№2535 2022年度お盆休み 航空利用データ分析
3年ぶりに行動制限がなかった、今年のお盆休み。羽田空港とかお台場とかの様子を見に行く機会があったが、マスク以外はコロナ禍の前とあまり変わらず、「第7波」の真っただ中である事を感じさせませんでした。しかし一方で感染者数は全国各地で過去最多の記録を更新、沖縄県では医療体制が壊滅状態とも聞かされました。これほど「日常」と「非常」が紙一重だったのは、この3年の間でもなかった事、ではなかったろうか。航空を始めとして、どの業界も、固唾を飲んで成り行きを見守っていたのだろうと推測します。前回GWの時には「コロナ禍もウクライナ危機もきれいさっぱりなくなっていて欲しい」と結んだが、甘かったですね。
その最中の航空各社の利用状況、今回は8月6~16日の11日間が対象となりました。昨日一斉に航空各社から速報値が発表されています(ピーチはなし)。発表されたリリースから、各社の利用状況を分析してみます。
基本的には(会社によって呼び方が若干違うが)「座席数」「旅客数」「利用率」の数値のみ記します。注記以外は、コードシェア販売分の扱いは記されていません。カッコ内は前年比だが、一部はコロナ禍前、2019(R元)のデータも合わせて発表されています(下線を付けて記した)。また、「ピーク」の文言は使用せず、利用率が一番高かった日と、パーセンテージを記す形に統一します。
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全日空
国内線 座席数 1,764,892席(124.7%・87.3%) 旅客数 1,271,864人(178.0%・74.2%) 利用率 72.1%(+21.6%・▲12.7%)
国際線 座席数 166,109席(198.4%・40.8%) 旅客数 128.649人(440.7%・36.0%) 利用率77.4 %(+42.6%・▲10.4%)
2019年は「FY19」と記しているが、一般向けのリリースなのだから、普通に2019年と記すべきではないか。
国内線は、方面別の実績はまだあまり意味がないようにも思うが、中四国方面の旅客数が、去年の倍以上になっていました。沖縄方面は、3年前の8割以上にまでは回復しました。
最高の利用率は、下りは11日の89.5%、上りは16日の86.3%。上下トータルでは14日が81.8%だが、9日以前の4日間は70%に達していない。羽田=札幌・福岡・沖縄間に65便の臨時便を運航。
国際線はアジア・オセアニア(コロナ禍前に何度か書いたが、もう少し細分化できないか)及びハワイ路線の座席数が去年の倍を大幅に上回っている(ハワイ線はA380が復帰)。旅客数は、そのハワイ線は去年の8倍以上。ただこれでも、3年前の1/4強に留まっているが。アジア・オセアニアも7倍近い(北米・アジア間の接続需要が多かった、としている)。一方中国路線は、座席数・旅客数とも去年を上回っているものの、どちらも3年前の5%にも満たず、利用率も方面別では最低でした。「ロックダウン」の影響はまだ大きいか。欧州もコロナ+ウクライナで、まだ気軽に行く、という雰囲気ではないだろう。
最高の利用率は、日本発は8月6日の83.1%、日本着は16日の84.0%。全ての日で、上下トータルが70%を上回りました。
なお今回は、井上 慎一社長のコメントも付記されていました。これからも感染対策の徹底に努める、タイムセールが始まるので利用宜しく、旨記されています。
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日本航空
国内線 座席数 1,392,564席(151.3%・103.6%) 旅客数 1,012,971人(205.5%・87.1%) 利用率 72.7%(+19.2%)
国際線 座席数 179,041席(190.8%・53.1%) 旅客数 129,085人(475.5%・41.2%) 利用率 72.1%(+42.0%)
まず国内線だが、JTA・RCAも含めたグループ全体で特筆されるのは、座席数が去年はもちろん、コロナ禍前の3年前をも上回っている事ではないだろうか(北海道方面だけ若干減少)。この3年間でB777-300の退役や、アジア路線向けB777-200ERの国内線転用などがあって、保有機材の座席数の平均は、減少していると思われるのだが。
旅客数は、去年の倍以上。ここも沖縄方面が最も高い利用率となった(やや複雑…)。
最高の利用率は、下りは11日の88.4%、上りは16日の88.0%。13日が上下とも、70%に達していない。羽田=沖縄・石垣・新千歳・福岡・宮古・鹿児島・ 旭川・高知路線で、合計108便の臨時便を運航。
国際線は、ハワイ線の旅客数が去年の13倍だったそう。3年前との比較ではまだ40%弱だが。一方で中国メインランドはこちらも座席数・旅客数が共に5%に届いていない(そもそも北京・上海へは運航自体がない)し、台湾路線も10%そこそこ。香港は、座席数は5倍近く、旅客数は7倍以上だが、利用率は26.9%と低調。
最高の利用率は、日本発は7日の78.2%(6日78.1%)。日本着は16日の73.9%だが、図抜けて高かったわけでもなく、〇は記されていない。
日本トランスオーシャン航空
