№2637 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 21.東武東上線 ふじみ野駅 〔後〕
東武東上線ふじみ野駅の時刻の変遷、後半は2008(H20)年6月14日、〔TJライナー〕運行開始時から、先日3月18日の改正までです。
クロスシート⇔ロングシート(と呼ぶには、個人的にはやや違うと思っているが)と座席のレイアウトを変更させて、通勤・帰宅時間帯にはクロス形態で有料ライナー列車として運行させる、という列車は、今では関東地方ではお馴染みにもなりつつあるが、〔TJライナー〕はその先鞭をつけた列車でした。この座席形態の車両は近鉄の「L/Cカー」が始まりで(さらに昔は、旧国鉄73系でテストされた事もあるそうだが)、関東では東武50090型が初となったが、ロング形態が基本でクロスになると有料、というのは関東的な発想だよなあ、と当時は思ったものです。
2008(H20)年 6月14日改正
〔TJライナー〕は、まずは池袋発下りのみで平日6本・土休日5本、基本的に1時間間隔という、今見ればささやか、な設定だった。
池袋からの乗車時は着席整理料金300円が必要、次の停車駅がふじみ野だったが、ふじみ野以降からの乗車は、無料で乗車できた。
その他の列車では特急がなくなり、代わって快速急行が設定された。停車駅は現在とはかなり異なり、池袋~森林公園間の停車駅は和光市・志木・川越・川越市・坂戸・東松山だった。下りは土休日のみ2本(池袋→小川町)あり、特急の代替的な設定と考えられる。他は全て夜間の上りのみ設定(森林公園→池袋)で、時刻から見て、〔TJライナー〕への送り込みが中心だったのではないかと思われる(だからクロスシート形態での運行だったのではないかと思うが、実際に列車を見ていないからわからない)。
ふじみ野駅に関連する点としては、副都心線の全面開業で、渋谷行直通列車が設定された。副都心線内は、日中は大半が急行、平日朝夕ラッシュ時は通勤急行で運転。
一方で日中は、急行が毎時5本(10~13分間隔)、準急は毎時3本となって、きれいな等間隔ダイヤが崩れた。志木~川越市間で各駅に停車する列車は、毎時8→7本に減少している。
また朝ラッシュ時の上りは、通勤急行の一部が急行になり、急行と通勤急行が交互に運行されるようになっている。
この改正から、池袋口の列車は全列車、10両編成の運行になった。
2011(H23)年 3月 5日改正
〔TJライナー〕は、平日の一部時間帯が30分間隔に増発された。
2013(H25)年 3月16日改正
地下鉄副都心線と東急東横線が渋谷でつながり、両者の相互直通運転が開始された。東上線からも東横線を経由し、みなとみらい線元町・中華街への直通列車が設定された。東横線からは基本的に、特急・急行等の10両編成の列車が直通する(平日朝夕のみ、志木まで8連が乗り入れ)。東武編成も元町・中華街まで、また東急編成が東上線に姿を見せる事になった。
東上線では新たに快速が設定された。川越市以北も快速運転となり、川越市~森林公園間は若葉・坂戸・東松山のみに停車する。日中の川越市以北は快速2:急行4本の30分サイクルが確立した。
〔TJライナー〕はさらに増発され、土休日も一部30分間隔運転になった。下りは全列車、小川町まで運行される。
快速急行は平日・土休日共、朝方にも数本設定された。夜間は30分間隔となり、やはり〔TJライナー〕への送り込みと思われる。
(準急はこの改正から、緑色で表記)
2016(H28)年3月26日改正
東横線直通列車が東上線内でも、森林公園までの急行運転を開始した。東上線・副都心線…急行・東横線・みなとみらい線…特急で走る最速タイプは、「Fライナー」と呼称する。
日中の急行は2本に1本が「Fライナー」に立て替えられた。和光市で池袋発着の準急と相互に接続する形態になる。その準急も2本に1本は森林公園まで延長、川越市~森林公園間で各駅に停車する列車が毎時6本となった。
〔TJライナー〕が、平日の朝方にも設定された(川越市は停車しない)。下りは完全に30分間隔が確立し、平日の池袋発最終は24時00分に繰り下げられた(平日の2本は森林公園まで)。〔TJライナー〕はこの改正から着席整理料金が改定され、下り310円・上り410円となった。(ふじみ野→池袋間のみは310円)。上りのみ前売りを行い、チケットレスも受け付ける。
通勤急行が廃止になった。
2019(H31)年 3月16日改正
