山陰本線近代化 副産物の観光鉄道も開業
京阪グループ ソフト・ハード両面で飛躍
京阪グループ ソフト・ハード両面で飛躍
「嵯峨野線」 近代的幹線への再生
山陰本線は、京都~下関(正式には幡生)間670㎞を、山陰地方を経由して結ぶ幹線であるが、実態は地域によって実情が異なり、ローカル色が濃い区間も少なくない。民営化後に「嵯峨野線」の愛称がついた京都~園部間でも、平成の世になった時点では単線・非電化のままで、近代化が遅れていた。
特に輸送力増強のネックになっていた嵯峨(現嵯峨嵐山)~馬堀間は、1989(H元)年3月、先行して複線の新線に移行した。長大トンネルで山間部を貫いた高規格の路線となり、同区間の営業キロは1.6㎞も短縮された。翌1990(H2)年3月、京都~園部間の電化が開業、普通列車はほぼすべてが電車化された。夕方の京都→園部間には、初めて快速が設定されている。京都の発車時刻も、特急・急行を含めて規格化され、利便性が向上した。4月1日には、北近畿タンゴ鉄道(KTR)の特急〔タンゴエクスプローラー〕が、宮津線直通で運行を開始している。
園部~福知山間は、綾部~福知山間が先行して1995(H7)年4月に、残る園部~綾部間も1996(H8)年3月に電化が完成、福知山線に関連して国鉄時代末期に電化開業していた福知山~城崎(現城崎温泉)間とつながり、京都府内の山陰本線は、全区間の電化が完成した。同時に中丹・南丹地域の優等列車の形態が全面的に刷新され、電車特急〔きのさき〕〔たんば〕〔はしだて〕の3本立てとなった。〔タンゴエクスプローラー〕を加えて、京都~綾部間では特急60分間隔のパターンダイヤが確立されている。また、福知山線の〔北近畿〕〔文殊〕と合わせ、福知山を交点とする「ビッグX」ネットワークが構築された。一方で京都からは城崎以遠に向かう昼行列車が全てなくなり、特急網は北近畿地域圏の輸送に特化する形になった。
「嵯峨野線」区間の複線化は京都市内の高架化と同時に進められ、2010(H22)年3月の花園~嵯峨嵐山間の複線化で完成を見た。同月の改正で、京都~亀岡間は特急が19→17分、2000(H12)年10月に日中にも設定された快速は23分→20分へと、所要時間の短縮が図られている。
嵯峨野観光鉄道 開業
一方、保津峡沿いの旧線からの景観も捨てがたいものがあり、地元からの要望もあって、JR西日本は新線切り替えの翌年の1990(H2)年に子会社、嵯峨野観光鉄道を設立、翌1991(H3)年4月のGWより、トロッコ嵐山~トロッコ亀岡間にトロッコ列車の運行を開始した。春~秋シーズンに運行されるが、近年は外国人の利用も多く、京都観光の定番に成長した。線路は引き続きJR西日本が保有し、トロッコ嵐山~トロッコ嵯峨間は山陰本線と共用する。
舞鶴・小浜線電化と 「ビッグX」再整備
舞鶴線は1999(H11)年10月2日に電化され、京都~東舞鶴間に電車特急〔まいづる〕が新設された。〔まいづる〕は2003(H15)年10月改正時より、〔きのさき〕〔たんば〕との併結運転となっている。
小浜線は、平成の世が始まった時点では急行の設定があったが、1999(H11)年改正以降は普通列車のみとなった。2003(H15)3月15日には全線が直流電化され、新型クモハ125形電車が直接導入された。電化後は多客期に〔まいづる〕の小浜延長が行われた事があったが、定着はしなかった。
