№2911 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 24.小田急小田原線 海老名駅(前)

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「駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷」、今回は、変貌・躍進著しい、小田急小田原線の海老名駅を取り上げてみようと思います。
 もともと相鉄線との乗換駅であり、また検車区を併設している事で、営業でも運転でもそれなりに重要な駅ではあったろうと思いますが、特に近年はロマンスカーが停車したり、ロマンスカー・ミュージアムがオープンしたり、さらに小田急の本社も一部移転、駅付近も特に西口はららぽーとがオープンしたり、タワマンも相次いで建設されるなど、目まぐるしい変化を見せています。それは、ダイヤにも如実に表れています。
 その海老名駅の時刻を、平成が始まってまだ間もない1990(H2)年から振り返ってみます。

 しかし、特に平成の30年間の小田急は、ロマンスカーに代表される華やかな行楽輸送の一方、難航する複々線事業が影を落とす通勤輸送と、「光と影」が交錯する苦難の時代でもありました。2018(H30)年3月の複々線全区間完成までは、ダイヤの改正も事業の進捗状況に連動して行われていきます。
 輸送力増強の施策は2方面、東京都内区間の複々線化と、急行の10連区間の拡大でした。
 参考までに、1990(H2)年当時の、小田急の通勤列車の停車駅を表示した車内の路線図を出します。当時の通勤列車は急行・準急・各駅停車の3本立てと、単純でした。

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 この路線図はやや後の撮影のもので、〔あさぎり〕が沼津発着(の特急)になっている違いがあるが、通勤電車に関しては変わっていません。

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1990(H2)年3月27日改正
 当時は、土曜日は平日と同じでした(日中に土曜日のみ運転の新宿~相模大野間急行の設定あり)。
 多摩線が唐木田まで延長されました。また江ノ島線の急行の停車駅に、中央林間が追加されています。
 当時の小田急は、全体的にも、また各列車単位でも、輸送力は小さいものでした。複々線区間は代々木上原~東北沢間0.7㎞しかなかったし、10両編成が停車できるのは、新宿~本厚木間の準急停車駅(経堂除く)のみでした。
 優等列車は本数自体が少なく、日中は毎時急行4本+準急2本のみ(併せて10分間隔)。急行は平日朝ラッシュ時の上りのみ、本厚木で増結(4連が本厚木行各駅停車として先行し、本厚木で後続の急行に連結するパターンもあり)して10連で新宿に向かっていたが、基本的には新宿~相模大野間のみが10連で、相模大野で4連が分割されて江ノ島線に直通するダイヤでした。箱根湯本・小田原+片瀬江ノ島発着の急行は、小田急のダイヤの代名詞でもありました。小田原方は、小田原発着の一部が、急行のまま新松田~小田原間各駅停車で運行されていました。
 また、新宿~本厚木間は急行・本厚木以西は各駅停車とする列車も多数ありました。上りでは、相模大野行各駅停車→相模大野から急行、という列車も多数設定されています。
 準急は、新宿発着は朝ラッシュ時のみ10連(本厚木で増結)で、だから経堂は通過でした。千代田線直通運転は平日朝夕のみと小規模、当然全列車経堂通過です。
 特急ロマンスカーは当然、当時は全列車海老名通過だったが、小田原・箱根方面行は停車駅によって愛称が異なっていて、〔はこね〕…小田原のみ、〔あしがら〕…町田・小田原、〔さがみ〕…向ヶ丘遊園・本厚木・新松田・小田原 でした。〔えのしま〕は町田と藤沢のみ。また〔あさぎり〕は当時は新宿~御殿場間で運行される「連絡急行」という種別(御殿場線内急行)で、町田・本厚木と、御殿場線内の松田・山北・駿河小山に停車していました(一部は谷峨にも停車)。

小田急小田原線海老名駅 1991_0326.jpg
1991(H3)年3月16日改正
 この改正から、土曜日は休日と同じ時刻になりました(千代田線直通準急は、土曜日と休日で行先が変わる列車がある)。
〔あさぎり〕はこの改正で、新宿~沼津間相互乗り入れの特急となり、名車SEが退役しました。小田急側は代わって20000形RSEがデビューしています。
 海老名駅に関係するところでは、千代田線直通準急は、休日にも運行されるようになりました。
 本厚木以西の各駅停車が増発され、急行と合わせて、基本的に毎時6本体制が確立しています(本厚木乗り換えが大半)。
 平日・土休日とも、本厚木までの最終列車が繰り下げられています(新宿→相模大野間急行が、相模大野から各駅停車本厚木行となる形態)。

