№1905 バスラマスペシャル13 30周年を迎えたJRバス
今年4月1日、バス事業者としてのJRバスが発足して、30年が経ちました。
既にその前年、国鉄が分割民営化され、バス部門も民営のJRバスとしてスタートしたが、この時点では全社、旅客鉄道のバス部門の位置づけにありました。ただ、本州については、翌年のバス分社は規定路線にあり、その通り、5つのJRのバス専門事業者が生まれました。
その後、残る「三島会社」のバス部門も順次分社され、今の体制ができあがっています。
今号はいつものレギュラー号より厚いし、巻末を除いて全部カラーページなので、力は入っているなあというのが第一印象。
各社の規模に応じてページ数は異なり、最多は関東の15ページ、最少は東海の9ページ。いずれも担当者のコメントがあり、走行写真や過去写真、そして主な現役車両のアルバムの構成は同じ。
当然地域によって差があるし、営業政策によっても違いは出てくるが、おおざっぱな傾向としては、
1.高速バスへのシフトが進む
2.一般路線は急速に縮小
3.国鉄時代にはなかったような業務への進出(幼稚園バス、とか)
というのは、ある程度共通でしょう。
それを踏まえて各社を見ていくと…。
北海道
えりもの観光客が足が遠のいているのは、日高線が不便、というより、今は日高線の運行自体が止まり、代行バスの時間が掛かってしまっている事が一因ではないか?(苫小牧を朝出ても、様似着は昼になってしまう)。札幌直行の高速バスは、日高地域発が朝、札幌発が夕方でと地元住民向けで、観光には便利とは言いがたい。前にもどこかで書いたが、夏休みシーズンくらい、帯広駅・帯広空港~えりも間の直通バスの運行も検討されて良いのではないかと思う。
西日本豪雨の代行バスに、北海道まで応援とはやや驚き。特にドライバーは長期の駐在でご苦労だと思う。
JR北海道グループ全体に言えるようだが、なぜ「JR」でなく「JHB」となったのか。この点は少し説明が欲しかった。
北海道は唯一、道路で他地域と繋がっていない事もあって、やや独自の展開。高速バスは既に中央バスや北都交通が路線をかなり密に延ばしているし、札幌一極集中の上、札幌以外の大都市に拠点がないため、今後の大規模な展開はあまり考えにくい。札幌中心の一般路線がかなりのウェイトを占める事になり続けるのだろうか。
車両面では、深名線に札幌地域からの一般車が転用されていたのは、やや驚きだった(道北バスへの委託が行われているはずだが、いっさい記されていない)。旧札幌市営バスは全滅。もう14年経ったから…。
東北
5月に乗った〔ドリーム鳥海〕から撤退とは、実は初めて知りました。「乗客が減少傾向」という事だったが、〔あけぼの〕など鉄道の夜行がなくなって久しいし、由利本荘は旧ツアー組の夜行路線はないので(青森や秋田は激戦区のようだが)、沿線の人口が減っている影響が出ているのだろうか?車両は秋田、ドライバーは交代前・交代後、共に福島なので、運用上問題もあったのだろう。運行開始時点は象潟に営業所があり、ここが受け持ちだったはずで、この時点ではうまくやれていたのだろうが。
(10月からは羽後交通単独となるが、同社としてはどうなのだろう?収入は全部同社のものにはなるけれど、夜行バスを運行できるドライバーを、単純計算で倍に増やさなければならず、うまく確保できるのだろうか?今後東京側にパートナーを探す事もあるのだろうか?)