2011(H23)年3月改正では、「ビッグX」ネットワークの再編成が行われた。京都発着は福知山・城崎温泉方面行の〔きのさき〕と、舞鶴方面行の〔まいづる〕、大阪発着は〔北近畿〕改め〔こうのとり〕に整理され、〔文殊〕〔たんば〕の愛称はなくなった。また、KTR編成の〔タンゴエクスプローラー〕〔タンゴディスカバリー〕も廃止、KTR8000形が一部〔きのさき〕〔まいづる〕で京都に乗り入れる他は、〔たんごリレー〕としての線内の運行が大半になった。JR電車特急は新形式287系が導入、「ビッグX」ネットワーク初の、直接の新特急車両となった。翌年には〔くろしお〕から転用の381系がワンポイントで〔こうのとり〕に使用されたが、2015(H27)年10月には、北陸新幹線開業で余剰となった683系を直流化改造した289系が導入され、〔北近畿〕以来の485系(183系)・381系を置き換えた。
北陸新幹線・敦賀~京都間は2016(H28)年12月に小浜ルートが正式採用され、令和の世になった直後の2019(R元)年5月末、東小浜駅付近に新幹線駅の建設が決定した。並行在来線となる小浜線も含め、北近畿各線の今後の行方が注目される。
進む新快速の強化
東海道本線(JR京都線)の新快速は、終始阪急・京阪両社の特急とのし烈な競合を強いられている。1989(H元)年3月改正では、JR西日本初の新型近郊電車221系が導入され、1991(H3)年3月改正では、朝ラッシュ時を除いて221系に統一。日中は120㎞/h運転を開始した。また、京都より東側へ運行区間を延長、米原まで30分毎、野洲行と、湖西線近江今津直通が60分間隔のパターンが確立した。1997(H9)年より高槻が全日全列車停車となったが、1995(H7)年8月より導入の223系によって、1999(H11)年5月より、一部区間で130km/h運転を開始。翌年には全新快速が223系に統一、京都~大阪間は一時、最速27分にまで短縮された(その後福知山線事故を踏まえ、2005(H17)年10月より最速28分で運行)。
2015(H27)年12月からは225系も戦列に加わり、土休日は全列車、平日も大半が12連の運転となって、輸送力が大幅に増強された。2019(H31)年3月改正では、一部列車で座席定員制「Aシート」の設定も行われている。
一方で新快速のイメージアップに貢献した117系は、1991(H3)年改正から順次後継の系列に置き換えられ、1999(H11)年には新快速から全面撤退、奈良線快速や関西各線区のローカル列車に転用されたほか、一部は山陽地域に移籍した。
電化・複線化 躍進するJR在来線
1990年代前半は山陰本線以外でも、府内のJR西日本在来線が飛躍した時期だった。片町線は長尾~木津間が非電化で残されていたが、1989(H元)年3月のダイヤ改正で電化、大阪市内から快速電車が直通するようになった。同時に、大阪府内で命名されていた「学研都市線」の愛称が、全区間に付与されている。松井山手駅はニュータウン開発に合わせて建設された新駅で、開発を手掛けた京阪電鉄が建設費を負担、長尾~大住で変更したルート上に開業した。1997(H9)年からは、大阪市中心部を地下線で通過するJR東西線を介し、JR宝塚線(福知山線)・JR神戸線(東海道本線)とも直通運転を行っている。
奈良線は1991(H3)年、日中に快速の運行を開始。当初は途中宇治・木津のみの停車で、京都~奈良間を最速43分で結んでいた。全線単線だった奈良線は、21世紀になって複線化が進められ、2001(H13)年3月には一期工事区間の京都~JR藤森及び宇治~新田間の複線化が完成した。〔みやこ路快速〕が30分間隔に増発され、京都~奈良間は最速41分にまで短縮されている。2016(H28)年には複線化二期工事が着手され、完成すると、京都~城陽間20.2㎞が完全に複線となる。2023(R5)年の複線開通を目指している。
小浜線が電化されると、京都府内のJR線の非電化区間は、関西本線の加茂以東のみとなった。名古屋~奈良間の急行〔かすが〕は2006(H18)年3月に廃止となり、現在は非電化区間内を折り返すローカル列車のみの運行である。
京都発着特急 〔はるか〕と〔スーパーはくと〕
