毎年恒例の「年鑑バスラマ 2015→2016」が昨年末発売になりました。遅くなって年をまたいでしまったが、ここで取り上げます。
さて表紙だが、芸陽バスの新エルガに加え、バンホールの「アストロメガ」(TDX27D)が飾っているのが興味深い所で、この後のカタログには出てきません。直後に発売されたレギュラーの153号(次回書きます)と合わせて読むと、ああそういう事かと感じられるのでは?
◆2015年 国内バスハイライト
燃料電池バス実証実験に始まり、新エルガデビュー、京都のEV、新潟のBRT連接車、熊本・小松島市営バス事業終了、貨客混載バス、モーターショーなどのイベント。
この数年一般の土休日は休めないので、イベントに参加できないのが残念。横浜の「バス利用感謝デー」も活きたかったけれどなあ。相鉄はなぜ2台、しかも同じ三菱ふそうノンステップなのだろう。遠めなので違いが判らないが。
和田編集長による今年の巻頭言は「BRTの基礎知識」と題し、新潟のBRTのスタートと、その後の混乱を踏まえた提言に特化しています。
要は、BRTとは車両だけでもダメ、施設(走行路や停留所)だけでもダメ、さらにはダイヤも含めて営業政策まで踏み込んだ、トータルとしてシステマチックな高速バス輸送システムを定義する、そういう事なのだろう。そして、これを実現するためには、行政側の理解と、利用者(市民)への啓蒙も必要だという事だと思います。日本のBRTは全般的にそこまで到達しておらず、新潟の一連の混乱もここから来ている(車両の大半は一般路線車と共用、専用路も確保されていない)、という論調だと思います。
結局「BRT」の名前が先行してしまって、中身が追いついていない、という事でしょうか。交通業界に限らず、どうも日本は名前先行になってしまう所があるので。目新しさを出したいという事もあるでしょう。気仙沼線・大船渡線BRTは、単に「鉄道代行バス」では、たとえ専用道でも、一般道を走るバスと何がどう違うの?という疑問が逆に出てくるので、BRTの名前を出したのかも知れません。
「乗継が負担増…」の点は、BRTに限らず、ある程度輸送量が大きい交通が開通する時はどうしても付きまとうもので、12月の仙台市営地下鉄東西線開通でもあった事です。バス同士の乗継はあまり一般的ではなくて、どこでも歓迎されないものだから、特に問題視されたのだろうと思います。前にも書いたが、乗継が必須となるのであればBRT側は待たずに乗れるダイヤが必要、10分間隔はまだ少ないと思う。連接車だけで7~8分以下の間隔で走るのが理想でしょう。
(まして、たとえ専用路が確保できても、地下鉄レベルの正確性の確保は難しいので)
運賃収受に関しては、本家の欧州でも信用システムが揺らぎつつあるのは、過去のバスラマ誌の海外ルポにも記されていた事だと思う。仮に日本で導入したとして、必要な定期券とか、シルバーパス的なものをウッカリ忘れて乗車した乗客を検札で見つけた時、問答無用で高額の罰金を徴収できるものだろうか?国民性の違いも考える必要がある。これでトラブルになってしまったら、それこそBRTのイメージを大きく傷つけかねない。初めから乗降が多い事が解っている(新潟BRTなら新潟駅前あたり)所なら、地上側に職員を常駐させて運賃を収受する方法も考えられて良いだろう。路面電車では都電荒川線の王子駅前や、広電の広島駅前に例があります。
BRTに限らず、高速バスだろうがローカルバスだろうが、あるいはLRTでも一般の近郊電車でもなんでもそうだが、何度も書くけれど根本的に「公共交通優先」の思想が、作る側にも、利用者(世論)の側にも絶対必要だと思う。それが日本には欠けている。特にBRTは一般公道上に専用レーンを設定するにしろ、専用道を建設するにしろ、地べたに専用走行路をひく事になる以上、沿線の人々の理解・協力がどうしても必要になる(それはLRTも同じ)。去年も書いたが、公共交通を考える団体が日本にはいくつもあるが、もうちょっと積極的に、BRTも含めたバス、ひいては公共交通の在り方についての考え方を、世論に向けて発信しても良いのではないでしょうか?