座席数 127,017席(132.3%・101.7%) 旅客数 78,308人(246.0%・74.1%) 利用率 61.7%(+28.5%)
琉球エアコミューター
座席数 23,648席(122.9%・118.3%) 旅客数 14,040人(146.1%・90.8%) 利用率 59.4%(+9.4%)
沖縄2社は共に、臨時便の運航はなし。利用率がやや低いのは、沖縄県内のコロナ禍の影響か。
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スカイマーク
国内線 座席数 296,475席(100.3%・103.3%) 旅客数 249,726人(153.9%・96.4%) 利用率 84.2%(+29.3%・▲6.1%)
国際線 運航なし
ここも国内線の座席数が、3年前をもわずかながら上回っている。8月4日に、期間中の羽田~新千歳路線の臨時便の運航が予告されていた(8月9~12・14・15日各1往復(2便))ので、それも反映されているかも知れない。旅客数は、3年前のレベルにかなり近づいてきました。最高の利用率は、下りが11日の92.5%、上りが14日の90.24%(15日90.21%)。上下トータルでは、6・8日以外は80%を超えました。GW時とは逆です。
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エア・ドゥ
座席数 97,921席(109.7%・103.9%) 旅客数 74,505人(156.9%・91.8%) 利用率 76.1%(+22.9%・▲10.0%)
新千歳~福岡線の就航もあってか、ここも座席数は、3年前をも上回っています。日別の利用率の高低がやや極端で、最高の利用率は、下りは11日の95.6%、前日の10日が90.5%だったが、他に13日の81.4%以外で80%を超えた日はなし。上りは14日の95.0%が最高だが、この日と、7日(80.1%)以外に80%を超えた日がありませんでした。羽田~新千歳路線で上下系73便の増便を実施。
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ソラシドエア
(ANA販売分は含まず)
座席数 106,042席(110.2%・135.2%) 旅客数 65,230人(188.4%・98.9%) 利用率 61.5%(+25.5%・▲22.6%)
羽田~那覇・長崎・鹿児島・熊本路線の臨時便の運航もあったのだろう、座席数は去年はもちろん、3年前より35%も増えている。ただ、利用率は全体的には低調だったかも知れない。全体的には去年より増加しているが、日別の利用率では、下りの11日(80.3%)以外に80%を超えた日がありませんでした(上りは14日の75.2%)。8日の上りが47.8%に留まった他、上下トータルで50%台の日が少なくない。
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スターフライヤー
(ANA販売分は含まず)
国内線 座席数 57,009席(106.0%) 旅客数 42,308人(146.2%) 利用率 74.2%(+20.4%)
国際線 運航なし
最高の利用率は、下りは10日の94.4%、上りは14日の90.4%。90%を超えたのはこの2日だけだったが、上下トータルでは全日、60%を上回りました。北九州~沖縄路線は休航中。私も乗った路線なのだが(お盆ではなかったけれど)。
別リリースで、「TIGER & BUNNY 2 スペシャルジェット」の、10月1日からの就航が発表になっています。
(「TIGER & BUNNY」はバンダイナムコピクチャーズ製作のSFアニメで、現実世界で実在するスポンサー企業のマークをメカ等に描いた事で話題になった。11年前に放映され、この10月7日より新作の配信が始まる。SFJのマークが、主人公が搭乗するメカに描きこまれる)
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フジドリームエアラインズ
座席数 75,648席(118.9%) 旅客数 54,150人(183.2%) 利用率 71.6%(+25.2%)
最高の利用率は、小牧は発が11日(82.6%)・着が16日(81.0%)、静岡は発が14日(93.8%)・着が16日(88.1%)、松本は発が13日(84.5%)・着が11日(84.9%)、神戸は発が11日(77.1%)・着が15日(73.6%)。神戸は発着共に、全日70%以上。地方同士を結ぶ路線が多いからだろうか、傾向が他社と異なる所があります。
別リリースで、空席予測に応じて運賃額が変動するタイプの運賃が、10月30日搭乗分より、「Dream フレックス」(予約変更可)と、「Dreamプライス」(予約変更不可)の2本立ての設定になると発表されています。
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IBEXエアラインズ
座席数 8,554席(88.8%) 旅客数 6,856人(109.6%) 利用率 80.1%
座席数は、去年より減少しています。ただし臨時便も、コロナ禍の影響による欠航もなし。最高の利用率は、下りは11日の89.6%、上りは16日の93.1%。
