№1791 年鑑バスラマ2017→2018(ぽると出版)
毎年恒例の「年鑑バスラマ 2017→2018」、先月発売になったが、少々遅れて年をまたいでしまいました。
表紙は「ポストポスト新長期規制」の新エアロクィーンと、沖縄に導入されたBYDのEV、コルトレイクで発表されたEVのAPTIS。これ、ホイールベースはどの位あるのだろう?ちゃんとカーブを曲がれるものかと思ってしまう。
◆2017年 国内バスハイライト
トップは奈良交通のボンネットバスか。日本では「ポストポスト新長期規制」対応の新モデルが出そろい、ここではエアロクィーン、セレガ(ハイデッカーショート)、エルガ、コースターを紹介。一方で脱内燃への動きが急速に活発になり、都営の燃料電池バスと、沖縄のBYDが取り上げられています。BYDはレギュラー号に先駆けて、ここが初めての掲載になりました。
貸切・高速バスのデラックス化も流れの一つか。中小事業者のエコノミーな車両と、二極分化するのかも知れない。
ウィラーの「君の名は。」のエアロキング「カフェバス」があったけれど、私は去年本体で、「ラブライブ!サンシャイン!!」「あまんちゅ!」のラッピング車の画像を公開しました。他事業者にもいくつかあるが、これらアニメタイアップラッピング車を並べても面白かったのではないか。バスラマ誌のカラーに合わないのは承知だが、特に地方はアニメの力を借りないと公共交通もなかなか注目してもらえなくなっているので、その現実を直視する点でも、意味がない、という事は決してないだろうと思います。
和田編集長による今年の巻頭言、昨年急に加速しだした「脱内燃」に向けたEVバスの普及の可能性、連節バス、BRT、そしてもう一つ大きく動き出した、自動運転についてオピニオンが展開されています。
EVの普及については技術的な面より以前に一つ、なぜか誰も話さないが、重大な懸念があります。バスに限らず、欧州を中心に乗用車・トラック等のEVの普及化が進む気配があり、欧州の一部の国では十数年後に内燃車の販売を全面禁止にする、と発表もあるが、単に片っ端から全車両をEV化しただけの場合、必要な電力を充分確保できるのだろうか?温暖化防止対策で火力発電所は廃止、原発もNOで、電力は全部再生可能クリーンエネルギーにせよ、との運動が(日本でも)あるけれど、電力総消費量が現状のレベルでキープされ続けるなら、それでも良いだろう(コスト面だけなら、何とかなる。日本は何のかんの言っても世界有数の経済大国の一つなのは間違いないし)。しかし、乗用車の電力使用量が急増したら、たとえ航続距離の延長など性能の向上があっても、発電能力が追い付かなくなるのではないだろうか?どうも「何をエネルギー源にするか?」の一点で議論が止まっている気がするが、「クリーンエネルギーなら、ジャブジャブ使ってOK」とはもはやならないはず、限られたエネルギーをどう配分するか、そこでバスなどの公共交通が優先されるべきではないか、その辺の議論も行なわれて然るべきです。
なお、関連して三菱ふそうが「E-FUSO」ブランドを立ち上げ、トラック・バスのEV化を進めると発表しました。東京モーターショーと連動しての発表だったので、今号では速報のみ、具体的な論評はこれからとなろう。昨年「何らかの解答が求められる時期だ」と書いたが、これがそうなのだろうと思います。結局、在来の内燃バスの延長上では高性能なEVバスは得られず、まっさらな新設計が必要になるという事だろうと思います。それは、工場の配置(三菱ふそうは、川崎市内の工場機能を集約する事になるらしい)など、生産体制そのものにも多大な影響を与えるでしょう。
連節バスについては完全に去年の繰り返しになってしまうが、走行環境が劇的に改善されないと、在来の単車を置き換える(それを期待しているようだが)所までは行かないのではないか。公道以上にバスターミナルが問題と思うようになってきた。単車の運用を前提とした設計になっているので乗り場の改修、場合によっては新設も必要。乗車以上に降車が問題で、ラッシュ時等に到着が集中した場合、安全に降車を扱えるのか、折返し出発までの待機場所のスペースは確保出来るのか。BRTはともかく、バスターミナルも公道も、最低幕張レベルで整備されないと、連接車の頻繁な運行はできないと思う。
また、「ドイツなどでは連節バスの運転は免許上の区分で明記されている」の文言も注意。後述するが、ただでさえバスドライバーの確保に四苦八苦なのに、さらに連節バスを充分に乗りこなせるドライバーを、必要なだけ養成できるだろうか。
連節バスでは、いすゞが昨年2月、日野と共同でハイブリッド連節バスの開発に着手するとリリースがあったが、なぜかどこにも記されていない(レギュラー160号に一報はあったが)。純国産初の連節バスともなり、注目される動きと思うが?
