№1810 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 18.近鉄奈良線 近鉄奈良駅<後>
近鉄奈良駅の時刻表、後半は21世紀に入ってからの時刻を回顧します。奈良線と阪神なんば線の相互直通運転開始が最大のイベントになるが、一方で近鉄全体でダイヤが減量の傾向になり、特に京都線では大きな影響が出てきます。
ところで、2000年改正で快速急行が新大宮に停車するようになって以降、ダイヤ改正毎に準急・普通の改廃が頻繁になるが、需要動向もあるだろうが、大和西大寺駅で平面交差する京都・橿原線とのダイヤの調整、あるいは運用の都合(西大寺で乗り換えになる、逆に直通になる、など)に左右される面が大きいのではないかと思います。一部時間帯、列車を除けば、あまり大げさに気にする必要はないかと思います。上位級の列車を中心に検証します。
2001(H13)年3月22日改正では、奈良駅間系では小修正程度か。大阪線で、朝ラッシュ時の減便が行なわれています。
2002(H14)年3月20日改正では、京都線の特急が全列車、丹波橋に停車になりました。京阪との接続駅。また京都発夜間の特急が、追加で高の原にも停車しています。
奈良線では、土休日8時台の快速急行1本を急行に変更。
2003(H15)年3月6日改正
結局京都線の快速急行は短命に終わり、今改正で急行に格下げとなって、京都線内では急行は日中毎時6本(うち2本は京都市営地下鉄直通)運転になっています。
特急車両の運用効率の向上を図るという事なのか、奈良線特急の一部で21000系「アーバンライナー」、23000系「伊勢志摩ライナー」の運用が始まりました(21020系「アーバンライナーnext」がデビューしたが、当時は別運用で、奈良線には入らない)。京都線では夜間にも「伊勢志摩ライナー」運用があります。奈良→京都→橿原神宮前→京都→奈良と運用されます。
2004(H16)年3月18日改正
奈良線では、日中のみ運行だった急行が、夜間も一部快速急行を建て替える形で運転時間帯を延長しました。
特急が平日の8時台で1本が増発になりました。アーバンライナー運用。アーバンライナー、伊勢志摩ライナーは土休日でも運用数が増えています。一方で京都線の特急は平日の1本が削減になりました。
2005(H17)年3月25日改正では、奈良駅関係は大きな変化はなし。奈良発の平日の伊勢志摩ライナー運用がなくなりました(奈良行は深夜に1本あり)。同日開幕の「愛・地球博」対応で、大阪線特急の増発が行なわれています。
2006(H18)年3月21日改正
ダイヤ減量の波は奈良線にも及び、新たに区間準急を設定。東花園~奈良間が各駅停車となり、東生駒折返しの普通は、東花園折返しに短縮。同時に準急も東花園が停車駅となり、基本的に普通と相互に接続になります。
京都線では、平日朝方の特急にアーバンライナーが運用されるようになりました。京都まで1往復した後、難波へ向かう運用となっていたようです。
この直後の3月27日、けいはんな線・生駒~学研奈良登美ヶ丘間が開業しました。
2007(H19)年3月22日改正では、深夜の準急2本を区間準急に変更。
2008(H20)年3月17日改正では、奈良線で夜間に特急を増発。難波発23時35分発は奈良着が0時10分となり、近鉄では初めて、0時を過ぎて運行される定期特急が設定される事になりました。
2009(H21)年3月20日改正
奈良線と阪神の相互直通運転が始まりました。
難波~西九条間で建設されていた阪神西大阪線の延伸線が開業、難波で近鉄線と接続し、相互直通運転を行なうものです。阪神西大阪線は、新線区間も含めて阪神なんば線と改称しました。
直通運転を行なうのは、快速急行・区間準急・準急・普通の一部で、急行は行なわない(ただし、特急共々、折返しの回送で桜川まで入線する事あり)。快速急行はさらに阪神本線の三宮まで直通します。
この時点では、平日の日中は快速急行も、阪神なんば線内は各駅停車でした。
相互乗り入れでは阪神車両も奈良まで乗り入れるが、近鉄の20m級4ドアに対して、阪神は18m級3ドアと規格が大きく異なるのが、特に通勤電車を使用した相互直通運転では異例です。
奈良線内の20分サイクルは変わらないが、土休日は快速急行と急行が入れ替わっています。阪神線内のダイヤが関わっているのでしょうか。
この他、夜間に特急を増発。
京都線は大きくは変わっていないが、アーバンライナー運用はなくなりました。新田辺行最終が、平日のみ奈良からの直通になっています。
この改正から、近鉄難波→大阪難波、上本町→大阪上本町と改称しています。
4月1日、新特急車22600系「ACE」がデビューしました。
2010(H22)年3月19日改正では、京都線の早朝の急行が削減されています。
この年は平安遷都1300年祭が行なわれ、関連して奈良駅と大和西大寺駅が改装されています。
この年、近鉄では2012(H24)年度に、全線規模で大幅な列車削減を伴うダイヤ改正が行なわれると噂されていました。
2011(H23)年3月16日改正では、南大阪線系統でそれを先取りした削減などはあったが、奈良駅に関しては大きな変化は見られなかった。奈良線では、下り特急の増発が行なわれています。
2012年3月20日改正
全線規模で大幅な減量(全体で10%程度とも言われる)が行なわれた改正となりました。
