№2744 2023年度年末年始 航空利用データ分析

大阪空港.jpg
 よりによって元日からいきなりの能登半島地震、そして何より羽田空港の衝突大事故、衝撃的な事態(他にも大きな火事や山手線内の切り付け事件もあった)が相次いで、日本は揺らいでいる。特に羽田の事故は当然のごとく、年末年始の航空輸送に重大な影響が出る事になりました。
 この事が間違いなくあるだろう、12月28日~1月3日の7日間を対象とした今年度の航空各社の年末年始輸送の実績は、9日になって各社から発表になりました。コロナ禍「5類」移行後最初の年末年始輸送なので、どう影響するのかが注目だったと思うのだが、今回は特殊要因が多くて、単純には比較がならない部分も、多々あったのではと思います。ともあれ各社のリリースから、利用状況を分析してみます。
 基本的には(会社によって呼び方が若干違うが)「座席数」「旅客数」「利用率」の数値のみ記します。注記以外は、コードシェア販売分の扱いは記されていません。カッコ内は前年比だが、一部はコロナ禍前、2019(R元)年度のデータも合わせて発表されています(下線を付けて記した)。また、「ピーク」の文言は使用せず、基本的には利用率が一番高かった日と、パーセンテージを記す形に統一します。

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全日空
国内線 座席数 1,125,821席(92.2%・84.3%) ※旅客数 882,277人(97.9%・78.8%) 利用率 78.4%(+4.6%・▲4.4%
※ピーチとの合算では1,025,183人(95.7%・84.8%
国際線 座席数 187,027席(136.3%・68.4%) 旅客数 148,370人(135.9%・66.6%) 利用率 79.3%(▲0.2
%・▲2.2%

 国内線は、北海道方面が前年度比106.3%となった。旅客数が前年度を上回ったのは、方面別では北海道と「その他」(羽田・成田~中部 羽田~八丈島 LLP)。方面別利用率では関西が82.5%と最も高く、沖縄も81.4%と好調だったと言ってよい。
 最高の利用率は、下りが12月30日の96.1%、上りが1月3日の92.4%。
 国際線は、コロナ禍前の2/3を上回るまでに快復してきました。ハワイ路線がコロナ禍前をも上回る過去最高の利用があったそうで、コロナ禍前にA380でハワイまで往復して、その賑わいを見てきたものとしては、何よりだと思っています。中国路線は、前年度は中国におけるコロナ規制の混乱の影響があり、その反動だろう、旅客数は8倍近くになりました。利用率も、30%台だった前年度と比べて大きく伸びてはいるが、それでも方面別では唯一、70%に届かなかった。北米路線は、座席数は増えたが利用が減少し、欧州路線と共に、利用率が70%台に留まっています。円安の影響が出ているのではないか?
(欧州では加えてウクライナ・イスラエル情勢もあるかも知れない)
 最高の利用率は、日本発が12月28日の86.9%。日本着は1月3日の82.5%だが、この日は日本発の方が利用率が高い(85.0%)。期間中は全日、日本発の方が着より高く、発は全て80%以上でした(ANAは日本発・着別の期間中のトータルは発表していない)。
 なお、羽田空港事故関連では、期間中国内線229便・国際線7便が欠航、一方で国内線で臨時便を14便(主に成田~福岡)運航。能登半島地震関連では、期間中28便が欠航、臨時便を4便運航。
 
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日本航空 *JTA・RACも含めたグループトータル
国内線 座席数 889,204席(92.3%・90.3%) 旅客数 717,113人(96.5%・87.4%) 利用率 80.6%(+3.5%・▲2.7%
国際線 座席数 161,841席(114.5%・74.0%) 旅客数 126,664人(115.4%・66.0%) 利用率 78.3%(+0.6%・▲9.5%
     
※国内線の各社単独利用状況
日本航空
 座席数 794,813席(91.8%) 旅客数 646,953人(95.4%) 利用率 81.4%(+3.1%)

日本トランスオーシャン航空
 座席数 79,844席(96.2%) 旅客数 61,198人(108.9%) 利用率 76.6%(+8.9%) 
   
琉球エアコミューター
 座席数 14,547席(99.0%) 旅客数 8,962人(103.1%) 利用率 61.6%(+2.4%)

