№2704 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 22.西武新宿線 西武新宿駅(後)

西武新宿駅.jpg
 西武新宿駅の時刻表の目線で西武新宿線のダイヤを回顧するシリーズ、の後半です。
 21世紀に入った頃から、拝島線への直通運転の強化が目立つようになってきた新宿線は、さらに急行を上回る速達の直通列車の新設も行われるようになりました。一方で、需要の変動に、かなり翻弄されるところも出てきます。コロナ禍以降は特にそうです。

 ところで上の画像、今回のシリーズの作成のために、先日撮影してきました。本当は前回(1990年代前半・1番線に〔むさし〕がいる)と同じ位置に立って撮りたかったが、現在は1番線の先・2番線の脇の部分は飲料の自動販売機が並んでいて、列車(日中は〔小江戸〕専用)が隠れてしまうのです。なのでちょっと苦しいが、このような画像になりました。3番線には「L-TRAIN」がいて、戸袋部の松井 稼頭央監督が小さくだけど見えているが、このような列車が走る事自体、30年前とはライオンズも、西武鉄道も大きく変わったものだな、と感じさせます。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2008_06_14.jpg
2008(H20)年 6月14日改正 ㉑
 拝島快速が設定されました。西武新宿~拝島間を44分で結んでいます。設定意図が正直分からない所もあるが、JR青梅線・青梅特快への対抗の意味があるのでしょうか。
 田無~玉川上水間の途中停車駅は小平だけ。なので通過駅を補完する形で、田無~玉川上水間の区間運転も設定されています。
 急行は毎時2本になりました。拝島快速が小平で、本川越発着の各駅停車と相互に接続します。
 国分寺線からの直通は、基本的には本川越発着になりました。平日の快速急行は、新所沢での接続の相手が、その国分寺線直通列車になっています。新所沢~本川越間は、各駅に停車する列車(急行・準急・各停)も、毎時6本になりました。
〔小江戸〕は、土休日の号数表記が変わりました。平日と異なる時刻に西武新宿を出発する列車のみ、新たに61号から番号を振っています。同じ時刻に出発する列車は、平日と同じ号数です。
 池袋線はこの改正で、同日開業の東京メトロ副都心線との相互直通運転を開始しました。この時点ではまだ渋谷までです。

西武時刻表21号.jpg
 西武の時刻表はこの21号から、再びB5版に戻りました(ただし7号までよりはだいぶ薄い)。新CIになって最初の号で、前述の変化を象徴しています。改正の直前にデビューした30000系と、「快速 渋谷」表記の池袋線6000系が表紙を飾っています。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2010_03_06.jpg
2010(H22)年 3月 6日改正 ㉒
 平日深夜の〔小江戸〕が増発され、最終便は23時55分発(高田馬場発23時59分発)となりました。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2011_03_05.jpg
2011(H23)年 3月 5日改正 ㉓
 快速急行が、新所沢~本川越間は各駅停車となりました。国分寺線直通は引き続き、日中は本川越発着で運行。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2012_06_30.jpg
2012(H24)年 6月30日改正 ㉔
 ダイヤの形態が全面的に変更になりました。
 結局快速急行・拝島快速は廃止。拝島快速は4年の短命でした。準急も平日朝ラッシュ時を除くと、初電・終電の頃に数本走るだけとなって、一般の列車は実質、急行と各停の2本立てとなります。 
 通勤急行と、国分寺~本川越間直通運転は存続。
 日中は約10分サイクルとなり、一般の列車は、急行と各停が交互に走る形になりました。急行は本川越行と拝島行を交互に運行。拝島行は、小平で本川越行の各停に接続する形になります(上りはその逆)。
 日中の西武新宿からの発車は、(〔小江戸〕含め)毎時16→13本に減少。JR山手線に直接接続する大手私鉄の路線としては、東急池上線、京成本線・東急目黒線に次いで少なくなりました。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2013_03_16.jpg
2013(H25)年 3月16日改正 ㉕ 
 東京メトロ副都心線と東急東横線の相互直通が始まった改正で、池袋線から横浜への直通列車が走り出しました。
 新宿線では、萩山での分割・併合運用が、ついに全てなくなりました。多摩湖線は国分寺~西武遊園地間の線内運転が基本となり、平日の朝方上りのみ、西武新宿行各停が3本設定されています(土休日の直通急行は存続)。
 〔小江戸〕が東村山に新規停車。西武の特急としては、高田馬場を除くと、(池袋線も含めて)初めての東京都内の駅への停車です。また、平日朝ラッシュ時のピーク直後の上り1本(8号)の西武新宿着が、初めて8時台(55分)になりました。
 平日の夕ラッシュ時に、準急が若干復活しています。

