№2655 2023年度GW 航空利用データ分析

羽田空港2023_0503.jpg
 あまりにも寒い数字に背筋が凍り、単純に数字を並べるだけでしかなかった、「悪夢」のGWから3年。「第9波」の懸念を残しつつも、4年ぶりに行動制限がなかったGW。人々はウィルスの呪縛から解き放たれたかのごとく、海へ、山へ、故郷へ、異国の街へと旅立っていきました。羽田空港のターミナルだけ見ても、内も外も、「旅に出るんだ!」のエネルギーが満ち溢れていた、今年のGW。人はやはり、「巣ごもり」じゃ、ダメなんだ。
 この期間(今年は4月29日~5月7日の9日間)の利用実績が、昨日9日になって、各社から発表になりました。その利用実績を、張り切って分析してみたいと思います。
 基本的には(会社によって呼び方が若干違うが)「座席数」「旅客数」「利用率」の数値のみ記します。注記以外は、コードシェア販売分の扱いは記されていません。カッコ内は前年比。また、「ピーク」の文言は使用せず、基本的利用率が一番高かった日と、パーセンテージを記す形に統一します。

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全日空
国内線 座席数 1,517,010席(110.9%) ※旅客数 1,049,674人(120.6%・84.9%) 利用率 69.2%(+5.6%)
※ピーチとの合算では1,251,069人(115.4%・94.1%
国際線 座席数 215,074席(252.7%) 旅客数 163,486人(275.3%・63.4%) 利用率76.0 %(+6.3%)
 ANAは、旅客数のみコロナ禍前の実績を公表しているが、対象が2018(H30)年になりました(下線で表記)。理由は記されていないが、後述のJALと同様、2019(H31~R元)年が10連休だったので、単純には比較できないと見たのだろうか。
 国内線の方面別では年末年始から、「その他」に「LLP対象路線」が含まれています。LLPとは「地域航空サービスアライアンス」の事で、去年秋より、九州(長崎・鹿児島)の離島路線の維持を目的として、航空会社の系列を跨いで設立されたものです。ANAでは、AMX・JACの一部便に、ANAの便名を付与したコードシェア運行を行っています。
 その国内線では、座席数・旅客数とも前年を上回りました。旅客数は「その他」が前年比134.2%と一番の伸びだが、その「LLP」対象路線を含んだ事があると思われます。それ以外では中国・四国路線が、前年比で一番増えました。利用率では関西方面が76.7%と最も高かった。なお、今回は「15歳以下と64歳以上の利用が多かった」旨、利用者の年齢層にまで踏み込んだ記述がありました。
 最高の利用率は、下りは5月3日の93.5%、上りは5月7日の95.7%。5月1日は谷間の普通の平日という事もあってか、上下合計で45.4%と低かった。羽田発着の臨時便を64便運航。
 国際線は、中国路線の旅客数が前年比1040.8%と、10倍以上になりました。入国規制の緩和が大きかったと思われる。が、利用率は54.2%とまだまだ低い。方面別では最低。最高は北米路線で、84.5%になりました。ハワイ路線は旅客数が前年比542.8%と中国路線に次いで伸びが大きく、「コロナ禍前の9割にまで回復した」としています。5月5~7日のハワイ発はほぼ満席だったそう。
 最高の利用率は、日本発は4月29日の90.0%、日本着は5月7日の88.3%。全日、上下計では70%以上をキープしました。
 
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日本航空
国内線 座席数 1,067,532席(97.2%) 旅客数 849,064人(111.8%) 利用率 79.5%(+10.3%)
国際線 座席数 209,852席(200.1%) 旅客数 151,735人(229.8%) 利用率 78.0%(+9.3%)
     
日本トランスオーシャン航空
 座席数 102,771席(98.7%) 旅客数 68,649人(112.2%) 利用率 66.8%(+8.0%) 
   
琉球エアコミューター
 座席数 18,899席(110.5%) 旅客数 12,095人(100.4%) 利用率 64.0%(△6.4%)

 JALは「2019年度は10連休だったため、2018年度との比較を記した」旨、記載があります。
 国内線の利用実績はJAL・JTA・RACの合算が記されているが(ここでは各社別に記載)、この3社合計の乗客数(1,189,202人)が2018(H30)年比101.5%となり、コロナ禍前を上回りました。2019(H31~R元)には及ばないが、4年前は特殊だった、という事だろう。
 なおJALでは、LLPの一環で、ORC便でのコードシェア運航を行っているが、ここには含まれていない。
 座席提供数はB777ー200・300の引退が進んだからか若干減ったが、旅客数は増加し、利用率は全方面で70%を上回りました。
 最高の利用率は、下りは5月3日の95.2%、上りは5月7日の94.6%。臨時便は、JALは羽田・セントレア発着の38便を運航したが、前年の85便からは大幅に減少しました。定期便の復便が進んだからだろう。JTAはセントレア~那覇2便を運航。
 国際線は、中国メインランドの5都市(北京・大連・上海・広州・天津)への座席数は前年比で10倍を超えたが、旅客数は前年比892.1%にとどまり、利用率は50.2%と、ここも方面別では最低になりました。去年は運航がなかったソウルへは83.8%で、方面別最高になりました。
 最高の利用率は、日本発は4月29日の91.9%、日本着は5月7日の90.7%でした。臨時便・チャーター便は前年に続き運航なし。
(JALグループは、両方向の合算の利用率は公表していない)

