№1797 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 17.名鉄犬山線 犬山<前>

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 名鉄犬山線の犬山駅は、愛知県北部の犬山市にある、名鉄の主要駅の一つです。広見線と小牧線を分岐し、検車区も併設する、名鉄路線網の北のハブとしても機能しています。
 今回は、この犬山駅の時刻の変遷を、名鉄が刊行する時刻表を元にたどってみようと思います。別に今年が「戌年」だからここを選んだ、という訳ではありません。念のため。

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1987(S62)年2月12日改正(Vol.4 以下、カッコ内は名鉄時刻表)
 手持ちの時刻表で一番古いのは、この改正ダイヤを収録したVol.4です。31年も前になりました。
 全体的に30分サイクルでダイヤが回っていて、この基本線は今も変わりません。当時は、土曜日は平日と同じダイヤでした。
 当時の名鉄は特急急行普通に加えて高速準急の種別があったが、高速は名古屋本線だけの種別なので、犬山はあまり関係ありません。準急も犬山線は岩倉まで。
 特急は、当時は全車指定席でした。
 犬山線は、日中は1時間あたり特急2本・急行4本・普通2本の設定。常滑線(河和線・知多新線)との結びつきが強く、特急・は基本的に新鵜沼~河和または内海間、急行は新岐阜~犬山~河和または内海間、及び新可児(御嵩・明智)~常滑間(広見線内は普通)で運行されています。
 また、観光特急「パノラマDX」(8800系)に、高山本線直通DC特急〔北アルプス〕もありました。〔北アルプス〕は、当時は神宮前~富山間の運行でした。
 平日の朝ラッシュ時は運行形態が変則的で、岩倉で種別が変わる列車もあり、急行では扶桑に特別停車する列車が3本だけありました。一方で特急1本は岩倉を通過していました。
 急行は平日・休日とも日中のみ、栄生に特別停車していました。
 当時の名鉄は観光輸送も盛んで、犬山市と近郊には犬山遊園やモンキーパーク、リトルワールド、明治村、日本ライン下りなどがあり、休日には広見線直通の特急も設定されていました。ここでは記さなかったが(この後も同じ)、不定期の特急の設定も見られます。
 下りは新鵜沼から先は各務原線となるが、日中は急行普通が共に30分間隔でした。急行は河和または内海発着。上りのみ三柿野で追い抜きがあります。
 広見線は、普通電車約15分毎。2本に1本(主に御嵩・明智行)は、常滑始発の犬山線急行が種別を変更して直通します。当時は新可児~明智間に学校前駅があったが、日中の半分は通過でした。平日・休日とも、夕方に特急が1本あります。
 小牧線は当時は上飯田が終点、犬山~上飯田間と小牧~上飯田間を交互に運行する形態で、犬山発着は30分間隔と少なかった。

 1988(S63)年7月8日改正は、時刻表Vol.5がないので、省略します。1000系「パノラマスーパー」がデビューしました。名鉄初の、本格的な一般有料電車特急になります。

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1989(H元)年7月15日改正(Vol.6)
 この日開幕した「世界デザイン博」に合わせた改正です。
 金山橋駅を岐阜寄りに移転、JR(東海道線にホーム新設)・地下鉄と合わせた「金山総合駅」となり、金山と改称しました。
 8800系「パノラマDX」3連化。
 犬山駅関連では、犬山線は朝ラッシュ時の急行を増発。各務原線は、夕方の一部に三柿野から普通となる急行を、新岐阜まで急行としました。新鵜沼行最終が繰り下げになり、初めて犬山駅を、24時を過ぎて発車する列車が設定になりました。
 小牧線は朝夕に増発。

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1990(H2)年10月29日改正(Vol.7)
 この年は4月にも改正を行なっていて(神宮前~金山間複々線化)、再度の改正となりました。
 高速特急準急(瀬戸線以外)を急行に統合し、特急急行普通の3本建てとしました。このため、特に急行で特別停車(主に旧準急が停車していた駅)が増加しています。
 名古屋本線の特急では、座席指定車と一般席車を併結が始まりました。JRへの対抗策です。犬山線は全列車全車指定席のまま。
 各線区で最終電車繰り下げの繰り下げがあり、犬山駅関連では、広見線の最終が繰り下げになりました。小牧線は夜間に増発。
〔北アルプス号〕は3月のJRダイヤ改正で、高山までの運行に短縮されていました。

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1991(H3)年10月21日改正(Vol.8)
 名古屋本線では1200系・1250系が製造し、1000系の一部編成を分割した指定席・一般席併結編成が造られました。現在に至る特急政策の本格化と言えます。
 小牧線が全区間20分間隔運転に統一されました(ラッシュ時の小牧~上飯田間は10分毎)。
 月~金曜日、神宮前→新鵜沼間の特急を増発。
〔北アルプス〕が、新型8500系に置き換えられています。JR東海のキハ85系と同性能で、多客期には〔ひだ〕との連結も見られるようになりました。
 この6日後の27日、平田橋駅が移転し、上小田井と改称しています。

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1992(H4)年10月24日改正(Vol.9)
 犬山線で朝ラッシュ時に特急急行を増発。
 新鵜沼行と小牧線の最終が繰り下げになりました。
「パノラマDX」が廃止になり、8800系は改装の上、津島線~西尾・蒲郡線特急に転用される事になります。

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1993(H5)年8月12日改正(Vol.10)
 名古屋市営地下鉄鶴舞線が上小田井まで到達、犬山線との相互直通運転が始まりました。
 ただし引上げ線がまだ完成していなかったため、相互直通列車以外は庄内緑地公園折返しのままの変則的な形態。このためか、急行は引き続き通過のままでした(特別停車1本のみ)。
 相互直通列車は普通だけだが、平日朝ラッシュ時は大山寺・徳重を通過する列車が設定されています。
 岩倉~犬山間で、普通が毎時2~4本に増発されています。
 この頃から名古屋空港(今の小牧)へのアクセスが意識されるようになり、犬山線の下り特急が平日5本のみ、西春に特別停車するようになりました。西春から空港までは、名鉄バス路線があります。

