で、長らく続いたダイヤの30分サイクルが、20分サイクルに変更になりました。小田原線の快速急行が約20分間隔になり、江ノ島線と合わせて、新宿口では10分間隔にまで設定が増加します。
 一方で快速急行・急行の一部は新松田止まりとなり、新松田で始発の各駅停車に接続する形態となりました。
 この改正から、千代田線直通は小田急・東京メトロの編成に加え、JR東日本のE233系2000番台も運用される事になりました。JRの通勤電車が大手私鉄に乗り入れるのは初めて。大半は多摩線直通だが、海老名でも平日夜間に2往復見られました(下り20時18分・21時15分、上り21時08分・22時01分)。また、小田急4000形もJR常磐線へ直通を開始、大手私鉄通勤型のJR線直通も初めてです。取手への直通運用もあり、大手私鉄の電車の茨城県乗り入れも初でした。

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2017(H29)年3月4日改正
 平日の夜間に若干の変更点はあるが、大きなパターンの変更はない。
 この時刻を掲載した小田急発行の時刻表では、翌年の複々線化事業の完成がアナウンスされ、同時に行われる新ダイヤについても、ある程度予告されていました。
(同時にロマンスカー70000形(この時点ではGSEの愛称は決まっていなかった)新造・EXEリニューアル(EXEα)も予告)

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2018(H30)年3月17日改正
 ついに下北沢付近の複々線化が完成しました。
 ダイヤの変更があまりにも多岐にわたり、いきなりテキストにしても分かりづらくなるはずだから、この新ダイヤを解説した広報誌「ODAKYU VOICE」の特別版、「新ダイヤ号」の紙面をご覧頂きます。表紙等も含めて16ページに渡るので、閲覧は大変だろうと思いますが。

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 1990(H2)年3月改正時点では、朝ラッシュ時の上り、最ピーク時に新宿に到着する急行は、海老名から1時間08分前後かかっていました。一番かかる列車は1時間11分でした。この2018(H30)年改正で、快速急行利用で海老名→新宿間は完全に1時間を切りました。一番かかる列車でも52分なので、28年で20分近い短縮が実現しています。
 通勤準急・準急は完全に、千代田線直通オンリーの種別となりました。準急は、上りは向ヶ丘遊園以西の設定がなくなり、下りも平日夜間のみ。多摩地域の停車駅追加もあって、多摩地域を指向した列車になったと言えます。また、各駅停車も一部は千代田線直通が設定されています。多摩急行・区間準急は廃止。
 急行は、上りは全て経堂停車になりました(朝ラッシュ時は急行は運行せず、通勤準急が停車)。下りは、平日の夕方以降はまだ通過のまま。
 日中は、急行は基本的には新松田折り返しとなり、新松田で小田原発着の各駅停車と接続する形態になっています。
 ロマンスカーは、朝方の上りは全列車〔モーニングウェイ〕(千代田線直通は〔メトロモーニングウェイ〕と呼称。海老名には朝ラッシュ時にも停車が設定され、特に平日の72・74・76号は、海老名を出ると終点の新宿までノンストップです。なお、平日の〔さがみ80号〕(17時01分発)・土休日の〔モーニングウェイ70号〕(7時01分発)は海老名始発。
 下り本厚木行の最終が繰り下げ、1時を過ぎての発車になりました。海老名で1時過ぎの定期列車の出発が設定されたのは初めて。
 このダイヤから、途中駅で種別を変更する列車の案内方が変わりました。それまでは、種別を変更する駅を行先として運行→行先変更駅から別列車として運行(例:新宿から急行相模大野行→相模大野から各駅停車小田原行)だったものが、行先を最終目的地として表示し、その途中で種別を変更する方式になっています(例:新宿~新松田行急行→相模大野から各駅停車に変更 列車番号が変わるのは変わらない)。
 新ロマンスカー70000形GSEがデビューしました。土休日の〔スーパーはこね〕3本が、新宿→小田原間59分運転となって、1時間の壁を破りました。これもまた、小田急の長年の目標でした。一方で多摩線のロマンスカー運行は取りやめ。
 工事全体はまだ若干残っているが、大きなヤマは越えた事で、小田急では箱根地域への大規模な観光の投資を行うと発表しています。

 この改正の直後の4月27日、「ロマンスカーミュージアム」の2021年春開業が、発表になりました。

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2019(H31)年3月16日改正
 平成最後のダイヤ改正。
 開成が急行停車駅になりました(快速急行は、新松田で急行に変更する形で一部停車)。
 新宿~代々木上原間でも、各駅停車の一部10連運転が始まりました。
 平日22時以降の下り急行が経堂に停車。また、千代田線から来る伊勢原行急行が、伊勢原で各駅停車小田原行に接続。
 海老名始発だった、土休日の〔モーニングウェイ70号〕は、本厚木始発になりました。

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2020(R2)年3月14日改正
 平日下りの海老名始発の各駅停車を増発。夜間の経堂停車が、21時~に拡大。

 しかしこの直後の4月、新型コロナウィルスの感染拡大で緊急事態宣言が発出、外出の抑制が強く求められるようになり、小田急ではGW中にロマンスカーが全列車運休という、悪夢のような事態に直面します。コロナ禍はその後も感染の拡大と縮小を繰り返しつつも、徐々に収束に向かっていくが、この出来事は、小田急のダイヤにも影響をかなり与えるようになります。

