№1912 バスジャパン・ハンドブックシリーズS99 小湊バス・九十九里バス(

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「バスジャパン・ハンドブックシリーズS99 小湊バス・九十九里バス」(小湊鐵道・九十九里鐵道)が、先月発売になりました。
 今回の事業者のチョイスは、少々意外でした。小湊鐵道はローカル線ながら鉄道も営業しているし、バス事業も千葉県内では大手クラス、という事になるが、やや地味な印象もありました。九十九里鐵道に至っては、社名の通り、昔は軽鉄道を運営していて、私の大先輩の方々は知っているだろうが、廃線から50年以上経っていて、残ったバス事業も、車両数が30台に満たない小規模バス事業者です。それだけに、いままでバス部門が表立って取り上げられる機会は極めて少なく、今回このような機会で事業内容を知る事ができるのは、朗報でありましょう。

◆ 小湊バス・九十九里バスの車両たち
 現在は両社とも同じデザインで、別々の会社というイメージは、外観を見る限りは、あまり感じられないでしょう。今は小湊の運行の一部を九十九里に委託しているようだし。
 九十九里鐵道の28台は、独立した事業者グループ(といっても子会社はないが)ではハンドブックシリーズでは最少です。
 小湊・九十九里別々に分析します。

小湊鐵道
1. 一般の乗合車は、小湊鐵道全体の70%近くを占めています。事業所別では、やはり千葉市にある塩田〔営〕が全体の42.86パーセントと圧倒的。これに姉ヶ崎〔車〕と木更津〔営〕を加えた北西部エリア(便宜的にこう呼称する)が、全体の64.5%と約2/3、対外的なローカルイメージとは裏腹に、都市部・工業地帯・あるいは宅地化が進んだエリアが主力になっています。
 高速車は全体の20%近くになりました。大多喜〔車〕以外の全事業所にあり(大多喜~品川間の高速路線が開通したが、大多喜〔車〕には配置がない)、一番多いのは木更津〔営〕で、42.86%が配置されています。こちらも北西部エリア配置が75.4%と全体の3/4、東京湾に面したエリアからの路線、そして需要が多い事が、車両面からも伺えます。
 貸切車は、一般的な貸切車(いわゆる「観光バス」は13台と思われ、4.1%。こちらは長南〔営〕(10台)、姉ヶ崎〔営〕(3台)に集中配置されています。逆に北西部エリアが少ないのは、競争が激しくなっているのか?
 契約貸切車は24台で全体の7.62%だが、姉ヶ崎〔車〕の9台は、車庫全体の約1/5を占めています。臨海部の工業地帯を控えているからか。

2. 平均車齢は、一般乗合車は11.65年。ただし北西部エリアと、長南〔営〕・大多喜〔車〕・白子〔車〕・東金〔営〕の南東部エリア(便宜的にこう呼称)はかなりの差があり、木更津〔営〕7.35年・姉ヶ崎〔車〕9.63年・塩田〔営〕10.04年に対し、南東部エリアは東金〔営〕17.50年・白子〔車〕15.85年・長南〔営〕15.06年・大多喜〔車〕14.88年になりました。
 2006(H18)年に一気に36台の導入があり、一般乗合車では最大勢力。うち25台が塩田〔営〕に配置されています。2005(H17)年に「ハーバーシティ」を中心とする蘇我の街開きがあって、そのためかも知れない。最高齢は1996(H8)年式、長南〔営〕と大多喜〔車〕に1台ずつ。
 高速車は4.57年。こちらは昨年2017(H29)年に17台の導入がありました。今年も編集時点で既に9台導入があり、合計26台、合わせて全体の42.62%にもなり、急速に若返っています。新路線開業が相次いだ事もあるでしょう。最高齢は長南〔営〕にいる2003(H15)年式。
(契約貸切を除いた)貸切車は5.62年。長南〔営〕に3台いる2006(H18)年式が最高齢だが、一昨年2016(H28)年と今年に2台ずつ新車の導入があり、若返りも図られています。

3.一般乗合車のノンステップ車の割合は、全体では21.66%。案外高め、かも知れない。ただ、やはり北西部エリアが圧倒的に高く、塩田〔営〕が34.41%。逆に長南〔営〕は32台中、三菱ふそうエアロミディの1台のみ。大多喜〔車〕と東金〔営〕には配置がない。
 低公害車は、今の所導入はなし。
 HMC東京(うち5台は元橫浜市営)・自家用登録からの引き継ぎ、九十九里鐵道からの移籍を除き、小湊が直接購入した中古車両はない。
 なお、大網の「季美の森」路線新設時、オリジナルカラーの車両が運用されていたのだが、その辺についての記述がありませんでした。
 長南〔営〕には、三菱ふそう+富士ボディが1台残っています(№1731で関東鉄道バスを取り上げた時、同社の1台が、「関東地方全域でも最後の1台か?」と書いてしまったが)。これから注目でしょう。既に22年走っていて、あと何年走れるか?