「川越特急」が新設された。停車駅は朝霞台・川越・川越市・坂戸・東松山、その先は各駅に停車(ふじみ野は通過)。無料だが、50090型クロスシート形態での運行となった。上りは引き続き、〔TJライナー〕への送り込みと思われる。50090型1編成には、「池袋・川越アートトレイン」のラッピングが施された。
その〔TJライナー〕は座席指定制となり、追加料金は座席指定料金という名目になった。下り360円・上り460円(ふじみ野→池袋間のみは360円)で、上下ともチケットレスサービスの受付を開始した。
2021(R3)年3月13日改正
上りの〔TJライナー〕が4本に増発された。コロナ禍の真っただ中であり、「三密」のない定員制列車の需要が高まった事もあるかと思われる。座席指定料金は下り370円・上り470円(ふじみ野→池袋間のみは370円)となった。
コロナ禍の影響、という点では、平日下りの最終列車の繰り上げが行われ、1時14分発(池袋発0時44分)川越市行準急が廃止になった。東上線はふじみ野駅開業時の改正で、池袋発の最終が一気に30分繰り下げられていた。新ダイヤでの、池袋からふじみ野に行ける最終は、池袋発0時30分となった。
2023(R5)年 3月18日改正
そして、先月行われた改正の時刻になります。
東上線内で種別の整理・停車駅の変更が行われた。コロナ禍がもたらした需要の変動もあっただろう。快速急行は、志木は通過となり代わって朝霞台に停車、川越以北は各駅停車となり、ほぼ終日の設定となった。急行は朝霞台、準急は上板橋に新規に停車となった。快速は廃止、設定からちょうど10年だった。川越市以北の日中は、各駅に停車するタイプのみ、約10分間隔で運行される(毎時快速急行2:急行4)。なお、寄居口のワンマン運転が一部森林公園まで拡大し、日中の寄居方面への乗換駅が一部、小川町→森林公園に変更されている。
「川越特急」は、夜間の上りが30分間隔と大幅に設定増になったが、改正前の快速急行からの立て替えがほとんどで、〔TJライナー〕への送り込み、の性格は変わっていないと思われる。
「Fライナー」は、東上線内は快速急行となり、従ってふじみ野からは利用できなくなった。
東急新横浜線・相鉄新横浜線開業で、新たに相鉄線への直通列車が設定された。下りは海老名などからの始発もあり、土休日には海老名発小川町行(東上線内快速急行)もあるが、上りは全て湘南台行。大半は普通だが、朝方には平日・土休日共急行の設定がある。なお、東武~相鉄間の直通列車は全て、東急の編成による運行。相鉄20000系は東上線には入らず、東武編成は新横浜線には入線しない。
〔TJライナー〕は初めて、土休日でも朝方の上りに設定された。また平日の下り最終29号は、池袋発が2分繰り上がり、23時58分発となった(他列車と同じ日付に収めたかったからか)。
以上、先月の改正分も含めて、開業から30年になろうとするふじみ野駅の時刻を通じて、東上線のダイヤの移り変わりを俯瞰してみました。当然書き足りていない部分は多々あるはずで、その点はご勘弁願いたいと思います。
東上線のダイヤを振り返ってみると、この30年は、特に川越市~森林公園・小川町間の、適正な輸送力の見極めに腐心した期間だったと感じられます。鶴ヶ島市・坂戸市・東松山市と、大都市とは言えないけれど、埼玉県の中部に位置するこれらの市が成熟し、大学や企業の進出もあって、東上線の輸送量が伸びた時期でした。一方でこれらの市は池袋からは比較的遠いので速達性も求められてくるが、川越までもまた、当然川越市もだし、それこそふじみ野駅がある富士見市やふじみ野市、朝霞市や志木市、新座市(志木駅があるのは新座市)と有力な市が点在、さらに有楽町線・副都心線が接続する和光市、武蔵野線乗換駅の朝霞台もあるので、それらの駅の利便性も保たなければならない。バランス感覚を持ったダイヤ編成が、東上線では求められていたのだろうと思います。それは、特急や快速急行の停車駅の選定にも表れていると感じました。さらに今は相互直通運転区間の大幅な拡大もあります。今や神奈川県に行く列車もあるので。〔TJライナー〕が当初から停車するふじみ野は、特急・快速急行こそ停車しないが、東上線全体のダイヤ編成の歴史の縮図が、垣間見えるような気がしました(と書いたら大げさか?)。
ふじみ野駅に関しては、駅付近の街づくりはほぼ成熟の域に達したのかなとも思われるし、コロナ禍がもたらした需要の変動もあるが、富士見市内にはららぽーと富士見の開業もあり(ただしふじみ野駅からのバスの本数は少ない。一番多いのは鶴瀬駅から)、まだ伸びしろはあるのかとも思います。今後の駅のさらなる発展、そしてダイヤの充実が期待されます。
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