1994(H6)年9月4日に開港した関西国際空港へのアクセスとして、特急〔はるか〕が開港と同時に運行を開始した。京都~関西空港間を最速1時間13分で結んでいる。1995(H7)年には1往復が草津へ、2003(H15)年には2往復が米原まで延長されている。当初は京都駅構内にチェックイン施設「K-CAT」があり、国際線旅客の手荷物を、281系電車の一角に設けられた荷物室に積み込むサービスが行われていた。しかし、2001(H13)年9月に発生した米同時多発テロ事件の発生を受けて、このサービスは終了を余儀なくされ、K-CATも閉鎖された。一時は空港利用者の伸び悩みから日中の列車の一部不定期化も行われたが、その後インバウンド旅客の伸びや、LCCの就航の増加もあり、現在は再び全列車定期運行である。
〔はるか〕運行開始3か月後の12月3日に開業した、智頭急行の大阪~鳥取・倉吉間特急〔スーパーはくと〕は、1996(H8)年3月16日改正で、全列車が京都発着となった。同社の振り子式特急車HOT7000系を使用し、京都~鳥取間は最速3時間01分となり、山陰本線経由より16.2kmの遠回りながら、前日まで運転されていた〔あさしお〕の最速3時間39分から、大幅な所要時間の短縮となった。運行開始当初はJRキハ181系の〔はくと〕と共に運行されていたが、1997(H9)年11月改正で、全列車が〔スーパーはくと〕に統一されている。
退潮する夜行列車
一方、九州行寝台特急は、新大阪始発だった〔あかつき〕が1991(H3)年3月改正で京都発着に延長、その後個室寝台車の連結もあり、高速バスへの対抗策としての座席車「レガートシート」と合わせ、編成としてのグレードアップが図られていった。しかし、2000(H12)年には〔彗星〕と、〔彗星〕が廃止になった2005(H17)年10月改正では、併結相手を〔なは〕に変えて運行が続けられたものの、2008(H20)年改正で廃止。関西~九州間ブルートレインが、全て姿を消した。
東京から山陰本線に直通する〔出雲〕は長らく2往復体制が続き、綾部・福知山にも停車して、府北部と東京を結ぶ足としても機能していた。しかし1998(H10)年7月より1往復は伯備線経由の電車寝台〔サンライズ出雲〕となり、1往復が残った〔出雲〕も、2006(H8)3月改正で廃止となった。一部が京都に停車していた東海道ブルートレインも、最末期には〔富士・はやぶさ〕の1往復を残すのみとなり、2009(H21)年3月の改正で廃止となって、全て消滅した。東京~大阪間の寝台急行〔銀河〕は、その前年に廃止となっていた。この他、日本海縦貫線には寝台特急〔日本海〕〔つるぎ〕急行〔きたぐに〕、中央本線直通の急行〔ちくま〕の運行もあったが、2013(H25)年までに全列車が廃止、京都府内に停車する定期夜行列車は消滅した。
また、昭和末期の1988(S63)年から、京都を始発地として九州・山陽・四国へ向かう臨時快速〔ムーンライト〕などが相次ぎ設定され、〔ムーンライト九州〕では、「シュプール号」から転用された展望室付き14系客車が使用された。しかし、2009(H21)年1月の〔ムーンライト高知〕を最後に、運転がなくなっている。
東海道新幹線 〔のぞみ〕デビューと高速化
東海道新幹線では1992(H4)年3月、〔ひかり〕より上位に位置する〔のぞみ〕がデビューした。民営化後初の、東海道新幹線の新形式となるJR東海の300系が導入、最高速度270㎞/hで、東京~大阪間を最速2時間30分で結ぶ事となった。早朝の〔のぞみ301号〕は新横浜~新大阪間ノンストップとなり、名古屋と共に京都を通過する列車となって、物議を醸した。翌1993(H5)年より、東京~博多間毎時1本に運行規模を拡大、1997(H9)年にはJR西日本が開発した500系も交え、東海道新幹線の主役に躍り出る事になる。2003(H15)年の品川新駅開業時には毎時7本となり、運行本数が〔ひかり〕を上回る事になった。その後700系・N700系シリーズに代が変わり、2019(H31)年3月改正では、東京~京都間の最速が2時間12分となって、平成の世が始まった当時の〔ひかり〕の最速2時間39分から、大幅な所要時分の短縮が実現する事になった。