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 なお、今月に入って、高速用の新車両の導入を確認しています。「木更津230あ」なので、木更津〔営〕に直接導入されたものと思われるが、番号が5007に飛んでいるのは、何か意味を持たせているのだろうか。側面の行先表示の横に「intercity bus」と切り抜き文字があります。

九十九里鐵道
1.一般乗合車が15台で全体の半分以上、特急車が7台で1/4、あとは一般の貸切車と契約貸切車が分け合う形。

2.平均車齢は、乗合車は17.67年とかなり高齢化しています。1994(H6)年式が2台残っています。一番若くて2010(H22)年。特急車は9.00年。最高齢が1999(H11)年で、一番若い車両は2013(H25)年のガーラ3台。貸切車は、契約貸切車を除いた3台で13.67年。

3.一般乗合車にノンステップ車が3台あって、ノンステップ率20.00%。低公害車はなし。
 全28台中、自社生え抜きは6台だけで、他は全て他からの移籍です。大半は小湊鐵道、または自家用登録からの引き継ぎだが、こちらは、西武バスから直接移籍した車両が1台あります。

◆小湊バスのあゆみ
 まず冒頭の写真。いすゞBUが勝浦の海岸線を走る、の図のようだが、海岸の海水浴客も多いが、何より大型バスなのにお客さんが一杯だ。こういう時代はもう来ないのか。
 冒頭は、鉄道の歴史に割かれている。バスは、今は北西部エリアが事業の中心だが、元々は前身のどの事業者も、房総半島の外周から、内陸の鶴舞や大多喜などを目指す路線から始まっている。大多喜は去年も行ったところだけれど、確かにいすみ鉄道の沿線では一番大きな町(だから高速バスも開通したのだろうが)だけれど、そんなに重要な町、とは感じなかった。外周が、特に戦後に急速に発展したから、そう感じるのだろうか。
 バス事業の歴史で一番大きかったのは、やはりアクアラインの開通か。
 茂原からのHMC東京の路線を引き継いだのは記されているが、茂原からはもう一つ、落下傘路線として残っていた千葉中央バスの路線も引き継いでいるのだけれど、それは記されていない。
 写真でアレッと思ったのは、MP117系の冷房車。「ブル」の直前の試作タイプで、橫浜市営や川崎市営などで導入されているのだが、小湊は初めて見た。しかも長尺。

◆九十九里バスのあゆみ

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 こちらも母体は鉄道なので、序盤は鉄道の歴史についてテキストが割かれている。片運転台の「ジハ」は有名だけれど、何しろ半世紀以上も前に廃線になっているので、よほどの大先輩方でないと、生で見た事はないでしょう。
 元々は小湊鐵道とは直接の関係はなくて、1970年代の京成の経営状況悪化により、株式を持ち合う事になった事で、兄弟関係になった、という事か。

◆ 小湊バス・九十九里バスの路線エリア
 やはり、小湊と九十九里で分けて欲しかった。小湊は基本的にはJR内房線と外房線に囲まれたエリア、及び外房線の大網~茂原間と海に挟まれたエリア、という所でしょうか。ただ、北西部エリアと南東部エリアの繋がりは小さい。長柄町内を東西に結ぶ路線で辛うじて繋がっているだけで、東側の本数は少ない。
 北西部エリアは、路線網がかなり密。最北部は京葉線の稲毛海岸駅になり、千葉駅より北側で、ずいぶん意外な乗り入れと思います(千葉海浜交通との共同運行だが、ただし便数は少ない)。
 九十九里は、千葉~東金間が特急バス(同社では急行バスと呼称)で結ばれ、一般路線は東金が中心。総武本線の八街駅への乗り入れもあります。

◆ 終点の構図 本須賀
 九十九里鐵道から選ばれました。九十九里浜に近い場所。ちばフラワーバスの成東への路線もあり、九十九里の便数は少ない。東金発6本・本須賀発5本(平日・土休日同じ)で、現在は朝夕のみです。途中の片貝駅付近までは1時間に1本程度あるが。

