№1961 年鑑バスラマ2018→2019(ぽると出版)
「年鑑バスラマ2018→2019」、今シーズンから1ヶ月遅く、新年になってからの刊行になりました。
今回は先に「巻頭言」から始まっています(和田編集長が書くのは、これが最後か?)
まず、バスラマ誌の創刊は1990(H2)年だからほぼ平成の歴史をなぞっていて、海外事情を伝えてきて、それが日本に反映させる事になったとしています。一方で、特に21世紀に入ってから繰り返し記されている事だが、特にノンステップバスの進化が諸外国に比べて遅れを取るようになった、メーカーの撤退(UDトラックス・富士重工・西日本車体の撤退に、日野車体・いすず車体のJBUS統合があった)で選択肢が減った事も影響していると指摘しています。
メーカーは顧客(バス事業者)や利用者の声に耳を傾けるべきとして、それは正論だろうが、レギュラー118号の京浜急行バスが、「ノンステップバスに関して、コスト増を嫌って妥協に走ってしまった」と反省しているように、要求して受け入れる側も、ある程度覚悟を決める事も必要でしょう。今はそれが東京都交通局になっているのだろう。利用者に関しては、前にもどこかで書いたが、海外に行く事があって、海外の観光バスには乗る事があっても、海外の市内バスに乗る機会はほとんどないだろう、だから日本のノンステップバスに触れても、「こんなものだろ?」と思ってしまうのではないか。となれば、逆にバスラマ誌側も、ファンや業界内部だけでなく、一般の利用者に向けても、情報発信を行う必要があるのではないかと思います。
エネルギー源に関しては、燃料電池バスはインフラと価格の面で今の所は主流にはなり得ず、EVか天然ガスか?と、次世代クリーンエネルギー車両に関しては情報が錯綜している状態、としている。なぜ欧州のバスがEV化を推進しているのか、解っていないという事か。確かに、CNGバスは日本では終わりになりそうだが、ではEVか?燃料電池か?の選択になると、事業者間で迷いがあるかも知れない。ただ、どちらにしろ高価なので、大手はまだよいだろうが、中小事業者では、自力での導入は苦しいだろう。先日宮崎を訪れた時に感じたが、宮崎交通は未だに昭和末期の車両が多数運行されているけれど、当然地方都市でも今後は脱内燃が迫られるはずで、代替はどうしよう?というのが、大きな課題として浮上してくるのではないだろうか。
なお、一方でEV(バスだけではなかろう)推進派は、リチウムイオン電池の安全性や廃棄後はどうするの?という疑問に答えなければならない、という指摘は重要だろうと思う(加えて、前シーズンにも書いたけれど、肝心のエネルギー源はどう確保するの?という部分も。特に電気は、北海道の地震で不安が露呈されたと思う)。長所も短所も、キチンと見分けられなければならない、その判断材料の開示も必要、というのもその通りだろうと思います。
(なので、特に最近欧州で行われているようである、ヒステリックなまでの環境保護運動は、その主張の根本自体は正しくても、一方的すぎて何かが足りない)
ドライバー不足はいよいよ深刻で、大都市圏でも減便が止まらないし、重大事故も起きるようになった(何しろ、私が毎日乗るバスの事業所でも起きてしまった…)が、「地位向上策は説得力がある」としているが、ここでは、その先は踏み込まれていないと感じた。給料を上げるのも、福利厚生を向上させるのも、大手はまだしも、路線を維持するだけで精一杯の地方事業者では簡単ではないし、30~40年前くらいの国鉄時代末期の経緯から、「値上げ=悪」の風潮ができあがった(確かに困るけれどね)日本では、運賃の転嫁も簡単にはできない(さすがに耐えきれなくなって、一部路線でも値上げを行う事業者も現れているが)。事業者だけ、地方行政だけではなく、総合的な対策が求められるが、何度も書くけれど、ドライバー、というよりバスそのものの、社会的な地位の向上が必要なのではないか?BRTとかLRTとか言う前に、まず今既に走っているバス(だけでなく公共交通全体)の地位を上げて、公道上でも優先的にスイスイ走れる環境の整備が必要なのではないか?そう感じるようになってきました。去年も書いたが、埼玉県の三峰神社のような、狂っているとしか思えない渋滞が日常茶飯事では(さすがに4月1日の破壊的な渋滞は堪えたようで、「白い氣守」頒布は6月以降中止、西武観光バスも通常通り走れるようになったが)、ドライバーもやる気が起きなくなっても当然だろうと思う。この点は、世論もまた考えて欲しい。いつまで不要不急なマイカーに頼っていられるのかと。
無人運転の懸念は去年も記されていたが、やはり現実を直視したら、全くやらない、というわけにもいかなくなってきていると思う。公道はまだ無理だが、既に実証実験が行われているような、一般車両が走らない空港内などのエリアでは、数年の内に実現する事になるのではないか、そう見ています。