一方で食堂車や、100系にあったグリーン個室はなくなり、東海道新幹線は、スピード重視の政策に振れていく。
ダブルデッカー・プレミアムカー 進化する京阪特急
大正時代から構想があった京阪鴨東線は、1989(H元)年10月、計画から65年目にして開業した。昭和末期の1987(S62)年5月に地下線化されていた本線の三条から延伸する形態の地下新線で、ほぼ全列車が大阪方面へ直通する。
京阪間の特急には3000系が使用されていたが、鴨東線開業時に新車両8000系が導入された。当初は運用増を補うための特急車両増備の意味が濃かったが、好評だったため、順次(初代)3000系を置き換えていく事になる。1993(H5)年には1編成を残して置き換えが完了、3000系は富山地方鉄道や大井川鉄道に移籍していった。
残存する3000系では、予備車両をダブルデッカーに改造し、編成内に組み込んで運用した。関西では初の料金不要のダブルデッカー車であり、好評のため8000系にも新造して組み込んでいった。この結果、クロスシートの特急は全列車が8両編成となった。
京都(七条)~大阪(京橋)間のノンストップ運転を基本としてきた特急だったが、1993(H5)年のダイヤ改正では通勤対策として、平日朝方の淀屋橋行が中書島に停車するようになり、同時にデビューした3ドアクロスシート車の9000系が使用された。特急は以降、停車駅が増加していく。2000(H12)年には全列車が丹波橋と中書島に停車、2003(H15)年にはダイヤのサイクルを15→10分に変更した上で、急行を統合する形で、樟葉・枚方市にも全列車が停車する事となった。運用が増えたため、日中の特急にも9000系が使用されるようになっている。
2008(H20)年に中之島線が開業すると、出町柳~中之島間に快速急行を設定。3ドア転換クロスシート車の(新)3000系を導入、枚方市~淀屋橋間の区間運転の特急と接続する形態とした。3000系デビューに合わせ、京阪は新カラーデザインを採用する事になり、8000系は同時に更新工事を実施、汎用性を持たせるため、車端部のロングシート化改造も行っている。京阪特急のシンボルだった「テレビカー」は、2012(H24)年までにサービスを終了した。
快速急行は中之島線の伸び悩みもあって、2013(H25)年改正では朝夕のみの運転に縮小、再び特急が10分間隔運転となって、8000系と3000系の併用という形になった。一方で行楽需要からノンストップ運転を求める声も多く、2011(H23)年の行楽シーズンから運行を開始した快速特急〔洛楽〕は、2016(H28)年より毎日運転の定期列車となっている。
2018(H30)年より、8000系において「プレミアムカー」サービスがスタートした。2-1配置のリクライニングシートを配し、アテンダントが乗務、PC利用に配慮した大型テーブルや100Vコンセント、Wi-Fiを装備している(Wi-Fiは後に一般車でも提供)。元々無料の転換クロスシート特急車で、さらにワンランク上の有料サービスを提供した事は、大きな話題となった。2020(R2)年以降、3000系にも「プレミアムカー」が連結される。
宇治線は、夕ラッシュ時に設定されていた三条直通急行が鴨東線開業と引き換えに廃止となり、2000(H12)年以降はほぼ全列車が線内折返しとなった。2013(H25)年より、ワンマン運転を行っている。JRと交差した先にあった宇治駅は、1995(H7)年にホームをJR線の手前に移設、駅舎はJR線の真下をくぐる形に改築された。
