№2299 年鑑バスラマ2020→2021(ぽると出版)

横浜市営バス ベイサイドブルー.jpg
「年鑑バスラマ2020→2021」、先月末には刊行になりました。
 去年の「2020→2021」のときの冒頭で、「国産ハイブリッド連節バス車は、前年(2019(H31~R元)年)には導入事業者は現れなかった」と書いたが、去年は横浜市営バス「BAYSIDE BLUE」を皮切りに、導入が始まりました。

巻頭言
 今年は完全にコロナ禍一色となり、如何にバス業界が損害を被ったか、どうリカバリーすればいいのか、外部の支援はどうあるべきか、について考察と提言がなされています。
 バス業界だから、というのではないが、「基本に忠実な行動を全ての人が実行すれば、事態は好転に向かうと信じたい」という言葉は、全く同感。しつこいくらい書かせてもらうが、政治や行政の世界そのものがどうあろうと、彼らが人々にどう語り掛けようと、他国のような強制的な規制が許されない日本であれば、逆に、我が身と自由な暮らしを護るのは、最終的には我ら一人一人の自覚以外ない。その点日本は、他国に比べると、まだ自制は効いている方なのではないか?とは思うのだが。欧米では感染拡大を無視してドンチャン騒ぎを繰り広げた挙句、十万単位の死者を出している国もあるくらいなので。その点では、日本はまだ希望が持てると思うが、甘いでしょうか?
 とはいえ、バスを初めとする交通各社では、懸命に感染症対策を施して、安全性をアピールしているのに、そもそも「外出は自粛しましょう」とPRが出されていて、TVニュースでは、「〇〇の人出は、前回の緊急事態宣言より増えている」云々の報道がなされていると、これは外出自体がネガティブな行為という事になり、むろん現状は仕方がないとしても、移動のニーズがなければ成り立たない交通事業者としては、もう打つ手がない。前々回書いたように、京浜急行バスは、夜行バスからの全面撤退を始めとした、長距離バス事業の縮小を発表していて、追随する事業者も、出てくるでしょう。一般路線バスも各地で減便が相次ぎ、特に以前書いたように、深夜バスは急激に縮小しています。空港バスは航空需要が回復しないとバス会社だけではどうにもならず、貸切事業も、インバウンドを中心とした大型の団体が戻って来ないと、今後は大手クラスでも、撤退や縮小が起きる事になるのではないか。
「テレワーク」の普及で、都会へ通勤する必要がなくなったから地方へ移転する人が多いとも聞くが、日常は「巣ごもり」「おうち〇〇」、たまの遠出は感染を避けるべく、電車・バスをやめてマイカーで、となったら、地方の事業者にとっては、何一つメリットがない事になる。極端な話、激化する道路渋滞に四苦八苦しながら、空っぽのバスを走らせ続ける事になるだけだ。これをどうしたら避ける事が出来るか。
 やはりバス事業者の努力だけではとっくに限界(コロナ禍前から既にそう)で、行政の側も、必要なら支援の手を差し伸べる必要はある。ただし、ダラダラと、というわけにも行かず、「地域の人々の営みの中で、バスを初めとする公共交通はどう位置付けるつもりなのか」を、はっきりさせる必要はあります。一方で、バス事業者の側も、ここまで来たら、単に一事業者の枠の中で運行をどう確保するのか四苦八苦するだけではなく、この機に思い切って、地域ごとに枠を超えた再編成も、行われるべきではないか。路線のダイヤも、運賃制度も、徹底的な見直しが行われていいと思う。今がそのチャンス、とも言えるのではないでしょうか?

特別寄稿 地球環境保全に対して自動車ができる事

JR東日本 水素シャトルバス.jpg
 この寄稿に関しては、正直な所驚きました。タイトルと内容がほとんど一致していないように思え、どちらかといえば、「脱炭素社会」「温暖化防止」をうたい文句に、世界各地で官民挙げて繰り広げられている各種行動を、かなり疑問視しています。
 ここに書かれている事が全て本当なら、日本も世界も、正しい方向を目指しているように見えて、実は重大な誤り、そして過ちを犯しているという事になります。日本の低公害車、特にEVの開発の在り方に疑問を呈してきたバスラマ誌として、この主張、受け入れられるんですか?と思わないではない。
 しかし、確かに「再生可能クリーンエネルギー」も、実はあまり知られていない問題があるのではないか、とも気づかされました。要は、それ自体が環境に悪影響を与える部分がありはしないのか、という事でしょう。一番有望で、急速に普及しつつある太陽光発電は、そもそもパネルの原材料はどう調達するの?寿命が来た時には廃棄しなければならないが、処理はどうするの?という部分は、推進派はほとんど口にしない(少なくとも私は聞かない)。また気候以外に、ここでは記されていないが、生態系の問題もあって、工場の跡地とかならいいかも知れないが、どこかの国で砂漠にパネルを敷き詰めたら、生態系に悪影響が出たという話も、聞いた事があります(人工的に影が出来てしまったら、かえって良くないのだろう)。「温室効果ガスや放射能をまき散らすよりははるかにいいだろ?」というかもしれないが、砂漠には砂漠の、名もなき藪山にも藪山なりの生態系があり、そこに住む生物の暮らしを脅かす事になるのなら、これはこれで人間のエゴ、ではないのか?風力発電も、風車そのものだけでなく、ドイツでは海岸部の風力発電で得られた電力を送るために送電線を整備しようとしたら、大反対運動が起きたという事も、現地のニュースで見ました。クリーンエネルギーだって、万能ではない。