(ハイブリッドというのが、EV化の流れの中で中途半端にならないかとの懸念もなくはないが)
沖縄のモノレールや新高速鉄道に対しては、引き続き過小評価に過ぎると思う。モノレールの「2連10分間隔」は、私は逆に輸送力不足になっていると感じていました(だから昨年、曜日によっては増発が行なわれている)。また、沖縄~名護間70㎞(東武鉄道の浅草~館林間とほぼ同じ)となると、BRTといえども一般道の路線で対応できる距離ではないだろう。既に高速バスが運行されている区間でもあるし。
ドライバーに関しては、福利厚生の充実は、公営や大手私鉄系、その他地域を代表する大手の事業者は良いだろうが(レギュラー164号の東急バスのドライバーの座談会でも触れられていた)、地方で経営自体が苦しい事業者ではどうだろう。思い切った地域毎に事業者の再編成にまで踏み込む必要も出てきているのではないだろうか。もっとも経営統合や合併などをやってもすぐに良くなるわけではないようで、とさでん交通が2社の経営を統合し、競合していた路線の整理統合を行なってもなお、代表取締役自らが「危機だ」と言っているようでは、再編成をやってもすぐには事情が好転しないかも知れない。しかし地方のみならず、都会でもドライバー不足が原因と思われる減便が相次いでいるようで、何とかしなければならない。
無人運転への各種の懸念は、私も感じます。ただ、労働力人口そのものが減少に向かっており、もはやこれを前提として物事を考えられなければならず、ドライバー不足の状況下でも路線を維持したいのであれば、無人運転の不安とかなんとか言っていられなくなるかも知れない。一昨日はボルボがシンガポールで大型EVの自動運転バスを開発するとニュースになっていて、日本にも影響を与えるだろう。既に鉄道では新交通システムや、福岡市営地下鉄七隈線の無人運転の実績もあり、例えば駅⇔公共施設・病院等を結ぶ、所要5~10分程度の短距離シャトル路線あたりでは、数年の内に実現の可能性が出てきたのではないかと思う。それより長距離の路線はどうなるかは読めないが。
結局の所、これまた繰り返しだが、「バス(を初めとする公共交通)の社会的地位の向上」、これなくして諸問題の解決はあり得ないと思う。でなければ車両のEV化をしても電力が充分に供給されなければ効果は発揮しないし、BRTの整備も、どのみち地べたを走るのだから、沿道となる地域の協力が欠かせない。なにより一般道の走行環境が向上が図られないと。ちょっと大きなショッピングセンターやアウトレットモールがオープンする度に大渋滞が発生して大幅な遅延が頻発、埼玉の三峰神社へのバスが通常1時間強が8時間も掛かるような、狂っているとしか思えない大渋滞が日常茶飯事になるようでは、ドライバー候補だって敬遠してしまうだろう(有名ラーメン店の行列の如き感覚で渋滞など起こされては、たまったものではない)。どれもこれもバス業界だけで解決する事ではなく、行政も地域も、本当にバス(だけでなく公共交通)を必要、と思うなら、ただ公共性や環境面を上げて利用を訴えるのばかりではなく、具体的にバスの利用を増やし、路線を維持できる策を施さなければならないのではないか。業界の地位が上がれば、バスドライバーを目指す人も増えてくるのではないか。今後は、この辺まで含めて、もう少し広い範囲で議論をリードして欲しいと思います。
◆ 国内バスカタログ 2017→2018
「ポストポスト新長期規制」施行に対応した新モデルに移行しました。どれもこれも外観は大きくは変わらない。エアロスターのクーラー(デンソー)が多少変わった位か。
エルガハイブリッドがやはり中止になりました。日野ブルーリボン・ハイブリッドの登場でアドバンテージがほとんどなくなってしまい、キャビン後部のデッドスペースの存在がハンデになりつつあり、中止は時間の問題だったかと思われます。J-BUS内部で争ってもしょうが無いし。
三菱ふそうエアロミディも再度中止になったが、こちらは「E-FUSO」ブランドの下での、EV化しての再登場に期待か。
アストロメガは今の所合計5台らしいが、バイヤーのもくろみとしては、この時点としては多いのか、少ないのか?高速バスの需要を当てにしていた所もあったと思うが、あと数年するとエアロキングの代替需要が出てくると思われるので、その時点での売り上げが注目、でしょうか。
JHBのブルーリボンは速報みたいで、北海道は早くも雪景色。
◆ 海外バスカタログ 2017→2018