十和田湖への路線は、八戸からの〔おいらせ〕はスタートしたが、全体的に(JR以外も含めて)縮小傾向にあるのが残念。盛岡からの高速便まで運行されていた事もあったのに。
車両面では、新幹線の二次アクセスを相当意識しているだろうと思われる事が、カラーからも伺えます。
関東
〔ドリーム号〕は高級指向に向かっていて、一般の〔ドリーム号〕は苦戦気味との事。〔青春ドリーム号〕はどうなのだろうか。
アストロメガは〔ドリーム号〕が本命になるとしているが、昼行路線への導入も、積極的に行われても良いのではないか。東京駅で見ていると、特に鹿島神宮へ行く路線は、休日の午後~夕方は慢性的に行列が長くて、こういう路線に収容力が多い車両が向くと思われる。成田空港への廉価路線への導入もあり得るのではないか。
一般路線は、まだ縮小傾向にある地域もあるようだが、とりあえず現状のエリアは維持されるもようでこの点では何より、だろうか。
車両面では、トヨタハイエースの導入が、国鉄時代には到底あり得ない事だが、車種は、関東は「0」か。中古導入中心ではあるが、ノンステップ車が増えてきているよう。
東海
一般路線がなくなって久しい。国鉄バス発祥の路線もあったのに。瀬戸くらいは残せなかったかという感はあります。
車両面では、他のJRバスはいすゞが中心になりつつあるように見えるところ、ここは三菱ふそうと日野で全て。エアロキングは残っているが、SHDはもうないのか。
西日本
まず、大阪駅北口の新バスターミナルについて、何一つ触れられていないのはどうしてだろう?代表取締役のコメントにもないし、画像もない。東京駅八重洲口と同じく、西日本JRバス、ひいてはJRバス全体の、30年における重要なできごとの一つ、のはずなのに。
西日本は一時期「ツバメ」のマークをやめ、一般路線車ではフロントに独自のエンブレムを掲げていた時期があった。今は再びツバメマークが付いているものの、最近はツバメに代えてマスコットキャラクターを描いている車両もあって、方向性が一定していない気がする。大阪なので、「反東京」の雰囲気も、どこかにあったりするのだろうか?
車両面では、高速車にダブルデッカーがあるが、いずれアストロメガ導入もあるのだろうか。アストロメガは今の所関東の事業者のみの導入で、関西初、という事はありうるだろうか。
中国
西日本豪雨の真っ只中で、通常と違う部分も多々あるだろうが。
広島を抱えているので、観光需要は好調そうだ。貸切は、修学旅行の利用はどの程度あるだろうか。
車体の裾に書かれている社名が「JRバス中国」なのは、どうしてなのだろうか。同じJR西日本から派生した事業者ながら、車体のデザインは大分違って、国鉄時代末期に採用されたデザインを受け継いでいて、関東や東海に近い。
車両面では、高速・貸切・乗合とも、現行はほとんどがいすゞで、それ以外は合計で59台しかいない。全体の1/4以下。その中にトヨタがあるが、こちらの3桁目は「9」だ。
子会社の西日本バスネットサービスとは、どのような会社なのか、言及がなかった。光市で運行されているようだが。
四国
大栃線は昨年乗ったばかりだが、「ドキンちゃん」は転属していたのか。こういうの、メインキャラクターが揃っていた方が、本当は良いのだが。去年ミュージアムまで乗った時は家族連れの乗車が多くていいなあと思っていたのだが。10月1日から3往復は実良布折返しに短縮される。本当はミュージアムの前まで入れれば良いと思うのだが、そういう場所がなさそうだ。
四国はJRバスで唯一、貸切から完全撤退したが、他事業者との競争の激化もあるだろうけれど、四国は新幹線も国際空港もなく、外部からの旅客の入り込みが少ないだろうと思われるのも、ウィークポイントになったのではないだろうか。民営化直後には香川の貸切事業者の買収もあって、期待の分野と思っていたのだろうが。
運転競技会では整備技術の知識が不足しているのが解った、整備部門がないから、と言っていたが、整備は全部外注なのか?