観光鉄道として飛躍 京阪グループの2鉄道
鴨東線の開業は京阪グループのローカル鉄道、特に叡山電鉄に大きな影響を与えた。京都市電の廃止以降、鉄道としては孤立していたが、一気に大阪からの路線と接続した事で、観光の利用が飛躍的に伸びた。鞍馬地域は秋の紅葉が美しい事で知られ、1997(H9)年には、展望を楽しめる観光電車「きらら」がデビューした。天窓を持ち、車内中央部から片側は、窓側を向いた展望席を配置している。岩倉付近では京都市営地下鉄烏丸線の国際会館延伸の影響を受ける事もあったが、京都精華大学の立地に伴い、鞍馬線の一部区間を複線化して、輸送力の増強にも努めている。2018(H30)年には、比叡山方面への観光電車「ひえい」もデビュー、正面に大きな楕円を描いた大胆なデザインが話題を集めている。
京福電気鉄道は、昭和の終わりまでは現叡山電鉄、さらに21世紀に入るまでは福井地域でも鉄道を営業していたが、現在は洛中・嵯峨野地域を走る2路線のみの営業である。平成の世になって以降、初の高性能VVVF車・2000形や、レトロ調電車の導入を行い、体質改善と共に、旅客の積極的な誘致に努めている。2007(H19)年以降は、「嵐電」の愛称を前面に押し出す営業政策を採るようになり、翌年には嵐電天神川駅開業に合わせて駅名の改称を行った。嵐電天神川は、京都市営地下鉄東西線太秦天神川駅と直結、地下鉄線からの回遊性が向上した。行楽シーズンに北野白梅町~嵐山間の直通運転が行われた事もある。江ノ島電鉄と業務提携を行っており、マスコットキャラクター「あらん」は2010(H22)年、江ノ電の「えのん」と共に生み出された。
十字形で市内を直結 市営地下鉄
京都市営地下鉄東西線は1990(H3)年に着工したが、難工事となり、御陵付近の線形の変更もあって、建設費が高騰するなど、市会でも問題となった。1997(H9)年10月12日に醍醐~二条間が開業、2004(H16)年には醍醐~六地蔵間、2008(H20)年には二条~太秦天神川間が延伸、当初の計画区間は全通した。太秦天神川付近は再開発が行われ、再開発ビルには京都市交通局が移転している。御陵~三条京阪間は、当初は京都高速鉄道が第3種鉄道事業者として上下分離方式を採っていたが、2009(H21)年には、京都市が線路施設を保有する形態に改めている。
東西線が他の地下鉄に比べて小型なのは、一部区間で並行していた京阪京津線を受け入れるためだった。京津線は、本線地下化以降も地上に残った京津三条駅から、路面区間を走行して、山科から大津方向に向かっていた。東西線開通の前日に京津三条~御陵間は廃止、翌日より残存区間を昇圧の上、地下鉄直通用の800系を導入して、東西線に直通する形態に改めた。直通区間は京都市役所前としていたが、東西線延伸時に、一部列車が太秦天神川まで延伸するようになった。
烏丸線は1990(H2)年に北大路から北山まで、1997(H9)年に国際会館まで延伸して全通した。竹田延伸時から行われている近鉄京都線との相互直通運転は、2000(H12)年3月より、近鉄奈良までの急行の運行を開始し、範囲を拡大している。交通局では2010(H22)年より、若手職員のチームによる「京都市営地下鉄利用促進プロジェクト」が展開されており、アニメなども制作されて、注目を集めている。
阪急 観光特急「京とれいん」デビュー
JR・京阪と共に京都~大阪間で覇を競う阪急京都本線もまた、京都市内~大阪市内間のノンストップ特急のフリークェントサービスを、2ドアクロスシート車の6300系によって提供していた。しかし阪神大震災以降、京都~大阪間のJRへの転移の傾向が如実になると、阪急もまた、特急の中間駅への停車の追加を行い、沿線の利用者を獲得する営業政策に転換する。1997(H9)年には、通勤特急のみ停車していた高槻市に全列車が停車、2001(H13)年には15→10分サイクルに変更されるとともに、急行と統合する形で、停車駅の大幅な変更を行った。朝夕に運行される、快速特急(在来の特急と同じ)・通勤特急との3本立てとなる。