京都線が一番きつかったとおもわれるが、日中の特急が毎時4→3本に削減されました。京伊特急が大幅に削減されています。奈良駅発着はほぼ変わらないが、日中の2本中1本(奈良は毎時35分発)は、大和西大寺~京都間で橿原神宮前発着との併結運転になっています。
関連して「伊勢志摩ライナー」運用の特急が変更になりました。
また、朝方の上りが高の原に新規停車しています。
急行も日中は毎時6→4本、終日の本数ベースでは13~14%と、大幅な削減。京都市営地下鉄直通急行も、1時間に1本の運行になりました。
奈良線は、自社線内は大きくは変わらず(大和西大寺始発大阪難波行特急を増発)。阪神線内で変更があり、快速急行は尼崎発着の一部が三宮まで延長されたほか、平日日中も、西九条~尼崎間がノンストップになりました。代わって区間準急が尼崎まで延長されています。
(土休日朝方に新開地始発列車が設定になった)
この他、他線区でも種別統合などを伴った減量が行なわれたほか、名阪ノンストップ特急は全列車津停車になりました。
これより前、大阪・名古屋~伊勢・志摩間新型観光特急が2013(H25)年春デビュー、とアナウンスがありました。
2013(H25)年3月17日改正では、その新型観光特急「しまかぜ」50000系が、大阪難波・名古屋~賢島間にデビューしました(運行開始は3月21日)。奈良駅関係は、修正程度。
ここまで規模の違いはあっても、毎年3月には必ずダイヤ改正が行なわれてきたが、2014(H16)年は3月には実施されず、9月21日の実施となりました。
「しまかぜ」が京都~賢島間でも運行を開始(10月10日~)。奈良駅関係では、京都行特急の「伊勢志摩ライナー」運用が、平日は1往復増えました。京都まで往復した後、大阪難波行になります。
特急の高の原停車時間帯が拡大しました。
(2014(H26)年4月1日、阪神の三宮が神戸三宮と改称)
さらに、2015(H27)年は結局、ダイヤ改正を行ないませんでした。
2016(H28)年3月19日改正
現在使用されているダイヤです。
奈良線の初電が準急→区間準急に変更になった他、平日夜間の快速急行の増発、区間延長が行なわれています。
(阪神発では、阪神線内は快速急行→大阪難波または尼崎からは普通となる列車がある)。
昨2017(H29)年は、ダイヤ改正が行なわれませんでした。
2018(H30)年3月17日改正
最後に、来月行なわれる、2年振りのダイヤ改正です。全線時刻表の発売はまだだが、各駅の時刻表がWebサイト上にUPされたので、そこから作成してみました。
京都線は、特急が再び毎時4本運転になり、京都~奈良間と京都~橿原神宮前間を交互に運行する形態になります。
急行は時刻が変更になります。京都市営地下鉄直通の時刻も変わります。
奈良線は時刻の一部修正程度で、大きくパターンを変えるものにはなっていません。阪神直通も現状維持(阪神はダイヤ改正を行なわない)。
以上、簡単ながら、1987(S62)年以降の近鉄奈良駅のダイヤから、主な改正ダイヤをピックアップして回顧してみました。まだまだ筆が回らなかった部分もあったと思います。
近鉄全体の流れとしては、1990年代前半は「アーバンライナー」「伊勢志摩ライナー」のデビュー、志摩スペイン村オープンなど活気があったが、以降は右肩下がりの傾向となり、特に2010年代に入って、大幅な減量ダイヤが相次ぐようになりました。
その中で奈良線は、快速急行の新大宮停車や区間準急の設定で列車が統合される動きはあったが、やはり近鉄一の通勤線区であるので、他線区ほどの落ち込みはない。2009(H21)年の阪神との相互直通運転のスタートも、奈良線全体に活気を与えるものとなったと思います。
一方の京都線は、次の改正で特急の復便はあるものの、一般列車は2012(H24)年の減便を引き続き引きずる事になりそうです。単純な沿線の人口減なのか、JR学研都市線(片町線)や奈良線のダイヤの充実による転移、あるいは京阪奈自動車道の開通なども影響しているのか、一般列車はもうしばらく停滞が続くのでしょうか。
それを如実に表しているのが、通勤車の新造がもう10年も無い事。2008(H20)年8月の9830Fが最後になっています。他の大手私鉄ではない事。従って在来車両の老朽化もかなり進んでいるはずだが、ダイヤの減量により、代替車両を新造しないで単純に廃車を推進、という流れになっているかと思います。
ただ、奈良線に限ると、今後阪神直通の増強(特に快速急行)が求められる場面も来るかと思われるが、現状の旧式化して、阪神直通に対応できない車両が大半、という状況では対応できないだろう。近鉄で新造が途絶えた10年の間、他私鉄もJRでは、技術の進展により、次世代の車両が相次いでデビューしています。もはや「シリーズ21」でさえ遅れをとってしまっているかも知れない。
次の改正でも大阪線や名古屋線ではさらに減量が進みそうで、減車という方向は続くのかも知れないが、そろそろ近鉄でも、「シリーズ21」に代わる次世代の通勤車の新造が検討されるべきではないでしょうか。特に奈良線では、未だ長編成列車による大量輸送が行なわれている、近鉄では希有になってしまった通勤の幹線なので、イメージアップの点でも(阪神はほとんどが近年の新造車両だし)、新型通勤車のデビューが強く望まれると思います。
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