車両面では、ここでは三菱ふそうと日野が半々くらいか。今はいすゞがなくなっている。いすゞがないのは、ここと東海。最近の車両は、社名表記は「JR」の2文字をあまり使わず、「ジェイアール四国バス」のフル標記だし、JRマークも使わなくなってきている。
九州
嬉野温泉は新幹線開業でバスへの影響が心配、とのコメントがあったが、フリーゲージトレイン導入の断念で、開業は遅れるのではないか?不動山までテクテク歩いて行ったのは、もう14年前か。「いつまでJR九州バスとして走ってくれるのだろうか」と思ったものだが、特に土休日は減便されている物の(休日の不動山行は1本のみになった)、今の所は維持されているのは何より。
〔パシフィックライナー〕は、臼三線撤退以来8年振りに大分県を走るJR九州バスという事になったが、6往復中の1往復しか担当がないし、〔ひむか〕は今月一杯でJRは撤退。
九州は貸切が好調、過ぎて、ドライバー不足で苦労しているとの事。福岡発着のインバウンドが多いのではないか。去年太宰府へ行って、実感した事です。
「ななつ星バス」は、本当は昼間の写真を見たかったが、稼働中でキャッチ出来なかったのかも知れません。残念。
車両面ではさすがに九州、という事か、西工ボディの車両が比較的多い。「SHDは夜行の標準仕様」としているようだが、本州行の夜行バスはもうないし、比較的距離が短い割にはおごっているなあ、の印象。
以上、簡単ながらJRバス各社の簡単な印象を記してみました。中心となった高速車は、エアロキングやアストロメガはあるが、SHDはかなり減りました。
JRバスの車両称号は、民営化・分社後多少変わってきている所はあるが、基本線は国鉄時代を踏襲していて、鉄道のJR四国のように根底から変えた社はない。ただ、関東・中国にトヨタハイエースがあるが、国鉄時代ではトヨタは「3」だったが、両社ともこの数字は使っていない。昔はトヨタも大型ディーゼルバスを製造していたからこの番号が用意されていたのだが(国鉄時代にトヨタ車の導入はあったのだろうか?)、それとワゴンは違う、という事だろうか。
巻末に在籍車両一覧があるが、それも大いに役立つけれど、資料的な観点では、各社毎の毎年の利用状況や収支を記したもの、それと運行拠点や一般乗合の路線を記した図が、やはり欲しかった。また、年表があってもよかった。
全体的にいうと、これでも通常号より増ページなので仕方ないかも知れないが、やや物足りなさも感じました。これも母体が全国組織でボリュームが大きい、という事なのだろうが。カラーグラフは、「走る道」と「アーカイブス」がごっちゃになっている印象もあって、はっきり分けた方が良かった。一部に国鉄時代の写真もあったが、この号に限ってはいらなかったと思う。それより、JRになってから(も)走った、特徴的な車両の写真を並べた方が良かった。JR北海道で、開拓の村路線で走ったボンネットバス(実際に乗った事があるが、すごい乗り心地だった)とか、日本一周ツアー、JRバス関東の草津温泉や塩原温泉で見られたオリジナルカラー車、鉄道線路跡を転用した専用道を走っていた五新線、高速道載せ替え前の〔なんごく〕、他事業者と共通カラーだった〔ONライナー〕や〔フェニックス〕など。歴史を振り返る、という点でも。
最後に和田編集長が、JRバスと日本の社会をリンクさせた形で、30年を振り返っています。JRバスから多少なれるが、現状の「地方創生」に疑問を呈していて(これはVol.169 事業者訪問・四国交通でも投げかけていた事だ)いるが、繰り返しになるが、それは我々のライフスタイルそのものにも関わってくる事でしょう。いつまでマイカー依存を続けるのか、という事。現自民党政権の政策への批判、とも受け取れるが、では政権が交代したら180°変われるのか、といったら、8年前の民主党政権下で行われた高速道路無料化の結果を見たら、正直疑問も感じます(あれで、特にJR四国バスがかなりの悪影響を被ったとも聞いている)。どうも旧民主党は、中央で実験を握ったら、地方はどうでもよい、と考えている節があったので。
あと、未だに「メガライナー」(上部にモノクロ写真があるが、カラーグラビアで出てくると思っていた)のような特大車、連接バスへの期待があって、JRバス各社に導入への期待を掛けているようだが、これも繰り返しになるけれど、法ではなく、物理的な面で、導入は困難ではないか。大きく道路面積を専有する車両は、道路条件が欧米などより良くない日本では向かないのではないか。特大車を安全に運行できるドライバーの養成も問題でしょう(ただでさえドライバー不足が深刻になっている現像では、なおさら)。アストロメガくらいが適切ではないか。
