№2743 バスラマインターナショナル201(ぽると出版)

「バスラマインターナショナル201」、去年の暮れには発売になっていたが、少々遅くなりました。

 まず巻頭(目次のページ)の和田編集長の提言だが、「お客様になりたがり症候群」という言葉を和田氏は最近よく使われるが、私はもうそれ以前に、資本主義的な思考に世論がどっぷり浸ってしまっていると感じている(バス・交通以外の面でも)。それを(少なくとも交通の面で)決定的にしたのが、もう37年前になる国鉄の分割・民営化だった。近年問題視される「カスハラ」は資本主義思考が生み出した典型だと思っているが、この社会全体の思考形態が少しでも違う方向に変わらないと、ドライバーの確保にしたって、少々賃金を上げるくらいでは、解決は難しいのではないか(仕事中に辛い思いばかりするなら、どんなにカネ詰まれたってイヤだ、みたいな思考になって)。バス・交通に限らず、福祉(高齢者介護など)だってそうだろう。極端に言えば「温暖化防止」などの環境対策だってそう。むろん業界ももっと頑張ってもらいたいとは思うが、加えて行政、何より政治の世界はどう考えているのだろうか?誰がそれを変えるのか?誰に変化を託すのか?そして人に変化を求めるだけで良いのか?そっちの方が、今後社会全体の問題になると思う。

 東急バスの青葉台地区への連節車導入、小田急バスのBYDのEV導入は、正直知らなかった。どちらも今のところ、リリースとしては出ていないので。東急の日野車は確かに、電車の2020系と同じカラーリングだ。としたら、田園都市線以外の電車路線沿線でも走る事になるのなら、その路線に合わせたカラーリングになるのだろうか?とか考えたりもする(そういう路線は出てはこないかも知れないが)。田園都市線沿線で言うと、虹が丘〔営〕が運行するたまプラーザ・あざみ野両駅からの路線も連節車導入があって良さそうにも思うが、このエリアは横浜市営地下鉄ブルーラインの延伸が予定されていて、順調に行っても10年は先になるはずだが、連節車導入には慎重にならざるを得ないかも知れない。

速報!いすゞエルガEV

エルガEV.jpg
 私は10月末の「ジャパンモビリティショー」でエルガEVを見に行って、№2721で書いたのだけれど(大阪シティバスのEV展示は知らなかった。反省)、「何でもいいから走る姿を見せられないと、実用化は数年先になるのではないか」みたいな事を書いていました。その後11月になって、実際の走行・乗車の体験の機会が得られた、というので、簡潔だがレポートが記されています(いすゞ社のユーチューブでも走行シーンの動画がアップされている)。
 写真のキャプションでは「3ドア化・前後ドア化が可能に見える」と記されているが、そのためには、後部タイヤハウス部の移動が、もう少し容易にならないといけないだろうと思う。向かい合わせのボックスシートは、グループの語らいに適したスペースとPRしたいようだが(ユーチューブにもある)、鉄道を見ていても、向かい合わせは好まれない所があるので(個人客だったら、特に通勤時は空いていれば「仕方なく」座る人もいるが、特に学生のグループだと、うち一人・二人だけでは間違いなく腰掛けない)、実際に営業運行になったら、評価はどうだろうか。
 ともかく一日も早く、販売開始のメドを。

特集 小規模需要の移動サービス実態調査
 特にワゴン車を使用したバスサービスは、別に今に始まった事ではなく、昭和末期の頃から既にあるにはあったが、特に令和の世になる前後から、急速に増えてきた感があります。また、地方部だけでなく、都心部でも、東京23区内でさえ見られるようになってきたのが、最近の顕著な傾向だろうか。

共同こすずめ号.jpg
 我が神奈川県でもワゴンスタイルのバスが、それも横浜市内でチラホラ見られるようになり、時代が変わってしまったなあとしみじみ思う。71Pでアンケートに協力した事業者以外でも、いくつか運行に携わっている所もあります。この共同が運行する「こすずめ号」は戸塚区の小雀地区を周回するバスで、すぐ近くに神奈中バスの一般路線もある事はあって、日中も30分間隔の運行がある。だから公共交通が全くなくて決定的に不便、というのでもなく、もう少し奥に入る事で地域住民、特に高齢者の移動サービスを提供しよう、というものだと思います(神奈中バス路線のバス停に行くのは大変だろうし)。
 神奈川県に関しては、一般路線バスがなくなって代替で小規模輸送スタイルのバスに転換、というのは、やはり県の西部で目立つように思う。また、県内に限っては、「オンデマンド」スタイルは、今のところはない。路線バススタイルのみ。むろんそんな遠くない将来には、オンデマンドもどこかで現れるだろうと思う。

横浜市営バス日産キャラバン.jpg
「小型車に大型車並みの運賃収受システムが必要か」という疑問も呈されているが、エリアにも拠るだろうが、事前に可能な運賃収受方式を明確にしておけば、多少は絞っても問題はないのかも知れない。私は去年から走り出した横浜市営バス600系統(仲町台駅~都田地域循環)に一度乗った事がある。この系統は現金は取り扱わないが、乗った便に限っては、利用者の大半は敬老乗車証を最初から所持する高齢者で、運賃収受(ICなど)はほぼなかった。600系統に限らず、日中は一般の市バスや地下鉄も似たような傾向なので、福祉サービスと割り切れれば、案外大丈夫なのだろう。民営でも、この手のサービスに最近参入する事業者はICカードなど最初から導入していない小規模な所が多いのだし、とにかく利用方法全般(オンデマンドならバスの呼び出し方も)を、あらかじめはっきり、わかりやすく示しておくことが大事だと思う。
 ともかく、私自身、発想の転換が必要、かな。