小田急小田原線海老名駅 1992_0328.jpg
1992(H4)年3月28日改正
 一部急行列車の、海老名での増解結が始まりました。設定本数はまだ少ないが、この後しばらくは、改正の度に増えていきます。
 検車区があるとはいえ、本厚木でなく海老名で、というのは中途半端にも思えるが、本厚木の引き上げ線は各駅停車が使用するので、増結車両の置き場がない、というのがあったろうと考えられます。
 海老名には影響が及んでいないが、新宿発の最終列車の時刻の繰り下げが行われています。現代とは大違い、当時はバブル末期で、鉄道各社には深夜帯の輸送力の増強が、強力に求められていた時期でした。
 なお、この改正ダイヤを掲載した小田急発行の時刻表では、1995(H7)年からの急行10連運転開始に備え、ホーム延長工事に着手すると予告されていました。

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1993(H5)年3月20日改正
 新宿~相模大野間の急行が、日中も完全に毎時6本運転となり、江ノ島線の急行は、基本的には小田原線とは分離されて、江ノ島線内は、平日は全て6連運転となりました(土休日は一部併結運転が残存)。
 この事もあって、海老名増解結が日中にも設定されています。平日朝方上りでは準急でも設定があります。

小田急小田原線海老名駅 1994_0327.jpg
1994(H6)年3月27日改正
 基本的な変更点は少ないが、本厚木以西の各駅停車の増発が行われています。

小田急小田原線海老名駅 1995_0304.jpg
1995(H7)年3月4日改正
 ちょうど30年前ですね…。
 本厚木~秦野間で、急行の10連運転が始まりました。平日は朝夕で下り6本・上り10本、土休日は朝方の2往復で、秦野での増解結があります。
 なお、複々線化事業のため、成城学園駅は1番線(待避線)の使用を停止(撤去)。このため急行の時刻が変わり、下りは向ヶ丘遊園での特急退避がみられるようになりました。

小田急小田原線海老名駅 1996_0323.jpg
1996(H8)年3月23日改正
 新ロマンスカー30000形EXEがデビューした改正です。〔はこね〕〔えのしま〕の新宿~町田間併結運転が始まりました。また停車駅が変更になり、在来の〔はこね〕は〔スーパーはこね〕に変更、〔はこね〕は町田に、〔あしがら〕は本厚木に、〔えのしま〕は大和に追加で停車となりました。ロマンスカーの路線が、観光一辺倒に近かったものが、若干変わってきた改正でした。
 小田原駅ホームが一部10連対応になり、EXE使用の〔はこね〕の一部で、新宿~小田原間10連運転を開始しました。ただし、渋沢・新松田両駅はまだ10連対応になっていません。
 海老名関連では、本厚木~秦野間10連運転の急行が、平日2往復追加。
 日中の新宿発着の準急の一部が、千代田線直通に変更されています。

小田急小田原線海老名駅 1997_0623.jpg
1997(H9)年6月23日改正
 改正日が若干中途半端だが、ようやく複々線事業が一部日の目を見て、喜多見~和泉多摩川間が高架複々線化。
 この時点ではまだ「3つの駅に跨った待避線」に過ぎない印象が免れないが、それでも朝ラッシュ時の急行が一部(ピークの前後)、海老名→新宿間で60分を切れるようになりました。

小田急小田原線海老名駅 1998_0822.jpg
1998(H10)年8月22日改正
 また改正日が夏休みの最中と中途半端だが、この改正で、急行が小田原線・江ノ島線とも全区間、10連で運行できるようになりました。
 ただしまだ全列車ではなく、相模大野・海老名の増解結が残っています(秦野の増解結は終了)。
 ロマンスカーはまだ海老名と直接の関係はないが、〔えのしま〕は停車駅を町田→相模大野に変更し、〔えのしま〕と併結する小田原線のEXE使用の列車は〔あしがら〕となって、同様に相模大野に停車駅を変更しています。さらに〔あしがら〕1往復が秦野に新規停車。

小田急小田原線海老名駅 1999_0717.jpg
1999(H11)年7月17日改正
 経堂駅付近が高架線に切り替わり、ホームが10連対応になりました。変則的だが、上りの準急が(平日朝方を除いた)全列車、経堂に停車しています(下りの10連はまだ通過)。
 小田急のダイヤの特色でもあった小田原線・江ノ島線2方向併結の急行は、この改正で完全になくなりました。また、下り2本・上り1本で行われていた相武台前停車もなくなっています。
 海老名には影響が及んでいないが、平日の新宿発最終の繰り上げが行われています。
 ロマンスカーは、〔あしがら〕〔さがみ〕の愛称が〔サポート〕となりました。また新宿発18時00分以降は全列車〔ホームウェイ〕に統一して変更されています。