 翌2014(H26)年、中井~野方間の地下線化工事が着工しました。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2016_03_26.jpg
2016(H28)年 3月26日改正 ㉖ 
 北海道新幹線が開業した日の改正です。前回改正から3年の間が空きました。
〔小江戸〕は、朝ラッシュ時のピーク後に上り1本を増発、8時47分・57分と、8時台に2本到着するようになりました(下りの本数は変わらず)。日中は毎時30分発→40分発に変更されています。
 土休日の西武遊園地直通急行は、「春休み・ゴールデンウイーク・夏休み期間・プロ野球公式戦開催日運転予定」となりました。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2017_03_25.jpg
2017(H29)年 3月25日改正 ㉗
「朝の通勤・通学時間帯に下り電車を増発」と謳われていて、西武新宿では平日8時台の急行が7→9本になっています。1本は田無止まりです。
 東村山駅の高架化工事の進捗により、〔小江戸〕は上下とも、基本的には現行の5番ホームに発着になりました。上下とも先行する一般列車の追い抜きがあるが、下りは東村山で乗り換える場合、階段の上り下りが必要になります(次の所沢で乗り換えれば良いが)。
 池袋線で〔S-TRAIN〕の運行が始まりました。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2018_03_10.jpg
2018(H30)年 3月10日改正 ㉘
〔S-TRAIN〕の実績を踏まえて、新宿・拝島線でも座席指定制列車〔拝島ライナー〕がスタートしました。
 まずは下り5本でスタート。西武新宿発は平日・土休日共同時刻です。
 指定席料金は西武新宿・高田馬場から乗車の場合は、大人300円・小児150円。
〔拝島ライナー〕スタートもあるのか、平日・土休日共、夜間の急行の一部が準急に建て替えられています。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2019_03_16.jpg
2019(H20)年 3月10日改正 ㉙
〔拝島ライナー〕が17時台発も設定され、下り6本となりました。
 国分寺線~本川越間の直通運転が取りやめになりました。東村山駅の立体化工事の進捗による配線の変更のためで、時刻表では(現在に至るまで)東村山~本川越間が空欄のままスペースが遺されているので、今後復活の可能性はあるようです。
 池袋線で新特急車001系「Laview」がデビューしました。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2020_03_14.jpg
2020(R2)年 3月14日改正 ㉚
 土休日のみ、快速急行が復活しました。停車駅は、2011(H23)年3月11日改正時の、平日ダイヤで運行されていた列車と同じです。今回は観光客誘致が目的と思われるが、愛称は設定されていない。

 しかし時を同じくして、新型コロナウィルス感染禍が全世界を覆う「パンデミック」に発展し、日本の交通業界に大打撃を与える事になります。
 西武鉄道も当然例外ではなく、ゴールデンウィークの特急間引き運転など、大幅な減量を強いられる事になります。
 これを踏まえて2021(R3)年3月13日、最終列車の繰り上げが中心のダイヤ改正を実施(同年1月21日より、国土交通省や1都3県などからの要請に基づいた最終繰り上げが行われていたが、内容は異なる)しているが、この時は、時刻表の刊行がありませんでした。他社で時刻表や、駅のポケット時刻表の廃止が相次いでいた事もあって、西武も終わってしまうのか、と心配になったものでした。このため、この改正については割愛し、次でまとめて記します。
(この時の改正で、西武遊園地→多摩湖と改称。西武園ゆうえんちのリニューアルを控えてのもので、同時に山口線の遊園地西を西武園ゆうえんちに改称している)