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1994(H6)年3月30日改正(Vol.11)
 地下鉄鶴舞線の庄内緑地公園折返しが全列車上小田井まで延長、ここで初めて、朝方の急行が上小田井に特別停車する事になりました。平日・休日とも、犬山発8時30分までの列車が停車。
 また名古屋空港アクセスとして、夕方の急行6本が行先を常滑→豊橋に変更しました。
 新岐阜→新可児間直通の急行が、夕方に設定になりました。各務原線は夕方と平日朝方に急行が増発されています。
 各務原線は三柿野まで、広見線と小牧線も最終電車が繰り下げになっています。

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1995(H7)年4月5日改正(Vol.12)
 犬山線は、朝方の急行が全て、扶桑に特別停車になりました。上小田井同様、平日・休日とも犬山発8時30分までの列車が停車します。
 広見線は朝方の急行を増発。
 各務原線は三柿野行最終を新岐阜へ延長。犬山線は普通の最終を繰り下げています。小牧線は早朝に増発、休日は初電が繰り上げになりました。
 犬山線下り特急は休日も、朝方は西春に特別停車。

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1996(H8)年4月8日改正(Vol.13)
 犬山線は、平日の急行の扶桑特別停車時間帯が、1時間拡大されました。
 休日はこの時間帯、扶桑ではなく犬山口に4本特別停車するようになったが、どういう意図があったのだろうか。

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1997(H9)年4月5日改正(Vol.14)
 この改正から、土曜日は休日と同じダイヤとなりました。結果小牧線の土休日の初電が平日と同じになりました。犬山線は土曜日のみ運転の急行を1本設定。
 扶桑・上小田井の急行特別停車時間帯を拡大。扶桑は犬山発10時30分まで、上小田井は9時30分まで。
(土休日の犬山口特別停車は扶桑に変更になった)
 この改正で初めて、犬山線で一部指定席の特急が設定になりました。平日の豊橋→新鵜沼間1本。

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1998(H10)年4月6日改正(Vol.15)
 土休日の新岐阜→新可児直通急行が取りやめになりました(新岐阜→犬山間は普通で運転)。
 各務原線は、折返し新可児直通急行となる急行3本を普通に変更。
 犬山駅関連ではこれ以外に大きな変化はないが、谷汲線や三河線(海側)で減便が行なわれるなど、名鉄全体では減量の傾向が出てくるようになります。

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1999(H11)年5月10日改正(Vol.16)
 この改正から、特急の指定席は、特別車と呼称される事になりました。乗車には「ミューチケット」が必要になります。
 1600系デビューにより、特急は全て専用車両で運行される事になりました。7000系・7700系「白帯車」は、特急から撤退。
 扶桑の急行特別停車時間帯がさらに拡大し、犬山発11時30分まで停車になります。
 平日朝方の特急は全列車岩倉に、鶴舞線直通の普通は全列車大山寺・徳重停車になりました。

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2000(H12)年3月21日改正(Vol.17)
 夕方の急行が上小田井に特別停車。犬山発15時30分以降全列車が停車します。栄生も犬山発18時30分まで延長になりました。
 夕方の豊橋行急行は、結局常滑行に戻りました。
〔北アルプス〕は江南・犬山遊園に停車。
 広見線は、土休日ダイヤで22時台以降2本削減。

 この年の8月、中部国際空港「セントレア」の起工式が行なわれました。

 前半は、20世紀終わりまでのダイヤ改正を振り返って見ました。
 この時期の名鉄は、毎年必ずダイヤ改正が行なわれていました。デザイン博開催や金山総合駅開業、鶴舞線と相互直通運転開始などのイベントがあった他、名古屋本線におけるJR東海との競争が、他線区にも波及しつつありました。6000系に始まる3ドア通勤車の相次ぐ投入による混雑緩和、「パノラマスーパー」導入で特急のグレードアップが進められた事も、度重なるダイヤ改正の要因となっていたと思います。ただ、後半は特に閑散線区でダイヤの減量が並行して始まり、この流れが21世紀に繋がっていきます。
 次回後半は最大のイベント・セントレアの開港による本格的空港アクセス輸送の開始、小牧線と地下鉄上飯田線の相互直通開始、一方でローカル支線の相次ぐ廃止など、明暗様々入り交じった21世紀のダイヤ改正を、犬山駅目線で回顧します。改正のペースも、一気に落ちていきます。

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 昨日休みだったのは運が良かったのか悪かったのか、関東地方は午後になったらあっという間の豪雪になりました。鉄道も様々大変だったが、それ以上にバスが大変で、相鉄バスや川崎市営バスでは衝突事故も起きてしまいました。今日も、平地でも一部では運休したり(特に急坂がある路線)、高速道通行止めの影響で大幅な遅延が起きている路線(神奈中バスでは180分遅延、なんて路線もあるらしい)があります。雪そのものは、昼間に陽が当たると案外早く消えていくが、影響は数日は続くでしょう。
 そこへ持ってきて草津白根山が噴火。ロープウェイ駅では80人が取り残されているそうです。自衛隊員1名の犠牲はお悔やみを申し上げるとしか言えないが、ともかくこれ以上の人的犠牲が出ないように、祈るのみです。

《今日のニュースから》
22日 沖縄県議会 米軍機事故・トラブルへの抗議決議文手渡し 
23日 松坂大輔 中日入団テスト合格 入団決定