小田急小田原線海老名駅 2000_1202.jpg
2000(H12)年12月2日改正
 登山電車の小田原~箱根湯本間の運行が廃止になり、この区間は小田急の編成に統一されました。
 日中、本厚木~小田原間の各駅に停車していた小田原発着の急行が箱根湯本直通となりました。新松田~小田原間ノンストップに変更になるので、代替の各駅停車が増発されています。
 また、日中の準急は基本的に、千代田線直通・相模大野発着となり、代替で本厚木発着の各駅停車を、町田または相模大野に延長しています。
 経堂駅下り線高架切り替えで、下り準急は全列車、経堂停車になりました。
 海老名関係以外では、江ノ島線急行の湘南台停車(前年に相鉄・横浜市営地下鉄が乗り入れ)、多摩線直通の〔ホームウェイ〕・急行(千代田線直通)の設定があります。

小田急小田原線海老名駅 2002_0323.jpg
2002(H14)年3月23日改正
 海老名と直接関係はないが、江ノ島線の急行が湘南急行、相模大野発着の準急が、多摩線直通の多摩急行となりました(このため、町田・相模大野発着の各駅停車は新宿発着に延長)。ロマンスカーの一部が新百合ヶ丘に新規停車。
 海老名・相模大野で増解結を行っていた急行の大半が、新松田まで10連化されました。増結の4連は新松田で切り離しの後、新松田始発小田原行として運行(上りは逆)。日中の海老名増解結がほとんどなくなりました。

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2003(H15)年3月29日改正
 新宿~新松田間で10連運行を行う急行が増加しました。
 複々線化はまだだが、それを先取りする形で祖師ヶ谷大蔵駅が4線化され、追い抜きが設定されています。

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2004(H16)年12月11日改正
 梅ヶ丘~喜多見間が高架複々線となり、朝ラッシュ時の急行は全て、海老名→新宿間で60分を切りました。
 快速急行が新規に設定になりました。新宿~海老名間は41~42分に短縮されています。
 ただしこの時点では、藤沢におけるJR湘南新宿ラインへの対抗策、の意味の方が濃かったと思われ、江ノ島線は湘南急行からの変更で平日・土休日とも約30分間隔の運行だったが、小田原発着は、日中は平日のみ60分間隔の運行と、まだささやかでした。江ノ島線の快速急行に接続する、町田・相模大野発着の急行が設定されています。
 快速急行は、当時は登戸は通過でした。南武線の乗換駅でもある主要な駅のはずなのにやや不審でもあったが、複々線化が完全には達成できておらず、列車設定本数が限られる状況では、必要以上の混雑を避けたかったのかと思います。
 また、区間準急も設定されています。代々木上原で多摩急行と相互に接続する形態が中心でした。多摩線発着が中心だったが、海老名でも数本ありました。
 急行が平日は日中、土休日は全列車、経堂に停車。海老名での上りの増結が大幅に減少しました。なお箱根湯本直通の急行は、これまで全列車、新松田~小田原間ノンストップだったものが、日中は半数が本厚木以西各駅停車になりました。
 ロマンスカーでは、さすがに〔サポート〕の愛称はふさわしくなかったようで、〔さがみ〕の愛称が復活しました。停車駅に関係なく、箱根湯本発着が〔はこね〕(ノンストップは〔スーパーはこね〕)、小田原線内列車が〔さがみ〕です。

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2006(H18)年12月11日改正
 待望とされた、新ロマンスカー50000形VSEがデビューしました。
 一般列車に関しては、変更点は少ない。

小田急小田原線海老名駅 2008_0315.jpg
2008(H20)年3月15日改正
 なので、一般列車に関しては、ほぼ3年ぶりの本格的な改正となりました。
 箱根登山線(小田原~箱根湯本間)の一般列車が全て4連の区間運転(一部は小田原線直通)となり、長らく続いた急行の箱根湯本直通がなくなりました。これにより新宿発着の急行はほぼ全列車が全区間10連となり、海老名での上りの増結は、早朝の1本のみとなりました。
 千代田線直通のロマンスカー60000形MSEがデビューし、〔メトロホームウェイ〕の運行が始まりました。

小田急小田原線海老名駅 2009_0314.jpg
2009(H21)年3月14日改正
 遅延防止を目的とした停車時間見直しを反映した若干の時刻・パターンの変更はあるが、大きな変更はなし。

 これまでほぼ毎年のようにダイヤ改正を行ってきた小田急だったが、この後3年間、ダイヤ改正は行いませんでした。
 とりあえずきりが良いだろうと思うので、前半はここまで、2012(H24)年以降のダイヤ改正は次回です。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


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