西武新宿線西武新宿駅時刻表2022_03_12.jpg
2022(R4)年 3月12日改正 ㉛
 時刻表が刊行されました。個人的にはホッとしました。
 最終電車の繰り上げは、特に新宿線はかなり大幅なものとなりました。
 平日は本川越行準急が23時58分→23時42分(この後に〔小江戸53号〕がある)、新所沢行準急が0時44分→0時14分、上石神井行各停が0時47分→0時17分になりました。入曽~本川越間及び拝島線の各駅へは17分、高田馬場~新所沢間は30分の繰り上げです。
 土休日も本川越行準急が23時43分→23時31分、上石神井行各停が0時30分→0時17分に繰り上げになりました(ただし新所沢への終電は0時07分発各停→0時14分発準急になり、西武新宿・高田馬場発は逆に遅くなった)。
 最終0時17分は、昭和末期の0時30分よりも早くなりました。これは深夜帯の需要の減退に加えて、地下線化工事が行われているためと考えられます。
 また、平日の日中11時台半ば~14時台半ばにかけては、急行・各停とも10→12分間隔と、運行間隔が拡大し、減便になりました。12・13時台の西武新宿発は毎時11本(〔小江戸〕含む)となり、JR山手線に直接接続する大手私鉄の路線としては、東急池上線に次いで少なく、各駅停車5本は最少となりました。
 さらに朝ラッシュ時の上りに設定されていた狭山市始発の各停がなくなり、通勤急行が1本削減されました。
 所沢駅の配線工事の影響で、野球ダイヤでの西武球場前直通運転が取りやめになっています。

西武新宿線西武新宿駅時刻表2023_03_18.jpg
2023(R5)年 3月18日改正 ㉜
 そしてこれが、今春から使用されている時刻です。
〔拝島ライナー〕が、上り拝島発でも運行を開始しました。拝島発6時28分と8時00分です。停車駅は下りと同じ(拝島線内のみの利用は不可)。
 この8時00分発4号の西武新宿着は8時52分。そして〔小江戸〕は朝ラッシュ時の運行時間帯を変更し、本川越7時35分発8号は、西武新宿着が8時27分となりました。JRや他大手私鉄でもそうだが、関東地方において、8時台半ばに有料の列車が都心のターミナル駅に到着するなど、以前は到底考えられなかったものです。その折返しで、下りでも8時台発〔小江戸〕が設定されています。

 以上2回に分けて、本当に簡単ながら、西武新宿駅の目線を中心に、昭和末期からの西武新宿線のダイヤを回顧しました。まだまだ書き足りていない部分は、多いはずです。
 今回各改正の時刻表を作成して感じたのは、当然この3年以上に及ぶパンデミックの影響はどうしても免れないのだが、それを抜きにしても、どうも新宿線のダイヤ編成はふらついた所がある、という点です。むろん〔小江戸〕〔拝島ライナー〕の設定は鉄道業界全体の時世に乗ったものでもあるが、それ以外の一般列車は、ダイヤのサイクルが一定しないなあという気がしました。他社はもちろん、池袋線と比較してもそうだと思う(池袋線もかなり変わってはいるが、複々線化に地下鉄や東急との相直開始、という要素がある)。拝島快速なんて典型だと思うし、快速急行も、一旦新設になったのに数年で取りやめ、3年前にはまた新設、しかも運行曜日が異なる、という具合です。
 これは、新宿線の立ち位置や取り巻く状況もあるのだろうと思う。特に各停の減少が著しいが、元々池袋線とJR中央線に挟まれ、駅勢圏が小さくなりがちな所に、都営地下鉄大江戸線が全通し、そちらの方に流れている、という状況が、21世紀以降ではあると考えられます。
(複々線化計画が早々と取りやめになったが、結果論だろうが良かったと思う。あのまま進めていたら、経営にかなり悪い影響を与えていたのではないか)
 なので、今後のダイヤ編成も結構難しいものがあると思うが、地下線化や東村山の立体化の動向もあるけれど(どちらも相当遅れるらしい)、各停を現行に近いレベルで残しつつ、ある程度長距離の急行系がダイヤの中心になるのではと考えられる。〔小江戸〕はどうするんだろう?10000系の置き換えの時期のはずだが、「Laview」は〔小江戸〕には重い気がするし、新宿線専用の特急車というのは考えづらい。40000系を〔拝島ライナー〕と共用にして、「ライナー列車」に置き換える、というのも案外ありなのか?とか考えてみるが、どうなるのだろう?「Laview」といえば、所沢駅の配線の影響にもよるが、土休日は秩父直通〔おくちちぶ〕の復活なんてあっても、良いのではないか?(現在「52席の至福」は、新所沢まで行って、秩父方面に折り返している)
 新宿線は、関東地方の大手私鉄の本線級(急行系が走る路線)では数少ない、地下鉄などへの直通運転が全くない路線です(あとは京王井の頭線のみ)。なので運行計画を策定する上での営業面でのハンデが他社線と比べて大きいと思うが、特に行楽シーズン(西武園ゆうえんちなど)などの輸送に活路を見出す事になるのだろうか。何のかんの言っても大手私鉄のターミナルの一つである西武新宿駅に、再び賑わいが戻ってくる事が期待されます。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


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