 今回からJAL(RAC・J-AIR・HAC含む)とJTA・RACで統一して書きます。
 国内線は、提供座席数はJTA・RACも含め、全方面で前年度よりも減少しました。一方でJALの沖縄路線とJTA・RACの旅客数は増えていて、沖縄方面への旅行が好調だったと思われます。JALでは北海道・関西と3路線で、利用率が80%を上回りました。
 最高の利用率は、下りが12月30日の94.1%、上りが93.8%。
 臨時便は、JALの羽田~新千歳・那覇・旭川・三沢・小松・鹿児島線と伊丹~新潟線で合計27便、RACの那覇~久米島線で4便が運航されたが、羽田事故や能登半島地震との関連は記されていない(伊丹~新潟線は地震関連のはず)。
 国際線は、中国メインランド5都市(北京・大連・天津・上海・広州)への座席数は前年度比447.1%、旅客数は838.4%と激増しました。ただし利用率はこちらも64.5%で、方面別では唯一70%に届かなかった。旅客数では、北米・オセアニア・香港が前年度比の80%台に留まっています。
 最高の利用率は、日本発が12月29日の88.3%、日本着が1月3日の83.1%。こちらも1月3日は日本発の方が高く(84.2%)、期間中トータルでは日本発86.1%・日本着70.4%と、かなりの差がつきました。臨時便・チャーター便は前年度に続き運航なし。

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スカイマーク
国内線 座席数 183,195席(95.7%・99.2%) 旅客数 人(98.2%・97.6%) 利用率 87.5%(+2.2%・.1.5▲%)
国際線 運航なし
 国内線の利用率は、前年度よりは微増で、2019(R元)年度よりは微減。最高の利用率は、下りは12月29日の94.9%、上りは1月3日の96.0%。1月1日の上りを除くと、全日上下とも利用率が80%を上回りました。
   
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エア・ドゥ
 座席数 55,451席(92.8%) 旅客数 51,553人(94.9%) 利用率 93.0%(+2.1%)
 北海道行となる下りは期間中全日、利用率が90%台でした。北海道発の上りも全日80%以上です。最高の利用率は、下りが12月30日の98.1%、上りが1月3日の98.5%。羽田~新千歳路線で臨時便10便を運行。

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ソラシドエア
(ANA販売分は含まず)
 座席数 57,599席(84.3%・98.7%) 旅客数 40,264人(79.3%・88.5%) 利用率 69.9%(▲4.4%・▲8.1%
 やや低調だったかな、という数字が並びました。最高の利用率は下りが12月29日の93.2%、上りが1月3日の95.7%だが、上下トータルで80%を超えたのが1月3日のみ、12月は全て、上りが下りより40%程度低く、片輸送の傾向がありました。羽田~宮崎・熊本・長崎・那覇路線の臨時便運航を、事前のリリースで発表しています。なお1月2・3日は羽田事故の影響で19便が欠航。
 
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スターフライヤー
(ANA販売分は含まず)
国内線 座席数 37,492席(90.3%) 旅客数32,348 人(91.0%) 利用率 86.3%(+0.7%)
国際線 運航なし
 座席数が1割近く減少している。国内線の最高の利用率は、下りが12月29日の98.1%、上りが1月3日の97.1%。下りは期間中全日、80%以上。
 
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フジドリームエアラインズ
 座席数 52,776席(104.1%) 旅客数 40,033人(98.7%) 利用率 75.9%(▲4.1%)
 最高の利用率は、名古屋(小牧・中部の合算)は下り12月29日(94.3%)・上り1月3日(88.8%)、静岡は下り12月29日(93.3%)・上り1月3日(95.2)、松本は下り12月28日(85.5%)・上り1月3日(90.9%)、神戸は下り12月30日(88.1%)、上り1月3日(89.4%)になりました。ただし名古屋は、上下トータルの合計で最も高くなったのは、12月28日(下り93.8%・上り70.3%・トータル82.0%)。新年になってからは、80%を越えた日はありませんでした。なお仙台~出雲路線は、1月8日を持って終了。仙台空港への乗り入れがなくなっています。

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IBEXエアラインズ
 座席数 6,596席(120.2%) 旅客数 5,524人(121.1%) 利用率 83.7%’(+2.7%)
 サマーダイヤから仙台~中部・広島路線が共に3往復に増便になったからか、座席数が大幅に増えました。旅客数も座席数の伸びを上回る利用があって、好調だったと思います。最高の利用率は、上下とも1月3日になりました。下り95.0%・上り89.3%。上下トータルでは、1月1日以外は全て80%台でした。
※IBEXの利用率は前年度比の掲載がないため、利用率のみ前年度のリリースの数値と比較した。 

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ピーチ
 ピーチ独自の利用実績についてのリリースは、確認できなかった。国際線は出して欲しいと思うけれど…。

