№2599 2022年度年末年始 航空利用データ分析

羽田空港.jpg
 3年ぶりに行動制限措置がなかった、今回の年末年始。多くの人々が、ウィルスの呪縛から解き放たれたかのように、山へ、里へ、野へと繰り出していきました(春が来るのはもう少し先だが)。日本各地の空港も、久しぶりの活気を見せています。一昨年1月3日の新千歳の閑散ぶりが、ウソのようです。
  その航空各社の利用状況、今回は12月28日~1月5日の9日間が対象となりました。先週6日、一斉に航空各社から速報値が発表されているが、少々遅くなってしまいました。ともあれ発表されたリリースから、各社の利用状況を分析してみます。
 基本的には(会社によって呼び方が若干違うが)「座席数」「旅客数」「利用率」の数値のみ記します。注記以外は、コードシェア販売分の扱いは記されていません。カッコ内は前年比だが、一部はコロナ禍前、2019(R元)のデータも合わせて発表されています(下線を付けて記した)。また、「ピーク」の文言は使用せず、基本的利用率が一番高かった日と、パーセンテージを記す形に統一します。国際線は、コロナ禍に加えて経済状況、さらには直前の対中国の水際対策の強化の影響が大きく出たようです。

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全日空
国内線 座席数 1,568,024席(116.6%・91.3%) ※旅客数 1,158,511人(117.3%・81.3%) 利用率 73.9%(+0.4%・▲9.1%
※ピーチとの合算では1,375,661人(115.8%・88.3%
国際線 座席数 175,243席(261.3%・50.0%) 旅客数 140,246人(580.8%・48.1%) 利用率80.0 %(+44.0%・▲3.1%
 国内線では一昨年よりANAの一部便のピーチ移管が行われており、旅客数は、ANAとピーチとの合算も合わせて記されています(共同の航空輸送事業計画も策定中との事)。
 国内線は、全方面で座席数・旅客数とも前年度より伸び、旅客数は関西方面を除くと対前年度比で110%を上回りました。特に東北・北陸方面は120%以上(ただし利用率は唯一70%を割っている)。
 最高の利用率は、下りは12月29日の93.6%、上りは1月3日の90.5%。合計111便の臨時便を運航。
 国際線は、ハワイ線が前年度の2051.0%、つまり20倍になっている。コロナ禍前との比較では54.7%に留まっているが、A380「FLYING HONU」(現在は週5便)は、ピーク日はほぼ満席と記されていて、何より。一方中国路線は座席数・旅客数とも、前年度比では倍以上だが、コロナ禍前には遠く及ばず、利用率は、方面別では唯一40%を切っている。中国国内のコロナ対策の混乱と、関連した日本の水際対策強化の影響が出たのではないか。
 最高の利用率は、これまでと相当違う傾向を見せました。日本発は1月5日の89.2%、日本着は12月29日の81.6%。日本発は12月29日の85.5%以降、期間中はずっと80%以上だったが、日本着は12月30日以降、80%に達した日がない。「一時帰国需要や訪日レジャー(インバウンド)が好調だった」としているが、裏を返すと、ハワイ等以外の日本発の旅行の需要が伸びていない、という事ではないか。コロナ禍以外にも急激な円安や、欧州(ここも71.7%と比較的低い)だとウクライナ危機の影響もあるだろう。
 今回も井上 慎一社長のコメントがあり、「Withコロナの旅が定着し、利用者は「リアル」を求めていると嬉しく思った。全国旅行支援対象商品や新春タイムセールもよろしく」みたいな事が記されています。
 需要が戻ってきたのでコロナ禍前に書いていた事を再度書かせてもらうと、中国メインランド以外のアジアは「アジア・オセアニア線」とひとくくりにしているが、韓国・台湾・香港・インド・その他東南アジア・オセアニア(オーストラリア)では、全く事情が違うはず(対コロナの姿勢が各国で異なる現状ではなおさら)。もっと細分化して公表すべきではないか?

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日本航空
国内線 座席数 1,110,564席(102.4%・97.0%) 旅客数 938,168人(105.2%・88.5%) 利用率 75.9%(+2.6%・▲6.4%)
国際線 座席数 182,564席(204.5%・64.9%) 旅客数 142,419人(509.9%・56.9%) 利用率 78.0%(+46.7%・▲11.0%)
     
日本トランスオーシャン航空
 座席数 127,017席(132.3%・101.7%) 旅客数 78,308人(246.0%・74.1%) 利用率 61.7%(+28.5%) 
   
琉球エアコミューター
 座席数 23,648席(122.9%・118.3%) 旅客数 14,040人(146.1%・90.8%) 利用率 59.4%(+9.4%)