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ピーチ
利用実績についてのリリースは確認できなかった。
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ジェットスター・ジャパン
国内線 座席数 197,392席(110.7%) 旅客数 166,512人(118.8%) 利用率 84.4%(+5.8%)
国際線 運航なし
国内線の最高の利用率は、下りは11日の89.3%、上りは14日の90.1%。90%を超えたのはこの14日上りだけだが、大半の日で80%台になっています。平均的に良かった、という所か。
国際線は全便運休が続いているが、現在成田=上海・香港・台北・マニラ線、関西=マニラ線、中部=マニラ線の設定があります。
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スプリング・ジャパン
国内線 座席数 36,666席(294.4%) 旅客数 23,558人(489.2%) 利用率 64.3%(+25.6%)
国際線 座席数 882席(109.7%) 旅客数 787人(108.0%) 利用率 89.2%(▲1.4%)
8月15・16日は佐賀線の運航がなかったが、それでも座席数は前年の3倍近く、旅客数は5倍近くになりました。ただ利用率は、前年よりは大幅に上がっているが、もう一息か。最高の利用率は、下りは11日の84.0%、上りは14日の70.7%、15日が70.5%だったが、他の日は70%に届いていない。
国際線は、7・14日にハルビン線、8日に天津線を運航(南京線は現在隔週金曜日の運航で、この期間中は設定がなかった)。14日のハルビン線が、成田発100%、成田行94.4%。8日の天津線は、成田発の96.5%に対し成田行が67.8%、往復でずいぶん差が付きました。
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ZIP AIR TOKYO
座席数 30,160席(315%) 旅客数 17,936人(3180%) 利用率 59.5%(+53.6%)
今回初めて、利用実績が公表されました。利用率は60%に届いていないが、これでも+53.6%という事は、去年はどの便もほぼ空気輸送だった、という事で、辛抱強く飛ばし続けているのだう。少しは報われたろうか。最高の利用率は、日本発は11日の87.2%、日本着(海外発と記している)は16日の77.9%。期間前半の日本着は、30%台に留まっている。なお同社は現在、ソウル(仁川)・バンコク(スワンナプーム)・シンガポール・ホノルル・サンノゼ・ロサンゼルスに就航し、台北(桃園)が就航準備中。
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国内線に関しては、キャリアによって多少違うが、11日出発~14日帰宅、というパターンが一般的だったように感じられます。4日程度と短め。ちなみに3年前のお盆休みの時は、台風の影響が出たが、だいたい7~9日位はありました。曜日の並びもあるかも知れないが、やはり行動制限なしといっても「第7波」の真っただ中なので、帰省も行楽もまだ遠慮がち、という部分があったのかも知れません。なお、東北地方などの豪雨の影響は、ここでは読み取れませんでした。
国際線は、当分はホノルルや北米といったあたりが、比較的安心できる行先という事になろうか。当然コロナ禍の影響はどこにでもあるし、欧州だとウクライナ情勢や、かなり深刻なインフレが影を落とすだろう。台湾も、国際的な緊張関係が影を落としそう。それと、6月から外国人観光客の受け入れが緩和されたが、期待されたほどは回復しておらず、様々な事情で、全体的にはもうしばらく低調な状況が続くと、考えた方が良いでしょう。
次回は暮れです。甘い考えは捨てた方が良いだろうが、それでもコロナ禍は、日本国内くらいは落ち着いていて欲しい。完全になくなってはいないだろうが。国際情勢も、特にウクライナの戦争が早く終わって頂きたいし、その他もろもろの緊張状態も一切願い下げ。国の内も外も、穏やかな年の瀬を迎えられる事を願います。平和あってこその乗り物、なので。
当ブログでは直接のコメントは受け付けません。何かありましたら、引き続き本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
今日はお盆期間中の新幹線の利用についてもJR各社から発表があったが、東海道新幹線は3年前の7割弱、山陽新幹線も65%、東北方面は豪雨の影響が出て山形新幹線が52%、東北新幹線も6割弱と低調だった、という事でした。在来線も、JR東日本では、航空に左右される〔成田エクスプレス〕(2018(H30)年比23%)はともかく、豪雨の影響が出た〔いなほ〕が49%、常磐線特急が56%と、陸もまだまだ厳しいです。JR東日本も、一番利用が多かったのは下りは11日・上りは14日、という事です。
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