 温暖化防止の議論そのものにも疑問を呈しているようだが、もし、この記述の方が事実ですよ、というのなら、この記事を真っ先に読むべきは、我々バスファン・モーターファンより、むしろ「環境活動に積極的に取り組む団体」「世界各地で声を上げ始めた若者たち」などという事になるのではないか。でないと、今は政治や業界を一方的に追い詰める立場にある彼らだが、政権交代などで、自らが環境対策・温暖化防止のリーダー的な立場に立つ事になったら、途端に困った現実に直面する事になるからです(ここに示された疑問を全否定できるだけの回答を持って、政策を実行に移さなければならない)。
 とはいえ、今さらピュアディーゼルエンジンに回帰する事も、できないでしょう。ここには記述はないが、化石燃料は環境面だけでなく、近い将来の枯渇も現実味を帯びて来ている。バイオ燃料は有望なのか。JR四国バスが、先月から大栃線のアンパンマンバスで、バイオディーゼル燃料の使用を開始していると発表しているが、これに対する評価はどうであろうか。
 結局、どうすればいいの?まず、今のエネルギーや環境を巡る議論は、「何からエネルギーを得るべきか」という所で止まってしまっているように思えます。そうじゃなくて、それ以前に、エネルギー源が化石燃料だろうが、原子力だろうが、再生可能クリーンエネルギーだろうが、生み出されたエネルギーを、無意識にジャブジャブ使うライフスタイルがいつまで許されるのか?そこの部分の議論が全然なっていないのではないか。個人的にはそれ以前に、エネルギーの使い方自体が論議されなければならないと思います。必要以上に個々が好き勝手に使える状況には、たぶんもうならない。ある程度公共部門が優先されて、それから個々へ、という流れになるのではないか。そこで、バスなどの公共交通の出番、という事になるし、なるべきだろうと思います(その点で、今のコロナ禍はこの意味でも心配)。

 多少脱線するが、少し個人的な意見も書きます。先に挙げた「世界各地で声を上げ始めた若者たち」の行動に関して(筆者はこれにも疑問を抱いているようだ)、確かに若い人たちが世の中の、世界の問題に関心を持ち、発言し、行動起こす、それ自体はもちろんいい。しかしエネルギーや環境対策に関していうと、自分たちが望む、要求するレベルに近づけば近づくほど、自分たち自身の暮らしに多大な影響が出てくる事(当然、良い事ばかりではない)、ちゃんと解った上でやっているのかなあ?という疑問はあります。無論彼ら自身は言い出しっぺだから受け入れるだろうが。「重圧長大」産業のトップや、彼らにつるむ「政治屋」共をを懲らしめてやれば痛快、めでたしめでたし、と思っているのかも知れないが、これだって巡り巡って、我が身の生活や雇用などに降りかかってくる可能性も、少なからずあるはずです(エネルギー政策の転換による雇用喪失を恐れた労働者が、本来相容れないはずの大金持ちのドナルド・トランプを「救世主」とばかりに大統領に担ぎ上げたアメリカの4年間を、忘れてはいけない)。エネルギー・環境以外の分野でもそうです。偏見かも知れないけれど、どうやら「活動家」というのは老若男女問わず、自らの思想だけを物差しにして、その物差しに合わない人々を感情的に、問答無用で頭ごなしに全否定して沈黙させようとする傾向にある人種と見えます。が、それはひょっとしたら、全ての人々にとって惨い結末(特に「分断」)を生み出すかも知れない事も、少しは立ち止まって考える事も、必要ではないでしょうか?(筆者のこの論文の文末は、この事を言いたかったのかも知れない)自分の思想と相容れない存在を一方的に「恥」と侮蔑する行為が、社会を良い方向に向かわせるとは、到底思えない。

国内バスハイライト 2020
 繰り返しになってしまうが、どうしてもコロナ禍の悪影響を避けて通る事が出来ない。回送同然で走り回る高速バスとかは、見たくもない(新幹線・特急列車や旅客機もだが)。感染症防止対策は様々施されつつあり、ここには写真がないが、昨日今日乗った東急バスでは、ドライバー席の仕切りが、樹脂製のプレートに置き換えられているのを見ました(多少の経年車もそう)。最前列シートの扱いについては、事業者によって考え方の違いがあるようで、先日乗車した北関東の事業者は、左右とも最前列席を使用停止とはしていませんでした。
 一方で、なんとかあるもの、できる範囲で人に集まってもらおうとする試みも、ここに挙げられた以外でも多々ありました。去年9月の沼津市内・あわしまマリンパークの、アニメラッピング高速バスの展示も、その一つ、でしたよね?
 コロナ禍関連以外では、自動運転と、中国製を中心にしたEVの普及、が挙げられるだろうか。いよいよ、一般の旅客を乗せた自動運転実証事件が、レベルを上げてきたようです。アストロメガは総稼働数が50台になったそうで、京王バスや富士急バスあたりは、(今はともかく)効果が高いのではないかと思われます。販売が軌道に乗ってきたのだろか。だとしたら、ここでもコロナ禍は痛い。羽田などの空港バスでの普及に期待したいのだが。