なお、巻頭言では毎年の傾向だと思うが、車両の技術や運転といった部分が中心になり、事業者そのものの動向にはあまりテキストが割かれない。去年は大阪市営バスの民営化と、岡山の新規事業者参入による混乱があり、大阪は次のレギュラー号でやるようだが、岡山に関しては、結局の所レギュラー号でも今号でも、具体的な考察はありませんでした。両備バスは小嶋会長が前面に出て問題を訴えているようだが、外部から各Webを閲覧する限り、既存事業者の間でも一枚岩にはなっていない(宇野自動車は明らかに新規事業者寄り)。この問題、全ての面で非常に懸念される事態なので、どこかで言及して欲しかったと思います。一方で大阪は民営化の過程で先鋭的な政労の対立があったし、根本の思想が(地下鉄も含めて)「民設民営」で、この点、両備グループ(というより小嶋会長)の思想とは真逆にあるように思います。車両の問題にしろ、ドライバーの問題にしろ、色々な「対立」は、決して物事を良い方向には向かわせないので、事業体や法規制(技術だけでなく、新規参入など経営等に関する面でも)のあり方も、考察が欲しかったと思っています。
国内バスハイライト 2018
車両面では、連節バスの導入は各地で行われているが、まだ限定的。もう少しまんべんなく走れるようになるべきだが、やはり走行環境への懸念が消えない。公道より、バスターミナル。
一方でアストロメガは、そろそろ高速バスにも導入が始まってきているが、まだ3社で5台とは少ない。JRバス関東に導入された事で、今後は各社への導入にはずみがつくのか。
バスも利用者も頑張った 「2018年西日本豪雨」の鉄道代行バス
今号は歴史編がなく、昨年7月の西日本豪雨で特に被害が大きかった場所の一つ、JR呉線の代行バスについて、地元の読者のリポートが掲載されました。
呉線は乗った事があるが、瀬戸内海と山に挟まれた地形を走るので、代替の自動車道もあまり恵まれていない所はあるかと思います。クレアラインが生命線か。「災害時BRT」の原型は、東日本大震災の時の高速バスが始まりだったと思う。これは良かったが、一般道は大渋滞で(この後のカラーグラフの芸陽バスはもっと酷かったらしい)、大幅な遅延が状態化したという。根本的にはやはり、一般道でもはっきりバスなどの公共交通最優先、の考え方を浸透させるべき。大災害になると「心をひとつに」とか言うけれど、利用者のマナーが悪かった、と聞くと、「なってないじゃん」と思えてならない。これが現実…。
その後、代行輸送に当たったバスのカタログ。これでも全社ではない、というのだから、如何に多数の事業者が関わった事か。JRバスは北海道や関東からも来ていたが、やはり基本的には、関西より西か。四国・九州は少ないが、こちらも一部JR路線が不通になっていて、代行輸送をやっていたのだから、当然だろう。
国内バスカタログ 2018→2019
エルガハイブリッドは、やはりブルーリボンハイブリッドの統合モデルになりました。当然の流れだろう。
今後のラインナップ上の課題は、上に挙げたノンステップ車以外では、収容力を増した小型車、ではないだろうか?日野ポンチョは本来は利用者が多くないコミュニティ路線向けで、それより乗客が多い、例えば住宅地内循環路線とかだと、ラッシュ時の混雑に対応するのが困難で、実際にかなりギュウギュウ詰めで出て行くシーンも見ました。レギュラー号の「バス事業者訪問」でも、一部では不満も聞かれたように思います。小型だとバリアフリーと輸送力の両立はさらに難しくなりそうだが。
都営バスのフルフラットバス(2月12日に運行を再開するそう)は、どこまで他事業者に影響を与えるだろうか。表紙も飾っている、関西電力のブルーリボンEVはフラットフィールドによる改造車両だが、一般市販車両が現れる可能性は、あるでしょうか?
海外バスカタログ 2018→2019
シターロは、大分顔つきが柔らかくなりました。ここに並ぶバスは、全体的に顔つきがきつくなってきている印象がしていたので。連節バス、ひいては日本に導入される車両にも反映されるだろうか。
アメリカのバス(エクセルシアー)は、幅が2,600㎜と、日本の車両より10㎝以上広い。前シーズンの時にも書いたが、アメリカのバスそのものの事情も、もっと書いて欲しいと思う。「自動車社会」アメリカでも、大都市では公共交通がキチンと機能しているので。
EPA(経済連携協定)が先月、日本とEUの間で発効したが、この事は、日本のバス事業者がEUのメーカーのバスを購入する際にも、プラスに働くものなのだろうか?
今後のバスラマ誌の方向性としては、上でも書いたが、もう少し一般に情報提供の輪を広げて欲しい、という事ではないでしょうか。業界内部や一部ファンの間だけで、バスに関わる問題の善し悪しを語りあっても仕方がないので。お金を払って乗るのは、一般の「お客さん」なのだから。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
《今日のニュースから》
8日 海賊版サイト対策違法ダウンロード対象拡大 国会内で反対集会
9日 新潟港開港150年記念 国内5都市カレー販売
今回違法ダウンロード対策に反対の声を上げたのは、竹宮惠子氏ら漫画家などの有志だと思うが、この問題の根本にあるのは海賊版サイトへの対策で、だとしたら、出版社のサイドの意向はどうなの?対象拡大は良いの?悪いの?規制強化されたら困るのは出版社も同じはずだが、やはりジレンマは大きいと思う。
関東地方の雪は、今日は大した事にはならず、薄ら白くなっただけで済んだが、明後日がまた雪の予報が出ています。3連休なのが、不幸中の幸い?私にはそれ以前に、明日の早朝の通勤が懸念なのだが、東海道線、ちゃんと走ってください…。