EVが3車種。VDLのシティア・エレクトリックはオランダ・アイントホーフェンで多数運行されているそうで、レギュラーの165号でルポが掲載されています。
路線車では、イベコ・クレアリスとキンロンでシート配置が表示されているが、どちらもやはり後ろ向きシートが配置されている。フルフラットのノンステップ車の場合、どうしてもこの配置を取り入れなければならない。ボックスシートを嫌う日本人に受け入れられるのか。既に外国産ノンステップ連接車を運行している所で、利用者の感想を聞いてみたい。
◆ 歴史編 創業100周年を迎えた 神戸市交通局のバス
〔ムーンライト〕をやるかと思っていたのだが。
バスとは直接関係なくなってしまうが、トップの写真は阪神三宮駅だが、そごうビルに掲げられた文言が、旧「大阪・須磨ゆき」→現「大阪・梅田・難波・奈良・姫路ゆき」(一部は見えないが)と範囲が拡大されているのが面白い。本当は、切れている画像の左側の部分が、震災で大きく変わった所なのだが。
今年のバス業界は昨年に引き続き、「ドライバー確保」と「脱内燃の方向性」がメインの論点となるでしょう。また、大阪市営バスの民営化も、過去に市営バスのサービス(特に「赤バス」)を追いかけてきたバスラマ誌的には重要なポイントとなるのではないか。
今後レギュラー号で取り上げて欲しい事。昨年度と同じだが、加えて3点。
1.フルフラットノンステップバスの行方 日本のノンステップバスのあり方についてバスラマ誌は長年疑問を投げかけ続けているが、その疑問もまた長期化しつつあり、もどかしく感じる。ボヤいたり嘆いたり海外をうらやましがるだけではなく、ここらで一度「なぜ、理想と考えられるフルフラットのノンステップ車は、日本では実現しないのか?」、問題点を整理する時だと思う。それはメーカーの技術力なのか?コストなのか?単なるヤル気の問題なのか?あるいは法規制に欠陥があるのか?また先の「海外バスカタログ」に記したとおり、フルフラットにした場合の利用者の反応(特にシート配置)も課題だろう。一番肝心なのは、運賃を払って利用する乗客なのだから。メーカーの本音も知りたい。
2.バス経営の枠組みの変化 昨年は東野交通・日立電鉄交通サービスがみちのりHD入りしたが、他に千曲バス・新常磐交通を保有するグリーンキャブや、沖縄の第一交通など、近年になって複数のバス事業者を保有する企業グループが相次いで現れる一方、大手私鉄は地方の事業者の運営からほぼ撤退した。アルピコ交通やとさでん交通などの大型統合も見られる。この流れと、広範囲でバス事業者を保有する事のスケールメリットは何なのか(みちのりHDの場合は、今一つそれが見えてこない気がする)、他の事業者や企業グループに与える影響は何か、この辺の分析を。
3.アメリカのバス 欧州や東南アジアのバスは毎号必ず記事になっているが、アメリカははっきり盲点になっていて、ほぼ記事がない(15年前にはラスベガスのショーを中心に記事があったが)。2015(H27)にアメリカに行って、NYやボストンのバス、長距離バスにも乗ったが、車社会と言われつつも大都市ではバスも公共交通の一部として機能していて、ボストンにはトロリー・ディーゼル両用の、はっきりBRTも運行されていたりして、特に東海岸は欧州の影響が強い。一方で、「脱内燃」の動きは、アメリカにはなにか影響を与えているのだろうか(トランプ政権下の環境政策には不安を抱かざるを得ないが)。そもそもアメリカのバスは、どこが作っているんだろう?グレイハウンドなどの名前は聞いていても、市内バスのシステムなど、意外に知られていない部分は多いはず。アメリカも積極的に取り上げて欲しい。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
11時間立ち往生、乗客が閉じ込められっ放しになったJR信越線の一件は、豪雪の最中で色々理由はあったのだろうが、今回はすぐ後ろに東光寺駅があったのだし(国鉄時代に駅員がいなくなっていたようではあるが)、どのみち早期の再開は不可能と解ったはずだから、やはりすぐに列車から乗客を脱出させるべきではなかったか。先日の京浜東北線の架線断線による立ち往生と同じ。そもそも、新潟は元々豪雪地帯なのに、なぜこのような事が起こったのか。近年が暖冬で降雪量が少なめになっていた事も影響していたのか?もっと早く違う手を打てたのではないかと思えてなりません。
《今日のニュースから》
12日 ICAN事務局長 長崎を訪問
13日 サッカー元日本代表 鈴木隆行 水戸で引退試合