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スカイマーク
国内線 座席数 246,561席(97.8%・102.3%) 旅客数 210,688人(130.6%・100.2%) 利用率 85.5%(+21.5%・▲1.7%)
国際線 運航なし
 コロナ禍前は、2019(H31~R元)年との比較でした。座席数は、前年比では減少している。最高の利用率は、下りは5月3日の96.8%、上りは5月7日の97.6%。上下とも、70%を割った日はありませんでした。
   
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エア・ドゥ
 座席数 78,552席(98.1%) 旅客数 72,237人(103.8%) 利用率 92.0%(+5.1%)
 コロナ禍前との比較はなし。昨年7月就航の札幌(新千歳)~福岡線が含まれているが、座席数は前年より減少。 最高の利用率は、下りは5月3日の98.9%、上りは5月7日の99.1%。下りは全日、80%以上の利用がありました。5月1・2日も、下りは90%を超えています。

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ソラシドエア
(ANA販売分は含まず)
 座席数 86,753席(101.7%・122.1%) 旅客数 60,152人(104.1%・96.9%) 利用率 69.3%(+1.6%・▲18.1%
 コロナ禍前は2019(H31~R元)年との比較でした。前年よりは上回っているが、利用率がまだ低く、70%に届かなかった。最高の利用率は、下りが5月3日の94.0%だが、その他の日は全て、80%に達していない。上りは5月7日の97.4%。3月31日のリリースで、臨時便の運航が予告されていた。 

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スターフライヤー
(ANA販売分は含まず)
国内線 座席数 50,248席(112.0%) 旅客数 44,636人(126.3%) 利用率 83.5%(+9.4%)
国際線 運航なし
 最高の利用率が他と若干違う傾向になり、下りは5月7日(92.7%)になりました。5月3日は89.3%。下りは全日、80%以上になりました。上りも5月7日の98.4%が最高だが、5月3日も92.6%になりました。
 
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フジドリームエアラインズ
 座席数 72,688席(106.8%) 旅客数 58,324人(117.6%) 利用率 80.2%(+7.3%)
 最高の利用率は空港別に公表され、名古屋(小牧・セントレアの合算)は発が5月3日(95.4%)・着が5月6日(97.3%)、静岡は発が5月3日(96.5%)・着が5月6日(96.1%)、松本は発・着が共に5月3日の97.0%、神戸は発が5月3日(90.7%)・着も5月3日(95.6%)。
   
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IBEXエアラインズ
 座席数 7,056席(75.3%) 旅客数 5,716人(70.6%) 利用率 85.7%
 前年度より利用がかなり減っている。年末年始同様、前年度運航があった仙台~広島・松山線の期間運航便の運行がなかったからか。最高の利用率は、下りは5月3日の93.4%、上りも5月3日の95.9%。

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ピーチ
 ピーチ独自の利用実績についてのリリースは、確認できませんでした。

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ジェットスター・ジャパン
国内線 座席数 160,984席(106.5%) 旅客数 144,118人(116.3%) 利用率 89.5%(+7.6%)
国際線 座席数9,720席 旅客数7,822人 利用率80.5% 
 国内線は17路線を運行。最高の利用率は、下りは5月2・3日で共に94.7%、上りは5月6・7日で96.5%になりました。下りは全日、利用率が80%を上回っています。
 国際線は3月26日にセントレア~マニラ線が再開して、成田~台北・マニラ線と合わせて3路線の運航。最高の利用率は、日本発は4月29日の93.0%、日本着は5月7日の92.2%。

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スプリング・ジャパン
国内線 座席数 21,924席(128.9%) 旅客数 18,903人(230.0%) 利用率 86.2%(+37.9%)
国際線 座席数 3,106席(544.0%) 旅客数 1,891人(375.9%) 利用率 60.9%(▲27.2%)
 国内線は3路線を運航(成田~佐賀線は土曜日のみ)、かなり復調したのかと思えます。最高の利用率は、下りは5月2日の98.6%、上りは5月3日の96.1%と、他とかなり異なる結果が出ました。期間中、新千歳・広島路線では増便も行われた模様。
 国際線は、現在は成田~ハルビン線を週4日(月・水・金・日)、成田~天津線を週3日(月・水・土)運航。期間中の最高の利用率は、日本発・日本着とも4月29日でした(発95.8%・着96.3%)。5月1日は日本発・着とも50%を割りました(着は28.3%)。

