№2811 私鉄名車列伝 156.小田急電鉄 8000形

「私鉄名車列伝」、今回は小田急電鉄の通勤車8000形です。そろそろ本格的な淘汰が始まる頃ではないか、と思っていたところ、デビューからちょうど40年となる昨年・2023(R5)年、思わぬ発表がありました。

小田急電鉄8000形百貨店40周年.jpg
 8000形は、5000形の後継の地上線専通勤車両として、1982(S57)年にデビューした。現在に至るまで、小田急線全線で活躍が見られる。

車体:ベージュ+ブルー帯の鋼製で、小田急の通勤車では最後の鋼製車体となった。正面の形態は、9000形を除いて長らく続いてきた小田急スタイルから一新、行先表示を貫通扉上部に配置し、黒縁の大型窓で上部全体を覆い、角型の前照灯・尾灯を一体のケースに収めて窓下に配置する、近代的なデザインになった。側窓は9000形から続く一段下降窓だが、車体内部に雨水が入らない完全防水型に改良され、外部から見るとアルミ材で縁取りされているように見えるのが特徴。冷房装置は集約分散型となった。
機器:9000形以来の界磁チョッパ制御を採用。ブレーキ方式は回生ブレーキ併用の電磁直通式、主電動機は140kwで、通勤用他系列との併結が可能だった。台車は5000形以降の実績がある、アルストム式の空気ばね台車を履いている。

小田急電鉄8000形車内.jpg
車内:一般的なロングシートで、ライトグリーンの化粧板+ダークブルーのモケット+グリーンの床の組み合わせが引き継がれたが、化粧板は模様入りとなった。この内装は1987(S62)年度増備車より、ホワイトベージュの化粧板+ワインレッドのモケット+グレーの床の組み合わせに変更された。天井は平天井で、冷風の吹き出しはラインフロー式となり、扇風機に変えてラインデリアが設置された。


 4・6両編成各16本、合計160両が東急車輛・川崎重工・日本車輛で製造され、小田急全線区の通勤列車で使用された。4・6連それぞれの単独運用の他、8000形同士、または他系列と併結した10両編成の運用も数多く見られた。6連は箱根登山鉄道(小田原~箱根湯本間)への直通の実績もある。

 デビューから20年となる2003(H15)年より、車体修理が開始された。車内は暖色系となり、座席はワインレッドのバケットシートタイプとなった。7人掛け座席の中央部には握り棒が追加されている。乗務員室前は車イススペースとなり、3人掛けの折り畳み式シートが設けられている。また、ドア上にはLED表示装置を設置した。窓部はUVガラスとして、カーテンを撤去している。外観では、行先・種別表示がLEDとなった。初期の更新車は3色だったが、後にフルカラー式とした車両も出場している。
 加えて2004(H16)年の更新車両より、走行機器も抜本的な更新が行われている。全体的に3000形に準じた内容となり、制御装置はVVVF式となり、主電動機は190kwとなった。6連では、中間車1両(M3)が付随車となり、パンタグラフが撤去された。補助電源装置はSIV、ブレーキは電気指令式となり、6連にのみブレーキ読み替え装置が搭載されている。運転台は左手操作方式のワンハンドルタイプに変更された。この他、他形式同様、界磁チョッパ制御車両も含めて、パンタグラフが一斉にシングルアームに交換されている。


小田急8000形.jpg
 車体修理は2014(H26)年までに全編成で完了、VVVF制御改造編成は、8000形同士での10連を組む事が多い(この場合は、6連と4連で下二けたをそろえるのが普通)。また6連は単独で、ブレーキの読み替え装置を持たない4連は、3000形と連結して10連を組む事も多くなっている。一方、界磁チョッパ制御式のままだった6連3本は2020(R2)年に廃車となり、8000形(と同時に小田急在籍車両)は全て、VVVF制御に統一された。
 2023(R5)年になって、西武鉄道が8000形を「サステナ車両」として導入すると発表、2024(R6)年には最初の1編成(8261F)が西武に譲渡され、改造を待つ。西武では、国分寺線での運用が想定されている。


【編成】(新製当時)
←新宿方     小田原・藤沢・唐木田方→
Tc1 8050 - M1 8000- M2 8000*- M3 8000*- M4 8000*- Tc2 8050
Tc1 8050 - M1 8000*- M2 8000*- Tc2 8050
(VVVF改造車の6連はM3 → Tとなりパンタグラフ撤去)

 8000形は過去に何度かスペシャルカラーをまとった事があり、一番上の8553Fは2002(H14)年に小田急百貨店開店40周年を記念したスペシャルカラー編成として、側面には紺色とピンクの輪を描いて走っていました。それ以前のデビュー直後には、「イベントカー」「オーキッド号」が運行された実績もあります。
 車齢40年超の、それも鋼製車体の形式が、大手私鉄間(それも小田急→西武という、過去には箱根を巡り熾烈な争いを演じた両者)で移動するというのは、やっぱオドロキ、ではありますよねえ。既に他者様のサイトでは、西武における姿が様々予想されているが、少なくとも小田急そのまんまのアイボリー+青帯はないと思うが、やはり黄色一色(ドア銀色)?今年中には走り出すようだが、どんな姿で再び姿を現すのか、見ものです。

今回の記事は
「私鉄車両年鑑2024」(イカロス出版)
「鉄道ファン1983年3月号」(交友社)
「小田急電鉄の世界」「新しい小田急電鉄の世界」(交通新聞社)
「鉄道ピクトリアル1991年7月号 増刊」「同1999年12月号 増刊」「同2020年8月号 増刊」「鉄道車両年鑑 2024」(鉄道図書刊行会)等
を参考にさせて頂きました。


 次回は同じく、「サステナ車両」として西武への譲渡が決まった、東急9000系を予定しています。

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 アニメスタジオのガイナックスが、経営破綻してしまいました。ガイナックスと言えばやはり「エヴァンゲリオン」で、舞台の一つが箱根なので小田急もグループで様々関わり、バスではラッピング車も走っていました。ガイナックスはこの十数年は、経営陣の不祥事など、体制そのものがかなり混乱していたようです。著作権は既に債権者のカラー社が保有しているので、エヴァそのものの今後への影響はないだろう、と思うが、日本のポップカルチャーのトップランナーを支えてきたガイナックスの破綻は、今後のアニメ界全体には、どのような影響をもたらすのか。