バス事業者訪問250 ジェイアール東海バス

JR東海バス.jpg
 前回は2007(H19)年刊行の102号で取り上げられていたが、この時は瀬戸市を中心に一般路線がまだ残っていて、ゆとりーとラインも一部委託されていました。
 輸送動向のグラフを見ると、緩やかな右肩上がりだったものが、やはり2020(R2)年にストーン!と落ちてしまって、徐々に回復しつつあるが、まだ戻り切れていない。2022(R4)年は、コロナ禍前のピークの2018(H30)年の86%。
 近年では福井路線が、北陸新幹線敦賀延伸に伴う鉄道の運転形態の変更(〔しらさぎ〕が金沢まで行かなくなる)も見据えて増便されているが、となると今後は金沢路線あたりも、増便の可能性があるのだろうか。
「バス運転士は社会にとって必要なエッセンシャルワーカー」は全くその通りだが、一般路線があるならともかく、高速専門となると、どこまで世間に受け入れられるだろうか。新人ドライバーの養成は、いきなり高速路線から始まる事になるが、どのようなシステムなのか。最初に比較的「楽」(という言い方はヘンかも知れないが)な近距離路線(東京~静岡とか)から初めて、徐々に長距離や夜行へ、とステップを踏んでいく、という所だろうか。
 なお、高速専門という事では、近年では旧ツアーバス組との競合がどうしても避けられなくなるが(海老名SAなどの休憩駐車の台数の多い事)、この辺の影響については触れられていない。それから、前回の特集から14年のトピックとしては、名古屋駅のバスターミナルの移転も大きいはずだが、この点もなかった。
 在籍車両一覧を見ると、やはりコロナ禍の影響だろう、2021(R3)年には新規導入が1台もなかった。去年も新規導入はなかったようだ。車両称号の付与方法は、近年では一部変わっているようだが、全面的に変更しても良さそうに思う。もう国鉄時代の方法に固執しなくても、良いのではないだろうか。

BRTひこぼしライン快走中!
「BRTひこぼしライン」は私も先月乗って(水素電池バスだった)、今月中には書きたいが、先行した三陸の2路線と比較すると、①JR九州直々ではなく、JR九州バスに委託(一部は日田バスに再委託) ②専用道区間は山間部のみ という点が異なる。一般道区間は「バス停」がきめ細かく設けられたが、という事は、これ以上専用道の延伸はしない、と考えられる。それにしても、EVを奢っているとはいえ、最初から中小型車というのは、相当需要が少ないのだろうと思われる。BRT転換で「バス停」が増えた事で需要が掘り起こされ、今後も安定した運営ができると、良いのだが。

世界最大のバスショー 会場レポート
 10月にブリュッセルで行われたバスのショー。
 これはだいぶ前に書いた事だが、まず日本では「バス専門のショーがある」事自体が、一般にはたぶん知られていない。ここから始めるべきではないだろうか。今は別記事のバステクがその役割を担っているのかも知れないが、業界外の人が参加できるものではない。あるいは「バスの日」の各地のイベントが代わりになっているのかも知れないが(これも別に記事があり、横浜では神奈中バスの新デザインがお披露目)、誰かが音頭を取って、「日本でもバスショーをやろうよ」みたいな空気をつくる事も必要なのではないか?まずはどんな形態でもいい。ただバスが並んでいるだけでもいい。たとえそれらの大半が中国製のEVになったとしても。そこから、日本のバスの進化が再び始まるのではないだろうか。
 これも前に書いたと思うが、今回ラインナップされているバスはほぼ全てEVまたは水素車だが、特にEVは、製造コスト云々以前に、キチンと電力を供給できるのだろうか?特にウクライナ危機以降は電気代も高騰していると聞くし、インフレも心配で、どこかでショーの外で、「公共交通と電力」に関する、一般欧州市民の意識を聞いてみたいと思う。

短期連載 カタログで偲ぶ“平成初期”のバスたち③

JR四国バス エアロクィーン.jpg
 一般のバスファンには、前照灯付近の形状から「パンダ」の異名もあったエアロクィーンだが、今回読んでみて、このフェイスのエアロクィーンは意外に短かったんだなと感じる。約3~4年か。その割に印象が強いのは、発売時期と前後して「高速バスブーム」が起こっていて、新規に開業した長距離高速バス、特に夜行路線で、JRバス各社を中心に一気に多数採用された事が、あるのではないか。
 なお、同じような顔つきでハイデッカー車も少数あったが、ここでは「クィーン」に特化した記載だからか、テキストでは触れられていない。

 次号の事業者訪問は、国際興業が予定されている。国際興業と言えば現在、BU04Dの「再生工事」が行われていて、2月に完成予定と聞く。ひょっとしたら、写真だけでも出るのかな?
(2月25日に飯能市内で国際興業バスのイベントが予定されていて、そこで一般にお披露目?だと勝手に予想して、この日のシフトを空けてもらうよう申請してしまった。楽しみなんだよなあ。その後は飯能で走る予定らしい)

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