「私鉄名車列伝」、今回は東武鉄道のデラックス特急、100系「スペーシア」です。東武のみならず、日本の鉄道の特急車両でも最高峰に数え上げる事が出来る、同社のフラッグシップとして君臨しています。1991(H3)年の鉄道友の会ブルーリボン賞受賞は、長い同社でも初の快挙となりました。それにしても早いもので、デビューからもう四半世紀です。
日光・鬼怒川特急は1960(H35)年デビューの「DRC」1720系が長年君臨、地位を不動のものとしていたが、老朽化・陳腐化が進んだため、30年振りの新特急車が製造されたものである。アルナ工機・東急車輛で6連×9本、合計54輌を製造、一般公募で「SPACIA」(スペーシア)の愛称も決まり、1990(H2)年6月1日デビュー、翌年9月には全編成の置き換えを完了した。
車体は全アルミとなり、シンプルな流線型となった。ジャスミンホワイト基調で清潔感を醸し出している。全M方式で、通勤車10080系で試用されていたVVVF制御を初めて本格的に採用した。モーターの出力は1720系の倍の150kwとなり、将来の130㎞/h運転に対応。1992(H4)年より関東の民鉄では初の120㎞/h運転を開始、浅草→日光間では最速1時間38分運転を実現している(途中下今市のみ停車)。
1~5号車は回転リクライニングシートを備えた座席車、6号車は定員4名のコンパートメント6室を備えた個室車で、共に全体のコーディネートは、当時の東武系列のホテルを手掛けたインテリアコーディネーターが手掛けた。
座席車は、シートピッチはDRCと同じく1,100㎜。普通車でこの数値は、現在に至るまで他社で実現した所はない。座席はフリーストップ式のリクライニングシートで、当初はヘッドレスト部にスピーカーを組み込んだオーディオシステムを搭載していた。間接照明の他、スポット式読書灯を設けている。
個室車は大型のソファに大理石の大型テーブルを備え、カーペット敷きの内装で、高級ホテルの如き豪華さを醸し出している。ビュフェへのオーダー用インターホンも備えていた。
3号車にはビュフェ・サービスカウンター・電話室・飲料自動販売機を備えていた。ビュフェでは、当時はオーダーエントリー装置を設け、各座席への軽食・飲料などのシートサービスを行っていた。サービスカウンターにはスチュワーデス放送用の機器が設けられている。なお、現在はスチュワーデスの乗務とシートサービスは終了し、ビュフェではカウンターとワゴンによる販売を行っている(一部列車を除く)。公衆電話も撤去された。
日光・鬼怒川地区の観光の不振の打開策として、JRとの相互直通特急運行の機運が高まり、106~108Fの3編成にJR直通対応の改造工事が施された。JR線に対応したATS-P装置などの搭載を実施、ブレーキ指令器の改修も行われている。座席番号はJR方式(数字二桁+アルファベット)に対応した表記ステッカー、さらに個室車はJR線内ではグリーン車扱いとなり、車体にはグリーン車のマークも付与された。栗橋駅構内に連絡線を新設、2006(H18)年より新宿までの直通運転を行っている。
「雅」
「粋」
「サニーコーラル」
東京スカイツリー及びスカイツリータウンのオープンに合わせ、2011(H23)年度よりリニューアルを実施した。車内は、コンパートメントはブラウン系、座席車はドット柄のブルー系となった。車体のカラーリングは3種類となり、編成によって紫系の「雅」、青系の「粋」、在来カラーをベースとした「サニーコーラルオレンジ」をまとう。
「日光詣」
さらに、2015(H27)年の「日光東照宮百年式年大祭」記念として、103Fに金色ベースの特別塗装を施した「日光詣スペーシア」の運行が始まった。後にJR直通対応の106Fも同様に改装されている。
現在も特急「けごん」「きぬ」「スペーシアきぬがわ」で運用されている。
【編成】
←浅草方 東武日光・鬼怒川公園方→
Mc1 100-1 - *M1 -100-2 - M2 100-3 - M3 100-4* - M4 100-5* - Mc2 100-6
* パンタグラフ
車内のシートのポケットに置かれていた、「スペーシアのご案内」。春日部に停車するようになった、1999(H11)年3月以降のものです。
残念ながら「スペーシア」でもサービスの簡素化が進み、スチュワーデス(スペーシア・アテンダント)の乗務や、オーディオ・サービスの終了などがありました。再来年には新特急車500系がデビューするが、コンセプトからして「スペーシア」の代わりになるものではないと思います。もともと外国人旅客が多かった所に昨今のインバウンドの増加もあるし、さらに日光の世界遺産登録という要因もあるので、特に人的サービスの再度の充実が今一度図られる事を望みたいと思います。できれば、小田急VSEのようなシートサービスまで行けると良いのだが…。全列車、とも行かないだろうけれども。
今回の記事は
「鉄道ピクトリアル1990年10月臨時増刊号 新車年鑑1990年版」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ピクトリアル1990年12月臨時増刊号 【特集】東武鉄道」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ピクトリアル1997年12月臨時増刊号 【特集】東武鉄道」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ピクトリアル2008年1月臨時増刊号 【特集】東武鉄道」(鉄道図書刊行会)
「私鉄スーパートレインコレクション」「東武鉄道の世界」(交通新聞社)
「東武鉄道完全データ」(メディアックス)
を参考にさせて頂きました。
次回のこのシリーズは、西武101系後期と、301系について取り上げます。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
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《今日見た・聞いた・思った事》
その西武鉄道が、新通勤車40000系の新造を昨日発表しました。再来年(2017(H29)年)春デビューとしています。
30000系の後継車両として10両編成×8本、80両を製造するが、川崎重工製とは、西武としては初。
(関東地方全体でも、大手では後は京急位か?)
一部の編成は「ロング・クロスシート転換車両」となり、東武50090系や近鉄「L/Cカー」のようなものになると思われるが、「TJライナー」的な列車の運行が視野に入っているのでしょうか?
注目されるのが「パートナーゾーン」の設置で、先頭車両の前部の中央に腰かけを設け、窓を他より大きく取って、子供たちが景色を楽しめるように、とか、バリアフリー対策も考えられているようです。この辺は30000系のコンセプトを受け継いでいるとも言えます。ただ、中央部に腰かけを置く試みは、ラッシュ時にはどう評価されるか、気になる所でもあります。
この他、プラズマクラスターや、PMSMモーターの搭載は、昨今の通勤車のトレンドになろうかと思います。
40000系は非貫通型で、地下鉄には直通しません。という事は、6000系は、改修工事はあるかも知れないが、当分は地下鉄直通専用車の地位を維持する事になるのでしょう。
系列で「40000」という数字を使うのは、西武が初めてになります(東武・近鉄は、「30000」の次は「50000」になった)。4000系もあるし、西武という所は頭の数字は特に気にしない、こだわりがないみたい。あとは「スマイルトレイン」みたいな愛称が付く事になるのでしょうか。
今月は首都圏のJR東日本で重大トラブルによる運行支障が相次いだが、今度は東急ですか。更新時点では東横線・目黒線・東急多摩川線は、運転再開の見通しが立たないとか…。
《今日のニュースから》
24日 東京オリンピック 競技のデザイン画 羽田空港でお披露目
25日 全国学力テスト結果公表 秋田・福井県が上位
羽田空港のデザイン画は、国内線第1・第2ターミナルのボーディングブリッジ毎に異なるデザインが施されるそうで、搭乗時の楽しみが生まれたかも知れません。