国内バスカタログ 2020→2021
 国産は新型の導入はなく、中国製のEVのみ。ボルグレンの中止は、今後の連節バスや、フルフラットノンステップバスの展開に影響が出そうだ。東京都交通局は、フルフラット車のさらなる改良を模索していたようだったのだが。
 エルガ・ハイブリッドは、去年は「導入例がないのか?」と書いてしまったが、関東鉄道や東京ベイシティ交通に導入例があるようです。まだ実物を見ていないのだけれど。

海外バスカタログ 2020→2021
 ソラリスのEVは去年北欧に行った時に、オスロ中央の駅前で見かけました。
 EVは試作段階のものも含め、日本も加えてそろそろかなり普及してきているが、充電方式はパンタグラフ方式、プラグ式などいくつか併用される所があるようです(ヘルシンキがそうだったよう)そろそろ、各々の充電方式の長所・弱点みたいなものを整理して、示される時期が来ていると思う。地上充電のロケーションもまた、EV普及の在り方に関わって来るので。

1990~1993 バスラマが出会ったバス達
 私は30年前の創刊時から欠かさずバスラマ誌を購入・購読しているが、創刊号(1990(H2)年8月号 表紙ははとバスのヨーロコメットで、裏表紙は初代セレガの広告)を改めてひも解いてみると、カラーページは広告(アステローペなど)を含めても10ページ程度で、隔世の感があります。ちなみに創刊号の価格は1,200円(本体1,164円)でした。最新の183号は1,362円+消費税(なので1,498円)だから、カラーページが半分以上になった事を考えると、価格はよく抑えられている方だと思います。
 1990年代初頭、平成が始まった頃のバスがずらりと並んで圧巻だけれど、廃業した貸切事業者、廃止になった定期観光バス、走らなくなった路線も多々あって、もうこういう時代は来ないのかなあ、とも思わされました。外国車は、この時代は実用性・機能性より、フラッグシップ的な役割を持たされていた車両が大半でした(ここにはないが、旧日本急行バスがベンツを名神高速バスに導入していたが、これも何より「ベンツ」である事がウリだった)。岩見沢駅のJRバスの写真もあるが、もしここのJRバスが残っていたら、去年廃線になった札沼線の代替バスを運行する事になっていたのだろうか、などと想像もする。

 今年は、とにかくコロナ禍が収束に向かう事が、何より強く望まれます。感染者数は年末年始の頃に比べれば大幅に減少はしているものの油断はならず、首都圏の一都三県は3月7日まで完遂してしまう事になりそうです(間違っても、延長になったりしないように!)。変異種も心配だし。一方でワクチン接種が医療従事者向けに始まり、一般の人向けの接種スケジュールも公表されたので、何とか再び爆発的な感染増加を見る事無く、事が終わりに近づいて欲しいです(今年中に何もかも終わり、とはなるまいが)。そうでないと、バスに限らず公共交通は既に、どこもかしこも虫の息に近いので。業界自体、この一年で再編成も進むのかも知れない。今はそうはならなくても、種は蒔かれる事になる気もします。そんな、コロナ禍と、アフターコロナを見据えた動向が、次年度の「年鑑バスラマ2021→2022」の中心記事と、なるのでしょう。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


 JR東日本(横浜支社)と京急は共同でリリースを出し、「神奈川県の観光流動の創出に取り組む」として、共同プロモーション「JR&KEIKYU ふらっと列車旅(とれいん)」を来月からスタートさせると発表しました。共通のロゴマークも製作し(JRのE235系と、京急の1000形1890番台)、第1弾は3月、「ヨコスカネイビーバーガー」を中心に据えて宣伝を展開、4月には京浜臨海部に舞台を移す事になっています。競合関係ばかりが取り上げられる事が多い両社だが、このコロナ禍で外出、特に観光が大きく落ち込む現状では、競争とばかりは言っていられないという事です。しごくまっとうな方向性だと思います。一神奈川県民として、期待します。

《今日のニュースから》
24日 2032年オリ・パラ IOC理事会 候補地を豪ブリスベンに一本化
(れいわ新選組 木村 英子参議院議員 コロナ感染発表)
25日 エアアジア・ジャパン 破産手続き開
(緊急事態宣言解除後の対策 政府分科会提言)

 西武HDが最終赤字を800億円に下方修正だの、JALが2022(R4)年度も新卒採用を大幅縮小だの、どうも交通機関の経営に関しては、明るい話題がほぼない。大手でこれでは、中小はもっと厳しいでしょう。だから早くコロナ禍が収束してほしいのだが…。