運用数の増加に伴ってロングシート車の特急運用も増える事になり、これを解消するため、2003(H15)年より、3ドア転換クロスシート車の9300系が新たに導入される。その後、2007(H19)年改正でさらに停車駅を増やした事で、6300系の9300系置き換えを推進し、2010(H22)年には全列車の置き換えが完了した。この年の改正で、特急の最高速度を115km/hに引き上げている。
6300系は、一部が編成短縮の上、嵐山線のローカル列車に転用されたが、6連1編成は観光特急「京とれいん」に改装され、2011(H23)年3月にデビューした。車内は和風テイストに大幅に改装され、セミコンパートも設けられている。土休日の快速特急を中心に運行されていたが、2019(H31)年3月には、神戸線用7000系を改造した「京とれいん雅洛」もデビュー、観光快速特急の60分間隔ダイヤが確立した。「雅洛」は神戸線~嵐山間の臨時特急で使用される事もある。「雅洛」を含め、嵐山線では行楽シーズンに、神戸線・宝塚線からの直通臨時列車が多数運行されている。
近鉄京都線は国際的な観光地の奈良や吉野(橿原神宮前乗り換え)、さらに伊勢・志摩方面への特急が頻発していたが、2002(H14)年には京阪からの乗り換え客を狙い、丹波橋が特急停車駅に追加、京都府内では初めて、京都以外の駅に特急が停車する事になった。その後需要の減少に伴い、伊勢・志摩方面への京伊特急は大幅に削減されている。一方で2014(H26)年10月、観光特急「しまかぜ」が、京都発着列車でも設定された。
一般列車は、京都市営烏丸線直通列車が、新田辺までの普通に加え、2000(H12)年3月改正時より、近鉄奈良発着の急行も設定された。同時に快速急行も設定されたが、こちらは3年の短命に終わっている(急行格下げ)。2012(H24)年3月には近鉄全体で減量ダイヤ改正が行われ、特に京都線の急行は、全体で13%の大幅な削減となった。京都駅はこの改正時から1線増線して4線となった他、1Fの改札口を2Fに集約するなどの抜本的な改良工事が行われている。新祝園駅は橋上駅舎化と共にJR祝園駅と直結、2000(H12)年改正で急行停車駅となった。
バス会社が支援 北近畿の第3セクター鉄道
京都府北部の第3セクター鉄道・北近畿タンゴ鉄道(KTR)は、宮福鉄道の名称で、福知山~宮津間の鉄道を運営していた。旧国鉄線としての運営が予定されていた同区間の鉄道の運営を目的として設立され、1988(S63)年7月に運行を開始していた。一方、第3次特定地方交通線に指定されていたJR西日本の宮津線は、宮福鉄道との一体での経営が選択され、同社は1989(H元)年8月に社名を変更、1990(H2)年4月、宮津線を転換し、同社の路線として開業させた。同時に自社保有の特急車両により、京都~西舞鶴~久美浜間の〔タンゴエクスプローラー〕を新設、またJR車両による、新大阪~福知山~天橋立間の〔エーデル丹後〕(臨時列車)も設定された。
1996(H8)年3月には宮福線が電化(天橋立まで)され、JR西日本の「ビッグX」ネットワークに組み込まれる事になった。JRからはそれまでの、東舞鶴経由のDC特急〔あさしお〕・急行〔丹後〕に代わり、福知山経由の電車特急〔はしだて〕が京都から、〔文殊〕が新大阪から乗り入れる事になった。同時にKTRも特急車両を新造し、〔タンゴディスカバリー〕として、新大阪への直通運転を開始している。
2013(H25)年には一般車両を改造した、観光列車「あかまつ」「あおまつ」がデビュー、翌年にはダイニングを備えた「くろまつ」も加わっている。