期待するとしたら、合同の競技会開催に見られる様な、安全対策の強化・充実策と、その根底にあるポリシーを、JRの外のバス業界全体に広げる事ではないか。二度と関越・軽井沢のような惨事を繰り返さないためにも。
今後のJRバス各社はどこへ行くのか。一般乗合事業者が高速中心に転換するという、業界でもあまり例がない方向性に向かう各社だが、札幌や広島などを除いて、一般路線に残念ながら伸び代があまり期待できないのも事実だろうから、今後もその流れは変わらないでしょう。ただ、高速路線も〔ドリーム鳥海〕や〔ひむか〕撤退に見られるように、需要と供給を見極めながら、取捨選択する方向にはなるだろう。JRに限らないが、昼行で5時間程度、夜行でも10時間程度が限度になるのではないかと思え、これを超えるような路線は、利用状況にもよるが、見直しが進められる事になるだろうと思われます。ドライバーの確保の面でも。
それと、JR以外の事業者の関係はどうなるか。民営化直前の中央道の申請で旧国鉄と京王などで対立があったし、最近ではJR九州バスが一時〔フェニックス〕から離脱して独自に高速便を運行した事もありました。北海道中央・京王・名鉄・阪急・西鉄など有力高速バス事業者との関係のあり方(路線・ダイヤの他、予約システム構築やバスターミナルなど)も、今後の検討課題ではないでしょうか。先鋭的な対立だけにはなってもらいたくない。今は落ち着いているようではあるが。
一般路線は、とにかく残された路線の現状維持を望みたいが、JR四国は、存続が厳しくなったかも知れない。新車のレインボーⅡにアンパンマンの装飾まで施すくらいだからしばらく安泰と思ったのに、この程度の規模(東海の末期より小さい)では、いずれ民営譲渡(伊予鉄・とさでん)の可能性もあるだろう。一方で京都や鹿児島あたりは、やりようによっては伸びが見込めるような気もします。知恵を絞って、存続を目指して欲しいと願う。
協調しつつ、結局は別々の会社になっている以上は、JRバス同士の競争もあるだろうと思うが、ともあれ競うところは競いつつ、基本的には営業の面でも協調路線を築いて(JRバスに限らず)、次の30年で(各地域の)バス業界のリーダーとして発展していく事が望まれます。
なお、国鉄バス時代のツバメマークは、国鉄在籍の工業デザイナー・黒岩保美氏が、元々は特急〔つばめ〕のヘッドマーク用として描いたものがボツになり、これが転用されたもの、だそうです。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
「さんふらわあだいせつ」火災事故の報告書が今日、発表されました。発生から3年以上もかかっていて、何しろ近年に日本では最大の船舶火災事故だけに、調査がかなり難航した事が伺えます。直接の原因はトラックの冷凍機の配線がショートしたと考えられるが、特定はできなかったとの事。それ以上に、消火や脱出の手順に不手際があって、実践的な訓練が不足していたのではないか、としています。
亡くなられた二等航海士の方には改めてお悔やみを申し上げるが、このくらいの規模で収まったのはまだ運もあったと言えます。今後二度と同じような火災事故が起きない事を望みます。
《今日のニュースから》
26日 仮想通貨流出 テックビューロ 3度目の業務改善命令
27日 JR東日本・トヨタ 水素利用交通システム構築へ連携発表
JR東日本は品川再開発地区(新駅工事中)で水素ステーションを整備し、路線バスに燃料電池車を導入するほか、燃料電池で走る鉄道車両の開発も行うとの事。実は、ドイツでは先日、燃料電池を使用した列車の営業運行が始まったそうです。バスでは既に都営で走り出して、来年には京急バスも導入する事になっている日本だが、鉄道車両では、ドイツに追い付く事ができるでしょうか。
広島東洋カープの3連覇、おめでとうございます。次は日本一。去年はクライマックスシリーズで敗退してしまっているし。あとは、サンフレッチェ広島がこのまま逃げ切ってJリーグVのアベック優勝なら、豪雨の被害が大きかった広島の方々に、さらに元気を与えてくれるのではないでしょうか。
また台風か。24号が近づいています。速度によっては、30日の沖縄県知事選挙に影響を与えるかも知れない。既に竹富島では繰り上げ投票をやったようだし。