「国内線ご利用実績」は今回から、JAL・JTA・RACの合算で記されています。
 座席数では、東北・北陸方面、沖縄方面は、コロナ禍前をも上回りました。逆に中国・四国方面、九州方面は、前年度よりも下回っている。利用率は、関西方面が86.8%と図抜けて高いのはなぜだろう?旅客数では、この関西方面と、東北・北陸方面が対前年度比で110%を上回りました。一方、JTA・RACの利用率がコロナ禍前よりだいぶ低いが、沖縄県内の移動が少なくなっていたようで、これもコロナ禍の影響か?トータルでは、1月5日の下り(49.5%)を除いて、60%を割った日はない。
 最高の利用率は、下りは12月29日の92.2%、上りは1月3日の90.2%。JALが合計94便・JTAが合計20便・RACが合計4便の臨時便を運航。
 国際線は、香港線の旅客数が対前年度比2548.9%という数字になっている。ハワイ・グアム線も2116.9%。北米線は、コロナ禍前の水準に戻りつつあります。一方、ここも中国メインランド路線は低調で、対前年度比では大幅に増えているが、旅客数はコロナ禍前の5.3%に過ぎない。利用率も32.9%と1/3以下。欧州線の利用率も57.6%に留まり、「コロナ・円安・ウクライナ危機」のトリプルパンチが、ここでも堪えているようです。
(韓国線は、前年度は飛んでいない)
 最高の利用率は、日本発は1月2日の88.9%。翌1月3日も88.6%で、この両日を挟んだ1月1~4日が82%以上。12月28・29日が80%程度だったから、こちらも例年とは傾向が違う。日本着は1月3日の82.7%で、1月4日も80.0%だったのでここは日本発の旅行の需要がある程度あったと思うが、期間のトータルでは、日本発と着で8.1%も異なっていた。新千歳~香港間3便のチャーター便を運航。

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スカイマーク
国内線 座席数 247,269席(96.9%・104.3%) 旅客数 208,898人(103.5%・98.3%) 利用率 84.5%(+5.4%・▲5.2%)
国際線 運航なし
 座席数は前年度より減少したが、旅客数は増えました。最高の利用率は、下りは12月29日の94.1%、上りが1月3日の93.2%。80%を割ったのは、12月31日・1月1日の上りのみ。
   
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エア・ドゥ
 座席数 76,463席(95.7%・97.2%) 旅客数 68,940人(99.3%・104.5%) 利用率 90.2%(+3.3%・+6.3%)
 今シーズン、データ上で一番好調だったのはADOだったと感じました。下りの最高利用率はは12月29日の96.8%だったが、12月28日~1月1日、さらに1月3日も90%台に乗りました。上りは1月4日の97.9%が最高だが、12月30日と1月3~5日が90%台。80%を割ったのは、1月5日の下りだけでした。旅客数は前年度よりは減少したが、コロナ禍前を上回っています。羽田~新千歳路線で上下計49便の増便を実施。

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ソラシドエア
(ANA販売分は含まず)
 座席数 87,662席(102.1%・117.7%) 旅客数 63,886人(99.6%・108.7%) 利用率 72.9%(▲1.9%・▲6.0%
 座席数・旅客数とも、コロナ禍前を上回っています。最高の利用率は、下りは12月29日の88.4%、上りは1月3日の86.4%。やや片輸送の傾向が強く、1月1・2日を除くと、上下で13~30%の差がついています。羽田~長崎・宮崎・鹿児島間の臨時便運航が、昨年秋にリリースされていました。

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スターフライヤー
(ANA販売分は含まず)
国内線 座席数 52,739席(118.7%) 旅客数 44,636人(125.8%) 利用率 84.6%(+4.8%)
国際線 運航なし
 ここも片輸送の傾向があるが、1月5日の下り(55.7%)を除くと、全日上下とも70%以上でした。最高の利用率は、下りは12月29日の98.5%、上りは1月3・4日が共に97.4%。下りの12月28~31日、上りの1月3~5日は、連日90%台。羽田~北九州・福岡線の臨時便運航が、昨年12月6日にリリースされていました。
 
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フジドリームエアラインズ
 座席数 65,152席(106.1%) 旅客数 51,928人(105.0%) 利用率 79.7%(▲0.8%)
「コロナ禍の影響は限定的で、前年度並みの利用があった」としています。最高の利用率は、小牧は発が12月29日(97.1%)・着が1月4日(92.7%)、静岡は発が12月29日(90.3%)・着が1月4日(93.0%)、松本は発が12月29日(94.5%)・着も12月29日(93.1%)、神戸は発が12月29日(91.3%)・着も12月29日(89.7%)。小牧空港発着は、日によって上下の差が大きくなっただろうか。
   
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IBEXエアラインズ
 座席数 7,056席(75.3%) 旅客数 5,716人(70.6%) 利用率 81.0%
 ここは前年度より利用がかなり減っている。前年度運航があった仙台~広島・松山線の期間運航便の運行が、今シーズンはなかったから、だろうか?最高の利用率は、下りは12月29日の91.8%、上りは1月3日の91.7%。

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ピーチ
 ピーチ独自の利用実績についてのリリースは、確認できなかった。11月17日より、羽田~台北(桃園)便が再開になっています。