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ZIP AIR TOKYO
 座席数37,700席(206%) 旅客数 28,406人(383%) 利用率 75.3%(+34.8%)
 最高の利用率は、日本発は4月29日の97.1%、日本着は5月6日になり、93.5%でした。現在、成田~ソウル・バンコク・シンガポール・ホノルル・サンフランシスコ・サンノゼ・ロサンゼルス線を運航。 

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 以上、相当におおざっぱだが、今GWの航空輸送についてまとめてみました。
 国内線は、一部を除いてコロナ禍前に戻ってきたか、あるいは上回りました。潜在的な旅行熱は高かったという事か。ただ、5月1・2日に年休を取れば9連休になる人が多かったはずだが、4月29・30日は、もちろん大半のキャリアは利用が多くなったが、5月に入って以降より高くはなりませんでした(コロナ禍前の2019(H31~R元)年の10連休では、下りは4月中がピークになっている所が大半だった)。今回は普通の平日も挟んでいるし、さすがにいきなり9連休で羽根を延ばす、という雰囲気になり切れなかった、かも知れません。全体的には、下りは80~90%と平均的、上りは、4月は70%台位で、5月3日以降大きく増える、という傾向になりました。
 国際線は、報道に拠れば、もちろん大幅に回復しているが、まだコロナ禍前の2/3程度に留まる、という利用になったようです。中国メインランドは、ある程度入国規制が緩和されているが、やはり「ゼロコロナ」政策の混乱が、GWでも尾を引いているような感じです。ANAのリリースには「今後ますます海外旅行が盛り上がることを期待しています」と記されているが、それは、今期はまだまだ低調だった、という利用実績の裏返しでは、なかったか。
「第9波」はまだ懸念材料だが、ともかくコロナ禍はもう「5類」に移行、WHOの「緊急事態」も終了した事で、もう後戻りはできないし、させてはならないと思います。次は夏のお盆シーズンに分析を行うが、是非ウィルスの心配を、今以上にしなくて済む、楽しい夏休みを迎えたいものです。それが、航空(だけでなく交通全般)のためにもなる事です。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


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 京急が今日、今年度の設備投資計画を発表しました。1000形を8連×1本・6連×1本新造(「サスティナ」になるのか注目)。また2026(R8)年度までに、全車両に防犯カメラを設置する。一部車両ではフリースペース新設、非常通報装置増設、固定窓の一部開閉化を行う。品川付近、大師線の連続立体交差事業を引き続き推進。4年前の新町事故を踏まえ、踏切障害物検知装置を赤外線レーザレーダを用いたものに更新するほか、制動操作支援システムの導入を進める。ホームドアは、2023~2024年度は青物横丁・梅屋敷・六郷土手・八丁畷・生麦・弘明寺・杉田・金沢文庫・金沢八景の各駅に設置する予定。神奈川新町駅で大規模な改良工事(橋上駅舎化)に着手し、エレベーター・エスカレーターの他、道路との接続橋を整備する。羽田空港第1・第2ターミナル駅の引き上げ線新設、泉岳寺駅の再開発計画に連動した改良を推進する。投資総額295億円。なお別リリースで、10月1日の運賃改定時より、小児IC運賃を75円均一にするほか、「空港連絡特殊割引」の廃止を発表しています。

《What's New》
 8日 熊本県益城町役場 新庁舎で業務開始
 9日 マイナンバーカード コンビニ証明書交付システム 河野デジタル相 一時停止を要請
10日 トヨタ自動車 昨年度営業収益37兆1542億円 過去最高も減益

 今回の航空利用実績の分析で、ピーチは自社独自の実績は公表しなかったが、別リリースで、現在展開中のアニメ「ひろがるスカイ!プリキュア」とのコラボ企画で、新たにイラストを発表しました(既にラッピング機が飛んでいる)。ところで今回の「プリキュア」、シリーズでは初めて4人中1人が男の子(キュアウィング・夕凪ツバサ)になり、コラボイラストではパイロットの制服を着用しています。アニメを見ていないからはっきりとは言えないが、この設定、やはり昨今のLGBTQに関わる関心・意識の高まりが背景にあるのでしょうか?大河ドラマでさえ、「どうする家康」の第10話、側室選定に関わるエピソードは明らかにLGBTQを意識したものだったし、他にも同様の映像作品が、最近目立って増えてきています。航空ではCAの制服もその辺を考慮したデザインになってきているし、今後乗り物の世界も、LGBTQの存在を、ビジネスでも、実際の運営でも、より深く意識せざるを得なくなってくるのでしょうか。