№1492 私鉄名車列伝 131.東京急行電鉄2000系

「私鉄名車列伝」、今回は東急田園都市線の2000系です。

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 2000系は、旅客が急増していた田園都市線(2000(H12)年8月までの新玉川線を含む)の増発用として、1992(H4)年より製造された。9000系をベースとしつつ、細かな改良がくわえられた他、特に車内のアメニティ向上を図る新しい試みが、一部の車両でなされた。後の新系列で本格的に取り入れられたものも多い。

 9000系と同型の切妻タイプの軽量ステンレス車体で、外見上は分散クーラー2個を一つのケースにまとめている点が識別点となる。M車・T車で屋根上の見付を統一した。また、側窓上に車外スピーカーが設けられた。
 9000系との決定的な違いとしては、10両固定編成となってM-Mユニットの1C8Mとなり、8500系の8M2Tから6M4Tとなった。M1車には9000系とは異なる、GTOサイリスタのVVVF制御装置が1基設けられている。中間T車2両を外して8連で運行する事も可能。台車は軸箱指示方式をペデスタルすり板式から、新たに円筒積層ゴム式としたボルスタレス台車となった。乗務員室は9000系・1000系と同様のワンハンドル式で、半蔵門線用の機器を追加している。保安装置はCS-ATC。


 車内も基本的には9000系と同じロングシートで、端部もクロスシートではなく、通常のロングシートとなっている。ドア間の座席は3-4配置で中間に仕切りを設けている点は9000系も同じ。天井はクーラーの吹き出しが、1000系と同じラインデリア併用のダクト方式として、平天井となった。

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 3・9号車に関しては、新たな試みが行われた。座席のモケットは、3号車は縦縞・9号車は花柄となり、座席下の蹴り込み板を後退させて、小荷物を置けるよう配慮した。座席の仕切りには握り棒を設けている。カーテンは東急沿線の名所(渋谷109・田園調布駅旧駅舎・ランドマークタワー)をプリント。貫通扉は三角形を点対称に配置し、ファッション性と共に見通しを改善した。また、新造車両では初めて車椅子スペースを設けている。標記類はピクトグラム化されている。

 合計3編成30両が東急車輛で製造された。田園都市線は2001F・2002Fが投入された1992(H4)年9月11日改正で朝ラッシュ時間帯の運転間隔を短縮、鷺沼始発の急行2本を増発した。この2編成は当初より10両編成で田園都市線に直接導入されたが、1993(H5)年3月に増備された2003Fは当初は8連で東横線に投入、11月にT車2両を組み込み、10連化されて田園都市線に転用されている。2003Fは行先・種別表示が3色LED化され、全車両で柄入りモケットが採用された。

 田園都市線は2003(H15)年3月19日の半蔵門線押上延伸時より、東武伊勢崎線・日光線南栗橋までの相互直通運転を開始したが、2000系は東武直通対応とはならなかった。先頭部非常扉窓部に、東武非乗り入れを表す○Kマークを貼っている。座席の柄入りモケットは2004(H16)年までに、全て標準のオレンジ・ブラウンのモケットに交換されている。また、車内ドア上部に3色LEDの車内案内表示装置が千鳥状に設けられた。正面にはスカートが設けられ、行先・種別表示は3編成全てが、フルカラーLEDに交換・統一されている。
 現在も田園都市線・半蔵門線の中央林間~渋谷~押上間で、限定した運用に就いている。現状では7000系(21両)に次ぐ少数派で、目に触れる機会は多くはない。


【編成】
←渋谷方     中央林間方→
Tc2 2000 - *M1 2250 - M2 2200 - T2 2700 - *M1 2350 - M2 2300 - T1 2800 - *M1 2450 - M2 2400 - Tc1 2100
* パンタグラフ

 2000系は、両数としては2番目に少ないが、7000系(7編成)と比較しても3編成しかなく、東武に入らないとはいえ運用距離自体は比較的長いので見かける機会は少なく、実質的には東急では最少勢力と言えるのではないか。正直9000系とどこがどう違うのか、相違点を見つけ出すのは少々難しい、地味な系列でもあります。ただ、柄入りの座席は2000系では終わったが、その後の5000系シリーズや6000系、7000系でも本格的に採用されているし、車椅子スペースもこの後、在来の系列でも設置工事が行われています。という事で、9000・1000系までの流れを受け継ぎつつ、3000系以降の新系列への橋渡し役となった系列、と評して良いのではないでしょうか。

 今回の記事は
「鉄道ピクトリアル1992年10月臨時増刊号 新車年鑑1992年版」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ピクトリアル1994年12月臨時増刊号 【特集】東京急行電鉄」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ピクトリアル2004年7月臨時増刊号 【特集】東京急行電鉄」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ピクトリアル2015年12月臨時増刊号 【特集】東京急行電鉄」(鉄道図書刊行会)
「東急ステンレスカーのあゆみ」(萩原俊夫/JTBキャンブックス)
「私鉄車両年鑑2015」(イカロス出版)
「東急電鉄の世界」(交通出版社)
「鉄道ダイヤ情報№383(2016年3月号)(交通出版社)
「東急時刻表」 等
を参考にさせて頂きました。

「新車年鑑1992年版」を読むと、2000系の他、西武6000系・京王8000系がここで出てきていて、先行してデビューした小田急1000形も10両固定編成がデビューしていました。JRでも東日本で試作901系がデビューしたほか、西日本の207系も量産車がデビューしています。無論東急はもっと早く、昭和の終わりには9000系・1000系をデビューさせていた訳だが、この時期に、全国的にVVVFの通勤車が一気に花開いた感があります。
 次回のこのシリーズは、京浜急行電鉄の(新)1000形の内、5次車までのアルミ車体のグループについて取り上げます。

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 小田急のダイヤ改正は既に№1481で書いたが、先頃入手したロマンスカーの新ダイヤの時刻表から目についた、リリースでは触れられていない所を3点。既にご存じだろうとは思いますが。
1.VSEが平日のみ、江ノ島線〔ホームウェイ〕(85号藤沢行)に運用。VSEの定期〔ホームウェイ〕は初。
(6年前のHiSE・LSE一時離脱時に多摩線〔ホームウェイ〕で代走の実績はある)
2.平日の19時台以降新百合ヶ丘停車〔ホームウェイ〕は、3番線(多摩線ホーム)着発。
3.〔えのしま〕は、平日は夜間の藤沢始発90号は取り止め。土休日は1往復増発。

《今日のニュースから》
 2日 米「スポーツオーソリティ」 経営破綻
 3日 「爆買い」ガイド中国人 不法就労で国外退去処分