◆ 初夏の房総 里歩き・街歩き
 今回の谷口礼子さんの乗り歩きは、全部南東部エリアになりました。事業の中心は北西部に移りつつあるが、やはり工業地帯のイメージが強い北西部より、南東部の方が趣きはあるから当然でしょう。
 早朝の千葉方面行高速バスのお得意様はゴルファーか。「ゴルフ場銀座」ね…。飛行機で羽田へアプローチする時にはたいてい房総半島上空を通過するが、確かにそこかしこにゴルフ場があります。バスではないけれども、私は9年前に東京湾フェリーで久里浜から金谷まで渡っているが、乗客の9割方がゴルファーと見えてビックリした記憶があります。こういう方々が、いつもバス(なり鉄道なりフェリーなり)を利用してくれると、ありがたいのだが。
 大多喜の本多忠勝、この人を主人公にした大河ドラマを作ってくれ、という運動も、去年見ました。実現するとしても、2021年以降になるが。一昨年の「真田丸」では藤岡弘、が、去年の「直虎」では高嶋政宏が演じていました。
 今回は全体的にゆったりした行程で、一般のバスは7回のみ。うちポンチョが2台・5回で、あとの2台は元HMC(←橫浜市営)。茂原から大多喜への路線も、旧HMC東京か。
 あじさい屋敷のあじさいはかなり見事、のようだけれど、白黒ではやはり迫力が…。S92の奈良交通の時にも書いた(桜がどこもきれいだ、と記されていた)が、現状でカラーページを増やすのは難しそうだから、巻頭のバスのカラーグラフを整理して(小湊も九十九里も、今は同じ色だし)、その分予告編的に風景写真を出してくれたら、ありがたい。

 小湊鐵道のバスは何度も見かけて写真も撮って、本体にもアップしているけれど、正直実際に乗った事はほとんどない(のはスミマセン)。なのであまり偉そうな事は書けないけれど、社名とか見た目のカラーリング、あるいは鉄道(キハ200形の代替、いつやるんだろう…?)のイメージからローカル色が非常に濃いように思えたが、どうしてどうして、結構近代的な面も、多々見られる様に感じました。千葉市内では通勤輸送も活発であるようだし。
 ただ、同じ事業者なのに、北西部エリアと南東部エリアの差が大きすぎるように感じます。沿線のロケーションの違い、というのは当然反映されるのだが。車両面でも、排ガス規制の違いがあるにしても、やや差がありすぎ。
 営業の面で、特にPASMOは今の所南東部エリアには導入されていないが、JR線が千葉のほぼ全線にSuicaを導入しているし(久留里線だけ未導入)、バスも日東交通に続いて鴨川日東バスが、高速に続いて一般の路線にもPASMOを導入しました。いずれ館山日東バスも続くでしょう。となると、小湊の南東部エリアも、いずれは導入をする事になるのではないか。ともあれ南東部エリアは、当面は路線・便数の維持が課題となるでしょう。
 高速バスはバス事業の柱となったが、当面は現状のまま、アクアラインを経由して東京や神奈川へ行く路線が中心になるのか。大宮への路線は利用状況が注目される。それより遠くとなると、このエリアだけで発着となると、集客面でどうだろう?まして名古屋とか大阪あたりまで行くような夜行は、少々考えづらい。千葉市内や都内、橫浜や川崎でも乗降を扱って、なら考えられなくもないが、そのためには京成・京急など他事業者の協力も欠かせない。やはり現状の路線網のまま、ダイヤなどの充実を図る方向になるのではないか。
 九十九里は小規模だし、東金中心のロケーションが、やや中途半端、と言えなくもない(電車で東京に行くには大網での乗換が必要)。千葉への急行バスは期待がかかるが、こちらも現状をいかに維持していくかが課題となるか。小湊や、母体が同じ事業者でエリアも一部被るちばフラワーバスとの連携も、場合によっては必要になるでしょう。東京への高速バスの可能性はないか?
 最後に、小湊と九十九里、この両社の合併の可能性はないのでしょうか?

 次回刊は北海道中央バスと予告されています。北海道のバスはJR北海道→JHBと函館バスが過去のシリーズで取り上げられているが、中央バスは初です。北海道では最大手なので、大いに期待です。
(S100となるが、ハンドブックシリーズは初期に欠番が多いので、これで100冊目、ではない)
 さらにその次は京阪バスが予告されています。シリーズ17とR71で取り上げられているが、R71は№351で取り上げました(ちょうど8年前の今日です)。当ブログがスタートしてから2回目、になるのは初です。京阪も大阪府と京都府・滋賀県で差が大きい事業者でした。今はどうなっているのでしょうか。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。


 山陽本線が今日、豪雨被害から99日目にして、ようやく全線で再開しました。三原~白市間が今月1日に再開していたのに、柳井~櫛ヶ浜間は先日の台風24号で、再び不通になっていました。しばらくは土休日も平日ダイヤとなり、快速〔シティライナー〕は取りやめのまま。
 ドイツのICE-3が火災事故を起こしました。犠牲者が出なかったのは幸いだったが、2両が完全に丸焼けになってしまいました。電気系統のトラブルから起きているらしい。原因の究明が待たれるが、日本のニュース報道では「警察が調べる」と言っていた。ドイツにはNTSBのような組織はないのか?そんな事はないと思うが。

《今日のニュースから》
12日 ジャカルタアジアパラ大会 ゴールボール 日本女子金メダル
13日 九州電力 「出力制御」実施