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ジェットスター・ジャパン
国内線 座席数 125,884席(92.6%) 旅客数 115,654人(99.4%) 利用率 91.9%(+6.3%)
国際線 座席数 8,640席(400.0%) 旅客数 7,211人(388.9%) 利用率 83.5%(▲2.4%)
 国内線は、12月15日に成田~旭川線を開設、A321LRの導入も進んでいるが、座席数は減少しました。なぜだろう?(2月2日追記:ストライキによる欠航がありましたよね。スミマセン)最高の利用率は、下りは12月29・30日で共に95.2%、上りは1月3日の96.4%。期間中全日、上下とも80%以上でした。
 国際線は再開が進み、成田~台北(桃園)・上海(浦東)・マニラ、中部~マニラ線を運行中。座席数は、成田~マニラ線のみだった前年度(しかも1月1~2日の1往復はマニラの管制トラブルで欠航だった)の4倍になりました。最高の利用率はかなり傾向が異なり、日本発は1月1日になって98.2%、日本着は12月29日の86.3%でした。日本発は期間中全日90%台だったのに、日本着で90%を超えた日はありませんでした。
 3月31日の福岡~新千歳線開設・関空~台北(桃園)線再開が、昨日リリースされています。

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スプリング・ジャパン
国内線 座席数 18,900席(100.0%) 旅客数 17,850人(144.2%) 利用率 94.4%(+28.9%)
国際線 座席数 7,707席(600.0%) 旅客数 5,851人(920.0%) 利用率 75.9%(+26.3%)
 国内線の輸送力は変わらなかった(期間中毎日成田~新千歳7往復・成田~広島2往復)が、利用率がだいぶ向上しました。最高の利用率は、下りは12月29日の97.1%、上りは1月3日の98.6%。12月30日の上り(88.7%)を除き、全日90%台でした。
 国際線は、成田~ハルビン・天津・寧波線を期間中毎日1往復運行、座席数は前年度比で6倍になりました(成田~上海線が12月8日に再開しているが、期間中は飛んでいない。新千歳路線の増便に回したと考えられる)。最高の利用率は日本発・着とも12月30日で、発は97.2%に対して、着は77.1%。期間中、日本発は全日80%以上だったのに対し、日本着は80%に届いた日がなく、12月31日は37.0%。完全に片輸送。
 
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ZIP AIR TOKYO
 座席数 30,740席(151.4%) 旅客数 26,591人(157.3%) 利用率 86.5%(+3.2%)
 ここもまたはっきり片輸送になっていて、期間中の利用率のトータルは、日本発96.5%に対し、日本着は75.8%と、約20%の大差がつきました。日本発は全日90%台だった(最高は12月29日の97.6%)のに対し、日本着は90%に届いた日がない(最高は12月28日の81.7%)。現在は成田~ソウル(仁川)・マニラ・バンコク(スワンナプーム)・シンガポール・ホノルル・ロサンゼルス・サンノゼ・サンフランシスコに就航(3月13日より成田~バンクーバー線開設)。

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 以上、本当におおざっぱだが、各社のリリースからこの年末年始の航空輸送について、私なりにまとめてみました。
 国内線は、全体的に輸送力(座席数)が減少しているが、ほとんどが羽田に就航しているキャリアなので、やはり元日の事故の影響はあったはず。どこまでがそうなのかはわからないが。だから単純な比較は、今年に関してはできない部分も多々あったと思います。その中では、全体的には北海道・沖縄方面が好調だったようです。
 国際線は、インバウンド偏重の傾向がさらにはっきりしてきたようです。国際線を期間中に就航させた日本のキャリア5社(データを公表していないピーチを除く)がことごとく、期間中の全てで日本発が日本着を上回る片輸送になりました。しかも、20%前後の大差がついている。円安が主な要因になっているのは、たぶん間違いない。昨年12月28日のレートは1$≒141円・1€≒157円で、コロナ禍直前の2019(R元)年12月27日は1$≒109円・1€≒121円だったそうだから、相当な円安になっています(いずれもMUFGのサイトで調べた)。特に北米大陸・欧州へ行くANA・JALは共に、この2路線は他の方面より利用率が低くなっていて、日本人では海外旅行に行くとしても、近場を選ぶ人が多くなっている事が窺えます(国内の北海道・沖縄へ、という部分もあったか)。その分、「三が日」にこだわりがない(その必要がない)外国人旅客が、この期間の前くらいに来日して日本を楽しむ、そんな傾向になっているのではないだろうか。他にもいろいろ要因はあるが、日本のキャリアと言えども、当分はこの傾向が続くのではないか。もう少し長期(クリスマスの後~成人の日あたり)のデータを拾えれば、よりはっきりその傾向が見えてくるような気がします。それにしてもしばらくは、「オオタニサーン」を観に行くのも、簡単ではないなあ?
 次回はGWです。ANAグループのエアージャパンが中長距離LCCに衣替えして、2月22日のソウル線で就航。その後バンコク線にも展開して、GWを迎える事になります。その成果はいかに?(トキエアはリリースするかなあ?)ともかくまずは、事故なく安全で、安心して空の旅を楽しみたい、それが何より一番、大事です(日本だけじゃなくてね)。
 
 当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


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