なお、ここではLRTとの比較検討については述べられていません。都市鉄道と一般的なバスとの間に位置する中規模交通機関は、ロケーションにも寄るけれど、モノレールや新交通システムなどは高コストでもう無理っぽくなってきているので、今後はBRTまたはLRTからの選択という方向になるかと思われます。どちらを取るか、その在り方について、今後LRT論者との間でも議論が進められるべきではないでしょうか。LRTの建設が進む欧州においても、場所によってはBRTが選択されているが、その選択の根拠についても、今後は十分な情報が欲しいと思います。
◆国内バスカタログ2015→2016
エルガ/ブルーリボンのモデルチェンジで、JBUS系・三菱ふそうの国内2大メーカーのモデルチェンジ車が出そろいました。JBUS系はノンステップに集約、ブルーリボン市販1号が奈良交通の新宮特急、というのが注目されます。特にAMTの評価と、ノンステップオンリーとなった事が、事業者の車種選定にどう影響を与えるか。
ブルーリボンハイブリッドもモデルチェンジになったが、同じJBUSのエルガハイブリッドとの比較では、販売価格が低くなり、全高も4㎝しか違わなくなりました。となると、エルガハイブリッドにはアドバンテージがほとんどなくなり、車内後部にハイブリッドシステムのデッドスペースができるハンデが残る事になります。CNGも含め、モデルチェンジ、するのでしょうか?
今回は新潟BRTのスカニア/ボルグレンの連接車、京都急行バスで走り出したBYDのEVも取り上げられました。BYDは航続距離が250㎞とずば抜けて長いが、車両重量が14tで、北九州市営バスの韓国HFGが11.56tだそうだから、約2.5tも重い。また車内のデッドスペースも大きく、より広範囲に普及させるなら、この点も課題でしょう。
◆海外バスカタログ2015→2016
個人的に注目したのは、VDLのシティアDFL。これも何度も書くが、BRTのような、整備された良好な走行ルートが十分に確保できない限り、日本の道路事情では連接車は普及しないと思う。DFLのような、純粋なシティバスとしてのダブルデッカー車が、日本でも開発できるといいと思っています。
昨年は「中国製のバスはEUでは抵抗感はないのか?」と書いてしまったが、AIIBへの対応とか見ていると、少なくとも日米程にはないようだ。特に英国。BYDのEVダブルデッカーがロンドンバスで走る位だから。
◆歴史編 88年の歴史に幕を閉じた熊本市営バス
昨年事業を終了した熊本市営バス。ここでは、創業から終了までの歴史を、昔の車両の写真も交えて振り返っています。
日本のバスの歴史を、熊本市営バスもほぼそのままなぞっていると言えます。熊本も60年前にはEVがあって、熊本に限った事ではないが、昔のEVは低公害を狙ったのではなく、燃料事情が良くなかったから導入したもの。
車両面では、1950(S25)年の貸切車のリアが、ずいぶん大胆な流線型になっていると思う。車体ぐらい残ってレストアされたら良いのになあとも思う。
レトロバスは最終運行よりも前に入札でリタイアしていて、どこへ行ったのだろうか。
今年のバスも昨年同様、色々な問題を抱えながら進むべき道を模索して行くのだろうが、一つ大きな動きとして、新宿の新高速バスターミナルのオープンがあります。まだ実物を見た事がないのだが、どんなものになるのか楽しみではあります。どの程度の便数が入るかは解らないが(少なくとも新宿駅近辺を発着する、旧乗合バスは全部入るだろう)、今後の高速バス業界そのものの行方を占うものになるかも知れません。この数年、各地の高速バスターミナルの整備拡充が相次いでいて、これもまた、近年のバス業界のトピックスとなろうかと思います。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
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《今日見た・聞いた・思った事》
前回の補足です。ジェットスター・ジャパン(JJP)の年末年始の実績が昨日発表されました(日付は5日)。
国内線は座席数169,200席(前年比87.0%)、旅客数140,765人(103.7%)、利用率83.2%(+13.4%)。関空~大分・中部~熊本が休止になって座席提供数は減ったが、旅客数は逆に増えて、利用率が大幅に向上しました。ピークは下り12月29日、上り1月3日。
国際線は初の年末年始になります。座席数18,000席、旅客数12,919人、利用率71.8%で、他のLCCと比較してまだ知名度が低いのか。ピークは日本発12月25日、日本着は12月31日でした。27日の日本着が50%を割っていました。
JJPは昨日から、モバイル搭乗券の運用を開始したとの事です。国内LCCでは初だが、当面は予約人数が一人の場合のみ、一つの予約番号で搭乗者が複数の場合の運用は中旬になるとの事。
《今日のニュースから》
6日 レギュラーガソリン 全国平均120.4円 6年7ヶ月振りの安値
7日 コンビニ3社ATM 一時システム障害発生
北朝鮮の「水爆実験」だが、根本的には「北風」も「太陽」も、彼の国の体制を変える事が出来ないのが最大の難問だと思う。内部で革命でも起こるしかないのか?とか考えてしまうのだが。
京王バス小金井の事故は、詳細はまだ不明だが、報道の内容からすると、またドライバーの健康問題が背景に存在する、という事でしょうか?心配です。