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ジェットスター・ジャパン
国内線 座席数 173,828席(116.8%) 旅客数 147,808人(111.3%) 利用率 85.0%(▲4.2%)
国際線 座席数2,880席 旅客数2,498人 利用率86.7%
 国内線は、A321LRの導入が進んだ事もあってか、座席数が前年度よりかなり増えました。最高の利用率は、下りは12月29日の91.8%、上りは1月4日の92.2%。1月1日の上りと1月5日の下り以外は全て、80%を越えています。
 国際線は、12月15日に成田~マニラ線が再開しました。1月2日の成田発が100%、1月3日の成田着が86.7%(1月1日成田発・2日成田着は飛んでいない)。※1月24日追記:1月1日のマニラの管制トラブルの影響と考えられる。
 1月19日より、成田~台北(桃園)線が再開予定。

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スプリング・ジャパン
国内線 座席数 23,058席(122.0%) 旅客数 14,702人(99.3%) 利用率 63.8%(▲14.5%)
国際線 座席数 1,283席(375.2%) 旅客数 636人(451.1%) 利用率 49.6%(▲8.4%)
 国内線は、座席数は増えたが、旅客数は前年度より減少し、利用率もかなり落ちました。最高の利用率は、下りは12月29日の87.6%、上りは1月3日の84.2%。1月4日下り48.1%、5日下り34.7%と、帰宅とは逆方向になるとはいえ、全体的にやや低調だったかと思われます。 
 国際線は、南京線就航の12月30日は成田発81.4%・成田着16.7%、ハルビン線就航の1月1日は成田発92.4%・成田着31.0%、天津・ハルビン線就航の1月2日は成田発75.9%、成田着25.0%。なお、1月18日から寧波→成田便(年末年始は元々飛んでいない)、火曜日の南京→成田便は運休する(水際対策強化のため。両路線とも成田発は運航)。

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ZIP AIR TOKYO
 座席数 26,680席(184%) 旅客数 22,719人(2,872%) 利用率 85.2%(+79.7%)
 最高の利用率は、日本発は12月30日の99.4%、日本着は1月3日の82.3%。期間トータルでは日本発・着で極端な差がついていて、日本発の96.4%に対し、日本着が73.9%と、約23%もの差が付きました。日本発は1月4日(88.3%)以外は90%を越えていたのに、日本着は1月3日以外に80%を越えた日がなく、12月28・29日の日本着は60%台でした。

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 以上、相当におおざっぱだが、今年末年始の航空輸送についてまとめてみました。
 国内線はかなり復調してきていて、SKY・ADO・SNA,それにJALの一部方面では、利用者数がコロナ禍前よりも上回りました。
 国際線は正直やや困惑する結果が、各社のリリースに出ていると思いました。コロナ禍前とは全く違う。たぶん一つはっきり言えるのは、ハワイを含む北米路線を除いて、日本発の海外旅行の需要がまだまだ低調だろうと思われる事。繰り返しになるが、コロナ禍に加えて秋以降の急激なインフレに円安、さらに欧州線ではウクライナ危機が影を落とした事は、間違いないと思います。中国メインランド路線は、中国側の対コロナ政策の混乱が、データ上でもはっきり表れていると感じました。帰省でないレジャーとしての旅行は、基本的に今シーズンは海外は見送り、国内の方に回ったと考えて良いでしょう。
 国内では全国旅行支援が再開し、航空各社もかなり期待を寄せているようだが(ANA井上社長のコメントにも表れている)、「第8波」の行方は、やはり大きな懸念材料です。今月一杯は様子見、ではないか。次の大型行楽シーズンは春休みまでないが、札幌の雪まつり(今日現在では開催の方向のようだが)などのイベントは各種予定されています。その開催の行方に影響を与えなければ良いが。国際線は、特に中国メインランド路線は、コロナ禍そのものに加え、日本の対中国の水際対策強化と、昨日発表の中国側のビザ発給一時停止の対抗策発表で、相当長期間低迷が続くだろうと思います。コロナ禍前は各社とも稼ぎ頭だったが、どこまで影響を与える事になってしまうか。あとは経済問題と、ウクライナ危機の影響、でしょう。
 次回はGWです。年休の取り方ひとつで最大9連休になる曜日配列だが、それまでに、特にコロナ禍第8波がどうなっているかが、航空利用に大きな影響を与える事になるはずです。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


 JR東海は、現在の金子 慎社長が会長に、丹羽 俊介副社長が社長に就任する人事を発表しました。柘植 康英会長は相談役に就任します。いずれも4月1日から。丹羽新社長は1989(H元)年4月JR東海入社、というから、JR旅客6社では初めて、国鉄時代を経験していない社長になります(JR貨物の真貝 康一社長はみずほコーポレーション出身、2007(H19)年入社)。JR東海の当面の課題はいかにコロナ禍から立ち直るか、になるが、やはりリニア中央新幹線建設が大問題になる。整備新幹線ではないから、基本的にはJR東海自らが問題を解決しなければならない。新経営陣はこの難局にどう向き合うのか。

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