観光需要の取り込みを中心に発展してきたKTRだったが、全体の需要の減少により経営が低迷、安定的な運営を維持する方策として「上下分離」を導入する事になった。運営部分は2015(H27)年4月より、全国に高速バスネットワークを広げるWILLERグループが設立したWILLER TRAINSが参入、「京都丹後鉄道」のブランド名で行う事になった。バス専業事業者の鉄道事業参入は両備バス、下北バス等の例はあったが、全国規模の大手の参入は、初のケースとなった。KTRは引き続き第3種鉄道事業者として、線路・施設を保有している。
転換直後より、〔タンゴディスカバリー〕用のKTR8000形を順次改装、観光列車「丹後の海」として運行、主に福知山でJR特急に接続する〔丹後リレー〕として運用されている。宮津線は正式な名称はそのままに、宮津を境に東側を「宮舞線」、西側を「宮豊線」と命名した。
京都駅ビルと京都鉄道博物館
京都のJR西日本の飛躍には、京都駅ビルの新築開業の影響も大きい。1996(H8)年に北口に開業した新駅ビルは、駅機能に留まらず、百貨店の伊勢丹や美術館・劇場も内包する、エンターテイメント性も兼ね備えた大規模な施設となって、その存在自体が、多くの利用者を獲得する要素となった。一方で京都の場所柄、景観論争をも巻き起こす事となる。
梅小路蒸気機関車館は1972(S47)年のオープン以降、SL動態保存機の展示場所として、大勢のファンを集めてきたが、2016(H28)年4月29日、新たに「京都鉄道博物館」として、スタートを切る事になった。大阪の弁天町にあった鉄道交通科学博物館を統合、さらに車両を中心に展示を大幅に拡充させており、東の大宮に匹敵する規模となった。また、SLの展示施設はそのままに、新たにSLの検修の様子を一般に公開する試みが取り入れられている。
次回はデータ編と、令和に入ってからの動きです。
当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
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東急と京成が今年度の設備投資計画を発表、これで、関東大手の設備投資計画の発表が出そろいました。東急は日付が11日になっているが、リリースを確認したのは今日でした。何かあったのか?
東急 … 大井町線9000・9020(旧2000系)系置き換え用の車両の新造に着手するとしている(6020系の5連版か?)。また東横線の「Q SEAT」サービスを開始する。防犯カメラは、東急編成は既に全車両搭載を完了しているが、さらに高性能化を進める。五反田駅のホームドアへの設備更新に向けた設計を進める。大井町線戸越公園駅付近の連続立体交差化に向けた、具体的な調査・設計を開始する。田園都市線地下区間(旧新玉川線)駅リニューアルは、来年夏竣工予定の駒沢大学駅に続き、今年度から桜新町駅の工事に着手する。QRコードやC/Cタッチ決済を活用した実証実験を、今夏に開始する。投資総額431億円。
京成 … 3100形1編成を新造し、3200形の設計を進める。防犯カメラは、通勤車両への設置を進める。市川真間・青砥駅のリニューアル工事に着手する。押上線・四ツ木~青砥間の連続立体交差工事、本線の荒川橋梁架替工事を引き続き推進する。定期券のWEB予約システムを導入。この他、耐震補強・法面補強工事、ホーム改修を行う。投資総額193億円は、前年度比+43%。なお別リリースで、鉄道駅バリアフリー料金制度によるホームドアなどのバリアフリー設備の整備を、来年春より行うと発表している。具体的な内容は後日、整備計画等の届け出の際に公表する。
《What's New》
17日 岐阜県揖斐川町 最高気温35.1度記録 5月中旬の猛暑日は30年ぶり
18日 ユーチューバー 著作権法違反で逮捕 ゲームプレー動画配信容疑