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2021(R3)年3月13日改正
 コロナ禍の結果、リモートワークの普及などで通勤の利用、特に夜間にはかなりの影響が出ました。
 最終列車が繰り上げになり、海老名では下り小田原行が0時26分→0時08分、本厚木行最終が1時01分(土休日1時02分)→0時37分と、大幅に繰り上げられました。平成初期のレベルに戻った形です。上りは0時51分発町田行は0時37分。小田急全体で、平成はもちろん、昭和後期の頃よりも、最終列車が早まっています。
 海老名は直接影響はないが、一部で初列車の繰り上げも行われています。
 ロマンスカーの車内サービスが、この改正をもって終了しました。またこの直後、50000形VSEの、翌2022(R4)年春の定期運用終了も発表になり、衝撃を与えました。

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 こんな最中ではあるが、4月19日に「ロマンスカーミュージアム」が、当初の予定通りに開業しました(開業当初は完全予約制)。

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2022(R4)年3月12日改正
 日中のダイヤにも、相当手が入りました。
 日中の新宿~新松田間急行に代わり、それまで準急で走っていた日中の千代田線直通を急行(向ヶ丘遊園発着)として運行。また町田・相模大野~小田原間の6連の急行(新松田~小田原間各駅停車)が設定され、相模大野で江ノ島線の快速急行と接続する形態になりました。この結果、新宿~町田間では、運行本数が毎時片道3本減少、という事になります。
 小田原線の快速急行はほぼ全列車が新松田~小田原間を急行に変更し、開成に停車。この区間を快速急行で走るのは、海老名5時07分始発の下り1本のみとなりました。
 急行は全列車、経堂に停車。
 平日は朝ラッシュ時も全体的に本数が減少しているが、一方で着席通勤の需要が高まり、ロマンスカーの便数は増えました。海老名7時29分発〔モーニングウェイ78号〕は新宿着が8時19分、以前だったらラッシュ時の最ピーク時で、複々線化の効果もあるのだけれど、8時台前半に新宿にロマンスカーが到着するなど、30年位前には考えられない事でした(1990(H2)年3月改正時点では、ロマンスカーの新宿到着は6時56分~9時18分の間ない)。海老名には全〔モーニングウェイ〕〔メトロモーニングウェイ〕が停車。また、新宿発17時台のロマンスカーも〔ホームウェイ〕として運行し、海老名にはやはり全〔ホームウェイ〕〔メトロホームウェイ〕が停車。
 この他、江ノ島線では各駅停車の系統分割が行われました。

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2023(R5)年3月18日修正
 千代田線直通の一部列車の行先の変更が行われた程度で、時刻の変更はなし。

 翌2024(R6)年2月、本社機能の一部が、海老名の「ViNA GARDENS OFFICE」に移転しました。

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2024(R6)年3月16日修正
 平日朝方の下りで一部変更があるが、大きなパターンの変更はなし。
 一昨年・去年のダイヤの修正は、各駅のホームドア設置による停車時間の見直しも、理由の一つに上がっています。海老名駅でも、11月23日までに、4線全てへのホームドア設置が完了しました。

 以上、本当に簡単に、平成以降の海老名駅の小田急のダイヤの変遷について記してきました。まだまだ到底書き足りず、漏らしてしまった重要事項もあるのかと思います。どうかご勘弁ください。
 前回の冒頭で、「小田急の特に平成時代は、光と影が交錯する時期だった」と書いたが、今回時刻表からエクセルを使用して駅の時刻表を書き起こしてみて、改めてそれを実感したような気がします。
 2023(H5)年度における小田急海老名駅の乗降人員は132,467人だったそうで、小田急線全体で6位にまでなりました。2018(H30)年度は153,713人だからピークからは減少しているが(コロナ禍の他、相鉄がJR・東急への直通運転を始めたからか)、それでも輸送・営業の面でも、駅周辺の開発や本社機能移転という出来事を見ても、海老名が小田急において、重要な地位を得た事は、間違いはないだろうと思います。
 2022(H4)年改正以降、基本的には変更がなかった小田急のダイヤだったが、今年の3月15日改正では、平日夕方の準急を急行に変更、快速急行が開成に新規停車(これで新宿~小田原間で再び全区間快速急行として運行)、〔ホームウェイ〕増発、あたりが、海老名に直接かかわる事項になろうかと思います。
 さらにその先、海老名駅のダイヤに変化を与える要素は何だろう?全体の輸送量は大きくは増えも減りもしないと思うが、その中では回復基調にあり、さらにはインバウンド需要が増加する観光輸送だろうか。海老名そのものは観光の要素はほぼないけれど、再来年の新ロマンスカーデビューもあるし。また、伊勢原市に建設される新駅及び新工場も、何かしらは影響を与えるでしょう。
 先がちょっと読みづらいけれど、今後も小田急全体の経営への関与という点でも、海老名駅の動向(特にダイヤ面)では注目し続けて良いと思います。
 
 当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


 小田急以外にもポツポツとダイヤ改正のリリースが出ているが、今日は西武の、3月15日改正がリリースされました。池袋線「S-TRAIN」運行時間帯の30分前倒し、新宿線〔小江戸〕の西武新宿発車時刻を一部変更、拝島駅上り所列車の準急への変更、など。西武はついに冊子時刻表の発売を取りやめ、「e-book」形態で無料公開するとしています。PDF形式の京急や名鉄と同様に、後々まで保存が効くものであれば良いのだが。

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